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Herring Run ニシンの大産卵! 春のシトカ・サウンド

3月下旬,ニシンの群れが産卵のためにシトカ・サウンドにやってきます - 北海道で1955年ごろに姿を消し、アラスカでも1993年から獲れなくなったニシン。アラスカでは保護と漁業管理の結果、シトカ、トギアク、コディアックの海にニシンが戻ってくるようになりました。2024年は近年では最大の規模の産卵が起こったといわれています。これらの地域でニシンが戻ってきたものの、日本からの「数の子」の需要が減り、捕獲しても買い取り手がつかないなど、ニシン漁業が再び活気を取り戻したわけではありません。トギアクではニシン加工業が廃業されたため漁業自体が行われませんでした。そのほかの地域も許容された数を下回る漁でした。

シトカに戻ってきたニシンの恵みを享受したのは野生動物たちのようです。そしてその姿を追う、フォトグラファーたち。2024年3~4月、大産卵が起こった日のシトカ・サウンドで見た生き物の様子をご紹介します。

停泊地から見る早朝のシトカ富士ことエッジカム山

シトカはアラスカ、バラノフ島西岸の町で、その名前は先住民族のトリンギット族の言葉で「海のほとり」という意味の Shee At’ikaに由来します。シトカは1867年にロシアがアメリカにアラスカを売却するまでロシア領でした。そのため町の中にはロシア正教会がありますし地名にはロシア語のものがたくさんあります。

シトカ・サウンドのニシン漁

シトカではニシン漁や先住民による子持ちコンブの収穫は昔から行われていましたが、近代漁業が始まるとニシンは肥料として収穫されていました。1955年ごろ日本でニシンが獲れなくなったことからアラスカで「日本市場」向けのニシン、「数の子」の需要が高まりました。これまでの「魚を獲る漁業」から「魚卵のための漁業」に変わりました。「数の子」となる良質の魚卵を採るためには産卵直前のニシンを捕獲する必要があります。1959年にアラスカの一部地域でニシンの天然魚卵の商業捕獲が始まり、1962年に日本への最初の輸出が始まりました。シトカでは1964年に始まり、魚卵を採取する「数の子」とコンブに産卵させた魚卵「子持ちコンブ」が収穫されました。そそして乱獲の結果1993年にはニシンが獲れなくなり、ニシン漁は規制と管理下に置かれるようになりました。乱獲だけでなく、ニシンにとって重要な産卵場所である海藻類の損失も大きな原因ではないかと推測されています。

2024年は3月28日ごろからシトカ・サウンド内で大きな産卵が起こりました。湾の中でも場所により29日だったり、さらに遅れて4月2日だったりしました。

ニシンの産卵・放精で白濁した海岸付近

アラスカの海は透明度が悪く、また規模が大きいため日本で見られる「群来」ほどくっきりと白濁した海水の違いはわかりませんでした。が、明らかに海面は白濁しています。

ニシンの産卵・放精が起こったあとの海面

シトカ・サウンドにはニシンとニシンの卵を目当てに野生動物が集まっていました。

ランジ・フィーデイングしているザトウクジラ

ザトウクジラです。南東アラスカを夏の採餌海域としている個体群は冬はハワイで子育て・繁殖しています。ハワイからアラスカへの移動は片道4800キロ以上、ノンストップでも6~8週間(最短で28日で移動した個体の記録があるそうです)かかると言われています。それを考えると3月下旬にシトカにやってくる個体群は2月にはハワイを出発していることになります。

シトカに現れるザトウクジラの動向記録を見ていると、ニシンの産卵前にシトカ・サウンドの太平洋に開いた沿岸部に現れ、産卵が始まるとばらばらになって南東アラスカの各地へと散らばったようでした。ソールズベリー・サウンドやチャタム海峡でも複数頭を観察できました。

ニシンの産卵前にはバブルネットフィーディングの集団行動が見られるほか、活発にランジフィーディングする様子が観察されました。

ランジ・フィーデイングしているザトウクジラ

ニシンを狙って集まるトドの群れ。

トド

大産卵の日のクルーゾフ島の海岸です。干潮の時間には産卵にやってきたニシンが海岸に残され、それを狙ったハクトウワシ、その数1000羽はいたでしょうか!

シトカ富士そびえるクルーゾフ島の海岸に集まるハクトウワシ

ハクトウワシはもうお腹いっぱいなのか、あまり活発に動いておらず、はねているニシンを見ていました。

この海岸の沖にはザトウクジラとトドの姿が。みんなニシンの恩恵に預かっています!

ザトウクジラとトド

水面行動が激しいクジラがいたので近づいてみました。交尾をしているようです!これは、コククジラです。コククジラの繁殖海域はもっと南のバハカリフォルニアです。どうしてここで交尾(または疑似交尾)?

コククジラの水面行動 ハート形のブロー

コククジラのペニス

コククジラの背中

コククジラの背中。背びれがなく、後部にはこぶ状のものがあるのが特徴です。コククジラは海底の泥や砂をヒゲで濾しとることによってカニなどの底生動物を捕食します。そのため、海岸近くでコククジラのブローを見ると、「お食事中」だと想像されます。

海岸で採餌するコククジラ

アラスカでは厳しくニシンの産卵がコントロールされており、魚卵の状態の確認した後に漁が「OPEN」となり一斉にニシン漁が始まります。網から直接吸い上げて船内にはいっていくため、「おこぼれ」のニシンがなく、鳥やトド、そして私たちもがっかりです。北海道の漁船の周りに鳥が集まるようにハクトウワシのニシンを狙った飛翔に期待したので残念でした。

漁船からはニシンのおこぼれはないので自力でニシンを獲ったハクトウワシ

ニシンを運べないカモメは腸(白子?)だけとっていました

ニシン釣りを楽しむ観光客

漁が許可された短時間での操業

4月に入ってすぐ、シトカ・サウンドの沖合にたくさんのブローが見えました。こんなにまとまった数のブローはザトウクジラではないか、と期待を胸に船を走らせました。かなりの数のクジラがいると思われました。

近づいて確認すると、それはコククジラのものでした。岩礁付近では数頭のグループが交尾または疑似交尾行動をしているようで、海岸付近ではたくさんのブローがあがり、採餌行動が行われているようでした。少なく見積もって50頭以上、いや100頭近くがこの海域にいるようでした。すでにシトカ・サウンドにはコククジラが入っていますが、この集団はちょうど太平洋からシトカ・サウンドに入ってきたばかりのようでした。

コククジラの水面行動

コククジラの口が水面に出ています♪

海岸にあがるブロー

この件が気になって調べたところ2023年に書かれたシトカのコククジラに関する記事がありました。以前からシトカ・サウンドではコククジラが目撃されていましたが、この2~3年の集まり方は顕著だと言います。しかも私たちが見たように、交尾と思われるような社会行動も目撃されています。この記事の著者は、コククジラたちはバハカリフォルニアからアリューシャン列島へと北上する途中でこのニシンの大きな群れと産卵を見ることになり、海岸に産み付けられた卵を求めて集まってきていると考察しています。コククジラの目撃場所はニシンの産卵場所と一致しているのは確実で、ククジラが潜水していた場所で切れたコンブが回収されたりしているそうです。

今後、シトカ・サウンドに集まるコククジラたちの動向と調査がまたれます。

美しい夕景の停泊地

さて、私たちの停泊していたシトカ・サウンドの奥で大産卵が起こりました。ハクトウワシがたくさん集まっておりスキッフに乗り換えて海岸で撮影をしていました。

ニシンを狙うハクトウワシ

「これ、全部ニシンの卵じゃないの?」よく見ると、潮が引いた海岸一面にニシンの卵が表れていました。

ハクトウワシの足元の薄卵色のものがニシンの卵

潮が引いた海岸はニシンの卵が一面に現れていました

大きな粒のニシンの卵

海に浮いていた海藻に付着していたニシンの卵

天然の子持ち昆布

夕食にも当然、採取した「子持ち昆布」をいただきました。すでに塩味が十分で大きな粒の卵を感謝していただきました。

アラスカから帰国して間もなく、天売島から「70年ぶりのニシンの産卵」が起こったというニュースが。ニシンがもたらす恵みが広がっていきますように・・・。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation  :Spring 2024, Sitka Sound and around, Alaska, USA

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春の天売島のワイルドライフと70年ぶりの群来(くき)

2024年4月15日、北海道の天売島では70年ぶりとなる「群来(くき)」が観察されました。島の人は大喜びで撮影し、そしてニシンを収穫しました。島の宿ではニシンの煮つけと数の子がふるまわれました。今、島にいる人の中にニシンが大漁に獲れた時代を知る人はいません。

春の天売島で観察したワイルドライフをご紹介します。羽幌港から天売島への航路ではオオハム(意外と多い)、ウミスズメ、そしてウトウ、ケイマフリを見ることができました。

天売島では、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ウミスズメ、ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウ、ヒメウの8種の海鳥が繁殖しています。4月、もうその営みは始まっています。黒崎海岸ではウミネコが繁殖し、そのエリアを拡大中。4月20日ごろは交尾(または疑似交尾)があちこちで行われていました。

交尾(または疑似交尾)するウミネコ

ウミネコの繁殖地が拡大傾向にある黒崎海岸

海鳥観察舎からウミウの繁殖地を見ると、もう雛に給餌していました。ウミウは繁殖が早い時期に始まる海鳥ですが、早くなってきている傾向にあるようです。断崖の上の斜面ではオオセグロカモメが繁殖し、交尾している様子も見られました。それにしてもこの付近もたくさんのウトウの営巣地があります。

断崖に営巣するウミウ。ほとんどの巣に雛がいました。

前浜漁港付近ではウミアイサの姿が。ウミアイサは冬鳥として天売島へ渡ってきます。彼らももうすぐ北へと渡って行きます。

ウミアイサのペア

そしてシノリガモ。天売島で一番目にするカモの仲間です。前浜漁港付近やロンババ浜でよく見かけました。シノリガモは年中天売島で見られるそうですが、断然冬の時期が観察しやすく、そして美しいです。

シノリガモ ロンババの浜にて

風が少し穏やかになった日の朝、島の写真家・ 寺沢孝毅さんの操船する小型ボート「ケイマフリ号」で海へ出ました。小型ボートから見たのは、まさに春の天売島の景色。

港を出てすぐに出会ったトド。北海道へは冬場に千島列島方面から回遊してきます。若いオスが1匹でいました。ニシンが訪れるようになった天売島、人だけでなく野生動物も集まります。豊かな海の象徴です。

トドもまもなく北上していきます

ボートから黒崎海岸のウミネコ繁殖地を海から眺め、赤岩方面へ。ウミガラス繁殖地ではウミガラスの姿は見られませんでしたが、付近の海上を4羽のウミガラスが飛んでいるのを見ました。

岩礁にはたくさんのゴマフアザラシたちがいました。乾燥してふわふわしています。

船に注目するゴマフアザラシ

鳴き交わす美しい声が洋上に響きます、ケイマフリの声です。海岸の岩場では求愛のしぐさが愛らしいペアの姿が。

求愛するケイマフリ

営巣する断崖近くの洋上のケイマフリの群れ

愛らしいケイマフリの赤い脚

最後に、西遊旅行の天売営業所(天売島ネイチャーライブ)のスタッフが4月15日に撮影した「群来(くき)」の様子です。

「群来」で白濁したロンババの浜

産卵は春に起こり、水深 1m 以下の浅い海でメスが卵を海藻に産み付け、オスが放精して受精させます。この放精によって海水が白濁する現象を群来(くき)と呼びます。

海藻に卵を産み付けるニシン

お世話になった萬谷旅館さんで出たニシン料理。新鮮なニシンは大変美味しいものでした。

ニシンの煮つけ

ニシンの卵、「数の子」

私自身、アラスカのシトカまでニシンの大産卵に集まるワイルドライフを求めて行き、帰ってきたばかりでした。アラスカでは“Herring Run”の名のもと、シトカの海に集まるザトウクジラ、コククジラ、ハクトウワシ、トドなど生き物と遭遇するワイルドライフツアーが大人気です。

日本の「群来」もいつかHokkaido’s Herring Runとして注目を集める日が来るのでしょうか。いやいや、その前に、まず毎年ニシンが産卵に来てくれる豊かな海を取り戻すことが大切です。来年もニシンが戻ってきてくれることを願います。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Photography of Herring spawning : Midori KUDO

Observation : April 2024, Teuri Island , Hokkaido

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海鳥の聖域天売島が海鳥たちに選ばれたわけ

天売島は、周囲12㎞ほどの小さな島で2024年の人口は250人ほど。天売島は「海鳥の楽園」と言われるほどたくさんの海鳥たちが繁殖し、その数はおよそ100万羽とも言われます。日本国内にはこのような場所は存在せず、東に3kmほどの場所には、ほぼ同じ大きさの焼尻島がありますが、こちらには海鳥はほとんど繁殖していません。いったいなぜなのでしょうか。

天売島周辺の海域では、特に冬の間は大陸側からのシベリア高気圧の影響を受け、島の北西方面からの風を受け続けます。その風が何千万年もの年月をかけて北西方面ばかり風食した結果、島の一面に崖が出来上がったと言われています。

Google Mapより

赤線部が元の島のあった場所

Google Mapより

矢印は風の向き。風が直接当たる島の北西部に崖が出来ました。

崖というのは、人間を含む哺乳類などが最も苦手とする地形の一つですが、空を飛ぶことのできる鳥たちにとってはアクセスしやすい場所です。普段は海で生活する海鳥たちは、陸上での生活は得意でないものが多く、天敵がアクセスしずらい崖での繁殖を選ぶようになりました。

崖で繁殖するオオセグロカモメ

崖で繁殖するヒメウとウミネコ

また、天売島で一番数が多いウトウの繁殖場所は、崖の上にある土のある陸上です。ウトウたちは、天敵の多い陸上に巣を作るので天敵が見えづらくなる夕方の日没と同時に一斉に帰巣しますが、高い木が生えていると暗くなった際にはぶつかる可能性が高くなります。そのため、高い木の生えていないエリアに営巣します。天売島はその強い風のおかげで、高い木が生えておらずウトウにとっても非常に良い条件が整い、世界No1の80万羽もの繁殖が確認されています。

木の無い草原に飛び込むようにして帰巣するウトウ

このように海鳥にとって最高の条件が奇跡的に重なり、沢山の海鳥が繁殖する天売島が出来上がったと言われています。海鳥の繁殖シーズンには、崖の下から海鳥や地層なども観察できるボートツアーも開催しています。

 

Text & Photography : Wataru Himeno

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天売島の人気者、ケイマフリの魅力

2023年の夏を天売島で過ごした姫野からのレポートです ♪

天売島で不動の人気を誇る海鳥と言えば、ケイマフリです。もともと、アイヌの言葉で足の赤いを意味するケマフレという単語から、和名もケイマフリとなりました。その名の通り、足が赤いだけでなく、口の中も同じ赤色であるため、岩場で足を見せながら口を開けて求愛する姿を観察した方はその美しさに必ずというほど魅了されます!

天売島に生息する他のウミスズメ科の鳥に比べ飛び立ちも上手なため、水面から飛び立つ時は、水面を走るようにしながら助走をつけます。(そのほかの2種ウトウ、ウミガラスは、水面で羽ばたきながら半分泳ぐようにして助走をします)

その際に見られる、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの赤い足の輝きは非常に美しく、これを見るためだけに天売島へいらっしゃる方も。

繁殖期後期の6月後半ごろからは餌をヒナに咥えて持ち帰る姿も観察できます。

イカナゴやギンポの仲間など、多様な餌を運ぶ姿も大変魅力的です。

ケイマフリの魅力に魅せられた天売島在住の写真家・寺沢孝毅さんはケイマフリという名前の日本酒を作られたり、ご自身の船にもケイマフリを描くほどです。

皆さんもぜひ、ケイマフリに会いに天売島にお越しください。

 

Image & text: Wataru HIMENO

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ザトウクジラのバブルネットフィーディング in アラスカ

久しぶりにアラスカのバブルネットフィーディングのツアーへ。温暖化で海の様子がすっかり変わってしまい、クジラの採餌海域を追いかけるのが本当に難しくなってきた今日この頃。アラスカも同じで、以前バブルネットフィーディングがさかんに行われていた海域はひっそりとし釣り人もおらず、別の場所へ移動していました。

ジュノーを出航して3日目、ようやく小さなニシンを銜えて巣へと向かう海鳥を見つけ、その海域が近いことを感じました。そして4日目・5日目は「クジラ祭り」、場所をあててくれ、こちらからは接近しすぎない良い距離感でバブルネットフィーディングを観察させてくれた船長に感謝です。

アラスカの山並みを背景に複数のブローがあがりました。この数のブローを見ると、バブルネットフィーディングの期待があがります。朝9時30分ごろ、クジラが集まっているように見えました。

そしてバブルネットフィーディング!船上でシャッター音が響き渡ります。

バブルネット・フィーディング Bubble net feeding
数頭から数十頭の群れで、魚の群れを円を描くようにまわりながら泡を吐き出して一ヶ所に追い込みます。鰭を使いながら魚を取り囲み、魚群の下からは一匹のザトウクジラが大きな声を発し、パニックになった魚を上へと追い込みます。追いこみをする群れの上では別のザトウクジラが泡を出して旋回し、バブルネットを作り、魚の群れをこの中に閉じ込め、最後には全てのザトウクジラが大きな口をあけて海面へと飛び出し、一気に捕食します。

船の上から泡が上がってくるのが見えました、船の下でザトウクジラが泡をだしてバブルネットを作ってます!!この時は、本当に至近距離に上がってくるのではないかと興奮して待ちましたが、意外と遠い場所でバブルネットフィーディングがありました。魚の動きだけでなく潮の流れもあるので距離はわからないものですね。

Photography by Seiji TACHI

魚が上がってきました!

Photography by Kiyoshi AOKI

バブルネットフィーディングは本当に突然上がってきます。周りの鳥の動きも見ながらどのあたりから起こりそうかあたりをキョロキョロして待ちます。この写真は本当に上がってきたばかりの写真で海面に小さなニシンと思われる魚がいます。

Photography by Seiji TACHI

魚もザトウクジラも必死。

Photography by Seiji TACHI

Photography by Morihiko HAYAKAWA

この日の午前中、午後ともにクジラのリーダーが良いのか、なかなかうまく統制がとれてバブルネットフィーディングが行われていました。毎回うまくいくのではなく、「え、いまの失敗?」みたいなことも何度もあります。そして、それが続くと参加クジラは嫌になるのか、群れを離れて行ったりしました。この時は同じ海域に2つのバブルネットフィーディングのを行うグループがあり、このグループ間を行き来しているクジラもいました。

▽▽船長がドローンで撮影をしてくれた動画から切り出した写真です。

Drone footage by Jonathan

船のそばでバブルネットフィーディング!左下の水面の動きは子供クジラです。母クジラがバブルネットフィーディングに参加中は、子クジラは近くでテイルスラップ(尾鰭びれバンバン)したりペックスラップ(胸鰭バンバン)して遊んでいます。この子クジラの場所も、バブルネットフィーディングの場所を探すバロメーターです。

Drone footage by Jonathan

これはとても至近距離でおこったバブルネットフィーディング。ドローンでとった動画から切り出した写真です。

クジラも近いと透けて見えますが、アラスカ・インサイドパッセージの海の透明度は良くありません。

Drone footage by Jonathan

バブルネットフィーディングが終わるとしばらくわちゃわちゃしていますが、ゆっくりとみんなで泳ぎ始めます。

Drone footage by Jonathan

魚をもとめて移動してきます。ブローに虹が🌈

Drone footage by Jonathan

そして合図があるのでしょう、一斉に潜り始めます。水中でのバブルネットフィーディングの始まりです。

Drone footage by Jonathan

空撮で見る、バブルネットフィーディング、バブル(泡)と魚とザトウクジラがが浮上してきます。

Drone footage by Jonathan

半分上がってきて、右上に円を描いているバブルネットが見えます。ザトウクジラが口を開けています。

Drone footage by Jonathan

口が閉まっていく状態のザトウクジラたち。

Drone footage by Jonathan

そして再び、魚を求めて移動です。何回も何回も繰り返し、時々新しいクジラが参加に来て、時々離団していって・・・。それにしてもかなりの重労働です。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Photography by Seiji TACHI, Kiyoshi AOKI, Morihiko HAYAKAWA

Drone footage by Jonathan

Observation: July 2023, Inside Passage – Alaska

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天売島2023・ウミガラス観察近況

オロロン鳥ことウミガラス Common guillemot の日本で唯一の繁殖地となっている天売島では、今年もウミガラスが餌を巣に持ち帰る姿が確認されました。餌を持ち帰るということは、ヒナが順調に生まれているということです、非常にうれしいですね!初めて確認をしたのは7月8日になりますので、ウミガラスの繁殖時期は例年通りのようです。

また、今年は繁殖地になっている洞窟では、デコイと本物のウミガラスを合わせて非常に窮屈になっており、まるで東京の満員電車のようです。

その為か、今年は7月に入ってから繁殖地の洞窟とは別に赤岩本体にも止まっている個体が頻繁に確認されています。

赤岩では、ヒメウ Pelagic cormorant も繁殖しており、隣の窪みに沢山集まっていました。この場所は陸上からは確認できない場所にあるため観察ができるのは、海鳥観察用の船の上からだけになります。

ウミガラスが集団で飛んでいる姿や、50羽ほどで海に浮いている姿も確認できていますのでウミガラスの観察は良好です。

群れで飛ぶウミガラス

群れで浮かぶウミガラス

一時は13羽まで減ってしまったウミガラスですが、個体数は順調に増えています。ただ、今年も繁殖場所は1か所のみと、繁殖場所の増加は確認されておりません。1か所だけだと天敵が現れるなど何かあった際に個体数が激減してしまうことも懸念されますので、次は繁殖場所が増えていってくれることを祈ります。

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Island, Hokkaido

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天売島で人気のウミスズメ科の鳥3種類(ケイマフリ、ウミガラス、ウトウ)共通の特徴

天売島を訪れるバーダーの間で人気があるウミスズメ科の鳥たち3種類、ケイマフリ(Spectacled guillemot)、ウミガラス(Common guillemot)、ウトウ(Rhinoceros Auklet)の共通の特徴をご紹介します!

 

①魚は咥えたまま運びます

天売島では、80万羽生息するウトウが一斉に夕方帰巣する様子を観察するナイトツアーがシーズン中(4月ごろ~7月いっぱいくらいまで)が毎夕行われています。観察のメインとなるのはヒナに与えるために大きな魚を咥えてくる様子です。これは、ウミスズメ科に共通する特徴で、水の中で泳ぎながら獲物を飲み込むことのできる彼らは一度飲み込んだ獲物を吐き出してヒナに与えることが出来ません。そのため、大きな餌を咥えたまま飛び、巣まで持って帰ってきます。

魚を銜えて飛ぶウミガラス。

中でもウトウはヒナに餌を与えるタイミングが夕方の一斉に帰巣をする1日1回のみのため、銜えてくる魚の数がとても多いのです!

 

②羽が短く、飛び立つには助走が必要です

ウミスズメ科の鳥たちは海での潜水の際、水中でも羽ばたくようにして泳ぎます。その為、水中で抵抗にならないよう同じ大きさの他の鳥たちに比べて羽が短く、小さくなっています。

ケイマフリの羽。

ウトウの羽の大きさと、天敵・ウミネコの羽の大きさを比べると一目瞭然です。

このため翔能力も高くなく、空中では羽ばたく回数が同じ大きさの鳥に比べて非常に多いのが特徴です。また、海に浮いている状態から大空へ飛び立つ為には勢いをつけるため助走が必要です。

中でも助走の際に赤い足の輝くケイマフリの姿は、非常に美しいです。目の前で、ケイマフリの飛び立ちを観察できるのは海鳥観察用の小型ボート「ケイマフリ号」の早朝クルーズだけです。天売島にいらっしゃった際はぜひこの美しさを体感してください!

「ケイマフリ号」から海鳥を至近距離で撮影。「ケイマフリ号」は海鳥撮影に最適のボートです。

”天売ブルー”の海に浮かぶケイマフリ号。

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Islaand, Hokkaido

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海鳥の聖域・天売島で繁殖する海鳥たち(北海道)

2023年の初夏を天売島で過ごした姫野より、まさに「海鳥の聖域」と呼ぶにふさわしい天売島で繁殖する海鳥たちを紹介いたします。

ウミガラス(オロロン鳥)英名:Common murre, Common guillemot

足が体の後方にあるためペンギンのような見た目が特徴的です。日本国内では天売島の赤岩近くにある崖の洞窟1か所のみで繁殖します。繁殖場所の洞窟を観察できるのは海上からのみになりますが、赤岩展望台などから海上に浮かぶ姿も確認できることもあります。2002年には13羽まで数を減らしましたが、今では100羽を超え、数は増加傾向です♪♪

ウミガラス

ウミガラス

 

ケイマフリ 英名:Spectacled guillemot

赤い足と赤い口の中がとってもキュートなケイマフリは、天売島南西~北側にかけて広がる崖の隙間で繁殖します。水面を走るように助走をつけて飛び立つ瞬間は、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの真っ赤な足が最も美しく輝く瞬間の一つです。早朝の海鳥観察用小型ボートのケイマフリ号では、すぐ目の前で観察できます。

赤い足で海面を蹴って助走するケイマフリ

赤岩展望台より

 

ウトウ 英名:Rhinoceros auklet

英名のrhinocerosは、サイを意味しその名の通り天売島にやってくる4月~7月の繁殖期の時期にのみサイの角のような突起物が現れます。天売島では、現在80万~100万羽ほど繁殖をしているといわれており、夕方日暮れと共に一斉に帰巣する姿は圧巻です。鳥の仲間では珍しく、陸上に穴を掘って巣を作るため、帰巣の際には比較的近くで観察できるのも魅力の一つです。

夕日の中、帰巣するウトウ

雛に魚を運ぶウトウ

 

ウミスズメ 英名:Ancient murrelet

天売島では、毎年5月下旬から6月上旬にかけて海鳥観察用小型ボートのケイマフリ号から姿が確認されています。多いときは10羽ほどの群れを形成し、動物プランクトンなどを捕食しています。潜水頻度も高く体も小さいため、波のうねりが高い日の観察は非常に難しいです。日本国内での繁殖は天売島のみと言われています。

ウミスズメ

ウミスズメ

 

ヒメウ 英名:Pelagic Cormorant

普段は外洋に生活するウの仲間で、天売島にやってくる繁殖期は全身の羽が非常にきれいな光沢を纏い、嘴の根元は赤く染まります。非常に細かい巣材を唾液や泥を使って固めながら、崖のちょっとしたでっぱりや窪みに巣を作ることが出来るため、哺乳類などの天敵は巣に近づくことが出来ません。

ヒメウの巣 モフモフの雛の姿も

巣材を運ぶヒメウ

 

ウミウ 英名:Japanese cormorant

日本全土に広く分布するウの仲間。繁殖期には、頭の周りが白くなります。ウの仲間は視界の悪くなる水中深くに潜って狩りを行うため、暗視時に見やすい青色の瞳をしています。水中で泳ぎやすいように体表の油分が少なく、泳いだ後は体を乾かすために岩場で羽を広げる姿が観察できます。

ウミウ

ウミウ

 

ウミネコ 英名:Black-tailed gull

黄色い足と黒い帯の入った尻尾が特徴のカモメの仲間。天売島では近年、急激に数を増やしており推定巣数は2年前(2021年)の約2倍にあたる5000個(2023年)ほどと推定されています。ウミネコの一大繁殖地になっている黒崎海岸は、フンで黒い岩が真っ白になったため「白崎海岸」と呼ばれるほどです。

ウミネコ

ウミネコ

 

オオセグロカモメ 英名:Slaty-backed gull

ピンク色の足と真っ白な尻尾が特徴の大型のカモメ。天売島では生物ピラミットの頂点に君臨する生き物で、体長38cmほどのウトウの成鳥をも丸飲みします。その他、ウミネコの雛、マムシ、ウニなども大好物で町中にウニの殻が落ちていたらこのオオセグロカモメが食べた残骸であることが多いです。

ウニを食べるオオセグロカモメ

このオオセグロカモメ、ウトウを丸飲みした直後で、口から翼があふれ、胸がウトウで膨れています!!

 

Photo & report  : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Island, Hokkaido, Japan

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チャガシラカモメが超かわいい!渡りの季節のカルピティヤ(スリランカ)

2月に訪れた、渡り鳥の季節も終盤に入ったカルピティヤ。カルピティヤは細長い半島で本島とのとの間に大きなラグーンがあり、ラグーン内の島や砂洲では渡りのアジサシ、カモメたちが愛らしい光景を見せてくれました。

カルピティヤ外洋側、ベンガルアジサシ Lesser Crested Tern が羽繕い中。

カルピティヤのラグーン側の砂洲です、チャガシラカモメ Brown-headed Gullの群れが!!思わずボートから海に出て、歩いて砂洲へとアプローチ。

オニアジサシ (Caspian Tern)、ベンガルアジサシ (Lesser Crested Tern) いずれも冬の渡り鳥です。

そこに加わるのがチャガシラカモメ Brown-headed Gull。チャガシラカモメはタジキスタンなど中央アジア高地から内モンゴル・オルドス地方にかけて繁殖し、冬にインド亜大陸の湖沼や海岸に渡ってきます。多くの他のカモメと同様に冬は群れでいて、海岸から遠くない場所にいます。

この数 ♡ みんなで同じ方向を見て並んでいる姿 ♡(。・ω・。)ノ♡

海に浮かぶチャガシラと砂洲のチャガシラのフォルム !♡!

本当にきりがない状態です・・・!♡!

近寄りすぎると・・・飛び立っていきました、😿。

海上のオニアジサシ Caspian Tern。

ベンガルアジサシ Lesser Crested Tern。

カルピティヤとラグーンの島周りにはマングローブ林もたくさん。

潮の引いたマングローブ林にいるシロチドリ Kentish Plover。スリランカでみられるシロチの多くはスリランカで繁殖しています。

そして、せっかくなので私たちが泊まったドルフィンビーチリソートの写真です。コロナ前のツアーでは同系列のバーリーフに泊まっていましたがコロナで事情が変わり、今回は姉妹店のドルフィンビーチに。そして想像した以上に素敵な場所でした!

海岸からの夕日。

南国らしい、セッティングとトワイライトカラー。

素敵な、開放的なダイニング。

そして極上の一品、前菜に出た「ツナ」のたたき?ミキュイ?なんせ今回の滞在20日間の中で一番美味でした♪♪

 

Photo& Text  :Mariko SAWADA

Observation: Feb 2023, Kalpitiya, Sri Lanka

*西遊旅行のスリランカツアーはこちら。

*西遊旅行の現地支店 Saiyu Lanka ホームページ 西遊ランカはスリランカ全般の手配のほか、ワイルドライフに特化しています。撮影や観察の手配のお問合せ、お待ちしています。

ヒメウミガメ Olive Redley(カルピティヤ、スリランカ)

2月に訪れたスリランカ西海岸のカルピティヤ。以前、この海域ではイルカの大群を見たことがありますが、今回はあまり出会うことができず、ヒメウミガメとの遭遇が何度もありました。

ヒメウミガメは、ウミガメの中では最小(甲長50〜60cm)です。オスよりもメスの方が体が大きくなります。日本では1967年までこのLepidochelys olivaceaを「アカウミガメ」と呼び、日本で産卵していると考えていました。調査の結果、異なる種であることがわかり、この種がウミガメとしては小さいことから「ヒメウミガメ」となりました。

ボートが近づいてきても絶対に離れないオス。ベンガル湾では1~3月の繁殖期に母浜に近い沿岸に現れ、そこでオスとメスが出会い交尾をします。私たちが見たのは2月、まさに繁殖期真っただ中。1日に8頭見た日もありましたが、これはこの季節ならではの光景だったようです。メスは1~2年おきに繁殖しているようですが、オスは毎年繁殖していると考えられます。

爪でしっかり押さえつけています。爬虫類ですね~。

水中の様子。

この子はコバンザメを2匹もつけていました。ちなみにコバンザメはサメとは一切関係なくススキ目コバンザメ科の魚で世界に2種存在します。

ヒメウミガメはスリランカでは西・南東部の海岸でみられ、南東海岸のクマナ国立公園のビーチは集団産卵地になっています。

クマナ国立公園のウミガメ保護センター。スリランカの西~南部海岸にある観光客向けのカメセンターではなく、国立公園内にある施設です。

彼らの管理する海岸ではこれまでにヒメウミガメの産卵が25か所(多い子は140個産んだそうです)、そのほかタイマイ(Hawksbill)もここで産卵します。アオウミガメ(Green Sea Turtle)はここでは希だそうです。

今年はなんと非常に珍しい、オサウミガメ(Leatherback)の産卵があり、2023年の3月8日に子ガメが出てくるのを楽しみにしているそうです。これは本当に貴重。

国立公園レンジャーは、ウミガメの産卵の後、ジャッカルやイノシシ、ベンガルオオトカゲ(Bengal Monitor Lizard)が卵を食べないように、保護区域に移動させます。左隅から上陸した順番に並べてありました。一番左端は私たちが訪問した日の朝、子ガメが出てきたそうです。最初の2時間はいろんな方向に向かっていき危ないので保護し、その後、夜明け前に海へ旅立たせるとのことでした。

ヒメウミガメというとコスタリカの「アリバダ」、何万ものヒメウミガメが集団産卵を行うことで知られています。実はスリランカに近い東インド・オリッサ州のガヒルマータ・ビーチでも「アリバダ」が見られるそうです。ちなみにこの「アリバダ」という言葉、スペイン語のArribada 入港・到着という言葉から来ています。

さて、カルピティヤに話は戻ります。せっかくなので観察の様子も。

いざ、カルピティヤの海へ。ここでは紹介していませんが、砂洲には渡りのオニアジサシ( Caspian Term)、ベンガルアジサシ(Lesser Crested Tern)、チャガシラカモメ(Brown-headed Gull)、ホバリングするハシブトアジサシ (Gull-billed Tern)など海鳥も満喫です。

途中で出会った漁師さんが見せてくれた漁。右がシイラ、左がカツオです。ちなみにスリランカではカツオはTuna Fish。日本以外の世界で作られるツナ缶詰の材料の多くはカツオなんだそうです。

ボートが離発着する海岸。桟橋はなく、ビーチから船が出ます♪

ビーチの食堂でランチ。スリランカのフライドヌードル。さすがカルピティヤ、海鮮三種盛りでした!ビール飲みたかったですが、ぐっとがまんして午後のラグーンの探鳥へ。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Pbservation : Feb 2023, Kalpitiya, Sri Lanka

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