タグ別アーカイブ: ミナミセミクジラ

ミナミセミクジラの白い赤ちゃん(バルデス半島)

2024年9月のバルデス半島・ヌエボ湾では、5頭の白いミナミセミクジラの赤ちゃんが産まれました。

5日間のクルーズ中、白い個体に3日間出会えました。

写真を見返してみると模様が似ているという点と、出会った場所も近いという点から、同じ個体だったのかもしれません。とてもフレンドリーで可愛らしい子でした。


ボートの間近に寄ってきたり


ボートの真下をくぐったり


アルゼンチンのパタゴニア北部にあるバルデス半島は、ミナミセミクジラの世界最大の繁殖地で、毎年1,500頭以上のミナミセミクジラが繁殖のためにバルデス半島に訪れます。

ミナミセミクジラの研究によると、新生児のうち3~5%程が白い赤ちゃんだと推定されていますが、大きくなるにつれて灰色に変化していきます。英語でグレイモルフ(Grey morphs)やブリンドル(Brindle)と呼ばれます。日本語では灰色型でしょうか。白い個体はオスのみに表れ、メスの場合は、部分的に灰色になる個体(Partial grey morph)しか見つかってないようです。

同じセミクジラ属のタイセイヨウセミクジラとセミクジラでは灰色型は記録されていないとのことで、ミナミセミクジラ固有の現象のようです。

母クジラが深い海(今回の水深は110m程のエリア)に潜り、採餌をしている間に一人で過ごす子供たち。子供だけのタイミングで、ブリーチングやペッグスラップなど活発な行動を起こすことが多いです。


子供ながら迫力のブリーチング


テイルスラップの練習のようなことも


お腹を上にして泳いでみたり


白いので、胸びれの中の指まではっきリと見えます。
ミナミセミクジラの指は人間と同じ5本とのことですが、そこまではわかりません。


白い個体は、海の上からも見つけやすいため、マゼランカモメに狙われやすい気がしました。背中の傷が目立ちます。

 

今回出会った白い個体以外にも、パンダ柄のような白と黒が入り混じった個体も見られました。こちらはホワイトブレイズ(White blaze:白いぶち)と呼ばれ、また別の遺伝子が影響したミナミセミクジラのようです。


パンダ柄のブリーチング


こちらの個体も赤ちゃん(右)で、お母さんクジラ(左)と一緒に泳ぎます。


お母さんクジラの胸びれに抱きかかえられるようにして甘えています。


また別の日の夕暮れに出会った白い個体。
模様が少し違うので、また別の個体だったかもしれません。

 

Image & text : Wataru YAMOTO

Observation : Sep 2024, Valdes Peninsla, Argentina

参考文献
Cellular and ultrastructural characterization of the grey-morph phenotype in southern right whales (Eubalaena australis)

関連記事

Youtube : ミナミセミクジラのスキムフィーディング

Youtube : オタリアと遊ぶミナミセミクジラ

Youtube : ミナミセミクジラの海・ヌエボ湾

西遊旅行のワイルドライフツアー一覧

ミナミセミクジラの親子と水面行動(バルデス半島)

ミナミセミクジラは生まれた海へ戻る性質があります。オスは決まった回遊パターンを持ち、メスはおよそ3年に一度、生まれた海へ戻り出産・子育てをします。バルデス半島へは6月~12月の間にミナミセミクジラがやってきて、9月下旬になるとオスは南極海へと旅立ち、メスと子供も12月半ばには旅立っていきます。

9月のヌエボ湾で観察した母子クジラの海面行動。赤ちゃんを遊ばせる母クジラの姿、あまりにも愛おしいものです。

クジラの子供が甘えてる!ミナミセミクジラの親子の時間

こちらは、母クジラが深い場所へ採餌に行っている間、海面で遊んでいるところです。ブリーチしたり、ヒレをバタバタさせたり・・・。母クジラの浮上に合わせて泳いでいきます。

ミナミセミクジラの子供の水面行動

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2022, Valdes Peninsla, Argentina

関連記事

Youtube : ミナミセミクジラのスキムフィーディング

Youtube : オタリアと遊ぶミナミセミクジラ

Youtube : ミナミセミクジラの海・ヌエボ湾

西遊旅行のワイルドライフツアー一覧

ミナミセミクジラへのカモメの攻撃(バルデス半島)

バルデス半島のミナミセミクジラを観察している時、とても気になることがあります。それは「カモメによる赤ちゃんへの攻撃」。赤ちゃんクジラは呼吸のために頻繁に海面にいるのでそのターゲットとなり、赤ちゃんが浮上するとすぐに背中に降りて、まさに背中の肉を食いちぎっていくのです。母クジラが一生懸命それを阻止しようと頭を持ち上げています。

ミナミセミクジラへのカモメの攻撃

資料によると、最初にこういった行動が観察されたのは1970年代。カモメがミナミセミクジラの背中をついばんでいる様子が観察されました。当時、背中にカモメに襲われたキズを持っている母子クジラは2%だったのが、2011年の調査では99%、ほぼすべての母子クジラがキズを負っていたのです。

赤ちゃんクジラの背中をつうばむカモメ。

傷だらけの赤ちゃんの背中。

頭をあげてカモメを追い払おうとする母クジラ。

クジラの親子は呼吸だけでなく、赤ちゃんの遊びや育児で海面で過ごす時間が長く、それがターゲットになっています。野生動物間のこととはいえ、とても胸が痛い事象です。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2022, Valdes Peninsla, Argentina

資料はdailymail.co.ukの “Seagulls are eating baby whales ALIVE: Birds attack calves when they come to the surface to breathe”を参考にしています。

関連記事

Youtube : ミナミセミクジラのスキムフィーディング

Youtube : オタリアと遊ぶミナミセミクジラ

Youtube : ミナミセミクジラの海・ヌエボ湾

西遊旅行のワイルドライフツアー一覧

ミナミセミクジラの採餌、スキムフィーディング

2022年9月のバルデス半島・ヌエボ湾には、1,480頭のミナミセミクジラが繁殖・子育てのために集まりました。6~10月にバルデス半島にやってくるミナミセミクジラは繁殖や哺育中心の生活をしていますが、もちろん摂餌もします。南半球の夏に高緯度海域で索餌中心の生活を送るような規模ではありませんが、ここではカイアシ類をこしとる、スキムフィーディング Skim Feedingが見られます。

Skim feeding Southern Right Whale

この日の水中の撮影はボートからGo Pro入れただけなので、撮影している間はどんなのが映っているか見れません。水から上げてチェックしたとき、口を開けたミナミセミクジラが映っていて、肉眼では見れてないけど、それはそれはうれしいものでした。

岸の近くの浅い場所で表層のカイアシ類 ( Copepod ) を摂餌しているミナミセミクジラ。このフィーディング・グラウンドには20頭近くが集まっていました。

ヒゲがしっかり見えます。

Photography by Chizuko Murata

めっちゃ真正面。もうクジラか何か、わからないですね。

水深100m以上の採餌海域ではお母さまクジラが尻尾をあげて深く戻り、子クジラがそのあいだブリーチングしたり、尻尾バタバタさせて待っています。

尻尾を大きくあげて潜航するミナミセミクジラのお母さま。

母クジラの海中採餌中に、何十回もブリーチを見せてくれた子クジラ。母クジラが戻ってくると水面行動をやめ、母クジラに寄り添うように泳ぎます。

気が付くともう港に戻らないと行けない時間に。宿に戻ってからの写真整理も大変です。

 

Image : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2022, Valdez Peninsula, Patagonia, Argentina

関連記事

Youtube : オタリアと遊ぶミナミセミクジラ

Youtube : ミナミセミクジラの海・ヌエボ湾

西遊旅行のワイルドライフツアー一覧

ミナミセミクジラの海(4) バルデス半島・パタゴニア

ミナミセミクジラ バルデス半島 southern right whale(3)

9月のバルデス半島、プエルトピラミデスのミナミセミクジラ Southern right whaleです。プエルトピラミデスやプエルトマドリンのあるヌエボ湾では6月ごろから12月上旬までミナミセミクジラを観察することができますが、ピークは8~9月。8月は船で湾に出るには寒すぎるので、9月はクジラも多く少し暖かくなる季節です。

バルデス半島のワイルドライフ ミナミセミクジラについて

9月の海に出ると、3~4年目くらいと思われる若い個体が興味深々でボートに近寄ってくることがあります。親子クジラの中にはボートを嫌がって避ける親子もいれば、まるで子供クジラに「ボート」を教えているかのように近づいてきてボートの回りに長滞在するクジラもいます。

こんなしぐさを見ていると、本当にミナミセミクジラは「特別なクジラ」だと感じるのです。

今回のツアー中、およそ2時間を一緒に過ごした若いミナミセミクジラがいました。この季節は透明度はよくありませんが接近したミナミセミクジラを水中で撮影した動画です。

ミナミセミクジラ バルデス半島 southern right whale(6)

ボートに近づいてきて顔を出す前に頭を持ち上げました!

ミナミセミクジラ バルデス半島 southern right whale(7)

近づいてきてこっちを見ています!!!白いかたまり(カロシティ)の下にあるのが目。

ところで、ミナミセミクジラを特徴付けるこの白いかたまりはカロシティCallositiesと呼ばれます。このカロシティの機能はよくわからないそうですが、ミナミセミクジラの頭部にある角質化した皮膚の隆起でクジラジラミやフジツボの仲間が付着しています。

ミナミセミクジラのカロシティ (1)

頭を水面に出したミナミセミクジラのカロシティ。

ミナミセミクジラのカロシティ (2)

さらに拡大するとこんな感じ。クジラジラミ大集合でした!

Movie, Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子 協力:Yoko KADONAGA 門永洋子

Observation : Sep 2017 , Valdes Peninsula, Chubut – Argentina

Reference : Hector Horacio Casin

※バルデス半島のミナミセミクジラの水中撮影は許可の取得が必要です。

★2018年ツアー情報 パタゴニアの海、バルデス半島を訪れるコースはこちら!

パタゴニア・バルデス半島自然紀行
【特別許可取得】3日間のチャーターボートでミナミセミクジラの海へ

ミナミセミクジラの海(3) バルデス半島・パタゴニア “メイティング・グループ”

ミナミセミクジラ メイティンググループ バルデス半島 Southern right whale mating group (1)

パタゴニア、バルデス半島のミナミセミクジラのメイティンググループの動画です。

ミナミセミクジラのメイティンググループは、1頭のメスとそれを追いかける複数のオスがグループになって交尾や活発な動きをしているグループ。ボートで近づくと揺れてこわくらい迫力があります。

ミナミセミクジラのメイティンググループ (ボート)バルデス半島・ヌエボ湾

今回は風のましな日にドローンでも撮影してみました。

ミナミセミクジラのメイティンググループ バルデス半島・ヌエボ湾(ドローン)

9月のヌエボ湾ではあちこちでメイティンググループを目撃することができます。10月になるとミナミセミクジラのオスは南極海へと移動をはじめるそうです。

Movie, Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Sep 2017 , Valdes Peninsula, Chubut – Argentina

Reference : Hector Horacio Casin

★2018年ツアー情報 パタゴニアの海、バルデス半島を訪れるコースはこちら!

パタゴニア・バルデス半島自然紀行
【特別許可取得】3日間のチャーターボートでミナミセミクジラの海へ

ミナミセミクジラの海(2) バルデス半島・パタゴニア  ”サンセットくじら”

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (5)

パタゴニア、バルデス半島でのミナミセミクジラの観察です。この日は太陽も雲もあり「サンセットくじら」狙えるかも・・・と日没までホエールウォッチング。

ちょうど交尾行動を終えたあとのメイティング・グループ(1頭のメスと複数のオスからなるグループ)がボートに近寄ってきました。

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (10)

ボートに近づいてくるミナミセミクジラ。全部で4頭!

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (1)

ぐっと近寄ってきます。

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (2)

興味津々。

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (3)

マテ茶を飲むクルーを見るミナミセミクジラ。

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (4)

船長とお話しするミナミセミクジラ。

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (6)

空が染まり始めました。

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (7)

「サンセットくじら」記念撮影。

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (12)

赤くなり染まり始めました。

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (13)

4頭のクジラがボートの周りを離れません。

ミナミセミクジラ 夕方のバルデス半島 Southern right whale in sunset (14)

絵葉書にあるような「サンセットの中のテイルアップ」は見れませんでしたが、むなびれを上げて見送ってくれました!

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Sep 2017 , Valdes Peninsula, Chubut – Argentina

Reference : Hector Horacio Casin

★2018年ツアー情報 パタゴニアの海、バルデス半島を訪れるコースはこちら!

パタゴニア・バルデス半島自然紀行
【特別許可取得】3日間のチャーターボートでミナミセミクジラの海へ

オタリアと遊ぶミナミセミクジラ(2) バルデス半島・パタゴニア

オタリアとミナミセミクジラ Otalia & Southern right whale

バルデス半島のヌエボ湾には何箇所かオタリア Southern sea lion のコロニーがありますが、このコロニー付近ではミナミセミクジラと出会うことが多いのです。

ミナミセミクジラはここで何をしているのでしょうか・・・国立公園のスタッフに聞いたところ「遊んでいます」と。確かに、ボートから見ても遊んでいるように見えます。

ドローンで上空から見てみました。

オタリアと遊ぶミナミセミクジラ1(ドローン) バルデス半島・ヌエボ湾

オタリアと遊ぶミナミセミクジラ2(ドローン) バルデス半島・ヌエボ湾

それは、気を失いそうになるくらい、素敵な光景でした。

Movie, Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Sep 2017 , Valdes Peninsula, Chubut – Argentina

Reference : Hector Horacio Casin

※バルデス半島でのドローン使用には特別許可の取得が必要です。

★2018年ツアー情報 パタゴニアの海、バルデス半島を訪れるコースはこちら!

パタゴニア・バルデス半島自然紀行
【特別許可取得】3日間のチャーターボートでミナミセミクジラの海へ

オタリアと遊ぶミナミセミクジラ(1) バルデス半島・パタゴニア

ミナミセミクジラ バルデス半島 southern right whale(4)

バルデス半島のヌエボ湾にはオタリア Southern sea lionのコロニーが何箇所かあります。そこではほとんどの場合、ミナミセミクジラがいます。国立公園のスタッフに聞いたら「遊びに来ている」と・・・。

ミナミセミクジラとオタリア southern right whale & South America sea lion (7)

プエルトピラミデスのコロニーに来ていたミナミセミクジラ。

ミナミセミクジラとオタリア southern right whale & South America sea lion (6)

顔をあげたり・・・

ミナミセミクジラとオタリア southern right whale & South America sea lion (4)

回転したり・・・

ミナミセミクジラとオタリア southern right whale & South America sea lion (5)

これはどう見ても遊んでいるように見えるのです。

ミナミセミクジラとオタリア southern right whale & South America sea lion (1)

オタリアたちはクジラだけでなく、ボートにも遊びに来ます。

ミナミセミクジラとオタリア southern right whale & South America sea lion (2)

寄ってきたオタリア、大きなうるうる目。

ミナミセミクジラsouthern right whale (1)

「白いクジラ」です!親子クジラもオタリアのコロニーに来ていました。ミナミセミクジラの子どもには時々白色の個体がいます。大きくなると灰色になります。

ミナミセミクジラsouthern right whale (3)

お母さんクジラも接近。

ミナミセミクジラsouthern right whale (4)

近寄ってきても決して触ってはいけません!

バルデス半島ではオタリアと泳ぐことができます。(この季節は寒いので7ミリのウェットかドライを着なくてはなりません)オタリアのコロニーで泳いでたら現れたミナミセミクジラ動画です。

ミナミセミクジラとオタリア(水中)バルデス半島・ヌエボ湾

透明度も悪く(オタリアのコロニー付近はきれいではありません)、尻尾だけでしたが、それでも幸せな光景。

Movie, Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Sep 2017 , Valdes Peninsula, Chubut – Argentina

Reference : Hector Horacio Casin

※バルデス半島での水中クジラの撮影には特別許可の取得が必要です。

★2018年ツアー情報 パタゴニアの海、バルデス半島を訪れるコースはこちら!

パタゴニア・バルデス半島自然紀行
【特別許可取得】3日間のチャーターボートでミナミセミクジラの海へ

ミナミセミクジラ大接近(バルデス半島、パタゴニア)

ミナミセミクジラ 接近 バルデス半島

バルデス半島ヌエボ湾のミナミセミクジラの観察。波のない、静かな日。ミナミセミクジラがボートに近寄ってきてくれた様子の動画をまとめてみました。

大接近!ミナミセミクジラ(バルデス半島)|西遊旅行

そしてふたたび大接近、今度は「メイティンググループ」、オス2頭、メス1頭の交尾グループでした。メスがボートに近づいてくるのでそれをおいかけるオス2頭。3頭のクジラが近づいてくるのはすごいです。

ミナミセミクジラ(バルデス半島)|西遊旅行

Video, Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Sep 2016 , Valdes Peninsula, Chubut – Argentina

Reference : Hector Horacio Casin,  Luis

★2018年ツアー情報 パタゴニアの海、バルデス半島を訪れるコースはこちら!

パタゴニア・バルデス半島自然紀行
【特別許可取得】3日間のチャーターボートでミナミセミクジラの海へ