アワーミュージック

1d1d3206e8ca429c(C)2004 AVVENTURA FILMS – PERIPHERIA – FRANCE 3 CINEMA – VEGA FILMS

ボスニア・ヘルツェゴビナ

アワーミュージック

 

Notre Musique

監督:ジャン=リュック・ゴダール
出演:ナード・デュー、サラ・アドラーほか
日本公開:2005年

2017.11.29

戦争の傷跡が残るサラエボで、世界的巨匠が希望の光を探し求める・・・

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都・サラエボ。内戦によって廃墟になったビルなど、戦争の傷跡が深く刻まれたこの町に住む大学生のオルガは、「本の出会い」というイベントに講師としてやって来る映画監督に自分の映像作品を渡そうとする・・・

1960年代から、既存の手法にとらわれず、常に斬新な表現で映画界をリードし続けてきた巨匠ジャン=リュック・ゴダールが、2004年に自らも出演して9.11テロ以降の世界を描こうと試みたのが本作です。

日本人にとっては情報が少ないバルカン半島の国々。町中を走るトラム、茶色や灰色を基調にしたレンガ造りの建物、ボスニア内戦中に破壊されたサラエボ図書館など、多くの景観を見せてくれる劇中の講義シーンでは、旅行のエッセンスと大きく関わりがあるこんな話が監督自身によってなされます。

量子力学の確立者として有名なハイゼンベルクとボーアが物理学を語りながら歩いていて、ハムレットの舞台になったエルシノア城に着いた時、ハイゼンベルクは「大したことないですね」と言った。それに対しボーアは「ハムレットが住んでいた城だ、それだけですばらしい」と反論した。現実におけるエルシノア城のイメージの不確実さと、ハムレットにおける想像上のイメージの確かさ。映画のカット構造にも関係がある、こうしたイメージの方向性の差が、監督によって説明されます。

私たちが旅に出る際、あるいは映画を見る際もそうですが、事前に情報を調べる場合もあれば、何も情報を頭に入れずに気の赴くままなこともあるかと思います。それぞれの楽しみ・発見があると思いますが、どちらにしても言えるのは、旅も映画も私たちの心の中で暗くなっていて見えない部分を照らしてくれるような作用があるということでしょう。

想像力の確かさにあふれた名作『アワーミュージック』は、サラエボの町並みだけでなく観光地として有名なモスタルの橋も見どころで、バルカン半島に興味がある方は特に必見の作品です。

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