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デオサイ高原キャンプで出会った、ヒマラヤヒグマ(パキスタン)

夏のデオサイ高原、キャンプ&ウォーキングで出会ったワイルドライフと景色。2022年の夏のデオサイ高原は例年になく乾燥していました。いつもは水があふれ高山植物の花が咲き乱れるデオサイは、乾燥し水がないため秋と同じような色をしている植物がたくさん見られました。理由は冬の降雪の少なさです。

パキスタンではスワート渓谷、シンド・バロチスタン州の洪水報道の一方、降雨の少なさで生態系が狂う場所もあるという、異常気象の恐ろしさを実感です。

晴れた日のデオサイ高原は本当に美しく、透き通った水の流れる川、湿原、山が迎えてくれます。

オナガマーモット Long-tailed Marmot

オナガマーモット Long-tailed Marmot(またはGolden Marmot)です。クンジュラブ峠付近で見られるのと同じ種ですが、その毛皮の色はだいぶ落ち着いた色です(クンジュラブ峠のものはまさにGolden Marmotと呼ぶにふさわしい、濃い色の毛皮を纏っています)。

キガシラセキレイ Citrine Wagtail

キガシラセキレイ Citrine Wagtailの雄。川沿いの藪で繁殖しており、朝・夕に雛に虫を運ぶ姿が観察されます。

ハマヒバリ Horned Lark

こちらはハマヒバリ Horned Larkの雄。こちらも雛に餌を運ぶのに大忙しでした。滞在していた7月半ばはちょうど雛の巣立ちの季節のようで、まだあまり飛べない雛が車道付近にいるのをドキドキして見ていました。

ムネアカイワヒバリ Robin Accentor

ムネアカイワヒバリ Robin Accentor です。キャンプ地の周りにはいませんでしたが、シャトゥン地区の家畜の放牧エリアで見かけました。パキスタンではデオサイ高原から北にかけての限られた地域でのみ見られる鳥です。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bearを求めて毎日歩きました。今夏の例外的な乾燥のため、いつもいるはずの場所にヒグマがいませんでした。夕方まで探しても見られない日がありました。

国立公園のスタッフと歩き、探し、「どうしていつもの場所にいないのか」と頭を抱えました。

最初に思いついた原因は「観光客の増加」。しかしそれは今年だけのことではありません。次が、遊牧で暮らす人々がデオサイ高原のヒグマエリアに家畜を持ち込んだこと。これはさすがに影響があるはずです。しかし、ヒグマのコアゾーンにもいない・・・大きな理由はやはり、積雪の少なさによる「乾燥」に起因すると考えられます。ヒグマの好物の草が、いつもの場所に育たず、餌をもとめて移動してしまった・・・というのが国立公園スタッフの意見でした。

残念ながら、ヒマラヤヒグマはその生態についてほとんど研究されていません。正直なところ、発表されている個体数も正確なものではないでしょう。

今回の滞在中、ヒマラヤヒグマを求めて4か所のヒグマエリアを歩きました。途中、デオサイ高原のあちこちから見える世界第9位の高峰、ナンガパルバット Nanga Parbat (8,126m)の南東からの山容です。

ヒグマがねぐらに使っていたくぼみです。大きなくぼみと小さなくぼみ。親子ヒグマのもののようです。

糞も大きな糞(母グマ)と小さい糞(子熊)が大量にありました。ただ、国立公園スタッフによると、一番新しいものが3~4日くらい前でその後の新しいものはないと。この親子ヒグマもこの場所を去ってしまったようです。

コアゾーンと呼ばれるエリアで、スキャン。ようやくヒマラヤヒグマを見つけました。

とっても若いヒマラヤヒグマです!

私たちのにおいがしたのでしょう、立ち上がって、私たちを探し始めました。

もう、私たちの存在に気が付いてしまいました。この後は、遠ざかる一方です。草原を走って見えなくなってしまいました。まだかなり若い個体なので近くに母グマがいたのか、それとも別れたばかりなのか。無事に育ってくれることを祈ります。

別の大きなヒマラヤヒグマがいました、夢中で食べています。

食べるのに夢中でなかなか顔を上げてくれません。食べている間に少しづつ距離を詰めていきました。風向きは反対、チャンスです。

ヒマラヤヒグマ撮影中。

こちらのことは気づくことなく草を食むヒマラヤヒグマ。高山植物の花に囲まれ、キガシラセキレイがヒグマの周りで虫を捕食する、自然な光景を見ることができました。

キャンプ地に戻ると、大きなマスが(注:ちゃんと国立公園の許可証をとってスタッフが捕まえたものです)。デオサイ高原には、もともといたマスとイギリス人が植民地時代に釣りのために放流した外来のマスがいます。このマスがどちらなのかはわからないのですが、もともといるマスはIndus Snow Troutと呼ばれる珍しい種だそうです。

マスを見たら、喉が渇きます。パキスタンのビール、マリービールで乾杯です(注:標高4,000mありますのでマネしないでください)。この缶はMurree BreweryのMILLENNIUMというビールで、個人的に一番おいしいと思っているビールです。イギリス植民地時代の遺産で一番感謝しているものです。

デオサイ高原の星空・・・明かりのないデオサイ高原の空の撮影はおすすめ。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear

そしてキャンプ地に現れたヒマラヤヒグマ・・・キャンプ地のゴミを目当てにしている個体がおり、しょっちゅうやってくるそうです。カメラトラップにしっかり映っていました。

今年は乾燥していたため、ヒグマの観察には苦労し、高山植物の少ないシーズンとなってしまいましたが、この異常気象が生態を狂わさないことを祈るばかりです。

 

Image & Text : Mariko SAWADA

Observation : JUL 2022, Deosai National park, Gilgit-Baltistan

西遊旅行パキスタン支店 INDUS CARAVAN のパキスタンの野生動物特集

西遊旅行のパキスタンツアー一覧

 

(動画)冬眠前のヒマラヤヒグマとナンガパルバット

10月半ば、冬眠前のヒマラヤヒグマの映像と好天に恵まれた国内線から撮影したナンガパルバットの動画です。

Himalayan Brown Bear in Autumn|デオサイ高原のヒマラヤヒグマ

イスラマバードからスカルドゥへの国内線から撮影したナンガパルバット Nanga Parbat(8,126m)。ピークが近すぎてびっくりしました、機内もパキスタン人国内客が大騒ぎ。

Nanga Parbat from PK451|ナンガパルバット(空撮)

ナンガパルバットは世界第9位峰で主峰は8,126m。いくつものピークがありその姿はまさに「山塊」。ナンガパルバットを展望するいくつかのビューポイントがありますが、デオサイ高原もそのひとつです。

デオサイ高原から見るナンガパルバット Nanga Parbat from Deosai Plateau (3)

デオサイ高原の南端、ショーサル湖の奥に現れるナンガパルバット。

デオサイ高原から見るナンガパルバット Nanga Parbat from Deosai Plateau (1)

デオサイ高原からアストール谷へ下る道から見るナンガパルバット。

デオサイ高原から見るナンガパルバット Nanga Parbat from Deosai Plateau (2)

ナンガパルバットとの記念撮影もこんな感じです♪♪

 

Image & text :Mariko SAWADA

Observation : Oct 2021, Deosai National Park, Gilgit-Baltistan & PK451

Special Thanks : Deosai National Park, PIA

10月のデオサイ高原へ、ヒマラヤヒグマにナンガパルバット!

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (5)

10月半ば、今年最初のまとまった雪が降ったデオサイ高原へ。平均標高4,200mにもなる高原は、雪の後オナガマーモットが一斉に冬眠に入ってしまいとても静かでした。

デオサイ高原がどこにあるかというと、パキスタンの首都イスラマバードから国内線でスカルドゥへ飛び、そこからオフロードの道を4WDで3時間かけて行きます。

ワイルドライフと関係ないのですが、このイスラマバードからスカルドゥへの国内線が世界第9位峰のナンガパルバットを望む大展望フライト。10月は晴天率も高く、本当にラッキーでした。

Nanga Parbat from PK451 ナンガパルバット PK451便スカルドゥ線より (1)

パキスタン航空PK451便から見るナンガパルバット Nanga Parbat のピーク(8,126m)です。これまでも何度も乗っている路線ですが、この日のフライトは一番ピークに近く飛んでくれました。本当に、登っている人がいたら見えるくらいの距離です。

Indus River from PK451 インダス川と渓谷 PK451便スカルドゥ線より (2)

到着前にはインダス川の景色が。インドのラダックから流れてくるインダス川はここからパキスタンの中央を南北に貫き、アラビア海へと注ぎます。この渓谷沿いは渡り鳥のルートでもあります。

Skardu Airport PK451 スカルドゥ空港 PK451便スカルドゥ線より (3)

そしてフライトはインダス川の河畔の砂漠にある空港へ着陸。スカルドゥへは冬を除き、イスラマバードだけでなくカラチやラホールからもフライトが飛ぶようになり、滑走路・空港の拡張工事が進められてました。「カトマンズ」のように観光のハブになる街にしたいとのこと。いやいや、自然を残し地元文化を大切にするツーリズムに注力してほしいものです。

10月の半ばのオフシーズンにも関わらずフライトはパキスタン人の国内客で満席、新興国のパワーを見せつけられました。

BARAPANI Deosai National Park Pakistan バラパニ デオサイ国立公園 (1)

そしてやってきた、雪化粧のデオサイ高原、バラパニ付近です。オナガマーモットはもう冬眠に入り、そしてデオサイ国立公園のスタッフももう下山の準備。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (4)

朝、道路から比較的近い場所でヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear を発見。観光客が少ない朝と夕方は道路(川)の近くに現れることがあります。2021年はヒマラヤヒグマの個体調査は行われませんでしたが、およそ80頭が国立公園内に生息していると考えられています。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (2)

冬眠前のまるまると太ったヒマラヤヒグマ。ヒマラヤヒグマは9月になると脂肪のたまったオナガマーモットを食べ、さらに太るのだといいます。

●P1288624

標高4,200mの高原でヒマラヤヒグマを観察。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (7)

ヒマラヤヒグマは座り込んでしまいました。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (6)

デオサイ国立公園のスタッフによると、ヒマラヤヒグマも間もなく標高の低い谷に移動し、冬眠の準備をするとのこと。デオサイ高原でヒマラヤヒグマを見るのはもうこれが最後の季節です。

Red Fox Deosai National Park Pakistan アカギツネ デオサイ国立公園 (3)

今回、オナガマーモット Log-tailed Marmotは冬眠してしまったため観察できませんでしたが、代わりにアカギツネ Red foxの姿を何度も見かけました。アカギツネは冬眠しませんが、きっともうすぐ標高の低い位置に移動するのでしょう。高原でヤギや羊などの家畜を追っていた人たちもみんな下山し、次の大雪が降ったら来年の6月頃までデオサイ高原は雪で閉ざされます。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (8)

バラパニのキャンプ地にある看板です。 この数年、デオサイ国立公園を訪れるパキスタン人国内客が増え、キャンプ場のごみの処理が問題となっています。2018年、ヒグマの糞の80%がプラチックだったという衝撃的な報告がなされました。その後、国立公園のスタッフが毎週一度の清掃活動を行うようになりました。また国立公園内のキャンプ場のゴミ捨て場にヒグマが現れることが知られており、対策が求められます。

緑を背景にした、夏のデオサイ高原のヒマラヤヒグマにも出会いたいですね♪

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Oct 2021, Deosai National Park

Special Thanks : Deosai National Park