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春の天売島のウトウ – Rhinoceros Auklet on Teuri Island in spring

「ウトウの帰巣」を見に6月に天売島に来られる方が多いのですが、繁殖は3月には始まっています。その頃はまだ雪があり訪問するのはむつかしいのですが、4月に訪問した「ウトウ繁殖地」の様子をご紹介します。

>>春の天売島・ワイルドライフと70年ぶりの郡来(くき)

4月下旬のウトウの繁殖地はイタドリが芽吹いたばかりでウトウの巣が見える状態でした。そのため、ウトウの帰巣が始まると着地して巣穴に入るまでの様子を観察することができます。この時期のウトウは抱卵中のため夜の帰巣は親鳥の「交代」のためです。海に出ていた片方の親鳥が暗闇に帰ってきて、それまで1日中卵を抱いていたもう片方の親鳥は海へと出かけます。そのため育雛時期に比べると見られるウトウの数自体は少ないのですが、巣穴に出入りする様子をゆっくり見られるのはイタドリが巣穴を覆い隠す前のこの時期だけなのです。しかもイタドリは芽吹き始めると日に日に成長してあっという間に巣を覆い隠します。

赤岩展望台にて夕景を見ながら帰巣を待ちます。

ウトウの営巣地です。イタドリが一定の高さで切られたように見えますが、この高さはその冬の積雪の高さを示します。雪に埋まっていた部分だけが残り、雪から出た部分は厳しい風でなくなってしまいました。おかげでウトウの巣穴もよく見える状態です。

満月の夜でした。空気が澄んだ天売島で見る満月は大変美しいものです。

月明りで海に「光の道」ができました。

ウトウたちの帰巣が始まりました ♪♪

着地してしばらくこちらの様子を見ているのか、すぐに巣穴に向かわないウトウ。雛が生まれると、餌を銜えて戻ってきた親鳥は一目散に巣穴に入っていくのでゆっくり観察する余裕はありません。雛もお腹を空かしてまっているし、他の餌を採れなかったウトウに横取りされたりするからです。雛の誕生していないこの時期はゆっくり観察するチャンスです。

巣穴が道路の観察場所に近い個体はこちらの様子をみながら近づいてきます。私たちの足元の道路の下に巣があるようで途中から猛スピードで巣穴に走りこんでいきました。

巣穴にすぐには入らず、ゆっくりとしているウトウも。

二度目の天売島訪問の方には、この季節もお勧めです。さらに運が良ければ「群来(ニシンの産卵)」や渡り鳥たちとの遭遇もある季節です。4月の天売島の様子はこちらのブログをご覧ください>>>春の天売島・ワイルドライフと70年ぶりの郡来(くき)

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : April 2024, Teuri Island, Hokkaido

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天売島、渡り鳥の季節

2024年5月に天売島で観察した野鳥たちの紹介です。

渡り鳥たちにとって忙しいこの時期、天売島では毎日といってよいほど鳥たちの顔ぶれは変わっていきます。今週は島の各地にたくさんいた種でも、次の週には全くいなくなってしまいます。渡りの通り道にある5月の天売島は、毎日の探鳥が本当に楽しみです。

まずは5月初め、桜が満開を迎えるころにやってくる鳥たちです。天売島では5月に桜が咲きます。メジロとウソが懸命に餌を啄んでいました。

メジロ Japanese White-eye(Zosterops japonicus)

ウソ Eurasian Bullfinch(Pyrrhula pyrrhula)

針葉樹林では、オオルリ(Blue-and-white Flycatcher)、ルリビタキ(Red-flanked Bluetail)などの青い色の鳥たちが輝きます。

オオルリ  Blue-and-white Flycatcher  (Cyanoptila cyanomelana)

ルリビタキ  Red-flanked Bluetail  (Tarsiger cyanurus)

少し開けた場所には、シメがいました。

シメ Hawfinch(Coccothraustes coccothraustes)

餌となる種子が多い場所には、マヒワ(Eurasian Siskin)やベニヒワ(Common redpoll)、ベニマシコ(Rosefinch)、アトリ(Brambling)もやってきます。アトリは、島のいたるところで観察できますが島に滞在するのは1週間ほどです。

マヒワ Eurasian Siskin  (Carduelis spinus)

ベニヒワ Common redpoll  (Carduelis flammea)

ベニマシコ  Long-tailed Rosefinch  (Uragus sibiricus)

アトリ  Brambling  (Fringilla montifringilla)

海岸線の水たまりには、アカエリヒレアシシギ(Red-necked Phalaropeの姿が。

アカエリヒレアシシギ   Red-necked Phalarope  (Phalaropus lobatus)

人家の裏にやってきたムラサキサギ(Purple heron)。

ムラサキサギ  Perple heron  (Ardea purpurea )

草原では、カッコウ(Common cuckoo)の声が響き渡ります。

カッコウ   Common cuckoo  (Cuculus canorus)

シノリガモ(Harlequin duck)も海岸線で確認できました。

シノリガモ   Harlequin duck  (Histrionicus histrionicus)

次々に天売島を訪れる野鳥たち!今年はバライロムクドリ(Rosy Starling)もやってきました!

マミチャジナイ   Eyebrowed Thrush  (Turdus obscurus)

コサメビタキ   Asian brown flycatcher  (Muscicapa dauurica)

クロツグミ   Japanese Thrush  (Turdus cardis)

オシドリ   Mandarin duck  (Aix galericulata)

バライロムクドリ   Rosy Starling  (Sturnus roseus)

5月の後半~6月の前半は天売島に渡ってきて繁殖をする鳥たちが恋人探しや巣作りに励み大忙しです。

トラフズク   Long eared owl  (Asio otus)

ノゴマ   Siberian rubythroat  (Calliope calliope)

コムクドリ   Chestnut-cheeked Starling  (Sturnus philippensis)

ヤマシギ   Eurasian Woodcock  (Scolopax rusticola)

ノビタキ   Siberian Stonechat  (Saxicola torquata)

オーストラリアから飲まず食わずでやってくるオオジシギ(Latham’s Snipeなども比較的観察しやすい季節です。

オオジシギ   Latham’s Snipe  (Gallinago hardwickii)

天売島では、渡り鳥たちが多くやってくる5月は、毎日といってよいほど顔ぶれが変わります。美しい鳥たちと運命の出会いを求めてぜひ5月の天売島へ!

 

Photo &Text : Wataru HIMENO

Observation:May 2024, Teuri Island, Hokkaido

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春の天売島のワイルドライフと70年ぶりの群来(くき)

2024年4月15日、北海道の天売島では70年ぶりとなる「群来(くき)」が観察されました。島の人は大喜びで撮影し、そしてニシンを収穫しました。島の宿ではニシンの煮つけと数の子がふるまわれました。今、島にいる人の中にニシンが大漁に獲れた時代を知る人はいません。

春の天売島で観察したワイルドライフをご紹介します。羽幌港から天売島への航路ではオオハム(意外と多い)、ウミスズメ、そしてウトウ、ケイマフリを見ることができました。

天売島では、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ウミスズメ、ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウ、ヒメウの8種の海鳥が繁殖しています。4月、もうその営みは始まっています。黒崎海岸ではウミネコが繁殖し、そのエリアを拡大中。4月20日ごろは交尾(または疑似交尾)があちこちで行われていました。

交尾(または疑似交尾)するウミネコ

ウミネコの繁殖地が拡大傾向にある黒崎海岸

海鳥観察舎からウミウの繁殖地を見ると、もう雛に給餌していました。ウミウは繁殖が早い時期に始まる海鳥ですが、早くなってきている傾向にあるようです。断崖の上の斜面ではオオセグロカモメが繁殖し、交尾している様子も見られました。それにしてもこの付近もたくさんのウトウの営巣地があります。

断崖に営巣するウミウ。ほとんどの巣に雛がいました。

前浜漁港付近ではウミアイサの姿が。ウミアイサは冬鳥として天売島へ渡ってきます。彼らももうすぐ北へと渡って行きます。

ウミアイサのペア

そしてシノリガモ。天売島で一番目にするカモの仲間です。前浜漁港付近やロンババ浜でよく見かけました。シノリガモは年中天売島で見られるそうですが、断然冬の時期が観察しやすく、そして美しいです。

シノリガモ ロンババの浜にて

風が少し穏やかになった日の朝、島の写真家・ 寺沢孝毅さんの操船する小型ボート「ケイマフリ号」で海へ出ました。小型ボートから見たのは、まさに春の天売島の景色。

港を出てすぐに出会ったトド。北海道へは冬場に千島列島方面から回遊してきます。若いオスが1匹でいました。ニシンが訪れるようになった天売島、人だけでなく野生動物も集まります。豊かな海の象徴です。

トドもまもなく北上していきます

ボートから黒崎海岸のウミネコ繁殖地を海から眺め、赤岩方面へ。ウミガラス繁殖地ではウミガラスの姿は見られませんでしたが、付近の海上を4羽のウミガラスが飛んでいるのを見ました。

岩礁にはたくさんのゴマフアザラシたちがいました。乾燥してふわふわしています。

船に注目するゴマフアザラシ

鳴き交わす美しい声が洋上に響きます、ケイマフリの声です。海岸の岩場では求愛のしぐさが愛らしいペアの姿が。

求愛するケイマフリ

営巣する断崖近くの洋上のケイマフリの群れ

愛らしいケイマフリの赤い脚

最後に、西遊旅行の天売営業所(天売島ネイチャーライブ)のスタッフが4月15日に撮影した「群来(くき)」の様子です。

「群来」で白濁したロンババの浜

産卵は春に起こり、水深 1m 以下の浅い海でメスが卵を海藻に産み付け、オスが放精して受精させます。この放精によって海水が白濁する現象を群来(くき)と呼びます。

海藻に卵を産み付けるニシン

お世話になった萬谷旅館さんで出たニシン料理。新鮮なニシンは大変美味しいものでした。

ニシンの煮つけ

ニシンの卵、「数の子」

私自身、アラスカのシトカまでニシンの大産卵に集まるワイルドライフを求めて行き、帰ってきたばかりでした。アラスカでは“Herring Run”の名のもと、シトカの海に集まるザトウクジラ、コククジラ、ハクトウワシ、トドなど生き物と遭遇するワイルドライフツアーが大人気です。

日本の「群来」もいつかHokkaido’s Herring Runとして注目を集める日が来るのでしょうか。いやいや、その前に、まず毎年ニシンが産卵に来てくれる豊かな海を取り戻すことが大切です。来年もニシンが戻ってきてくれることを願います。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Photography of Herring spawning : Midori KUDO

Observation : April 2024, Teuri Island , Hokkaido

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