タグ別アーカイブ: チュクチ海

ハシブトウミガラス Brunnich’s Guillemot – ベーリング海・チュクチ海(極東ロシア)

ハシブトウミガラス Brunnich's Guillemot Thick-billed Murre ベーリング海 (9)ベーリング海、チュクチ海沿岸で出会ったハシブトウミガラス Brunnich’s Guillemotの観察記録です。冬の北日本にもやってくるそうですが、ベーリング海、チュクチ海の沿岸にある断崖は夏になるとハシブトウミガラスの巨大な営巣地となります。

ハシブトウミガラス Brunnich's Guillemot Thick-billed Murre ベーリング海 (11)

これはチュクチ海のコリューチン島の断崖です。夏の2~4か月の繁殖期のみ断崖にいて、それ以外の季節は海で暮らします。海で暮らすというのは、海に浮いているか、飛んでいるかということで、ハシブトウミガラスは小魚やエビを捕食し、陸地のもの(虫や木の実)は食べません。夏の繁殖シーズンが終わるとこの断崖は空っぽになり、また翌年同じ個体が戻ってきて営巣します。

ハシブトウミガラス Brunnich's Guillemot Thick-billed Murre ベーリング海 (10)

断崖の営巣地です。ハシブトウミガラスとウミガラスがまざっています。この2種は営巣地も飛ぶ時も一緒にいることが多いです。遠目で見分けるのは難しいですが、夏のハシブトウミガラスのくちばしの喉の方に白いラインが入るのが特徴で、体の色もウミガラスよりもより黒っぽいです。

ハシブトウミガラス Brunnich's Guillemot Thick-billed Murre ベーリング海 (12)

巣をよく見ていたら雛が見えました。この雛の巣立ちは、ここから飛びたつのではなく、まず海に落ちて泳ぐところから始まり、それをオスが面倒を見ます。ダイブして餌の魚を捕って教え、2~3週間で飛べるようになるそうです。メスはオスが海で養育中も巣に残り、この営巣地を去るギリギリまで「ここは私の場所」であることを主張し、次の年にもここへ戻ってきます。断崖の場所争いは熾烈だそうです。

ハシブトウミガラス Brunnich's Guillemot Thick-billed Murre ベーリング海 (2)

ハシブトウミガラスの足は体の下の方についており、これは泳ぐのに適しているのだそうです。ダイブして魚やエビを捕まえるのに50~60mの深さまで潜りますが、泳ぐのには足を使わず羽で泳ぎます。

ハシブトウミガラス Brunnich's Guillemot Thick-billed Murre ベーリング海 (1)

群れを作って飛んでいるハシブトウミガラス、そのうちの何匹かは魚を縦に銜えています。これはハシブトウミガラス、ウミガラスの写真の楽しみのひとつです。

ハシブトウミガラス Brunnich's Guillemot Thick-billed Murre ベーリング海 (8)

そしてもうひとつの写真の楽しみが断崖から羽と足を広げて降りてくるハシブトウミガラスの格好。

ハシブトウミガラス Brunnich's Guillemot Thick-billed Murre ベーリング海 (4)

ハシブトウミガラスは断崖からふわりと海に落ちてきて、海から助走をつけて羽ばたいて飛び立ちます。

ハシブトウミガラス Brunnich's Guillemot Thick-billed Murre ベーリング海 (5)

ハシブトウミガラスのこの格好が、愛らしくてたまりません。

Photo & Text  :  Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation :  Aug 2016 , Kolyuchin Island, West coast of Wrangel Island – Russia Far east

Reference :  Samuel Blanc, Helm Field Guides “Birds of East Asia”, A complete guide to Arctic Wildlife (Richard Sale)

ホッキョクグマの親子 ウランゲリ島(極東ロシア)

ウランゲリ島 ホッキョクグマの親子 Wrangel Island Polar Bear (8)

チュクチ海のウランゲリ島周辺でホッキョクグマの親子と出会いました。

ウランゲリ島 Wrangel Islandはロシアの北東部チュクチ海にある大きな島。東西100キロ、南北80キロありその形は「眠っているホッキョクグマの子供」のようです。

ウランゲリ島は1867年に初めてヨーロッパ人が上陸し「発見」した島で、1900年代初めは「探索」の名目でアメリカとロシアがその領土権を争いましたが1911年にロシアが領土宣言し、1926年には居住地を作りました。一時は島の開発も検討され集落が作られ、アメリカとの緊張が高まると軍事基地が置かれましたが、現在はそのほとんどが廃墟。

1976年に自然保護区となり、1997年に島の周囲12海里が海洋保護区に、2004年にはユネスコの自然世界遺産に登録されました。

2016年8月のウランゲリ島周辺は、氷が多く、ホッキョクグマたちはまだ島には上陸せずほとんどが氷の上で暮らしていました。夜21時、ホッキョクグマの親子を見つけました。

ウランゲリ島 ホッキョクグマの親子 Wrangel Island Polar Bear (6)

2頭の小熊をつれたホッキョクグマ。お母さんクマが船を気にしながら歩いています。ホッキョクグマの繁殖地であり、「ホッキョクグマ揺籃の地」と言われるウランゲリ島でさえ、そのデン(巣穴)の数は1990年代の調査から4分の一ほどまで減り、減少が心配されています。

ウランゲリ島 ホッキョクグマの親子 Wrangel Island Polar Bear (4)

小熊も船を見上げています。

ウランゲリ島 ホッキョクグマの親子 Wrangel Island Polar Bear (9)

氷の向こう側へ行ってしまいました。

ウランゲリ島 ホッキョクグマの親子 Wrangel Island Polar Bear (2)

再び姿を現し、お母さん熊が様子をうかがっています。

ウランゲリ島 ホッキョクグマの親子 Wrangel Island Polar Bear (3)

小熊たちも姿を現しました。

ウランゲリ島 ホッキョクグマの親子 Wrangel Island Polar Bear (12)

氷の上から船が遠ざかるのを見ています。

ウランゲリ島 ホッキョクグマの親子 Wrangel Island Polar Bear (14)

夜21時30分、暗くなり、霧も出てきました。ホッキョクグマの親子にお別れです。

ウランゲリ島 ホッキョクグマの親子 Wrangel Island Polar Bear (15)

霧と氷の中に消えていきました。

Photo & Text  :  Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation :  Aug 2016 , East of Wrangel Island – Russian Far east

ウミガラス Common Guillemot (極東ロシア、 ベーリング海)

Guillemot ウミガラス (3)

ベーリング海峡からチュクチ海沿岸で観察したウミガラス Common Guillemot の観察の記録です。

英名はCommon Guilemot またはCommon Murreと呼ばれる海鳥で繁殖期の夏にコロニーをつくります。見た目が非常に似ているBrunnich Guillemot ハシブトウミガラスを一緒にいることが多く、同じ場所で営巣し、一緒に飛ぶこともあります。

Guillemot ウミガラス (6)
Guillemot

ウミガラス Common Guillemot とハシブトウミガラス Brunnich’s Guillemot が一緒に飛んでいます。

ウミガラスが少しブラウンがかった色でハシブトウミガラスが黒っぽく口元に白い模様があります。

夏の2~4ヶ月の間、海に面した断崖で子育てします。それ以外の期間は海で浮かんでいるか、飛んでいます。エビや小魚とかを捕食し、陸地のもの(虫、木の実など)は食べません。繁殖期が終わるとこの断崖も空っぽになります。

Guillemot ウミガラス (9)

ウミガラスが浮いているのは遊んでいるのでありません。ダイブして魚・エビを捕まえるため。50~60mの深さまでダイブすることができ、泳ぐときは脚は使わず手(羽)を使ってもぐります。

Guillemot ウミガラス (10)

ウミガラスが水面を助走し、飛ぼうとしているところです。ウミガラスは崖から直接飛ぶことはなく、まず、海に飛び込んで、そこから助走をつけて飛びます。

ギルモットは絶壁を好み、目の前の海が大きな採餌場場です。繁殖期には卵を1個を産みます。その形はヨウナシ型で、絶壁で落ちにくい形、転がるのをふせぐ形なのです。

Guillemot ウミガラス (11)

通常は巣にオスかメスと雛が一緒にいます。断崖のコロニーでは、親鳥が子を光と風からまもっていて、親鳥と断崖の間に雛がいることが多く見ることが難しいです。また、小さな雛は親鳥の足のあいだにもいたりします。20~30日で雛は旅立ちます。まず、海に飛び込んでしばらく飛ぶ練習をします。この間オスが子供が自分で魚を取れ、飛べる様になるまで面倒をみます。

Guillemot ウミガラス (2)

幼鳥の面倒を見る親鳥。それでも、溺れ死んだり、天敵である大型のカモメに襲われたりもします。

Guillemot ウミガラス (12)

海で死んだウミガラスの幼鳥を食べるシロカモメ Glaucous Gull。大型のカモメは天敵です。

オスが幼鳥の子育てをしている間のメスはというと、雛が巣立ったあともコロニーの巣で自分の場所を主張。この場所の確保・生存競争は激しく、コロニーを去るの日までメスは自分の巣を守ります。

Guillemot ウミガラス (8)

そして巣立った雛は4~5年後に元の場所へもどってくるといいます。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Mid of Aug 2015 , Preobrazheniya Bay, Kolyuchin Island- Russian Far east

Reference : Helm Field Guides “Birds of East Asia”, Samuel Blanc

 

エトピリカ Tufted Puffin(極東ロシア、チュクチ海)

Tufted Puffin エトピリカ (2)

極東ロシア、ベーリング海沿岸とチュクチ海沿岸で観察したエトピリカ、Tufted Puffin の観察記録です。

エトピリカ、その名前、葉加瀬太郎氏の名曲Etupirkaでご存知の方のほうが多いはず。生息地はオホーツク海からカムチャッカ半島、チュコトカ半島のベーリング海沿岸からウランゲル島にかけてとアリューシャン列島からアラスカにかけての海域。アイヌ語で ”くちばし=etu 美しい=pirka ”という意味を持つこの鳥は北海道の沿岸でも見られましたが現在では、日本での地域絶滅が危ぶまれているのだそうです。

エトピリカ も ツノメドリと同様に冬はその鮮やかさが失われ、くちばしも含めて黒色になります。夏羽と冬羽の変化の大きな鳥です。

美しいエトピリカ、ツノメドリと同様にその大きなくちばしは美しいだけでなく、たくさんの魚を一度にくわえることができるのです。くちばしの縁はギザギザで、捕まえた魚を一匹づつはさみ、さらに次の魚をつかまえていきます。

Tufted Puffin エトピリカ (6)

上手く撮れていませんが、口にたくさんの魚をくわえたエトピリカ。ベーリング海峡を航行中に通過した米ソの国境となるダイオミード諸島のロシア側、ビッグ・ダイオミード島はPuffinやAukletが営巣する断崖のある島。朝、無数の海鳥が空を舞い、シャッターを切った中に、このエトピリカが魚をくわえた写真がありました。

Tufted Puffin エトピリカ (8)

Tufted Puffin エトピリカ (5)チュクチ海のコリューチン島は海鳥の一大営巣地です。ここは上陸して「アイレベル」で観察できる、鳥好きにはたまらない場所。

目の前で、海鳥の子育て、エサを与える姿、縄張り争い、そして争いに負けて死んでいく雛たち・・・厳しい自然に生きる野鳥の姿を観察することができるのです。

それにしてもTufted Puffin エトピリカの美しいこと。

この島の固体は目がグレーでまさに「男前」という言葉が似合う美しさ。

 

Tufted Puffin エトピリカ (9)

断崖では群れをなしている姿はみかけず、ウミガラスなどとまじって魚を狙っていました。

Tufted Puffin エトピリカ (7)

Tufted Puffin エトピリカ (3)

8月ももう終わり、雛も巣立ち、間もなくすこし南の海へと移動していきます。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Mid of Aug 2015 , Kolyuchin Island、Big Diomede Island- Russian Far east

Reference : Helm Field Guides “Birds of East Asia”, Samuel Blanc

 

ツノメドリ Horned Puffin(極東ロシア、チュクチ海)

horned puffin ツノメドリ (9)

ベーリング海、チュクチ海沿岸で観察したツノメドリ Horned Puffin の記録です。

ツノメドリはオホーツク海沿岸からカムチャッカ半島、チュコトカ半島沿岸のベーリング海、チュクチ海の海鳥。体長は40センチほどで小柄、何よりもこのビジュアルに釘付けになる鳥です。

冬はこの鮮やかさがなくなり、羽だけでなくくちばしも黒っぽくなります。夏羽と冬羽の変化がドラマチックな鳥です。観察した夏は繁殖期のため、沿岸の繁殖地にいましたが、繁殖期が終わる冬には少し南下しほとんどを海で過ごすのだそうです。

かわいいようで、不器用そうにも見えるのですが、この鳥の一番の魅力はそのくちばし。美しいだけでなく、たくさんの魚を一度にくわえることができるのです。どうも、くちばしの縁はギザギザで、捕まえた魚を一匹づつはさみ、さらに次の魚をつかまえて、小さい魚なら15匹ほど入ることもあると。

horned puffin ツノメドリ (1)

ツノメドリは一度にたくさんの魚を捕まえることができるため、長距離を飛ぶ必要がなく、翼も小さめで潜水に適した形をしています。

horned puffin ツノメドリ (15)

この魚をお口いっぱいにいれたツノメドリの写真撮影は、難しく、ひたすら待ちます。

horned puffin ツノメドリ (14)

コリューチン島の営巣地ではウミガラス、ハシブトウミガラス、エトピリカ、ミツユビカモメにまじってたくさんのツノメドリを観察することができました。しかもアイレベルで。

horned puffin ツノメドリ (11)

horned puffin ツノメドリ (3)

horned puffin ツノメドリ (8)

観察したのは8月下旬、間もなくほとんどの海鳥が少し南の海域へと移動しくそうです。

Photo & Text  :  Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation :  Mid of Aug 2015 , Preobrazheniya Bay, Kolyuchin Island - Russian Far east

Reference : Helm Field Guides “Birds of East Asia”, Samuel Blanc