「聞いたことはあるけど、やったことはない」「野鳥観察ってなんだか敷居が高い…」という方も多いのではないでしょうか。実は、野鳥観察はいつでも誰でも簡単に始められる、人気のフィールドワークのひとつ。しかも、楽しみ方は多岐にわたり無限といっても過言ではありません。ここでは奥深い野鳥観察の魅力を、大きく4つにまとめてご紹介いたします。
自宅のベランダから地球の裏側まで!身近な場所からスタートできるのに、楽しめる範囲は世界中。まずは肉眼で見える鳥を、散歩中に意識するだけで簡単に始められます。
野鳥は目で探すだけではありません。環境や季節の変化にアンテナを張り、小さな動きをとらえ、耳をすませて鳴き声をヒントに探します。その宝探しのような感覚を楽しむ人も多くいます。また、希少種や観察地域が限られた野鳥に会うために、ジャングルの中を進んだり海に出ることもあります。
羽毛の手入れ、エサをとる、巣作りの材料集め、つがい、求愛行動、子育てなど。自然の中だからこそ、思いがけなくかわいらしい・かっこいい姿に出会える可能性があるのも、大きな醍醐味です。
同じ観察でも、珍鳥を探す、見た野鳥の種類の数を増やすなど目的は人それぞれ。また、観察から派生して、撮影、絵を描く、旅行のついでに野鳥を見る、自然保護活動に参加してみるなど、生涯を通して様々な角度から楽しむことができます。
冬は木々の葉が落ち視界が開けるため、葉が生い茂る夏よりも野鳥を見つけやすい季節。蚊や蜂などが少ないため、虫刺されに悩まされることもありません。また、越冬のためにやってくる冬鳥が見られる季節でもあります。
野鳥観察は気軽にできるフィールドワーク。ハイキングのような動きやすい格好を軸に、帽子や手袋など、季節や状況に合わせて必要な物を追加していきましょう。また、野鳥を刺激しないよう蛍光色などの派手な色は避けた方がよいでしょう。
気温の高い季節でも、紫外線や虫刺され対策のため、皮膚を出さない長袖・長ズボンがおすすめです。飲み物も忘れずに携帯し、こまめに水分補給しましょう。春・秋は朝夕の冷え込み用に薄手の上着があると安心です。
保温性が高く暖かいダウンジャケット、帽子やネックウォーマー、手袋などでしっかりと寒さ対策を。野鳥観察はじっとしている時間が長いので、カイロも重宝します。雪上では靴下の重ね履きもおすすめ。
大きさや重さ、性能などを考慮すると、倍率は8~10倍、対物レンズ径が30mm程度の中型の双眼鏡がおすすめ。同じ仕様でも性能によって価格はまちまちで、コンパクトでもよく見える高級機種もあります。
<型番の見方例>
・8×30(倍率8倍、対物レンズの直径30mm)
・10×32(倍率10倍、対物レンズの直径32mm)
日中の紫外線や蚊・蜂・ヒルなどの虫から肌を保護したり、ウルシ科の植物によるかぶれなどを防ぎます。夏でも通気性のよい素材を選ぶと快適です。
基本的には履きなれた運動靴でOK。長時間立つことが多いので、底のしっかりした軽登山靴などがあれば足の疲れを軽減できます。干潟や湿地では長靴を用意。折りたためるタイプが便利です。
春~秋は、紫外線・熱中症を防ぐため、日よけになるつば有りの帽子がおすすめ。冬は寒さ対策として、耳が隠れる帽子や耳当ても役立ちます。
じっとしている場面が多いため、冬は指先が冷えてかじかむことも。ピント合わせや図鑑をめくりやすい、フィンガーレス+ミトンのタイプがあると便利です。
風のないときには折りたたみ傘でOK。日差しが強いときにも役立ちます。レインウェアやレインコートがあればさらに安心。寒い日は防寒着としても活用できます。
観察中は双眼鏡などの操作や安全のため、荷物は両手があくリュックなどに入れましょう。図鑑や飲み物など、すぐ取り出したい物を入れる小さい肩掛けポーチなどもあると便利。
はじめは特徴がわかりやすいイラストタイプの図鑑がおすすめ。持ち歩き用には、ポーチに入るコンパクトなものが便利です。電子書籍やWEB図鑑、アプリを活用する方法もあります。
チェックリストをつけたり、簡単なスケッチと一緒に場所・日時・天候などを書き込んでおくと、後で調べるときに役立ちます。かさばらない手帳サイズが持ち運びやすくて便利。
バード“ウォッチング”といいつつ、実は野鳥の姿よりも先に鳴き声で見つけることが多いです。声をたよりに、野鳥がどこにいるか探してみましょう。姿を見つけたら、外見や動きの特徴、生息地から種類を推測して図鑑で調べます。まずは身近な野鳥から始めて、見分けられる種類を少しずつ増やしていきましょう。
識別する上で大きさはとても重要。ハト、スズメ、カラスなど身近でよく見かける鳥を“ものさし鳥”として自分の中で決めておくと比較の基準になり、異なる条件下でも大きさを把握しやすくなります。また、体型はスリムか太っていたか、止まっているときの姿勢は垂直か傾いていたかも、注意して見ると識別のヒントになります。
いつ、どこで見たかという情報も、仲間や種を絞る大きな手掛かりになります。図鑑に載っている分布図や時期と照らし合わせて、季節ごとの生息域から種類を推測したり、解説を読んで生息環境の違いから判別することができます。
とくに姿がよく似た種類の野鳥は、鳴き声こそが識別のカギになります。鳴き声は大きく分けて「さえずり」「地鳴き」の2種類があり、「さえずり」は長く複雑なもの、「地鳴き」は短く単純なことが多いです。野鳥の声を収録したCDやスマートフォンのアプリ、QRコードを読み込んで鳥の声が聞ける図鑑などを活用するのも聞き分けのヒントになります。
まずは、よく目立つ部分がどのような色・模様なのかを認識することから始めます。頭部は嘴(くちばし)の色から目の色や顔の模様、体や翼は上面(背中側)・下面(腹側)の色・模様、足の色などに注目。翼や尾羽を広げたときにしか見えない特徴もあるので、見逃さないようにしましょう。
動きや習性も種類を識別する大きなポイントです。飛び方は直線的か波状の軌道か、歩き方は両足でピョンピョン跳ねるか、人と同じように足を交互に出すか。また、止まっているとき尾羽はどのように動かしているかなど、種や仲間による習性の違いにも注目します。
身体の部位の名称など野鳥に関する専門用語は多岐にわたりますが、まずはツアーなどに参加してみて、実際に体験してみること、楽しむことが大切。ひとまず下記の用語を知っておくと、ツアー参加時などにガイドの説明がスムーズに理解できて、より観察を楽しむことができます。
さえずり | 主に繁殖期によく出される鳴き声。なわばりの宣言や求愛の役割があり、さえずるのは一般には雄。 |
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地鳴き(じなき) | 1年を通じて聞かれる、さえずり以外の鳴き声。短くシンプルな声の場合が多い。 |
ドラミング | 動物が鳴き声以外の方法で音をたてる動作。キツツキが嘴で木を激しくつついて大きな音を出す行動などがあり、さえずりと同じ意味がある。 |
聞きなし | さえずりを人の言葉に例えてわかりやすくしたもの。ウグイスの「法、法華経(ホーホケキョ)」などが有名。 |
混群 | 異なる種が集まって群れをつくること。よくシジュウカラ、メジロなどが混ざって見られる。 |
夏鳥・冬鳥 | その地域に春に訪れて繁殖し、秋に渡去するのが夏鳥。秋に訪れて冬を過ごし、春に渡去するのが冬鳥。 |
留鳥(りゅうちょう) | 季節で大きな移動をしない、1年を通して同じ場所で見られる鳥。ハシブトガラスなどが代表例。 |
婚姻色 | 繁殖前~繁殖中に、嘴・眼のまわり・足の一部などが変化する、鮮やかな色のこと。 |
エクリプス | カモ科などのオスが夏羽から換羽した一時期、メスや幼鳥に似た地味な色や模様になること。 |
ディスプレイ | 独特の飛び方やポージングなどで自分を誇示する行動。メスへの求愛、他のオスへの威嚇などの意味がある。 |
デコイ | 実物大の模型の鳥。仲間で集まる習性を利用して繁殖地に誘引するなど、絶滅危惧種を保護する目的で使用されることも。 |
鳥合わせ | ツアーなどで観察した野鳥の種類を全員で確認すること。図鑑やチェックリストを使って行う。 |
近年バードウォッチングをする人が増えるにつれて、観察時のマナーが問題になっています。野鳥探しについ夢中になるあまり、周囲に迷惑をかけたり野鳥にストレスを与えることがないよう、十分注意しましょう。
野鳥は大きな音や動きを警戒するため、静かに観察しましょう。近づいて飛ばせたり、餌付けでわざと鳥を動かす行為はNGです。服の色も、派手なものより自然にとけこむものがベター。野鳥が安心できる距離を保ち、そっと観察しましょう。
とくに子育ての季節は親鳥が神経質になっています。営巣中の巣やヒナに近づくと、親鳥が警戒して巣を見捨ててしまい、ヒナが死んでしまう場合があります。
双眼鏡を覗いていると視野が狭くなります。無意識に道をふさいだり、うっかり田畑などの私有地に入らないよう注意。周囲の人の迷惑にならないよう心がけましょう。
市街地などで双眼鏡を使用する際、人や住居、会社のビルなどに双眼鏡を向けるのは控えましょう。野鳥を見ていたとしても、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
ペットボトルなどのゴミはきちんと持ち帰りましょう。また、撮影・観察に都合がいいからといって、木の枝を折るなど環境を壊す行為は絶対にやめましょう。
人気の野鳥や珍鳥を観察・撮影できても、場所を明記してSNSなどに投稿するのはやめましょう。人が殺到して地元の人とトラブルになる場合があります。また、多くの人が訪れた影響で野鳥が来なくなってしまった例もあります。
専門ガイドが同行(※国内ツアー)し、観察・撮影をしっかりサポートいたします。初心者の方でも安心してご参加いただけます。
最大5~15名様の少人数限定でツアーを催行。観察・撮影のチャンスを最大限に設け、こだわりの行程でじっくりとお楽しみいただけます。
渡り、ねぐら入り・立ち、求愛の季節など、コース内容やテーマに合わせて、ベストシーズンにツアーを設定しています。
(有)レイヴン・所属。鳥類調査を中心に、執筆、撮影、ツアーガイドを行う。一番の関心事は、ヒマラヤ山脈から台湾・南西諸島・朝鮮半島・日本にかけての鳥類の分類・分布。「日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版」(共著/文一総合出版)など、著書多数。
野鳥観察レポートを読む野鳥歴45年。鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)など。協力図書も多い。
野鳥観察レポートを読む高校3年生で写真に興味を持ち、20歳の時にアカゲラを偶然撮影できた事から野鳥の撮影にのめり込み「きれい、かわいい」だけでなく“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどに多数発表。
野鳥観察レポートを読む1967年生まれ、山形県在住。「鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!」
野鳥観察レポートを読むバードウォッチング専門店Hobby's Worldおよび鳥類調査会社を経営。タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥を観察・撮影するのが楽しみ。「バードウォッチングは誰でも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。」
野鳥観察レポートを読む西遊旅行バードガイド&ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に撮影に没頭。「まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ知床・羅臼にも遊びに来てください!」
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