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マウンテンゴリラ Mountain gorilla(ヴィルンガ山地・ルワンダ)

今年 (2024年) の3月にウガンダのブウィンディ原生国立公園でマウンテンゴリラを観察、そして8月にはルワンダのヴィルンガ山地(ヴォルケーノ国立公園)でマウンテンゴリラと再び出会うことができました。

今回、私たちが出会えたのは世界で最も有名なマウンテンゴリラとも言われている「タイタス(Titus)」のグループでした。

タイタスグループのゴリラたち

野生ゴリラ研究の開拓者であるダイアン・フォッシーの調査対象としても有名なグループで、フォッシーのお気に入りのゴリラであるディジットの甥っ子にあたるのがタイタスです。また日本のゴリラ研究の第一人者である山極壽一さんが2年間タイタスと一緒に過ごしていたそうです。その他ドキュメンタリーなども多数出ていたタイタスですが、2009年に亡くなってしまったので、今回出会ったのはタイタスの子供にあたるPato(パト)とUrwibutso(ウルウィブツォ)の2頭がシルバーバックになります。

ヴィルンガ山地のシルバーバック

ブウィンディ原生国立公園とヴィルンガ山地では同じマウンテンゴリラではありますが、見た目がだいぶ違います。それぞれ「ブウィンディ個体群」と「ヴィルンガ個体群」と呼ばれ、一時期は両者を別の亜種とすることも検討されていたほどです。

ブウィンディ個体群は主にウガンダに生息し、ヴィルンガ個体群はコンゴ・ルワンダ・ウガンダの三ヶ国国境にまたがって生息しています。

ヴィルンガの個体は全体的に体毛が濃く長い、特に腕の毛が長いです。
逆にブウィンディの個体は体毛が薄く短めです。
(↓2024年3月のブウィンディの写真)

毛の薄いブウィンディのマウンテンゴリラ

ブウィンディの標高1,200m~2,600mとヴィルンガの標高2,200m~3,600mと生息する標高に違いがあります。標高の高いヴィルンガの方が気温が低いため、毛が長くなっていると考えられます。

ふさふさの毛が生えるヴィルンガの子供ゴリラ

今回出会った「ヴィルンガ個体群」はマウンテンゴリラに分類されていますが、最近の遺伝子の研究によると、同じマウンテンゴリラのブウィンディ個体群よりも別の亜種であるヒガシローランドゴリラ(グラウアーゴリラ)と近い関係にあると言われています。

木の芽を食べる赤ちゃんゴリラ

標高の低いブウィンディにはさまざまな樹木や植物が生い茂る熱帯雨林でフルーツも豊富、対して標高の高いヴィルンガはフルーツが少ない木が生い茂るだけです。そのためブウィンディの個体は果実食と葉食の組み合わせ、ヴィルンガの個体は葉食中心となっています。そのことが顔にも表れていて、固い繊維質の葉や茎を食べるヴィルンガの個体の方が顎がしっかりとしています。

顎がしっかりしているヴィルンガのゴリラ

鼻にも違いがあり、ヴィルンガのゴリラの鼻の穴は角ばって大きく、鼻筋に割れ目が見られます。ブウィンディのゴリラの鼻は丸みを帯びて小さいようです。また人間の指紋と同じようにゴリラの鼻紋は生涯変わらないので個体識別に使われます。

子供のゴリラが大きくなっても変わらない鼻紋

制限時間はウガンダのブウィンディ原生国立公園と同じ1時間だけです。
あっという間に観察の時間が終わってしまいました。

お昼寝するゴリラたちともう少し一緒の時間を過ごしたかったです。


帰り道は美しい姿のビソケ山(3,711m)をバックに歩いて帰ります。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : Aug 2024, Volcanoes National Park, Rwanda

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ハティンラングール Hatinh Langur(クアンビン省、ベトナム)

ベトナムのクアンビン省トゥエンホアにて出会った、希少な霊長類ハティンラングールです。

ハティン・ラングールは、ベトナムとラオスに固有のサルで、全身が真っ黒、唇の上から耳に続く白い口髭と、頭頂の逆立った冠毛が特徴です。クアンビン省の隣のハティン省の名前がついたサルですが、実際にはハティン省にはほとんど生息していないそうです。発見した研究者が地名を勘違いしたと言われています。

ハティンラングールを観察するためには、地元の農家の人の手助けが必要になります。畑のそばにある石灰岩の岩山に生えている森の中にハティンラングールが出てくるため、畑で働く農家の人からハティンラングールの情報を聞いて、情報のあった場所まで、農道やあぜ道を歩いて向かっていきます。

最初に到着した場所ではハティンラングールは見えたのですが、距離がありすぎて、しっかりとは見えにくい場所でした。その後また別の情報を得ると急いでその場所まで向かっていきます。

アンナン山脈の中で、森林の多いカルスト石灰岩地帯に生息しています。

「リーフイーター」と呼ばれるサルの仲間で、木の葉を主食としています。手で一枚一枚葉っぱを摘み取り、長時間噛んで、飲み込む前に葉っぱを細かく砕きます。あまり噛まず消化管だけで食べ物を分解する他のリーフモンキーの行動とは異なります。

群れの大きさは2~15頭、平均8頭前後で、大人のオス1頭、複数のメス、子供がいます。日本の動物園などでも有名な「フランソワルトン」の近縁種になり、英名ではHatinh Lutung (ハティンルトン)とも呼ばれます。ベトナム北部に生息するハティンラングールは、以前は中国南部の石灰岩地帯に棲息するフランソワルトンの亜種として考えられてきましたが、今は別の種とみなされています。

正面からみるとフランソワルトンと区別はつきにくいのですが、白いひげが耳の後ろまで伸びているのが特徴です。

今回、幸運にも生まれたばかりの赤ちゃんのハティンラングールを見ることができました。オレンジ色をしていますが、生後数週間でこの色は薄れ始め、2 か月後には暗くなり、3ヶ月までには真っ黒になるそうです。

この子はまだ1ヶ月ほどでしょうか。

毛の色はまだオレンジですが、生まれてすぐにはない白い口髭も少し見えています。

授乳している様子も見られました。

かわいい赤ちゃんのハティンラングールも見ることができた、大満足のサイティングでした。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : January 2024, Tueng Hoa, Quang Binh, Vietnam

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十勝岳のナキウサギ The Japanese Pika of Tokachi-dake Mountain

北海道中央部の高山には氷河期の生き残りといわれる可愛らしいナキウサギが棲んでいます。ここで見られる種はキタナキウサギ (学名:Ochotona hyperborea, 英名:Northern Pika) の亜種、エゾナキウサギ(学名:Ochotona hyperborea yesoensis, 英名:Japanese Pika)です。冷涼な気候を好み、12度前後が適温と言われています。

ナキウサギの外観

ナキウサギとは? 

近縁のウサギと外観はかなり異なり、体長15~18cmと小さく、耳は丸くて短く、尾は短くて体毛に隠れて見えなく、足は短いので、一見するとネズミやハムスターのような姿です。しかし、歯の構造はウサギと同じで、ネズミの様に前足で物をつかむことはできません。名前の通り、オスはキチッ、キチッ、キチッ、と連続して4~16回強く鳴きますが、メスは単音、または不規則な連続音のみです。

ナキウサギの棲む環境

棲みかは「露岩帯」とか「ガレ場」といわれる大小の岩が積み重なったところで、天敵のエゾオコジョ、イイズナ、キタキツネなどの捕食者からの逃げ場所となるとともに、夏に岩の隙間には冷涼な空気が保たれます。また、近くに食料が得られる灌木や森林があることも条件となっています。

望岳台から見た十勝岳

十勝岳のナキウサギ

十勝岳の登山口である望岳台のガレ場には多くのナキウサギが見られます。冬眠をしないナキウサギは秋に食料を蓄えるために活動が活発になるのでベストシーズンとなります。特に晴れて風がなくてほどよく暖かいときには岩の上でじっとして日光浴をしますので、撮影や観察には良いでしょう。また、同様な環境を好むシマリスも見ることができます。

鳴き声をあげるナキウサギ

日光浴しているナキウサギ

地衣類を食べるナキウサギ

シマリス

白金温泉に宿泊して、ナキウサギの観察のついでに、早朝は「白金温泉の青い池」を訪ね、午前中はナキウサギの観察、午後は「美瑛の丘」巡りというプランも時間的に充実ですね!空気が澄む秋はお勧めです。

 

Photo & text : Hiromichi HAYASHI

Observation : Tokachi-dake Mountain, Hokkaido

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キホオテナガザル Yellow-cheeked Gibbon(カッティエン国立公園、ベトナム)

「歌うサル」と呼ばれるテナガザルの仲間キホオテナガザルに、ベトナム南部のカッティエン国立公園で出会えました。キホオテナガザルはベトナム南部だけでなく、ラオス南部やカンボジア東部の熱帯林にも生息します。

テナガザルの仲間は約20種いると言われていますが、いずれの種も共通して森の中で歌を歌います。オスとメスがデュエットするように交互に声をシンクロさせながら歌い、森の中に済んだ歌声が響き渡ります。歌うことは、群れの縄張りのアピールでもあり、異性を惹きつける効果もあるようです。特に早朝には大きな歌声が聞こえてきます。

観察する我々としては声を頼りに見つけやすいのですが、実際には森の奥深くにいると近づけないため、声はすれど姿は見えずということもあります。

キホオテナガザルは名前の通り、手が長いので樹上での生活に適しています。特に樹冠の高い位置で生活して、危険の伴う木の下の方に降りてくることは少ないです。雲梯のように腕渡りをするブラキエーションで木々を移動しますが、時速50kmを超えることもあるそうです。

キホオテナガザルは一夫一妻で、多くても4頭ほどの子どもからなる小さな家族で暮らしていて、イチジクの実や木の葉などを食べています。

キホオテナガザルはオスとメス、子供、赤ちゃんで色がそれぞれ変わってくるという特徴があります。

大人のオスは全身が黒に、黄色の頬(キホオ)。

大人のメスは全身クリーム色に頭の黒い帽子が特徴になります。

赤ちゃんはオスもメスも全身クリーム色で、お母さんと同じ色をすることで抱っこされたときにお母さんの色に溶け込みます。そして数か月後にオスメス関係なく、一旦オスと同じように頬以外が黒くなります。その後、性成熟が近づくとメスのみまた全身クリーム色に頭の黒い帽子となります。

まとめると
メスの場合はクリーム色→黒色→クリーム色と2回も色が変わり、
オスの場合はクリーム色→黒色と1回色が変わります。

上の写真の子はおそらくクリーム色の赤ちゃんから、少し黒に変わりだしている時期の子供に見えます。

綺麗な歌声を聞きつつ、森を歩く・・・ベトナムの美しい森の朝の時間です。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : January 2024, Cat Tien National Park, Vietnam

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雨季の沖縄ハーピング:3種のトカゲモドキと出会う

5月、雨季真っただ中の沖縄ハーピングツアーのレポートです。今回の目的は、沖縄本島北部のやんばる国立公園・沖縄本島南部・伊平屋島の3か所で3種類のトカゲモドキ(学名:Goniurosaurus sp)を探すこと。

初日に向かったのは、沖縄本島の南部です。この地域は、サンゴ礁が隆起してできた石灰岩を中心とした地形が広がるのが特徴です。生息するクロイワトカゲモドキ(英名:Japanese ground gecko、学名:Goniurosaurus kuroiwae)を石灰質のバックグラウンドと共に撮影できる貴重なポイントです。

クロイワトカゲモドキ Japanese ground gecko (Goniurosaurus kuroiwae)

天候にも恵まれ20匹を超える個体を観察できました。クロイワトカゲモドキ(英名:Japanese ground gecko、学名:Goniurosaurus kuroiwae)は、背中に伸びる模様が首ものから尻尾まで途切れずに一直線になっているのが一番の特徴です。

クロイワトカゲモドキ Japanese ground gecko (Goniurosaurus kuroiwae)

クロイワトカゲモドキ Japanese ground gecko (Goniurosaurus kuroiwae)

2日目に向かったのは、沖縄県最北端の島・伊平屋島です。伊平屋島は、日本に生息するトカゲモドキたちの中でも一番観察が難しいイヘヤトカゲモドキ(英名;Iheya ground gecko: 学名:Goniurosaurus toyamai)が生息します。

フェリーで到着後は、美しい海と島内唯一のタクシー、ハブタクシーに出迎えられました。いよいよ観察に出発です。

伊平屋島の美しい海

島唯一のタクシー、ハブタクシー

日が暮れて間もなくすると、お目当てのイヘヤトカゲモドキが早速現れてくれました。特徴的なバンド模様に薄いピンク色の体色が特徴的です。自然界では珍しい完全尾で全長は手のひらほどあろうかという大きく美しい個体でした。

イヘヤトカゲモドキ Iheya ground gecko  (Goniurosaurus toyamai)

イヘヤトカゲモドキ Iheya ground gecko  (Goniurosaurus toyamai)

その後も、沖縄諸島で最もレアなヘビの一つ、ハイ(英名:Hai Coral Snake,学名:Sinomicrurus japonicus boettgeri)の観察にも成功しました。今まで人間が噛まれた記録はありませんが、コブラの仲間で猛毒ヘビですので注意しながらの観察になりました。

ハイ Hai Coral Snake (Sinomicrurus japonicus boettgeri)

ハイ Hai Coral Snake (Sinomicrurus japonicus boettgeri)

最も興味深かった出来事の一つに、アカマタ(英名:Ryukyu odd-tooth snake、学名:Lycodon semicarinatus)との出会いがありました。この日は、合計3個体の観察に成功しましたが、沖縄本島に生息する本種より、明らかに色合いが濃くシックな色合いである印象を受けました。沖縄本島でも、大きくなると色が濃くなっていく傾向があるのですが、伊平屋島の個体群は、はるかに小さい段階で色合いが濃くなっていくのではないかという印象を受けました。アカマタだけではありませんが、ハーピングに訪れる人の少ない伊平屋島で更なる研究が進むと将来的には新種に登録される種がまだまだ見つかるのではないかと期待が持てました。

アカマタ   Ryukyu odd-tooth snake  (Lycodon semicarinatus)

アカマタ   Ryukyu odd-tooth snake  (Lycodon semicarinatus)

観察の最後には、別の個体のイヘヤトカゲモドキや、翌日の午前中にはホンハブの観察にも成功し大満足のイヘヤハーピングとなりました。

イヘヤトカゲモドキ Iheya ground gecko  (Goniurosaurus toyamai)

ホンハブ Habu (Protobothrops flavoviridis)

最終日に向かったのは、沖縄本島北部にあるやんばる国立公園です。こちらでは、2024年に新種登録されたばかりのヤンバルトカゲモドキ(英名:Yambaru ground-gecko、学名:Goniurosaurus nebulozonatus)が最大の目的でした。

ヤンバルトカゲモドキの最大の特徴は、背中に伸びる模様が途切れていることです。今回観察した個体の中には、背中の模様が繋がりかけている個体もいましたが、以前まで同種とされていた沖縄本島南部のクロイワトカゲモドキとは全く別物であることが見て取れました。

ヤンバルトカゲモドキ   Yambaru ground-gecko  (Goniurosaurus nebulozonatus)

ヤンバルトカゲモドキ   Yambaru ground-gecko  (Goniurosaurus nebulozonatus)

やんばる国立公園でのハーピングは、観察できる生き物の多さにも魅力があります。トカゲモドキの他に、リュウキュウアオヘビ (英名 : Ryukyu green snake、学名 : Cycophiops semicarinatus)
、イボイモリ (英名 : Anderson’s crocodile newt  学名:Echinotriton andersoni)、ナミエガエル ( 英名 : Namiye’s frog、学名 : Limnonectes namiyei)、などの観察にも成功し大満足のハーピングとなりました。

リュウキュウアオヘビ Ryukyu green snakes (Cycophiops semicarinatus)

イボイモリ   Anderson’s crocodile newt (Echinotriton andersoni )

ナミエガエル Namiye’s frog (Limnonectes namiyei)

ヒメハブ Okinawa pitviper (Ovophis okinavensis)

沖縄諸島は、島ごとにそれぞれ固有なHerps が生息しておりハーピングのホットスポットです。ぜひハーピングに出かけてみてください。

 

Photo &Text : Wataru HIMENO

Observation : May 2024, Okinawa Islands

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グアテマラ・ワイルドライフスペシャル Guatemala Wildlife Special

グアテマラ・ワイルドライフスペシャルのコースで観察した野鳥を中心とする生き物たちのご紹介です。

14日間かけて中部の高原地域、西部の乾燥地域、北東部の熱帯地域、東部のユカタン半島を訪れ計248種の鳥を含む様々な生き物を観察しました。グアテマラのワイルドライフ観察の特徴は、どこもフィーダーや餌場があるわけではなく歩いて探して観察したことでした。自然の中での観察は容易ではありませんが、生き物の生息密度が非常に高いグアテマラだからこその観察方法だと思いした。

観察のハイライトとなったのは、グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti です。グアテマラを中心にメキシコ、ホンジュラスなどで生息が確認されている鳥で、グアテマラで一番小さな鳥です。

グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti )

我々が訪れた繁殖期直前の2月は、森の中にある少し開けた10m四方ほどのエリアで5羽ほどのオスが、それぞれの縄張りでメスや他のオスたちにしきりにディスプレイをします。声は、周りから聞こえてくるのですが、動きが素早く観察&撮影は簡単ではありません。身を潜めてじっと待機しやっとの思いで目の前でディスプレイをしてくれた時の喜びと感動は鮮明に覚えています。

グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti )

グアテマラの通貨がケツアールということからも分かる通り世界一美しい鳥とも名高いケツアール(Resplendent Quetzal、Pharomachrus mocinnoはグアテマラの国鳥です。

ケツアール(Resplendent Quetzal、Pharomachrus mocinno)

グアテマラのケツアールは、日本で有名なコスタリカのケツアールとは生息域が分断されており、尾の長さや体つき、鳴き声なども違うため、近い将来別種になるのではないかと言われているそうです。今回は、運よく1本の木に3羽のオスが同時に現れるという大興奮の観察となりました。また、どこへ行っても観光客が少なく我々のグループのみでゆっくり観察できたのも幸運でした。

他にも、中米らしい美しい生き物たちを数多く観察できました。大人気のキモモマイコドリ(Red-capped Manakin, Pipra mentalis です。宿泊したロッジの庭で観察できました。

キモモマイコドリ(Red-capped Manakin, Pipra mentalis )

青い帽子をかぶったようなエリアカフウキンチョウ(Golden rumped euphonia, Chlorophonia cyanocephala)。ケツアールを観察した木で営巣をしていました。

エリアカフウキンチョウ (Golden rumped euphonia, Chlorophonia cyanocephala)

大きな声で縄張りをアピールするシマアリモズ(Barred Antshrike, Thamnophilus doliatus

シマアリモズ(Barred Antshrike, Thamnophilus doliatus)

ホオジロカマドドリ(Plain xenops,Xenops minutus。見ずらいですが、嘴が上向きに反り上がっています。

ホオジロカマドドリ(Plain xenops,Xenops minutus)

頭の赤い模様がチャーミングポイントのベニイタダキアメリカムシクイ(Slate-throated whitestart, Myioborus miniatus

ベニイタダキアメリカムシクイ(Slate-throated whitestart, Myioborus miniatus )

体の中身はツル、外見や生態はクイナに似ていると言われる不思議なツルモドキ(Limpkin, Aramus guarauna も水辺で観察できました。

ツルモドキ(Limpkin, Aramus guarauna )

頭の模様が美しいレッソンハチクイモドキ(Lesson’s motmot,Momotus lessonii。個人的には最も美しいハチクイモドキの仲間と思っています。

レッソンハチクイモドキ(Lesson’s motmot,Momotus lessonii)

葉っぱの奥でしたが珍しいメキシコアリツグミ(Mayan Antthrush,Formicarius moniligerも地元のガイドさんが見つけてくださり大興奮でした。

メキシコアリツグミ(Mayan Antthrush,Formicarius moniliger)

草原をひらひらと非常に美しく飛ぶズグロエンビタイランチョウ(Fork-tailed Flycatcher, Tyrannus savana

ズグロエンビタイランチョウ(Fork-tailed Flycatcher, Tyrannus savana)

森の中で2mほどの距離まで近づいても全く逃げなかったハイバラエメラルドハチドリ(Rufous-tailed Hummingbird, Amazilia tzacatl)

ハイバラエメラルドハチドリ(Rufous-tailed Hummingbird, Amazilia tzacatl)

有名なユカタン半島の固有種ヒョウモンシチメンチョウ(Ocellated turkey, Meleagris ocellata)はティカル遺跡周辺の見晴らしのいい草原で観察できました。

ヒョウモンシチメンチョウ(Ocellated turkey, Meleagris ocellata)

仲のいいメキシコインコ(Yucatan Amazon, Amazona xantholora)のペア。訪れたこの時期は、多くの生き物が繁殖期を迎え仲むつましい姿を観察できました。

メキシコインコ(Yucatan Amazon, Amazona xantholora)

お酒を飲んだように顔が赤いことから酒面と呼ばれ、和名はサカツラハグロドリ(Masked Tityra, Tityra semifasciataです。

サカツラハグロドリ(Masked Tityra, Tityra semifasciata)

世界一美しいサギともいわれるアカハラサギ(Agami heron, Agamia agami)は、常に木陰にいるためボートで観察しました。

アカハラサギ(Agami heron, Agamia agami)

野鳥以外のワイルドライフもご紹介! 凛々しいハイイロギツネ(Grey fox, Urocyon cinereoargenteusは何処となく突如と現れるため、ジャングルの中にあるロッジでの食事の際なども常にカメラが手放せませんでした。

ハイイロギツネ(Grey fox, Urocyon cinereoargenteus)

チュウベイクモザル(Central American Spider Monkey, Ateles geoffroyi)も我々人間を気にすることなく自然な姿を観察することができました。はっきりした顔立ちが印象的なクモザルの仲間です。

チュウベイクモザル(Central American Spider Monkey, Ateles geoffroyi)

グリーンイグアナ(Green iguana, Iguana iguanaは中米諸国では、オレンジ色の個体の割合が多いことで有名です。個体ごとに色合いが違うため非常に美しく、早朝はみんなで木に登り日光浴をしていました。

グリーンイグアナ(Green iguana, Iguana iguana)

世界に2種類しか生息しないドクトカゲの一種、メキシコドクトカゲ (Beaded lizard,Heloderma horridum)です。英名通りビーズのような肌と、決して走らず常にゆっくりと歩く姿が印象的でした。

メキシコドクトカゲ (Beaded lizard,Heloderma horridum)

グアテマラには、コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)の繁殖地の最北端となっているラスグヤカマスという場所があります。今回訪れたこの時期は、営巣の準備に励む夫婦の姿を観察できました。コンゴウインコの寿命は70年ほどともいわれます。一度つがいになったペアは、50年ほど連れ添うそうです。

コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)のペア

コンゴウインコが繁殖する木の洞

コンゴウインコのような大きな体を支える繁殖場所は、大きな木の洞が必要になります。繁殖地の北限が南下してしまわないように、大きな木が存在できる大自然がいつまでも続いていくことを願います。

コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Feb 2024 Guatemala

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生物多様性の宝庫・マダガスカル Vol.02<ナイト・サファリ>

前回に引き続き、マダガスカルで観察した生き物たちのご紹介です。

マダガスカルは、ライオンやトラなどの夜行性の大型肉食獣が生息していないため、ナイトサファリも歩いて森の中を体験する”ウォーキングサファリ”が活発に行われています。日本から遠く離れたマダガスカルの地で夜な夜な森の中を歩くと、全身の神経が研ぎ澄まされ、土の匂い・木の上を動く動物の足音などを感じながら生き物たちを探す、忘れられない体験になりました。

今回はそんな夜のツアーで観察してきた生き物たちのご紹介です。

 

ネズミキツネザル (Mouse lemur)

ネズミ・キツネ・サルと3種類の生き物の名前を持つ非常に不思議な名前の生き物です。世界一小さなサルの仲間で、大きさは手の平に収まるほどしかありません。真ん丸な目と、しっかりとしたサルらしい手足が非常にキュートです。地域により、様々な種が生息しており現在は24種ほどに分類されるそうです。

チャイロネズミキツネザル(common brown lemur , Eulemur fulvus )

グッドマンネズミキツネザル (Goodman’s mouse lemur, Microcebus lehilahytsara )

 

アイアイ (Aye-aye  Daubentonia madagascariensis

童謡などで有名な「アイアイ」ですが、世界でもマダガスカルにしか生息しないキツネザルの仲間です。お猿さんと言っても原猿類というサル中でも原始的な仲間で我々の想像するニホンザルなどとはかけ離れた見た目でした。

アイアイ(Aye-aye、Daubentonia madagascariensis)

夜間の活動に有利な大きな目に加え、キツツキのように木に穴をあけて中にいる虫などを取り出すために非常に長く発達した中指など、独特な見た目をしており現地では以前より「悪魔」として恐れられていたため、保護活動が始まるまでは駆除されてしまうことも多かったそうです。

 

イタチキツネザル (Sportive lemur)

こちらも、イタチ・キツネ・サルと様々な生き物の名前が組み合わされていますが、英語ではSportive lemurです。木の止まる姿が、ボクサーの動きを連想されることからSportive(スポーツ)と呼ばれるようになったそうです。夜行性ですが、他のキツネザル同様に体温調節が得意ではない為、日中も寝床である木のうろから出ていることも多いです。こちらも27種ほどが確認されていて地域によって様々な姿を見せてくれます。

シロアシイタチキツネザル(White-footed sportive lemur, Lepilemur leucopus )

シロアシイタチキツネザル(White-footed sportive lemur, Lepilemur leucopus )

 

ヘラオヤモリ (Leaf-tailed gecko, Uplatus Sp.)

世界一の擬態力を持つ生き物と言えば、マダガスカルに生息するヘラオヤモリの仲間だと言っても過言でないほど擬態の名人です。そしてマダガスカルに生息する生き物で最も不思議な生き物の一つだと思います。今回は、エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)、ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)の2種類の観察に成功しました。

エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)

エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)

ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)

ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)

 

マダガスカルコノハズク (Madagascar scops owl, Otus rutilus)

マダガスカル固有のフクロウで、我々が発見した際には足に大きなトビバッタを捕まえていました。人をあまり気にしないのか、我々の目線の高さでじっと止まり木に止まっておりゆっくり観察できたのも印象的です。

マダガスカルコノハズク (Madagascar scops owl, Otus rutilus)

 

マダガスカルオオゴキブリ(Madagascan hissing cockroach)

マダガスカルオオゴキブリ、略して「マダゴキ」の愛想で親しまれる大型のゴキブリ。森林性で住宅地の近くなどでは観察することができない為、お部屋に出てくるなんてラッキーなことはめったにありません。動きは遅いですが、8cmを超える大型の個体は迫力満点でした。

昼も夜も、本当に奥深いマダガスカルの生き物たちとの出会い。続編をご期待ください!

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Oct 2023, Madagascar

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生物多様性の宝庫・マダガスカル Vol.01

生物多様性の宝庫、マダガスカル。見られる全動植物種の約90%が世界でマダガスカルにしか生息しない固有種であるため、観察場所を変えるたびにライファーと出合います。日中の観察で出会った生き物の一部をご紹介します。

 

ワオキツネザル:Ring-tailed lemur、Lemur catta

メスがグループのリーダーで、今回訪れた10月の繁殖期には子供を背中に乗せたメスが群れの先頭を歩く姿が見られました。ワオキツネザルを含む、キツネザルの仲間は体温調節が得意ではなく、早朝などは日が出ると日光浴する姿も観察できるそうです。

子供を背中に乗せたメスのワオキツネザル (Ring-tailed lemur、Lemur catta)

ベローシファカ:Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi

地面を歩くときなどは、横向きにジャンプしながら移動します。サボテンの多く存在する場所にも生息する為、人間ではとても触れないトゲの枝にもしっかりとつかまって生活する姿が印象的でした。

横向きにジャンプしながら移動するベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

ベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

カメレオンの仲間

世界に生息する60%のカメレオンは、マダガスカルに生息しています。世界で一番重たいカメレオンである、パーソンカメレオン(Parson’s chamaeleon, Calumma parsonii)や、ゾウのように大きな耳が特徴なゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)、地域によってさまざまな色合いを持つパンサーカメレオン(など多種多様なカメレオンたちを観察することができました。

パンサーカメレオン(Panther chameleon, Furcifer pardalis )

ゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)

マダガスカルアデガエル :Madagascan mantella, Mantella madagascariensis 

中南米などに生息するヤドクガエルなどと同様に体に毒があることを警告する為に、非常にきれいな体色をしています。

マダガスカルアデガエル (Madagascan mantella, Mantella madagascariensis )

マダガスカルヤツガシラ :Madagascar hoopoe, Upupa marginata 

ヤツガシラの多くは、渡り鳥として有名ですが本種は渡りをしないマダガスカル固有種です。日本などで観察できるものに比べて、オレンジ色が非常に濃く色合いがとても綺麗です。

マダガスカルヤツガシラ (Madagascar hoopoe, Upupa marginata )

ルリガシラハシリジブッポウソウ:Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides

英名が、Pitta-like Ground Roller(ヤイロチョウのようなジブッポウソウの意味)で、その名の通り地面の上をピョンピョンと跳ねる姿はまるでヤイロチョウのようです。きらきらと輝く青色が非常に美しく多くのマダガスカルの野鳥図鑑の表紙を飾っている鳥です。

ルリガシラハシリジブッポウソウ (Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides )

ヒルヤモリの仲間

ヤモリは、夜行性の種類が多い中で昼に活動する種はヒルヤモリと呼ばれます。昼の生活でも擬態をする為、緑色をしている種類が非常に多いのが特徴的です。ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )、グランディスヒルヤモリ (Madagascar Giant Day Gecko, Phelsuma madagascariensis  )など多くの種類を観察することができました。

ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )

キリンクビナガオトシブミ :Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa 

キリンのように長い首を持つオトシブミの仲間です。卵を産んだ後、幼虫のえさとなる葉で卵を包み込み、木から切り離して地面に落としてしまう姿の観察にも成功しました!

キリンクビナガオトシブミ (Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa )

マダガスカルの動物というとキツネザルの仲間が有名ですが、日中に見られるさまざまな生き物を紹介させていただきました。次回は、夜のマダガスカルの生き物です!

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Oct 2023, Madagascar

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マウンテンゴリラ Mountain gorilla(ブウィンディ原生国立公園・ウガンダ)


ウガンダ共和国の南西部に位置するブウィンディ国立公園で出会ったマウンテンゴリラです。

ゴリラは2種4亜種に分類されます。ヒガシゴリラの亜種(ヒガシローランドゴリラ、マウンテンゴリラ)とニシゴリラの亜種(ニシローランドゴリラ、クロスリバーゴリラ)。

今回出会ったマウンテンゴリラはアフリカ中部のウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国の3ヶ国の国境に広がるアルバータイン地溝帯のみに棲息し、近年の保護活動の成果から現在1000頭を超える数にまで増えてきています。日本の動物園のゴリラは全てニシローランドゴリラなので、マウンテンゴリラに会うためには現地に行くしかありません。

葉っぱや樹皮などを食べるマウンテンゴリラは「餌付け」が難しいので、観光客が観察できるゴリラのグループは人に慣れさせる「人付け(habituation)」という人への馴化作業が必要になります。研究者やトラッカーが初めは200mくらい離れたところから観察を始めて、だんだん距離を縮めていきます。もし近づきすぎてゴリラが威嚇してきたりした場合はもう少し距離を置いて様子を見るというのを繰り返し、完全に人に馴化するのには2~3年かかるとのことです。


マウンテンゴリラのトラッキングは片道1時間~3時間ほどかかります。
今回は1時間半ほどで出会えましたが、特に最後のゴリラに接近するあたりでは、ジャングルの中の急な斜面を草や枝をマチェットで折りながら下っていきます。


急な斜面を滑って転びそうになりながら下っていくと、ついにゴリラを追うトラッカーたちと合流。そのすぐそばでふさふさとした黒い固まりがあると思ったら、子供のゴリラでした。


そのすぐそばの2匹のメスたちは器用に指を使って毛づくろいをしていて、その姿はまるで人間のようでした。

今回出会ったマウンテンゴリラのグループは「ムクングジ(Mucunguzi Group)」というグループで、ムクングジとは雄のリーダーであるシルバーバックの名前でもあり、「救世主 Savior」を意味します。

ムクングジが別のグループのリーダーである「ビギンギ」からメス数頭を奪って(救い出し)、自分のグループを作り、現在は15頭のメンバーで1頭のシルバーバックに、7頭の大人の雌、2頭の若い雌、5頭の子供や幼児がいます。


その後、しばらくすると近くにいた雄のシルバーバックの「ムクングジ」(↑の写真左上)を発見。メスや子供たちと横になって休んでいます。


生後1年ほどの赤ちゃんゴリラが、お昼寝をするお父さんやお母さんに遊んでほしそうにちょっかいを出しています。

横になったメスの足がシルバーバックの体に乗っかっています。


観察しているとゴリラが2mほどの距離まで近づいてきました。
さらに最後にはシルバーバックも起き上がり、のそのそとこちらに向かって歩いてきました。


オスは通常8歳くらいで大人になりブラックバックと呼ばれますが、13歳を超えると背中から腰にかけて毛が灰色(シルバー)になりシルバーバックと呼ばれ、さらに18歳頃になると後頭部が盛り上がってきます。


寝起きでまだ眠いのか、大あくび。


あっという間に観察の制限時間である1時間が終わってしまいました。
野生のゴリラの寿命は野生下で35年~40年ほど、この子供が大きくなる前にはもう一度会いに来たいと強く思わされました。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : Feb 2024, Bwindi Impenetrable National Park, Uganda

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天売島(北海道)の夜の生き物 

2023年の夏を天売島で過ごした姫野のレポートです ♪

天売島は北緯44度に位置するため、春から夏にかけての日照時間が長く空が完全に暗くなるのは21時ごろです。朝も3時ごろには明るくなり始めるため、夜行性の生き物たちは短い夜を世話しなく生きています。

夜行性の生き物と言えばフクロウの仲間。2023年度は、トラフズク (Long-eared Owl) の繁殖が確認できました。

トラフズク (Long-eared Owl)

春先には、3羽のヒナを確認しましたが、7月の前半からは2羽しか確認できなくなってしまいました。自然の厳しさを実感です。

日本のキーウイ(Kiwi) こと ヤマシギ (Eurasian Woodcock) も天売島には生息しています。ニュージーランドに生息するキーウイ同様、夜行性で地表近くに生息するミミズなどを捕食しますが、ヤマシギは空を飛べますので生息範囲が広いのが特徴です。また、嘴に多数の穴が開いていて、神経が通っているため、地面に差し込んだ嘴で獲物の動きなども感知できるそうです。

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

また、暖かい日の夜は天売島に生息する唯一のヘビ、マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper) も活発になります。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

夜行性のヘビとして紹介されることも多いですが、天売島では春先などの肌寒い季節にはお昼の時間帯により活発に活動している印象を受けました。爬虫類でありながら、卵ではなく子供を直接産む卵胎生であるため、春先の一日の温度差の激しい天売島で効率的に繁殖し、この島で生息する唯一のヘビになったのではないかと思います。

マムシは、日本では最も有名な毒蛇で、「マムシ=危険」というイメージが根強く車などでも轢かないように運転する意識も、他の生き物に比べて低いためか、シーズン中には幾度となく車にひかれて亡くなったであろう個体を見かけました。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

天売島に生息する唯一の両生類、ニホンアマガエル (Japanese tree frog) も夜になると活動を始めます。

ニホンアマガエル (Japanese tree frog)

周囲12kmほどの小さな島であるため、安定した淡水の水場が少なく、常に水が必要な両生類の生息できる環境は非常に限られていますが、廃船にたまった雨水やわずかな湧き水の水たまりなど、海岸からほど近い場所にも関わらず数多くの個体が繁殖しています。

また夜の観察後には、きれいな星空が広がっていることも。晴れさえすれば、ほぼ確実に流れ星も確認できます。

夜の前浜港

天売にいらっしゃった際は、最後に夜空も見上げてみてください。

Image & Text: Wataru HIMENO
Observations at Teuri Island in Summer 2023

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