100人の子供たちが列車を待っている
監督: イグナシオ・アグエロ
出演: 映画教室の子どもたち、アリシア・ヴェガ
日本公開:1990年
チリ独裁政権時代の終わりに生まれた、
小さく眩しい笑顔のプリズム
121年前の今日、1895年12月28日にフランス・パリで「映画の父」リュミエール兄弟が初めて映画の上映をしました。今年最後の「旅と映画」は、リュミエール兄弟の映画にちなんだチリのドキュメンタリーをご紹介します。
チリの首都・サンティアゴ郊外にあるロ・エルミーダに生まれた貧しい子どもたちのために、女性教師アリシア・ヴェガが半年の映画ワークショップを開始します。映画を映画館で見たことない子どもたちは、映画の歴史や、1枚だと動かない絵が残像現象によって動いているように見えることを教えてもらい目を輝かせます。
旅をすると、時には経済的に豊かではない場所に訪れることもあります。貧しいにも関わらず、娯楽が無いにも関わらず、子どもたちがキラキラした笑顔をしている・・・そんな光景を旅先でご覧になったことがある方は少なくないはずです。
子どもたちは、映画タイトルに含まれている「列車」にまつわるある一本の映画を見ます。リュミエール兄弟が121年前の今日上映した映画のうちの一本である『列車の到着』です。ただ列車が到着するだけの映像ですが、列車を待つ人々・列車から降りる人々・出会い・別れ・出発など、様々なイメージを思い浮かべることができます。
『100人の子供たちが列車を待っている』は1989年に製作され、1990年にピノチェト独裁政権が終焉を迎える直前でしたが、21歳以下鑑賞禁止となりました。子どもたちは何を待っているのか・・・それは当時の政治状況にも関連しているようにも思えます。この映画に登場する子どもたちは貧しく、ノートを買うためにゴミ捨て場からダンボールを集ている子どもなどが出てきます。そうした彼らが無邪気に映画のイメージと戯れる様子は、自由・幸せ・喜びを求めることを観客に連想させてしまうと、政府の人々は危惧したのではないでしょうか。
2016年最後の映画・2017年最初の映画に、お子さんと一緒に見るのにピッタリ(55分という見やすい長さです)の作品です。