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天売島、渡り鳥の季節

2024年5月に天売島で観察した野鳥たちの紹介です。

渡り鳥たちにとって忙しいこの時期、天売島では毎日といってよいほど鳥たちの顔ぶれは変わっていきます。今週は島の各地にたくさんいた種でも、次の週には全くいなくなってしまいます。渡りの通り道にある5月の天売島は、毎日の探鳥が本当に楽しみです。

まずは5月初め、桜が満開を迎えるころにやってくる鳥たちです。天売島では5月に桜が咲きます。メジロとウソが懸命に餌を啄んでいました。

メジロ Japanese White-eye(Zosterops japonicus)

ウソ Eurasian Bullfinch(Pyrrhula pyrrhula)

針葉樹林では、オオルリ(Blue-and-white Flycatcher)、ルリビタキ(Red-flanked Bluetail)などの青い色の鳥たちが輝きます。

オオルリ  Blue-and-white Flycatcher  (Cyanoptila cyanomelana)

ルリビタキ  Red-flanked Bluetail  (Tarsiger cyanurus)

少し開けた場所には、シメがいました。

シメ Hawfinch(Coccothraustes coccothraustes)

餌となる種子が多い場所には、マヒワ(Eurasian Siskin)やベニヒワ(Common redpoll)、ベニマシコ(Rosefinch)、アトリ(Brambling)もやってきます。アトリは、島のいたるところで観察できますが島に滞在するのは1週間ほどです。

マヒワ Eurasian Siskin  (Carduelis spinus)

ベニヒワ Common redpoll  (Carduelis flammea)

ベニマシコ  Long-tailed Rosefinch  (Uragus sibiricus)

アトリ  Brambling  (Fringilla montifringilla)

海岸線の水たまりには、アカエリヒレアシシギ(Red-necked Phalaropeの姿が。

アカエリヒレアシシギ   Red-necked Phalarope  (Phalaropus lobatus)

人家の裏にやってきたムラサキサギ(Purple heron)。

ムラサキサギ  Perple heron  (Ardea purpurea )

草原では、カッコウ(Common cuckoo)の声が響き渡ります。

カッコウ   Common cuckoo  (Cuculus canorus)

シノリガモ(Harlequin duck)も海岸線で確認できました。

シノリガモ   Harlequin duck  (Histrionicus histrionicus)

次々に天売島を訪れる野鳥たち!今年はバライロムクドリ(Rosy Starling)もやってきました!

マミチャジナイ   Eyebrowed Thrush  (Turdus obscurus)

コサメビタキ   Asian brown flycatcher  (Muscicapa dauurica)

クロツグミ   Japanese Thrush  (Turdus cardis)

オシドリ   Mandarin duck  (Aix galericulata)

バライロムクドリ   Rosy Starling  (Sturnus roseus)

5月の後半~6月の前半は天売島に渡ってきて繁殖をする鳥たちが恋人探しや巣作りに励み大忙しです。

トラフズク   Long eared owl  (Asio otus)

ノゴマ   Siberian rubythroat  (Calliope calliope)

コムクドリ   Chestnut-cheeked Starling  (Sturnus philippensis)

ヤマシギ   Eurasian Woodcock  (Scolopax rusticola)

ノビタキ   Siberian Stonechat  (Saxicola torquata)

オーストラリアから飲まず食わずでやってくるオオジシギ(Latham’s Snipeなども比較的観察しやすい季節です。

オオジシギ   Latham’s Snipe  (Gallinago hardwickii)

天売島では、渡り鳥たちが多くやってくる5月は、毎日といってよいほど顔ぶれが変わります。美しい鳥たちと運命の出会いを求めてぜひ5月の天売島へ!

 

Photo &Text : Wataru HIMENO

Observation:May 2024, Teuri Island, Hokkaido

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春の天売島のワイルドライフと70年ぶりの群来(くき)

2024年4月15日、北海道の天売島では70年ぶりとなる「群来(くき)」が観察されました。島の人は大喜びで撮影し、そしてニシンを収穫しました。島の宿ではニシンの煮つけと数の子がふるまわれました。今、島にいる人の中にニシンが大漁に獲れた時代を知る人はいません。

春の天売島で観察したワイルドライフをご紹介します。羽幌港から天売島への航路ではオオハム(意外と多い)、ウミスズメ、そしてウトウ、ケイマフリを見ることができました。

天売島では、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ウミスズメ、ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウ、ヒメウの8種の海鳥が繁殖しています。4月、もうその営みは始まっています。黒崎海岸ではウミネコが繁殖し、そのエリアを拡大中。4月20日ごろは交尾(または疑似交尾)があちこちで行われていました。

交尾(または疑似交尾)するウミネコ

ウミネコの繁殖地が拡大傾向にある黒崎海岸

海鳥観察舎からウミウの繁殖地を見ると、もう雛に給餌していました。ウミウは繁殖が早い時期に始まる海鳥ですが、早くなってきている傾向にあるようです。断崖の上の斜面ではオオセグロカモメが繁殖し、交尾している様子も見られました。それにしてもこの付近もたくさんのウトウの営巣地があります。

断崖に営巣するウミウ。ほとんどの巣に雛がいました。

前浜漁港付近ではウミアイサの姿が。ウミアイサは冬鳥として天売島へ渡ってきます。彼らももうすぐ北へと渡って行きます。

ウミアイサのペア

そしてシノリガモ。天売島で一番目にするカモの仲間です。前浜漁港付近やロンババ浜でよく見かけました。シノリガモは年中天売島で見られるそうですが、断然冬の時期が観察しやすく、そして美しいです。

シノリガモ ロンババの浜にて

風が少し穏やかになった日の朝、島の写真家・ 寺沢孝毅さんの操船する小型ボート「ケイマフリ号」で海へ出ました。小型ボートから見たのは、まさに春の天売島の景色。

港を出てすぐに出会ったトド。北海道へは冬場に千島列島方面から回遊してきます。若いオスが1匹でいました。ニシンが訪れるようになった天売島、人だけでなく野生動物も集まります。豊かな海の象徴です。

トドもまもなく北上していきます

ボートから黒崎海岸のウミネコ繁殖地を海から眺め、赤岩方面へ。ウミガラス繁殖地ではウミガラスの姿は見られませんでしたが、付近の海上を4羽のウミガラスが飛んでいるのを見ました。

岩礁にはたくさんのゴマフアザラシたちがいました。乾燥してふわふわしています。

船に注目するゴマフアザラシ

鳴き交わす美しい声が洋上に響きます、ケイマフリの声です。海岸の岩場では求愛のしぐさが愛らしいペアの姿が。

求愛するケイマフリ

営巣する断崖近くの洋上のケイマフリの群れ

愛らしいケイマフリの赤い脚

最後に、西遊旅行の天売営業所(天売島ネイチャーライブ)のスタッフが4月15日に撮影した「群来(くき)」の様子です。

「群来」で白濁したロンババの浜

産卵は春に起こり、水深 1m 以下の浅い海でメスが卵を海藻に産み付け、オスが放精して受精させます。この放精によって海水が白濁する現象を群来(くき)と呼びます。

海藻に卵を産み付けるニシン

お世話になった萬谷旅館さんで出たニシン料理。新鮮なニシンは大変美味しいものでした。

ニシンの煮つけ

ニシンの卵、「数の子」

私自身、アラスカのシトカまでニシンの大産卵に集まるワイルドライフを求めて行き、帰ってきたばかりでした。アラスカでは“Herring Run”の名のもと、シトカの海に集まるザトウクジラ、コククジラ、ハクトウワシ、トドなど生き物と遭遇するワイルドライフツアーが大人気です。

日本の「群来」もいつかHokkaido’s Herring Runとして注目を集める日が来るのでしょうか。いやいや、その前に、まず毎年ニシンが産卵に来てくれる豊かな海を取り戻すことが大切です。来年もニシンが戻ってきてくれることを願います。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Photography of Herring spawning : Midori KUDO

Observation : April 2024, Teuri Island , Hokkaido

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天売島「海鳥塾」 海鳥のこと、環境のこと

天売島 海鳥塾  (2)

2021年の7月上旬、天売島の自然写真家・寺沢孝毅さんの案内で4日間の「天売島・海鳥塾」を実施しました。これまでも西遊旅行では天売島を目的とするツアーを行ってきましたが、4日間天売島のみに滞在し、海鳥のこと、環境・海洋ごみ問題、島の暮らしに触れる旅は初めての企画です。

4日間どうなるか心配なところもありましたが、お天気にも味方され、朝・夕のケイマフリ号からの海鳥観察、ウトウの帰巣の様子、フットパス・ウォーク、海岸清掃、漁船での釣り、島の海の幸炭火焼、寺沢さんの海鳥レクチャーと盛りだくさんでした。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (7)

ケイマフリもたっぷり観察。 >ケイマフリの観察レポートはこちら

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (11)

オロロン鳥ことウミガラスも観察。今年は80羽を越えてるそうです。 >ウミガラス観察レポートはこちら

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (15)

ウトウもしっかり観察。今年の繁殖は、栄養価の高い魚が獲れず雛が育たなかったため危機的な状況となってしまいました。一羽でも多く巣立つことを祈るばかりです。

>ウトウの帰巣のレポートはこちら  >岩に乗るウトウのレポートはこちら

ウニ漁とウトウ 天売島 海鳥塾 (1)

この季節はムラサキウニ漁が行われています。風のない、ベタ凪の日はウニ漁船が朝6時30分に一斉に出漁します。ウトウ、ケイマフリとウニ漁船、天売島らしい風景です。

天売島 海鳥塾  (7)

これはウミネコの幼鳥を食べるオオセグロカモメです。ウミネコ繁殖地で観察していたとき、ウミネコがハシブトガラスに警戒して騒ぎ出したすきを狙ってオオセグロカモメが幼鳥を襲いました。つつかれて、やがて動かなる幼鳥。ここまで育ったのに・・・残念ですが、こうやってオオセグロカモメの命が繋がれていいます。小型の海鳥の繁殖地ではハシブトガラスやオオセグロカモメの捕食圧が気になりました。

天売島 海鳥塾  (1)

地元の漁師さんにお世話になり、水深15mほどの砂地でヒラメを狙いました。40分ほどで大きいヒラメ一匹とカレイを3匹を釣りましたが、このヒラメは5キロあり30人分のお刺身が取れます。

天売島 海鳥塾  (3)

すぐにうろこを取り、鰓を処理して締めます。取ります。スーパーの「ヒラメの刺身」しか知らない我々には、生息域から釣り上げて、締めて、解体して切り身になるまでの行程を学ぶことになりました。

天売島 海鳥塾  (4)

「天売島おらが島活性化会議」の協力も得て海岸清掃をしました。ネットや縄は岩の間に入り込んで取り出すのが大変です。次回はもっと準備して取り組もうと思いました。

天売島 海鳥塾

さえずるケイマフリ、ケイマフリが大好きな岩場にもゴミが。まずは、海鳥が繁殖する岩場のロープやネットを取り除きたいです。海に出たときに浮いているゴミも取りましたが、やはり細かくなったプラスチック<マイクロプラスチック>が浮遊していました。

天売島 海鳥塾  (2)

そして最後の夜は、「天売島おらが島活性化会議」による天売島の海の幸の炭火焼きを、「宇宙館」の庭でセッティングしてくださいました。採れたばかりの天売島のムラサキウニです。

天売島 海鳥塾  (1)

天売島の甘えびです。天売島の沖に日本海で有数の甘えびの漁場があります。お刺身と炭火、エビ汁でいただきました。

天売島 海鳥塾  (3)

いよいよ炭火焼です。天売島のホタテ貝、天売島の水だこの頭、ムラサキウニ。さらに焼尻島の「幻のめん羊サフォーク」の塩焼きとジンギスカンも加わり、天売島の食体験、すごすぎました。

天売島 海鳥塾  (4)

夕食後、島の宿・大一からの夕景を堪能。利尻富士が美しく見えました。

天売島 海鳥塾  (5)

そして天売港からの星天。

天売島 海鳥塾  (8)

たくさんの思い出と経験をいただき、天売島をあとにしました。

「宇宙館」と寺沢孝毅さん、「島の宿・大一」のみなさん、「天売島おらが島活性化会議」と島のみなさまに心より感謝です!!

 

Text : Mariko SAWADA

Photo : Mariko SAWADA, Wataru HIMENO

Observation : July 2021, Teuri Island, Hokkaido

Special Thanks : 自然写真家・寺沢孝毅さん