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マウンテンゴリラ Mountain gorilla(ヴィルンガ山地・ルワンダ)

今年 (2024年) の3月にウガンダのブウィンディ原生国立公園でマウンテンゴリラを観察、そして8月にはルワンダのヴィルンガ山地(ヴォルケーノ国立公園)でマウンテンゴリラと再び出会うことができました。

今回、私たちが出会えたのは世界で最も有名なマウンテンゴリラとも言われている「タイタス(Titus)」のグループでした。

タイタスグループのゴリラたち

野生ゴリラ研究の開拓者であるダイアン・フォッシーの調査対象としても有名なグループで、フォッシーのお気に入りのゴリラであるディジットの甥っ子にあたるのがタイタスです。また日本のゴリラ研究の第一人者である山極壽一さんが2年間タイタスと一緒に過ごしていたそうです。その他ドキュメンタリーなども多数出ていたタイタスですが、2009年に亡くなってしまったので、今回出会ったのはタイタスの子供にあたるPato(パト)とUrwibutso(ウルウィブツォ)の2頭がシルバーバックになります。

ヴィルンガ山地のシルバーバック

ブウィンディ原生国立公園とヴィルンガ山地では同じマウンテンゴリラではありますが、見た目がだいぶ違います。それぞれ「ブウィンディ個体群」と「ヴィルンガ個体群」と呼ばれ、一時期は両者を別の亜種とすることも検討されていたほどです。

ブウィンディ個体群は主にウガンダに生息し、ヴィルンガ個体群はコンゴ・ルワンダ・ウガンダの三ヶ国国境にまたがって生息しています。

ヴィルンガの個体は全体的に体毛が濃く長い、特に腕の毛が長いです。
逆にブウィンディの個体は体毛が薄く短めです。
(↓2024年3月のブウィンディの写真)

毛の薄いブウィンディのマウンテンゴリラ

ブウィンディの標高1,200m~2,600mとヴィルンガの標高2,200m~3,600mと生息する標高に違いがあります。標高の高いヴィルンガの方が気温が低いため、毛が長くなっていると考えられます。

ふさふさの毛が生えるヴィルンガの子供ゴリラ

今回出会った「ヴィルンガ個体群」はマウンテンゴリラに分類されていますが、最近の遺伝子の研究によると、同じマウンテンゴリラのブウィンディ個体群よりも別の亜種であるヒガシローランドゴリラ(グラウアーゴリラ)と近い関係にあると言われています。

木の芽を食べる赤ちゃんゴリラ

標高の低いブウィンディにはさまざまな樹木や植物が生い茂る熱帯雨林でフルーツも豊富、対して標高の高いヴィルンガはフルーツが少ない木が生い茂るだけです。そのためブウィンディの個体は果実食と葉食の組み合わせ、ヴィルンガの個体は葉食中心となっています。そのことが顔にも表れていて、固い繊維質の葉や茎を食べるヴィルンガの個体の方が顎がしっかりとしています。

顎がしっかりしているヴィルンガのゴリラ

鼻にも違いがあり、ヴィルンガのゴリラの鼻の穴は角ばって大きく、鼻筋に割れ目が見られます。ブウィンディのゴリラの鼻は丸みを帯びて小さいようです。また人間の指紋と同じようにゴリラの鼻紋は生涯変わらないので個体識別に使われます。

子供のゴリラが大きくなっても変わらない鼻紋

制限時間はウガンダのブウィンディ原生国立公園と同じ1時間だけです。
あっという間に観察の時間が終わってしまいました。

お昼寝するゴリラたちともう少し一緒の時間を過ごしたかったです。


帰り道は美しい姿のビソケ山(3,711m)をバックに歩いて帰ります。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : Aug 2024, Volcanoes National Park, Rwanda

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マウンテンゴリラ Mountain gorilla(ブウィンディ原生国立公園・ウガンダ)


ウガンダ共和国の南西部に位置するブウィンディ国立公園で出会ったマウンテンゴリラです。

ゴリラは2種4亜種に分類されます。ヒガシゴリラの亜種(ヒガシローランドゴリラ、マウンテンゴリラ)とニシゴリラの亜種(ニシローランドゴリラ、クロスリバーゴリラ)。

今回出会ったマウンテンゴリラはアフリカ中部のウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国の3ヶ国の国境に広がるアルバータイン地溝帯のみに棲息し、近年の保護活動の成果から現在1000頭を超える数にまで増えてきています。日本の動物園のゴリラは全てニシローランドゴリラなので、マウンテンゴリラに会うためには現地に行くしかありません。

葉っぱや樹皮などを食べるマウンテンゴリラは「餌付け」が難しいので、観光客が観察できるゴリラのグループは人に慣れさせる「人付け(habituation)」という人への馴化作業が必要になります。研究者やトラッカーが初めは200mくらい離れたところから観察を始めて、だんだん距離を縮めていきます。もし近づきすぎてゴリラが威嚇してきたりした場合はもう少し距離を置いて様子を見るというのを繰り返し、完全に人に馴化するのには2~3年かかるとのことです。


マウンテンゴリラのトラッキングは片道1時間~3時間ほどかかります。
今回は1時間半ほどで出会えましたが、特に最後のゴリラに接近するあたりでは、ジャングルの中の急な斜面を草や枝をマチェットで折りながら下っていきます。


急な斜面を滑って転びそうになりながら下っていくと、ついにゴリラを追うトラッカーたちと合流。そのすぐそばでふさふさとした黒い固まりがあると思ったら、子供のゴリラでした。


そのすぐそばの2匹のメスたちは器用に指を使って毛づくろいをしていて、その姿はまるで人間のようでした。

今回出会ったマウンテンゴリラのグループは「ムクングジ(Mucunguzi Group)」というグループで、ムクングジとは雄のリーダーであるシルバーバックの名前でもあり、「救世主 Savior」を意味します。

ムクングジが別のグループのリーダーである「ビギンギ」からメス数頭を奪って(救い出し)、自分のグループを作り、現在は15頭のメンバーで1頭のシルバーバックに、7頭の大人の雌、2頭の若い雌、5頭の子供や幼児がいます。


その後、しばらくすると近くにいた雄のシルバーバックの「ムクングジ」(↑の写真左上)を発見。メスや子供たちと横になって休んでいます。


生後1年ほどの赤ちゃんゴリラが、お昼寝をするお父さんやお母さんに遊んでほしそうにちょっかいを出しています。

横になったメスの足がシルバーバックの体に乗っかっています。


観察しているとゴリラが2mほどの距離まで近づいてきました。
さらに最後にはシルバーバックも起き上がり、のそのそとこちらに向かって歩いてきました。


オスは通常8歳くらいで大人になりブラックバックと呼ばれますが、13歳を超えると背中から腰にかけて毛が灰色(シルバー)になりシルバーバックと呼ばれ、さらに18歳頃になると後頭部が盛り上がってきます。


寝起きでまだ眠いのか、大あくび。


あっという間に観察の制限時間である1時間が終わってしまいました。
野生のゴリラの寿命は野生下で35年~40年ほど、この子供が大きくなる前にはもう一度会いに来たいと強く思わされました。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : Feb 2024, Bwindi Impenetrable National Park, Uganda

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