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オグロヌーの出産 Blue Wildebeest Calving(ンドゥトゥ・タンザニア)

ンゴロンゴロ保全地域のンドゥトゥ地区にて、オグロヌー(Blue Wildebeest)の出産に立ち会うことができました。

ンドゥトゥはセレンゲティ国立公園の南に隣接するエリアで、ンゴロンゴロ保全地域に属しています。国立公園ではないため、道なき道を自由に走るオフロードサファリが唯一許されており、野生動物との距離がぐっと近くなる場所です。

朝焼けとともにサファリ開始し、車を進めていくとヌーの大群が集まるエリアに到着しました。少し待って観察していると、そのヌーの群れは次第にどんどんと周りからヌーの群れがさらに集まっていき、大きなヌーの群れへと増えていきました。地平線を埋め尽くすほどのヌーの群れ。これが、年に一度の出産シーズンの光景です。

そのとき、1頭のヌーに目が留まりました。ちょうどお尻から子供のヌーの足が既にはみ出しています。出産間近です。

固唾を呑んで見守りましたが、なかなか産まれてこないので本当に大丈夫なのか心配になってきました。仲間のヌーも顔を突き合わせて心配そうに寄ってきます。
通常ヌーの出産は数分で終わるそうですが、この時は難産でした。メスのヌーは立ったまま出産を続け、ぬるりと濡れた体が地面に滑り落ちた瞬間、車内に小さな歓声が上がりました。生まれ落ちて1分もしないうちに、子供のヌーはもう頭を持ち上げ、細い脚を震わせながら立ち上がろうともがき始めたのです。5分も経たないうちによろよろと立ち上がり、10分もすれば母親の後を追って歩き始めました。

【ヌーの出産動画】

動画の中でも子供のヌーが、母親の匂いを嗅いでいます。母親の匂いを素早く記憶し、数万頭の群れの中で母親を見失わないようにします。それでもなお、生後最初の数日間は最も危険な時期であり、初年度に30~40%の子供のヌーが捕食者や病気、移動の過酷さによって命を落とすと言われています。

ヌーの子どもは「早成性(プレコーシャル)」と呼ばれ、生まれた時点ですでにかなり発達した状態で誕生します。メスのヌーは立ったまま出産し、子供は5分で立ち上がり歩き出すと言われています。この驚異的な成長速度は、サバンナという過酷な環境で生き残るためです。群れは出産の場に長くとどまることはできません。ヌーたちは周辺の草はどんどん食べ尽くしてしまうのと、捕食者が常に周囲を徘徊しているからです。この時も近くにブチハイエナが一頭だけでしたが、近くでヌーの群れを眺めていました。

ヌーはこの期間に50万頭も一気に産まれると言われています。もし出産が数ヶ月にわたって分散していたら、ライオン、ハイエナ、チーター、ヒョウなどの捕食者は、常に少数の無防備な子供のヌーを効率よく狩ることができてしまいます。ところが、1日あたり8,000頭以上が一斉に生まれることで、捕食者は物理的に食べきれなくなり、結果として大多数の子供のヌーが生き延びるのです。「捕食者飽和(プレデター・スワンピング)」と呼ばれる生存戦略です。

出産場所にンドゥトゥ地区が選ばれるのにも理由があります。太古のンゴロンゴロ・クレーターの大噴火で飛ばされた火山灰がこの地に堆積し、雨季になるとミネラル豊富で柔らかい草が生えます。この栄養価の高い草は、授乳中のメスのヌーと生まれたばかりの子供のヌーにとって理想的な食料となるのです。また、見通しの良い平坦な地形なので、捕食者を早めに発見できます。

セレンゲティの生態系を語る上で欠かせないのが、約150万頭のオグロヌーを中心とした草食動物の大移動です。ヌーはシマウマやガゼルとともに、年間を通じて時計回りのルートで草原を巡ります。
1月~3月はセレンゲティ南部からンドゥトゥ地区にかけてのエリアに集結し、出産シーズンを迎えます。子育てを終えて4月~6月には西回廊を経由して北上を開始。7月~9月にはセレンゲティ北部からケニアのマサイマラ国立保護区に滞在、10月~11月に再びセレンゲティ南部へと戻っていきます。この大移動の総距離は約800~1,500kmにも及びます。雨が降れば新しい草が芽吹く。その草を追って、太古から続く壮大な旅が繰り返されるのです。

ヌーはセレンゲティの生態系における「キーストーン種」(中核種)です。通常、キーストーン種は捕食者であることが多いのですが、セレンゲティでは草食動物であるヌーがその役割を果たしています。ヌーの個体数の増減は、ライオンやハイエナなどの捕食者の生息数はもちろん、草原の植生、樹木の再生、さらにはキリンなど他の草食動物にまで連鎖的な影響を与えます。また、大移動の途中でマラ川などで溺死するヌーの遺体は、川の生態系にとって貴重な栄養源となっています。骨が完全に分解されるまでには約7年かかり、ゆっくりとリンを放出し続けることで、水生植物や魚類の成長を長期にわたって支えているのです。

ンドゥトゥの大平原で目撃したヌーの出産は、サファリの中でも最も心に残る体験のひとつとなりました。生まれ落ちた子供のヌーが震える脚で懸命に立ち上がろうとする姿。その横で静かに見守るメスのヌー。そして遠くの地平線には、次の獲物を狙うハイエナの姿。まさに生命の循環を目の当たりにできる特別な体験でした。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Feb 2026, Ndutu, Ngorongoro Conservation Area, Tanzania

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インドサイ Indian rhinoceros(カジランガ国立公園)

インドのアッサム州にあるカジランガ国立公園で、鎧(ヨロイ)のような分厚い皮膚が特徴のインドサイに出会えました。その見た目から「ヨロイサイ」とも呼ばれます。 陸上の哺乳類では世界で最も皮膚が分厚く硬いといわれ、その厚さは最大4cmにも及びます。

英語では「大きな一角のサイ(Greater One-Horned Rhinoceros)」や「インドのサイ(Indian Rhinoceros)」と呼ばれます。2本の角を持つアフリカのシロサイやクロサイとは異なり、角が1本だけなのがインドサイの特徴です。同じアジアのジャワサイも角は1本で、こちらは「小さい一角のサイ(Lesser One-Horned Rhinoceros)」と呼ばれています。


(↑写真は角の長い個体です)
角は一生伸び続け、オスなどの長い個体では60cm以上になることもあります。 1900年代初頭には絶滅の危機に瀕していたインドサイですが、現在は回復傾向にあります。2022年の調査では個体数は4,014頭とされ、そのうち全体の約65%(2,613頭)が、ここカジランガ国立公園に密集して生息しています。

今回は2日間だけのサファリでしたが、延べ100頭近くのインドサイに出会えました。上の写真の時は湖の対岸で距離はありましたが、数えてみると一度に37頭ものサイを一望できました。

サファリ中には親子のインドサイも見られました。インドサイは繫殖期のカップルと子育て中の母子を除いて、基本的に単独で暮らします。


親子で仲良く草を食べます。


ゴツゴツしたインドサイも、子供はやはり可愛いですね。

3頭が一度に集まるシーンもありましたが、特に争いは起きず仲良く草を食べていました。オスは縄張り意識が強く戦うこともあるそうですが、メス同士は比較的穏やかな関係を保っているようです。

カジランガ国立公園では、早朝に「エレファント・サファリ(ゾウに乗ってのサファリ)」も楽しめます。


ジープサファリとは違い道路以外も進めること、そしてサイに近づいても警戒されにくいのがゾウ・サファリの魅力です。

早朝のサファリだったため、まだ眠そうに横になっているインドサイに遭遇しました。眠っているところを起こしてしまい、可哀想なことをしました。

シロサイやクロサイには泳ぐイメージがあまりありませんが、インド有数の大河・ブラマプトラ川流域で暮らすインドサイは泳ぎが非常に得意です。 よく「カバは泳げず、水底を蹴って進む」と言われますが、観察しているとインドサイはしっかりと体を浮かせて泳いでいました。


↑の写真で濡れているところを見ると、目耳鼻に水が入らないように泳いできた事がわかります。

背中にアマサギを乗せている個体もいました。サイが歩くときに草むらから飛び出す虫を、背中の上から狙っているのです。

カジランガのガイドさんによると、インドサイも特定の場所で排泄する「ため糞」の習性があるそうです。

インド政府による保護活動が進み、個体数も年々増えているとのこと。 ブラマプトラ川のほとりで力強く、そしてのんびりと暮らすインドサイを見ることができ、大満足のサファリとなりました。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Nov 2025, Kaziranga National Park, Assam, India

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“スノーモンキー”として知られる地獄谷野猿公苑のニホンザル

長野県の上林温泉からほど近い地獄谷野猿公苑は、日本固有のニホンザルを間近に観察・撮影できる場所として世界的に“スノーモンキーパーク”として知れ渡り、今では訪れる観光客の8割以上は外国人。

第二次大戦後、この地域では林業が盛んに行われ、ニホンザルたちが生息する地獄谷周辺の山々も大きな影響を受けました。山林の伐採により生息地を失ったニホンザルは人間の暮らす集落へと降りてはりんご農場を荒らす様になったのです。この事がきっかけで、ニホンザルたちが駆除されてしまう事を懸念した地獄谷野猿公苑の初代苑長・原荘悟氏は、食べ物が十分にあれば彼らも畑を荒らす事はないだろうと考え、人里から離れた山の奥で彼らへ餌付けを始めたのです。警戒心の強いニホンザルの群れを慣れさせるまでに3年の歳月を要したそうですが、原氏の努力は着実に成果を上げ、1964年の地獄谷野猿公苑の開苑を迎える事になりました。

雪深い冬の間は山の中で食べ物を見つける事が困難なため、たくさんの野生のニホンザルがこの地獄谷野猿公苑に集まります。当初、人里に彼らを近づけない様にするために餌付けを始めたため、この地獄谷野猿公苑に行くには登山道を30分ほど登っていかなければなりません。冬の登山道は非常に滑りやすく、簡易アイゼンは必須アイテムです。

地獄谷野猿公苑へのトレイル

地獄谷野猿公苑を有名にしている最も大きな要素は“温泉に入るニホンザル”です。人間を除く霊長類の仲間の中で、ニホンザルは最も北に生息する種。雪深い寒冷地に生息する霊長類自体が世界的に非常に珍しいのですが、ニホンザルの生息域は長野よりもさらに北の青森県にまで及びます。ここ地獄谷には温泉が湧き出ることもあり、公苑内にはサルたち専用の石造りの浴槽が設置されています。冬の寒い日に多くのニホンザルが温泉につかり、まるで人間と同じような気持ちよさそうな表情を浮かべる事は大変興味深いものです。

ニホンザルの浸かる石造りの温泉

温泉に入るニホンザル

気持ちよさそうな表情を浮かべて温泉につかるニホンザル

気持ちよさそうな表情のニホンザル

4月下旬から6月にニホンザルは出産期を迎えますが、ちょうど初めての冬を迎える小さな子供のサルもたくさん観察することができます。好奇心旺盛で活発に動き回る子供のサルたちはとても愛らしく、ずっと見ていても飽きることがありません。また、子供を寒さから守るためしっかりと抱きかかえている母ザルの姿もとても印象的でした。

愛情いっぱいの親子のニホンザル

親子のニホンザル

好奇心旺盛なニホンザルの子供

ニホンザルの子供

苑内の見どころはこの温泉だけではありません。山の斜面や苑内を流れる横湯川沿いでも数多くのニホンザルが観察でき、毛づくろいをしたり、雪の中の餌を探したり、時には餌を巡って喧嘩が始まったりと彼らの様々な姿を観察することができます。人間に慣れているため非常に近くで観察や撮影ができる点も大きな特徴で、苑内のルールでは“1m”以内に近づく事が禁止されています。

ニホンザルが見せる様々な姿

ニホンザル

ニホンザル

ニホンザル

世界からの注目を集めた最初のきっかけは1970年、アメリカの「LIFE」誌に掲載された事。その後、1998年の長野オリンピックの際に世界中から集まったメディアによってこの地獄谷野猿公苑の存在が多くの国々に伝え、広まったのでした。今では家族連れやカップルなどの観光客から本格的な写真家まで様々な人々がこの地を訪れ、さらにその魅力を世界に発信しています。

 

Photo & Text : Kengo Yonetani

Observation : Feb 2025, Jigokudani-Onsen, Nagano, Japan

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スヴァールバルトナカイ Svalbard Reindeer(スピッツベルゲン島)

スピッツベルゲン島で出会った「スヴァールバルトナカイ」。

トナカイは北極圏周辺のみに分布しますが、スヴァールバルトナカイは名前の通りスヴァールバル諸島の固有亜種です。トナカイの中で最も小さな亜種で、遺伝的な隔たりが大きいので別種とする研究もあるようです。

トナカイはシカ科で唯一、古くから家畜化された動物ですが、スヴァールバルトナカイは野生個体群で、人間による放牧は行われていません。

丸みを帯びた体形で、ずんぐりとした体形と短い足が、スヴァールバルトナカイの特徴です。

通常、動物は高緯度になるほど体が大きくなる傾向(ベルクマンの法則)があるので、スヴァールバル諸島の場合は体の大きなトナカイとなりそうですが、スヴァールバルトナカイは例外で、島の限られた餌資源に適応し小型化(島嶼化)したようです。

7月は毛の生え代わり中で冬毛と夏毛が混じっています。冬には分厚い毛皮をまとい、夏は短くすっきりとした姿に変わります。


頭には立派な角がありますが、トナカイはシカ科で唯一オスもメスも角を持っています。メスが冬に子育てする際、雪を掘り起こして子供に餌を与える必要があるのようです。訪れた7月はまだ角袋です。角の表面は皮膚と産毛で覆われていています。


驚くべきは、トナカイは哺乳類で唯一「季節によって目の色が変わる」こと。夏は濃い茶色の瞳ですが、冬の極夜になると深い青色に変わります。これは光量が極端に少ない環境で、少しでも光を取り込みやすくするための適応だと考えられています。

地面に顔を近づけて苔や地衣類を食べていました。冬は雪をかき分け、凍った地面の下から掘り出します。

上の写真は今年の春に生まれたばかりの子どものスヴァールバルトナカイです。

トナカイのメスとその子ども。冬毛から夏毛に変わる換毛期のため、メスのトナカイはそこら中に毛をばらまいています。

雪解けの進んだ初夏のスピッツベルゲン島で、苔や地衣類を一心に食べる姿を見かけました。短い足でゆっくりと斜面を移動し、こちらをちらりと見ると、また草を食べ続けます。厳しい北極の冬を越えたとは思えないほど、穏やかな表情でした。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jul 2025, Nylondon & Ankerfjella, Spitsbergen, Svalbard, Norway

北極海に浮かぶ野生動物の聖域 スピッツベルゲン北極圏の野生動物・野鳥の観察・撮影をチャーター船で楽しむ10泊11日の究極のワイルドライフクルーズ

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トビウサギ South African spring hare (オカバンゴデルタ・ボツワナ)

アフリカのカンガルーとも呼ばれる「トビウサギ(South African spring hare)」に、ボツワナのオカバンゴデルタで出会うことができました。
和名・英名ともに「ウサギ」「hare」とついていますが、実際にはウサギ目ではなく、ネズミの仲間である齧歯目に分類される動物です。

ウサギのように大きな耳や、後脚だけを使って跳ねる姿を見ると、「ウサギ」と呼びたくなるのも納得です。
ジャンプの際には大きな後ろ脚と長い尾でバランスをとりながら、まるでカンガルーのようにぴょんぴょんと跳ねて移動します。

前足には鋭い爪があり、これを使って穴を掘ります。サバンナの地下にトンネル状の巣穴を作り、群れで生活しています。完全な夜行性のため昼間はこの巣穴で休み、真っ暗になると外に出てきて活動を始めます。

そのため昼間のサファリでは一切姿を見かけませんが、ナイトサファリになると、一気にトビウサギたちが地上に現れ、活発に動いている様子が観察できます。

なお、ケニアやタンザニアで見られるのは別種の「ヒガシトビウサギ」です。
現生のトビウサギ科は、この南部アフリカに生息する種と、ヒガシトビウサギの2種だけで、他の種はすでに絶滅しています。


彼らは植物の根や新芽を食べる草食性で、四つん這いでエサを探しますが、食べるときには後ろ脚と尾を地面につけて体を支え、前足で器用にエサをつかんで口に運びます。

オカバンゴデルタでは、トビウサギのほかにもナイトサファリならではの出会いがありました。

赤茶色の毛が首の後ろにあるのが特徴の「アカクビノウサギ」、こちらは本当にウサギの仲間です。
個人的に大好きなガラゴ(ブッシュベイビー)も木の中で見つけましたが、すぐに幹の陰に隠れてしまい、写真には収められませんでした。

ほかにも、アフリカ最大のフクロウである「クロワシミミズク」、骨をかじる「ブチハイエナ」や、吠えあう「ライオンの兄弟」など、昼間とは違う野生動物たちの姿を観察することができました。

昼とはまるで別世界のオカバンゴデルタ。暗闇に潜む動物たちの姿は観察するほどに奥深く、夜ならではの発見に満ちていました。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Mar 2025, Okavango delta, Botswana

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オオミミギツネの家族(クワンド・ボツワナ)

ボツワナ北部、ナミビアのカプリビ回廊との国境沿いに広がるクワンド川流域にて「オオミミギツネの家族」と出会いました。
クワンド川流域は湿地や草原に富んだ野生動物の宝庫で、今回の観察地もその川近くのサバンナ地帯でした。

それは帰国当日の早朝のこと。
それまでの観察でも何度かオオミミギツネの姿は確認できたものの、いつもすぐに茂みに逃げ込んでしまい、なかなかじっくりと観察することができませんでした。
ところがこの日は様子が違い、開けた場所でのんびりと過ごすオオミミギツネの群れに出会えたのです。

しかも、その数は6頭。
通常、サファリで目にするのは2頭のオオミミギツネが多いのですが、今回は群れで、互いにリラックスした様子を見せていました。

オオミミギツネは東アフリカと南部アフリカで亜種が分かれており、今回見たのは南アフリカの亜種(Otocyon megalotis megalotis)です。この南部の亜種は、一夫一婦制でつがいとその子どもたちが家族単位で生活する習性があります。

オオミミギツネは一度の出産で4〜6匹の子を産みますが、母親には乳首が4つしかないため、4匹までしか育たないとされています。

今回の群れも、親2頭とその子ども4頭からなる家族だったのかと思います。

観察した子どもたちはすでにかなり成長しており、大人とほぼ同じサイズか若干小さい程度に見えました。

ボツワナでは、オオミミギツネの出産は10月~12月とされており、今回の3月の観察時には子どもたちは生後4~5ヶ月ほど。生後5~6ヶ月で家族集団を離れるといわれているため、もしかするとこれは子どもたちが親元で過ごす最後の数日だったのかもしれません。

朝の挨拶なのか、すれ違いざまにお互いを舐めあう子供たち。

家族のきずなを感じさせる穏やかな時間の中、のんびりとした時間を過ごす親子の姿がとても印象的でした。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Mar 2025, Kwando concession, Botswana

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ヒメホタルの乱舞

和良川のオオサンショウウオとホタル(2)

ヒメボタルの乱舞

ヒメボタルの乱舞

和良川の支流や山間部にかけて観賞できるホタルはゲンジボタル(源氏蛍)とヒメボタル(姫蛍)の2種類です。みなさん、ホタルは皆、川辺に生息していると思っていませんか?日本に生息するホタルは約50種類いますが川辺に住む蛍は3種(ゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタル)。この3種のみが幼虫時を川で過ごし、カワニナなどを餌にし、成虫になると川辺で光って繁殖行動をします。そのほかの種は山蛍と呼ばれ、山の中でカタツムリなどを捕食して成虫になります。日本に住むホタルのほとんどが山蛍なのです。

ゲンジボタルは午後7時30分以後に光りだしますので、その前に良いポイントに行き待ちます。だんだんと光り初め、やがて山全体と光りがシンクロしたような光景が広がります。この幻想的な光景は是非ご覧いただきたいです。午後8時過ぎにピークを迎え、徐々に光りが収まっていきます。ですが、完全に光が消えるわけではなく、深夜まで光り続けます。

ゲンジボタルの乱舞

ゲンジボタルの乱舞

ゲンジボタルの乱舞

ゲンジボタルの乱舞

午後9時頃にゲンジボタルの観賞を終え、ヒメボタルの観賞に向かいます。このように、一度に2種類の蛍を見れる場所は日本中でもここだけではないのでしょうか。

1時間程でヒメボタルの観察ポイントに着きます。ヒメボタルのポイントは山の中で杉林、雑木林、竹林などですが、これらの場所にはヒルなども生息しているので対策もしなければなりません。

発光のピークをむかえるヒメボタル

発光のピークをむかえるヒメボタル

ゲンジボタルの発光は線のように2秒光って2秒休む(東日本は4秒光って4秒休む)のに対して、ヒメボタルは1秒に2回、フラッシュのように光ります。光跡はロット状になり30秒で60回も光を放ちますのでゲンジボタルとヒメボタルの光跡を見ると線と点になります。

ヒメボタルが多く生息する場所ではシンクロして山が黄色く染まる感じになりますが、岐阜のヒメボタルは深夜型といって夜22時~2時にかけて光りますので、この地域では両方の蛍が観賞できるのです。

2種類の蛍を観賞して宿に戻ると時刻はもう次の日になっていますが、貴重な体験を味わう事ができます。

ハコネサンショウウオ

ハコネサンショウウオ

アカハライモリ

アカハライモリ

日程によっては川の源流域に行って小型サンショウウオ(ハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオ)の幼生を探したり、渓流の魚で西日本にしか生息してないアマゴ、渓流の大食い岩魚や水生昆虫、爬虫類など、目についた生き物を紹介しています。

日本各地、世界各地から多くの方が来てくださり、再訪されるゲストも多くなってきました。今後共皆様に喜んで頂けるよう、和良川のツアー運営に携わっていきます。このフィールドで皆様にお会い出来る日を楽しみにしております。

和良川でお待ちしています!

和良川でお待ちしています!

Text & Photo : Yoshihiro ITO

★関連ツアー:水中写真家・伊藤義弘さん同行 和良川のオオサンショウウオとホタルの乱舞

プロフィール:伊藤 義弘 (いとう よしひろ)
水中写真家、ダイビングインストラクター。西表島での体験ダイビングで海に目覚め、インストラクターの資格を取得。世界各地の海と川を潜る中で、豊かな生態系を有するふるさと岐阜県の川に魅了される。誰もやっていない分野のガイドになる決意をし「伊藤潜水企画」を設立。川に住む生きものをテーマに、川の生きもの案内人として観察会等を企画運営。

モリイノシシ Giant Forest Hog (ウガンダ)

赤道直下の国ウガンダのクイーンエリザベス国立公園にて、珍しい「モリイノシシ」の家族に出会いました。

クイーンエリザベス国立公園の入り口すぐそばにいて、「ぬた場(沼田場)」で体に泥をこすり続けていました。

「ぬた打ち」という行動で身体に付いた寄生虫や汚れを落とすために、泥に身体をこすりつける行動のことをいいます。体を冷やす効果や虫除けの効果もあるそうです。
(※もだえ苦しむことを意味する「のたうち回る」の語源とも言われ、人が苦しむ動きがぬた打ちの動きとが似ていることからついた言葉のようです。)

モリイノシシはアフリカの赤道近辺で、森林と草原が混在する地域にのみ棲息する珍しいイノシシです。6~14頭程度で群れを作りますが、生息密度が低く臆病でもあるためサファリで出会う事はあまりありません。食肉を目的とした密猟のために個体数が減少していることにも出会いにくい原因の一つです。

モリイノシシは世界最大級のイノシシとしても知られ、アメリカ大陸のペッカリーやインドネシアのバビルサなどを含めても、モリイノシシが世界最大で体重は280kgにもなります。アフリカのサファリでよく見られるイボイノシシや、日本のイノシシはどちらも通常は50-150kg程度で、モリイノシシの半分程度です。

オスは成長すると、眼の脇にお皿のような大きなイボが発達します。上の写真の子はまだ若いからか膨らみは小さかったです。オス同士でこの皿のようなイボをぶつけ合うこともあります。

モリイノシシは夜行性と言われますが、今回観察ができたのは昼の2時ごろでした。人間から保護されている地域では昼行性の場合もあるようです。どちらかというとそれが本来の姿なのかもしれません。

7頭のモリイノシシの群れの中に、2頭の赤ちゃんもいました。

足の裏が可愛いです。

暇さえあれば2頭でじゃれあっています。

泥浴びをした後にもじゃれあう2頭。

家族そろってぬた場で泥浴びをするモリイノシシの家族団らんをのんびりと観察できました。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Aug 2024, Queen Elizabeth National Park, Uganda

★西遊旅行のウガンダ・ルワンダのワイルドライフの旅を発表しました!
ウガンダ・ルワンダ マウンテンゴリラ&ゴールデンモンキートレッキング

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エレファント・ハイド(マシャトゥ動物保護区・ボツワナ)


ボツワナ東端のマシャトゥ動物保護区にて、水場近くに設置された観察小屋「エレファント・ハイド」に入ってきました。マシャトゥ動物保護区はボツワナ・南アフリカ・ジンバブエの3ヶ国の国境近くにあります。

正式にはマテボレ・ハイド(Matebole Hide)といい、世界中のフォトグラファーの憧れのハイドです。


このハイドが素晴らしいのは「水場のすぐそばで半地下にあるハイド」という点で、通常のジープサファリとは違い目線の高さを野生動物と合わせられます。動物が近づいてきた場合には、下から煽る写真も撮ることができます。普通のサファリカーからは絶対に撮れない写真が撮れます。

ハイドは水場のすぐ横にあり、コンテナが地下に埋め込まれていて、階段を下りてその中に入っていきます。

枝などを置くことで、動物たちからあまり気にならないように配慮されています。


撮影用に横に長い窓が設置されていて、窓が地表とほぼ同じ高さになっています。

コースターのような形状の雲台も窓のそばに設置されています。
豆袋(ビーンバッグ)も。

この日は、朝早く日の出の直後からハイドに入りました。
最初は動物たちが水場に一切いないので大丈夫かと不安になりましたが、待っているとすぐにチャップマンシマウマが現れました。


慎重に近づいてきますが、肝心の水場にはなかなか近づきません。他に動物がいないからか警戒しているのかもしれません。
ただ一度飲む動物が現れると、その後は続々と草食動物たちが順番にやってきます。

イランド

クドゥ(メス)

競うように水を飲むインパラ

オグロヌー

コウヨウチョウの群れ

マシャトゥは「ランド・オブ・ジャイアンツ Land of the Giants」とも呼ばれ大型野生動物が多い保護区として知られています。ゾウの個体数は約1000頭と私有保護区としては世界最大級。この水場には入れ替わりで、毎回違うゾウの群れが現れます。

通常のサファリドライブ用に持っていった望遠レンズ(100-400mm)だと広角の100mmでも近すぎて、ハイド付近に来るゾウなどの大型動物は写しきれません。
ゾウが複数匹来た場合などは超広角レンズがないと全ては入りません。


まだ鼻をうまく使えない子供のゾウが、口を直接つけて水を飲んでいました。

泥まみれの子供のゾウ


↑は暑い時間帯となり、水浴びを始めたゾウの動画です。


かなり近くで水浴びをしたためハイドの中まで泥が飛び散って入ってきました。


今回は幸運なことにブチハイエナが水場まで来てくれました。その間は他の草食動物たちは来なくなってしまいます。

若い個体で好奇心が旺盛なのか、ハイドにいる人間が気になるのかかなり近くまで接近してきます。


ハイドの穴からこちらを覗いてきます。


さすがにこの距離までブチハイエナに近づかれると、こちらもかなりドキドキしました。


普段はそれほど可愛いとは思っていなかったブチハイエナも、この距離と角度で見るととても可愛かったです。

運が良いとライオンやチーター、ヒョウなどが現れることもあるとのこと。
次回はぜひ大型肉食獣をこの角度と距離で見てみたいです。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : May 2023, Mashatu Game Reserve, Botswana

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マウンテンゴリラ Mountain gorilla(ヴィルンガ山地・ルワンダ)

今年 (2024年) の3月にウガンダのブウィンディ原生国立公園でマウンテンゴリラを観察、そして8月にはルワンダのヴィルンガ山地(ヴォルケーノ国立公園)でマウンテンゴリラと再び出会うことができました。

今回、私たちが出会えたのは世界で最も有名なマウンテンゴリラとも言われている「タイタス(Titus)」のグループでした。

タイタスグループのゴリラたち

野生ゴリラ研究の開拓者であるダイアン・フォッシーの調査対象としても有名なグループで、フォッシーのお気に入りのゴリラであるディジットの甥っ子にあたるのがタイタスです。また日本のゴリラ研究の第一人者である山極壽一さんが2年間タイタスと一緒に過ごしていたそうです。その他ドキュメンタリーなども多数出ていたタイタスですが、2009年に亡くなってしまったので、今回出会ったのはタイタスの子供にあたるPato(パト)とUrwibutso(ウルウィブツォ)の2頭がシルバーバックになります。

ヴィルンガ山地のシルバーバック

ブウィンディ原生国立公園とヴィルンガ山地では同じマウンテンゴリラではありますが、見た目がだいぶ違います。それぞれ「ブウィンディ個体群」と「ヴィルンガ個体群」と呼ばれ、一時期は両者を別の亜種とすることも検討されていたほどです。

ブウィンディ個体群は主にウガンダに生息し、ヴィルンガ個体群はコンゴ・ルワンダ・ウガンダの三ヶ国国境にまたがって生息しています。

ヴィルンガの個体は全体的に体毛が濃く長い、特に腕の毛が長いです。
逆にブウィンディの個体は体毛が薄く短めです。
(↓2024年3月のブウィンディの写真)

毛の薄いブウィンディのマウンテンゴリラ

ブウィンディの標高1,200m~2,600mとヴィルンガの標高2,200m~3,600mと生息する標高に違いがあります。標高の高いヴィルンガの方が気温が低いため、毛が長くなっていると考えられます。

ふさふさの毛が生えるヴィルンガの子供ゴリラ

今回出会った「ヴィルンガ個体群」はマウンテンゴリラに分類されていますが、最近の遺伝子の研究によると、同じマウンテンゴリラのブウィンディ個体群よりも別の亜種であるヒガシローランドゴリラ(グラウアーゴリラ)と近い関係にあると言われています。

木の芽を食べる赤ちゃんゴリラ

標高の低いブウィンディにはさまざまな樹木や植物が生い茂る熱帯雨林でフルーツも豊富、対して標高の高いヴィルンガはフルーツが少ない木が生い茂るだけです。そのためブウィンディの個体は果実食と葉食の組み合わせ、ヴィルンガの個体は葉食中心となっています。そのことが顔にも表れていて、固い繊維質の葉や茎を食べるヴィルンガの個体の方が顎がしっかりとしています。

顎がしっかりしているヴィルンガのゴリラ

鼻にも違いがあり、ヴィルンガのゴリラの鼻の穴は角ばって大きく、鼻筋に割れ目が見られます。ブウィンディのゴリラの鼻は丸みを帯びて小さいようです。また人間の指紋と同じようにゴリラの鼻紋は生涯変わらないので個体識別に使われます。

子供のゴリラが大きくなっても変わらない鼻紋

制限時間はウガンダのブウィンディ原生国立公園と同じ1時間だけです。
あっという間に観察の時間が終わってしまいました。

お昼寝するゴリラたちともう少し一緒の時間を過ごしたかったです。


帰り道は美しい姿のビソケ山(3,711m)をバックに歩いて帰ります。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : Aug 2024, Volcanoes National Park, Rwanda

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