タグ別アーカイブ: Vietnam

ハティンラングール Hatinh Langur(クアンビン省、ベトナム)

ベトナムのクアンビン省トゥエンホアにて出会った、希少な霊長類ハティンラングールです。

ハティン・ラングールは、ベトナムとラオスに固有のサルで、全身が真っ黒、唇の上から耳に続く白い口髭と、頭頂の逆立った冠毛が特徴です。クアンビン省の隣のハティン省の名前がついたサルですが、実際にはハティン省にはほとんど生息していないそうです。発見した研究者が地名を勘違いしたと言われています。

ハティンラングールを観察するためには、地元の農家の人の手助けが必要になります。畑のそばにある石灰岩の岩山に生えている森の中にハティンラングールが出てくるため、畑で働く農家の人からハティンラングールの情報を聞いて、情報のあった場所まで、農道やあぜ道を歩いて向かっていきます。

最初に到着した場所ではハティンラングールは見えたのですが、距離がありすぎて、しっかりとは見えにくい場所でした。その後また別の情報を得ると急いでその場所まで向かっていきます。

アンナン山脈の中で、森林の多いカルスト石灰岩地帯に生息しています。

「リーフイーター」と呼ばれるサルの仲間で、木の葉を主食としています。手で一枚一枚葉っぱを摘み取り、長時間噛んで、飲み込む前に葉っぱを細かく砕きます。あまり噛まず消化管だけで食べ物を分解する他のリーフモンキーの行動とは異なります。

群れの大きさは2~15頭、平均8頭前後で、大人のオス1頭、複数のメス、子供がいます。日本の動物園などでも有名な「フランソワルトン」の近縁種になり、英名ではHatinh Lutung (ハティンルトン)とも呼ばれます。ベトナム北部に生息するハティンラングールは、以前は中国南部の石灰岩地帯に棲息するフランソワルトンの亜種として考えられてきましたが、今は別の種とみなされています。

正面からみるとフランソワルトンと区別はつきにくいのですが、白いひげが耳の後ろまで伸びているのが特徴です。

今回、幸運にも生まれたばかりの赤ちゃんのハティンラングールを見ることができました。オレンジ色をしていますが、生後数週間でこの色は薄れ始め、2 か月後には暗くなり、3ヶ月までには真っ黒になるそうです。

この子はまだ1ヶ月ほどでしょうか。

毛の色はまだオレンジですが、生まれてすぐにはない白い口髭も少し見えています。

授乳している様子も見られました。

かわいい赤ちゃんのハティンラングールも見ることができた、大満足のサイティングでした。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : January 2024, Tueng Hoa, Quang Binh, Vietnam

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キホオテナガザル Yellow-cheeked Gibbon(カッティエン国立公園、ベトナム)

「歌うサル」と呼ばれるテナガザルの仲間キホオテナガザルに、ベトナム南部のカッティエン国立公園で出会えました。キホオテナガザルはベトナム南部だけでなく、ラオス南部やカンボジア東部の熱帯林にも生息します。

テナガザルの仲間は約20種いると言われていますが、いずれの種も共通して森の中で歌を歌います。オスとメスがデュエットするように交互に声をシンクロさせながら歌い、森の中に済んだ歌声が響き渡ります。歌うことは、群れの縄張りのアピールでもあり、異性を惹きつける効果もあるようです。特に早朝には大きな歌声が聞こえてきます。

観察する我々としては声を頼りに見つけやすいのですが、実際には森の奥深くにいると近づけないため、声はすれど姿は見えずということもあります。

キホオテナガザルは名前の通り、手が長いので樹上での生活に適しています。特に樹冠の高い位置で生活して、危険の伴う木の下の方に降りてくることは少ないです。雲梯のように腕渡りをするブラキエーションで木々を移動しますが、時速50kmを超えることもあるそうです。

キホオテナガザルは一夫一妻で、多くても4頭ほどの子どもからなる小さな家族で暮らしていて、イチジクの実や木の葉などを食べています。

キホオテナガザルはオスとメス、子供、赤ちゃんで色がそれぞれ変わってくるという特徴があります。

大人のオスは全身が黒に、黄色の頬(キホオ)。

大人のメスは全身クリーム色に頭の黒い帽子が特徴になります。

赤ちゃんはオスもメスも全身クリーム色で、お母さんと同じ色をすることで抱っこされたときにお母さんの色に溶け込みます。そして数か月後にオスメス関係なく、一旦オスと同じように頬以外が黒くなります。その後、性成熟が近づくとメスのみまた全身クリーム色に頭の黒い帽子となります。

まとめると
メスの場合はクリーム色→黒色→クリーム色と2回も色が変わり、
オスの場合はクリーム色→黒色と1回色が変わります。

上の写真の子はおそらくクリーム色の赤ちゃんから、少し黒に変わりだしている時期の子供に見えます。

綺麗な歌声を聞きつつ、森を歩く・・・ベトナムの美しい森の朝の時間です。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : January 2024, Cat Tien National Park, Vietnam

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アカアシドゥクラングール Red-shanked Douc Langur(ベトナム)

「霊長類の女王」「世界一美しいサル」と呼ばれるアカアシドゥクラングール Red-shanked Douc Langurです。

ベトナム中部の都市ダナン、その北東のソンチャ半島に位置するソンチャ自然保護区の狭いエリアに、ベトナム全体の40~50%のアカアシドゥクラングールが生息しています。

英名 Red-shanked Douc Langur(赤いスネをしたドゥクラングール)で、ドゥクは古代のベトナム語で猿を意味します。

またベトナム語でVoọc ngũ sắc「5色のラングール」と呼ばれ、顔のオレンジ、髪の黒、ヒゲの白、エリや脛の赤茶色、体の灰色の5色です。


尾の付け根にある白い三角形がとても印象的です。


リーフイーター(葉喰猿)の仲間で、木の葉、特に新芽を好んで採食していました。
牛などの反芻動物と同じように胃が四つに分かれていて、消化酵素をもつ微生物を前胃に共生させて、その力を借りてセルロースを分解しています。
水分も葉から吸収するので、水を飲むために地上に降りることはないと言われます。

 

このアカアシを含め、ドゥクラングール属は3種のみで、クロアシドゥクラングール Black-shanked Douc Langur 、ハイアシドゥクラングール Gray-shanked Douc Langur がいます。いずれも脛(スネ)の色で種を識別できます。
3種全てベトナム中部から南部に生息し、一部が隣接するカンボジア、ラオスにも生息しています。


ベトナム南部のカッティエン国立公園ではクロアシドゥクラングール Black-shanked Douc Langur も見ることができました。


同じくカッティエン国立公園ではピグミースローロリス Pygmy slow lorisも。

他にもキホオテナガザル、ハティンラングール、キタブタオザル、アカゲザル、カニクイザルと霊長類尽くしのベトナムの旅になりました。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : March 2023, Son Tra Nature Reserve & Cat Tien National Park, Vietnam

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