タグ別アーカイブ: コスタリカの野鳥

トキイロコンドル King Vulture (コスタリカ)

以前の記事にてコスタリカの「ケツァール」に出会った記事を書きましたが、同じくコスタリカのボカ・タパダで出会った鮮やかな色彩が美しい「トキイロコンドル」をご紹介します。

トキイロコンドルは中南米に生息し、メキシコ南部からアルゼンチン北部に広がる熱帯低地林や開けた草地に生息しています。

トキイロコンドルは全長約80cmとコンドル科(New World vultures)の中では3番目に大きく、生息地の異なるアンデス山脈周辺に生息するコンドルとアメリカを中心に生息するカリフォルニアコンドルを除くと、中南米の低地のエリアではトキイロコンドルがコンドル科の中で最大の種です。

他にもクロコンドル(上の写真)とヒメコンドルがコスタリカではよく見られます。
ヒメコンドルは低い位置を飛び「嗅覚」によって死骸を探し、クロコンドルは少し高い場所を飛び「視覚」によって獲物を探し、トキイロコンドルはさらに高い場所を飛び「他のコンドルが群がっている場所」を探すと言われています。

上の写真は別の場所(ブラジルの南パンタナールのアキダウアナ近郊)にて、上空を飛び「他のコンドルが群がっている場所」を見つけた時のトキイロコンドルです。

英語ではキング・バルチャー(King vulture) と呼ばれ、コンドルの王様を意味します。スカベンジャー(腐肉食動物)であるトキイロコンドルが王様と呼ばれる理由は、他のコンドルが死肉を食べていても横取りをし、他のコンドルはトキイロコンドルが食べ終わるのを待っている様子からコンドルの王様と呼ばれるようです。

それ以外にも、マヤの伝説の中でトキイロコンドルは人間と神との間でメッセージを運ぶ「王」であったとも言われています。またマヤ暦の暦の一つ「ツォルキン」という260日周期の祭祀用の暦において、16番目の月コスカクアウトリがこのトキイロコンドルだと言われてます。

かぎ状のクチバシが強力なため、他のコンドルでは食べられない固い皮膚なども切り裂くことができます。

頭から首のあたりまで羽毛がないのは、他のコンドルやハゲワシなどと同じく腐肉食という食性に関連したもので、死体に頭から首を突っ込んで食事する際に腐った肉や血が頭の毛について有毒な細菌などが繁殖してしまうのを防ぐ効果があります。また日光が直接、頭皮に当たることでの殺菌効果もあります。

特徴的なのが何といってもこのクチバシの上のオレンジ色の肉垂。まるでウニの様にも見えます。
肉垂はオス、メスどちらにもあり見分けるのは難しいのですが、体のサイズはオスの方が少し大きいです。

トキイロコンドルが成鳥になるのに4年~5年、寿命は野生下で20年~30年ほどと言われています。

この個体は喉元にある素嚢(そのう)が膨らんでいる様子が見られます。素嚢は食道にある鳥に特有な消化器官です。胃に入る前に食べ物を蓄えたり、水分を加え軟らかくしたりする場所で、鳥の祖先である恐竜にもあったといわれています。

ここが膨らんでいるトキイロコンドルは満腹なことが分かります。素嚢が大きく膨らんだ状態の時は、眠ったり、しばらくじっと動かなかったりします。

最後にはトキイロコンドルが飛び立ってしまい、ボカ・タパダでの観察は終了です。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jan 2023, Boca Tapada, Costa Rica

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ケツァール [カザリキヌバネドリ] Resplendent quetzal(コスタリカ)

コスタリカのサン・ヘラルド・デ・ドタにて幻の鳥「ケツァール」(カザリキヌバネドリ Resplendent Quetzal)の観察をしてきました。英名のResplendentは「まばゆく輝く」を意味し、世界一美しい鳥ケツァールにふさわしい名前です。

ケツァールは幻の鳥と呼ばれ、手塚治虫の漫画「火の鳥」のモデルともいわれます。

ケツァールはアステカ神話の「ケツァルコアトル」、マヤ神話の「ククルカン」として崇拝された羽毛の生えた蛇の神様としても知られます。マヤ文明では王族の羽飾りとしてケツァールの尾羽が使われていました。

現在でも中米のグアテマラでは、ケツァールは国鳥に指定されていて、通貨の単位も「ケツァル」となっています。

グアテマラの全ての紙幣にも描かれるケツァール(上は200ケツァレス)

キヌバネドリ科のケツァール属には、ケツァール(カザリキヌバネドリ)の他に、南米にいる以下の4種が含まれます。南米アンデス山中の「カンムリカザリキヌバネドリ」「キンガシラカザリキヌバネドリ」、ベネズエラ・コロンビアの海岸地帯に生息する「オジロカザリキヌバネドリ」、アマゾン側を中心に生息する「アカハシカザリキヌバネドリ」。

ケツァール(カザリキヌバネドリ)は中央アメリカ一帯、メキシコ南部からパナマの標高1,000m~3,000m程の熱帯雨林や雲霧林に生息しています。
今回観察したのはコスタリカのサン・ヘラルド・デ・ドタの雲霧林でした。
同じくコスタリカの中ではセロ・デ・ラ・ムエルテやモンテベルデ自然保護区などでも観察のチャンスがあります。

朝早くに宿を出発し、ケツァールがよく現れるというポイントへ。
しばらく待っていると早速ケツァールのメスがやってきました。

オスとメスで見た目が違うケツァール。
一般的にイメージするのは長い尾羽と、緑・赤・白が混じる派手な色のオスです。
メスは全体的に地味なカラーリングで、尾羽も短く、胸元の灰色が目立ちます。

その後、念願のオスのケツァールも姿を現してくれました。

しばらく観察した後、また別の場所に移動しました。ケツァールが大好きなリトルアボカドの木をたくさん植えているお宅へ。ケツァールが落としていった尾羽を見せてくれました。

リトルアボカドLittle Avocado は、アボカドの仲間(クスノキ科)でケツァールの大好物です。現地の言葉であるスペイン語ではアボカドを意味するアグアカテAguacateに、「小ささ」や「可愛さ」を表すイージョ illoをつけ、小さなアボカドを意味するアグアカティージョ Aguacatillo と呼ばれます。

大きさ3cmほどしかありませんが、ケツァールにとっては大きな実です。それを丸ごと飲み込みます。

私たちの食べるアボカドとは違い実の部分は非常に少ないので、ケツァール達はたくさんのリトルアボカドを食べる必要があります。

種ごと飲み込んだ後はこの澄ました表情。ただ実際には消化するのに時間がかかるので、しばらく動かなくなり、じっくりと観察&撮影するチャンスになります。
しばらくすると種だけを吐き出します。ケツァールに一度食べられた種は発芽しやすくなるので、種子散布も含めて相利共生の関係と言われています。

尾羽がひらひらと揺れる

それぞれ別方向に尾羽が動くことも

光の当たり具合で冠羽が金色に輝きます

体長は約36~40cm程ですがオスの長い飾り羽を含めると全長70cm~140cmとになり、キヌバネドリ科の最大種です。

またメスのケツァールにも出会えました。キヌバネドリの仲間であることがよくわかります。

ケツァールは檻で飼うと死んでしまうため、長年、飼育できない鳥だと考えられてきました。自由を奪われると死んでしまうので、自由を象徴する「自由の鳥」としても知られています。
ただ近年、この鳥が鉄分に弱いという発見があり、捕獲されて檻に入れられると水に含まれるわずかな鉄分を吸収するだけで死んでしまうことがわかってきたそうです。
今ではメキシコ・チアパス州のミゲル・アルバレス・デル・トロ動物園でケツァールの孵化と繁殖に成功したとのことです。

美しいケツァールたちが動物園ではなく自然の中で生きている姿を見られるのはとても幸せな時間でした。

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jan 2023, San Gerardo de Dota, Costa Rica

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