この夏の一番幸せなできごとのひとつが、ベーリング海でコククジラGrey Whaleが私たちに見せた行動でした。
コククジラ Grey Whaleは体が灰色で、フジツボやエボシガイなどの寄生生物が体に付着しているのが特徴的なクジラ。大陸の沿岸部の比較的海の浅いエリアを南北に回遊しています。ここで出会ったコククジラたちは、夏はベーリング海の海で捕食し、冬はメキシコのバハ・カリフォルニアまで下り繁殖するグループです。
ウランゲル島への船旅の途中、ベーリング海のイティグラン島、セニャヴィナ海峡付近でゾディアック・ボートに乗りコククジラのグループを探しました。今日はあまり天気が良くなく、ゾディアックを走らせるととても寒い。
いました、コククジラたちです。
4頭が浅瀬で捕食中。まだらな体が特徴的。浅い海で、海底の泥や砂に済むカニなどをヒゲで漉しとって捕食します。
遊んでいるのか、尾びれをあげて水面をたたいています。コククジラのテイル・スラップ Tail Slup。
尾部の背面にある数個のコブ。背びれはありません。
あるゾディアック・ボートが動きをとめました。私たちの乗っていたゾディアックのリーダーが、「まさか」といいながら船を近づけます。そう、コククジラが、観光客に体を触らせているのです。
このコククジラのグループは、メキシコのバハ・カリフォルニアで「ホエール・タッチング(くじらにタッチ)」をしたことのあるグループでした。バハ・カルフォルニアでは観光客の乗る小船にコククジラが近づいてきて体を触らせてくれることがあり、「ホエール・タッチング」ができる場所として知られています。
ボートに近寄ってきました。ゾディアック・ボートを頭で押して遊んでいます。
こっちにもやってきました。
目の前で浮上、フジツボだらけです。
つかさずタッチ
潮を吹いて、私たちのゾディアックのまわりを移動。きちんとすべてのゾディアックに愛想を振りまいていきます。
冬にバハ・カリフォルニアで「ホエール・タッチング」を行うコククジラは、夏のベーリング海では「捕鯨対象」です。この地に暮らすチュクチやエスキモーの人々には「割り当て」があり、その数以下の捕鯨が認められており(商業捕鯨は認められていません)、今年もイティグラン島付近ではすでに2頭が捕獲されていました。そのため、この海域ではクジラたちは、船を見ると逃げていきます。
それなのに、ゾディアックボートを見て、バハ・カルフォルニアでのできごとを思い出したのか、近づいてきて遊んでくれたコククジラ。
言葉にならない、感激の瞬間でした。
Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子
Observation : Aug 2015 , Senyavina Strait & Yttygran Island – Bering Sea – Russian Far east
Reference : Lecture from Katya-Heritage Expedition, Wikipedia (JP,EN)
↓↓↓ ベーリング海峡越え、極東ロシア・チュコトカ半島、ウランゲリ島へのツアー2018 ↓↓↓
ベーリング海峡を越えて ウランゲリ島への冒険クルーズ
ベーリング海を望むチョコトカ半島沿岸から「北極のガラパゴス」と呼ばれるウランゲリ島へ