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ケツァール [カザリキヌバネドリ] Resplendent quetzal(コスタリカ)

コスタリカのサン・ヘラルド・デ・ドタにて幻の鳥「ケツァール」(カザリキヌバネドリ Resplendent Quetzal)の観察をしてきました。英名のResplendentは「まばゆく輝く」を意味し、世界一美しい鳥ケツァールにふさわしい名前です。

ケツァールは幻の鳥と呼ばれ、手塚治虫の漫画「火の鳥」のモデルともいわれます。

ケツァールはアステカ神話の「ケツァルコアトル」、マヤ神話の「ククルカン」として崇拝された羽毛の生えた蛇の神様としても知られます。マヤ文明では王族の羽飾りとしてケツァールの尾羽が使われていました。

現在でも中米のグアテマラでは、ケツァールは国鳥に指定されていて、通貨の単位も「ケツァル」となっています。

グアテマラの全ての紙幣にも描かれるケツァール(上は200ケツァレス)

キヌバネドリ科のケツァール属には、ケツァール(カザリキヌバネドリ)の他に、南米にいる以下の4種が含まれます。南米アンデス山中の「カンムリカザリキヌバネドリ」「キンガシラカザリキヌバネドリ」、ベネズエラ・コロンビアの海岸地帯に生息する「オジロカザリキヌバネドリ」、アマゾン側を中心に生息する「アカハシカザリキヌバネドリ」。

ケツァール(カザリキヌバネドリ)は中央アメリカ一帯、メキシコ南部からパナマの標高1,000m~3,000m程の熱帯雨林や雲霧林に生息しています。
今回観察したのはコスタリカのサン・ヘラルド・デ・ドタの雲霧林でした。
同じくコスタリカの中ではセロ・デ・ラ・ムエルテやモンテベルデ自然保護区などでも観察のチャンスがあります。

朝早くに宿を出発し、ケツァールがよく現れるというポイントへ。
しばらく待っていると早速ケツァールのメスがやってきました。

オスとメスで見た目が違うケツァール。
一般的にイメージするのは長い尾羽と、緑・赤・白が混じる派手な色のオスです。
メスは全体的に地味なカラーリングで、尾羽も短く、胸元の灰色が目立ちます。

その後、念願のオスのケツァールも姿を現してくれました。

しばらく観察した後、また別の場所に移動しました。ケツァールが大好きなリトルアボカドの木をたくさん植えているお宅へ。ケツァールが落としていった尾羽を見せてくれました。

リトルアボカドLittle Avocado は、アボカドの仲間(クスノキ科)でケツァールの大好物です。現地の言葉であるスペイン語ではアボカドを意味するアグアカテAguacateに、「小ささ」や「可愛さ」を表すイージョ illoをつけ、小さなアボカドを意味するアグアカティージョ Aguacatillo と呼ばれます。

大きさ3cmほどしかありませんが、ケツァールにとっては大きな実です。それを丸ごと飲み込みます。

私たちの食べるアボカドとは違い実の部分は非常に少ないので、ケツァール達はたくさんのリトルアボカドを食べる必要があります。

種ごと飲み込んだ後はこの澄ました表情。ただ実際には消化するのに時間がかかるので、しばらく動かなくなり、じっくりと観察&撮影するチャンスになります。
しばらくすると種だけを吐き出します。ケツァールに一度食べられた種は発芽しやすくなるので、種子散布も含めて相利共生の関係と言われています。

尾羽がひらひらと揺れる

それぞれ別方向に尾羽が動くことも

光の当たり具合で冠羽が金色に輝きます

体長は約36~40cm程ですがオスの長い飾り羽を含めると全長70cm~140cmとになり、キヌバネドリ科の最大種です。

またメスのケツァールにも出会えました。キヌバネドリの仲間であることがよくわかります。

ケツァールは檻で飼うと死んでしまうため、長年、飼育できない鳥だと考えられてきました。自由を奪われると死んでしまうので、自由を象徴する「自由の鳥」としても知られています。
ただ近年、この鳥が鉄分に弱いという発見があり、捕獲されて檻に入れられると水に含まれるわずかな鉄分を吸収するだけで死んでしまうことがわかってきたそうです。
今ではメキシコ・チアパス州のミゲル・アルバレス・デル・トロ動物園でケツァールの孵化と繁殖に成功したとのことです。

美しいケツァールたちが動物園ではなく自然の中で生きている姿を見られるのはとても幸せな時間でした。

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jan 2023, San Gerardo de Dota, Costa Rica

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グアテマラ・ワイルドライフスペシャル Guatemala Wildlife Special

グアテマラ・ワイルドライフスペシャルのコースで観察した野鳥を中心とする生き物たちのご紹介です。

14日間かけて中部の高原地域、西部の乾燥地域、北東部の熱帯地域、東部のユカタン半島を訪れ計248種の鳥を含む様々な生き物を観察しました。グアテマラのワイルドライフ観察の特徴は、どこもフィーダーや餌場があるわけではなく歩いて探して観察したことでした。自然の中での観察は容易ではありませんが、生き物の生息密度が非常に高いグアテマラだからこその観察方法だと思いした。

観察のハイライトとなったのは、グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti です。グアテマラを中心にメキシコ、ホンジュラスなどで生息が確認されている鳥で、グアテマラで一番小さな鳥です。

グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti )

我々が訪れた繁殖期直前の2月は、森の中にある少し開けた10m四方ほどのエリアで5羽ほどのオスが、それぞれの縄張りでメスや他のオスたちにしきりにディスプレイをします。声は、周りから聞こえてくるのですが、動きが素早く観察&撮影は簡単ではありません。身を潜めてじっと待機しやっとの思いで目の前でディスプレイをしてくれた時の喜びと感動は鮮明に覚えています。

グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti )

グアテマラの通貨がケツアールということからも分かる通り世界一美しい鳥とも名高いケツアール(Resplendent Quetzal、Pharomachrus mocinnoはグアテマラの国鳥です。

ケツアール(Resplendent Quetzal、Pharomachrus mocinno)

グアテマラのケツアールは、日本で有名なコスタリカのケツアールとは生息域が分断されており、尾の長さや体つき、鳴き声なども違うため、近い将来別種になるのではないかと言われているそうです。今回は、運よく1本の木に3羽のオスが同時に現れるという大興奮の観察となりました。また、どこへ行っても観光客が少なく我々のグループのみでゆっくり観察できたのも幸運でした。

他にも、中米らしい美しい生き物たちを数多く観察できました。大人気のキモモマイコドリ(Red-capped Manakin, Pipra mentalis です。宿泊したロッジの庭で観察できました。

キモモマイコドリ(Red-capped Manakin, Pipra mentalis )

青い帽子をかぶったようなエリアカフウキンチョウ(Golden rumped euphonia, Chlorophonia cyanocephala)。ケツアールを観察した木で営巣をしていました。

エリアカフウキンチョウ (Golden rumped euphonia, Chlorophonia cyanocephala)

大きな声で縄張りをアピールするシマアリモズ(Barred Antshrike, Thamnophilus doliatus

シマアリモズ(Barred Antshrike, Thamnophilus doliatus)

ホオジロカマドドリ(Plain xenops,Xenops minutus。見ずらいですが、嘴が上向きに反り上がっています。

ホオジロカマドドリ(Plain xenops,Xenops minutus)

頭の赤い模様がチャーミングポイントのベニイタダキアメリカムシクイ(Slate-throated whitestart, Myioborus miniatus

ベニイタダキアメリカムシクイ(Slate-throated whitestart, Myioborus miniatus )

体の中身はツル、外見や生態はクイナに似ていると言われる不思議なツルモドキ(Limpkin, Aramus guarauna も水辺で観察できました。

ツルモドキ(Limpkin, Aramus guarauna )

頭の模様が美しいレッソンハチクイモドキ(Lesson’s motmot,Momotus lessonii。個人的には最も美しいハチクイモドキの仲間と思っています。

レッソンハチクイモドキ(Lesson’s motmot,Momotus lessonii)

葉っぱの奥でしたが珍しいメキシコアリツグミ(Mayan Antthrush,Formicarius moniligerも地元のガイドさんが見つけてくださり大興奮でした。

メキシコアリツグミ(Mayan Antthrush,Formicarius moniliger)

草原をひらひらと非常に美しく飛ぶズグロエンビタイランチョウ(Fork-tailed Flycatcher, Tyrannus savana

ズグロエンビタイランチョウ(Fork-tailed Flycatcher, Tyrannus savana)

森の中で2mほどの距離まで近づいても全く逃げなかったハイバラエメラルドハチドリ(Rufous-tailed Hummingbird, Amazilia tzacatl)

ハイバラエメラルドハチドリ(Rufous-tailed Hummingbird, Amazilia tzacatl)

有名なユカタン半島の固有種ヒョウモンシチメンチョウ(Ocellated turkey, Meleagris ocellata)はティカル遺跡周辺の見晴らしのいい草原で観察できました。

ヒョウモンシチメンチョウ(Ocellated turkey, Meleagris ocellata)

仲のいいメキシコインコ(Yucatan Amazon, Amazona xantholora)のペア。訪れたこの時期は、多くの生き物が繁殖期を迎え仲むつましい姿を観察できました。

メキシコインコ(Yucatan Amazon, Amazona xantholora)

お酒を飲んだように顔が赤いことから酒面と呼ばれ、和名はサカツラハグロドリ(Masked Tityra, Tityra semifasciataです。

サカツラハグロドリ(Masked Tityra, Tityra semifasciata)

世界一美しいサギともいわれるアカハラサギ(Agami heron, Agamia agami)は、常に木陰にいるためボートで観察しました。

アカハラサギ(Agami heron, Agamia agami)

野鳥以外のワイルドライフもご紹介! 凛々しいハイイロギツネ(Grey fox, Urocyon cinereoargenteusは何処となく突如と現れるため、ジャングルの中にあるロッジでの食事の際なども常にカメラが手放せませんでした。

ハイイロギツネ(Grey fox, Urocyon cinereoargenteus)

チュウベイクモザル(Central American Spider Monkey, Ateles geoffroyi)も我々人間を気にすることなく自然な姿を観察することができました。はっきりした顔立ちが印象的なクモザルの仲間です。

チュウベイクモザル(Central American Spider Monkey, Ateles geoffroyi)

グリーンイグアナ(Green iguana, Iguana iguanaは中米諸国では、オレンジ色の個体の割合が多いことで有名です。個体ごとに色合いが違うため非常に美しく、早朝はみんなで木に登り日光浴をしていました。

グリーンイグアナ(Green iguana, Iguana iguana)

世界に2種類しか生息しないドクトカゲの一種、メキシコドクトカゲ (Beaded lizard,Heloderma horridum)です。英名通りビーズのような肌と、決して走らず常にゆっくりと歩く姿が印象的でした。

メキシコドクトカゲ (Beaded lizard,Heloderma horridum)

グアテマラには、コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)の繁殖地の最北端となっているラスグヤカマスという場所があります。今回訪れたこの時期は、営巣の準備に励む夫婦の姿を観察できました。コンゴウインコの寿命は70年ほどともいわれます。一度つがいになったペアは、50年ほど連れ添うそうです。

コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)のペア

コンゴウインコが繁殖する木の洞

コンゴウインコのような大きな体を支える繁殖場所は、大きな木の洞が必要になります。繁殖地の北限が南下してしまわないように、大きな木が存在できる大自然がいつまでも続いていくことを願います。

コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Feb 2024 Guatemala

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