カテゴリー別アーカイブ: ■動物を観察した地域・国

ベーリング終焉の地・コマンドール湾のカラフトマスの遡上(コマンドール諸島・ベーリング島)

ベーリング島 コマンダー湾 Komandor Bay Bering island, Komandorski Islands (3)

8月半ばのコマンド―ル諸島、ベーリング島。ベーリング島は南側は太平洋、北側はベーリング海に面する境界にある島で、探検家ヴィトゥス・ベーリング終焉の地、コマンド―ル湾Komandor Bayはベーリング海側に位置します。

コマンド―ル湾に上陸、ちょうどカラフトマス Pink Salmon の遡上の季節でした。

Salmon run at Komandor Bay Bering Island |コマンダー島・サケの遡上

自然の環境で遡上するサケの姿、本来はこれが普通なのですが、日本では見られない光景となりました。

カラフトマスの遡上 Salmon ran of Pink Salmon ベーリング島 コマンダー湾 Komandor Bay Bering island, Komandorski Islands (2)

ひしめきあい、遡上。子孫を残すための最後の一大イベントです。サケの仲間は基本的に生まれた川に溯上し産卵しますが、カラフトマスは母川回帰性は低く、違う川に遡上する事も多いそうです。

カラフトマスの遡上 Salmon ran of Pink Salmon ベーリング島 コマンダー湾 Komandor Bay Bering island, Komandorski Islands (1)

ボロボロになったカラフトマス。この姿を見ると、サケ・イクラは本当にありがたくいただかなくてはならないと思うのです。

ベーリング島 コマンダー湾 Komandor Bay Bering island, Komandorski Islands (6)

そしてこの場所は紛れもない探検家ヴィトゥス・ベーリングの終焉の地。これが本来の埋葬地に建てられた十字架です。

1741年9月、ベーリング隊の船はアリューシャン列島から西に向かう途中嵐に遭遇し、漂流の末11月にコマンドルスキー諸島の無人島(現在のベーリング島)にたどり着きました。船員たちが壊血病で次々と亡くなり、ベーリング自身も1741年12月6日に亡くなりました。

ヴィトゥス・ベーリングの頭蓋骨発見 ニコルスコエ博物館 ベーリング島 コマンダー湾 Komandor Bay Bering island, Komandorski Islands (9)

1991年の発掘で見つかったヴィトゥス・ベーリングの骨。(ニコルスコエ博物館)

ヴトゥス・ベーリング ベーリング島 コマンダー湾 Komandor Bay Bering island, Komandorski Islands (10)

骨格に肉付けして当時のベーリングを再生したところ、一般的に出回っている肖像画とは異なることがわかったそうです。

尚、ベーリングの骨は1992年9月に、ベーリング島に再埋葬されています。

ベーリング島 コマンダー湾 Komandor Bay Bering island, Komandorski Islands (11)

ニコルスコエの町を見守るベーリングの像。

偉大な探検家ベーリングとカラフトマスの一生を思い、少し暗い午後を過ごしたベーリング島・コマンドール湾でした。

 

Image :Mariko SAWADA

Observation : Aug 2021, Komandor Bay, Bering island, Komandorski Islands, Russian Far East

ベーリング島で観察した海鳥たち(コマンドルスキー諸島)

エトピリカ Tufted Puffin コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (10)

8月半ばのコマンドルスキー諸島、ベーリング島のアリーカメン岩礁で観察した海鳥をまとめてみました。この時期には繁殖が終りもう海に出ているシラヒゲウミスズメやウミオウムもいれば、繁殖期真っただ中のウミガラスやエトピリカ、そして渡りの途中のハシボソミズナギドリの姿も。そして個体によってはもう冬羽へ移行中です。

ツノメドリ Horned Puffin コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (9)

ツノメドリ Horned Puffin

ツノメドリ Horned Puffin はベーリング島、メードヌイ島でも繁殖し、コマンドルスキー諸島ではあちこちで見ることができます。

ハシブトウミガラス Brünnich's Guillemot コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (17)

ウミガラス Common Guillemot とハシブトウミガラス Brünnich’s Guillemot

繁殖地にいるウミガラス Common Guillemot とハシブトウミガラス Brünnich’s Guillemot(真ん中の個体)です。この2種は非常に似ていますが、ハシブトウミガラスはくちばしの根もとに白い線が入ることで見分けています。2種とも極東ロシアの島で繁殖しています。

ミツユビカモメ black-legged kittiwake コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (1)

ミツユビカモメ Black-legged kittiwake

ミツユビカモメ Black-legged kittiwakeは千島列島~カムチャッカ半島~コマンダー諸島と極東ロシアで広く分布し、ウミガラスと同じ環境に繁殖しています。

アカアシミツユビカモメ Red-legged kittiwake コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (6)

アカアシミツユビカモメ Red-legged kittiwake

アカアシミツユビカモメ Red-legged kittiwakeは珍しいカモメの仲間で、コマンドルスキー諸島、アリューシャン列島、プリビロフ島などで繁殖する、いわば「ベーリング海」固有種。赤い脚が本当に可愛らしい、コマンドルスキー諸島で必ず見たい海鳥です。ミツユビカモメに混じって繁殖しています。

エトピリカ Tufted Puffin コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (4)

エトピリカ繁殖地 Tufted Puffin breeding ground

アリーカメン岩礁は高さ2~45mの高さの異なる小さな島です。低い場所はウミウ、チシマウガラス、チシマシギなどが見られ、垂直の岩場はウミガラスやミツユビカモメが繁殖し、島の上部の草地にはエトピリカが穴を掘って繁殖しています。

エトピリカ Tufted Puffin コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (16)

エトピリカ Tufted Puffin

エトピリカは繁殖ステージが遅い目で9月の上旬でもまだ魚をくわえて巣に運ぶ様子が見られます。アリーカメン岩礁に近いトポルコフ島は10万羽のエトピリカの繁殖地です。

ヒメウ Pelagic Cormorant コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (8)

ヒメウ Pelagic Cormorant

ヒメウ Pelagic Cormomrantは、少し低い目の岩場で繁殖しています。

Common Guillemot ウミガラス コマンドルスキー諸島 Komandorski Islands アリーカメン岩礁 Ariy Kamen Commander Islands ウミガラス繁殖地 (13)

チシマウガラス Red-faced cormorant

ウミガラスに囲まれた真ん中付近にいるのがチシマウガラス Red-faced cormorant。

コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (20)

ヒメウもチシマウガラスも岩場の低い場所で繁殖し、時にはウミガラスに圧倒されています。この写真にはトドが映っていますね!満潮時に岩に上がったようですが、潮が引いてしまいました。

チシマシギ Rock Sandpiper コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (5)

チシマシギ Rock Sandpiper

チシマシギ Rock Sandpiper はシギとしては分布範囲の狭い種で、コマンドルスキー諸島、アリューシャン列島、チュコトカ半島などで繁殖しています。千島列島ではあまり見ることはない種で、コマンドルスキー諸島でぜひ出会いたい海鳥です。8月半ばにはもう冬羽への移行なのですね。

ウミバト Pigeon Guillemot コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (7)

ウミバト Pigeon Guillemot

お魚をくわえたウミバト Pigeon Guillemot 。ウミバトは極東ロシアではあちこちで繁殖していますが、コマンドルスキー諸島ではあまり大きな群れには出会いませんでした。このお魚をくわえた構図が撮りやすい海鳥です。口の中も赤く、足と口の中の赤色を同時に見せてくれることもあります。

ウミオウム Parakeet Auklet コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (12)

ウミオウム Parakeet Auklet

そしてこちらは、後ろ姿だけですがウミオウム Parakeet Auklet。群れは作らず2~3羽で観察されることが多い海鳥です。

シラヒゲウミスズメ Whiskered Auklet コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (13)

シラヒゲウミスズメ Whiskered Auklet

こちらは・・・大好きなシラヒゲウミスズメ Whiskered Aukletです。シラヒゲウミスズメは千島列島のクルーズでヤンキチャ島の繁殖地を訪問することができますが、その他で出会ったのはアリューシャン列島のアクタン島海域だけでした。ベーリング島のニコルスコエにある博物館の資料でシラヒゲウミスズメがコマンドルスキー諸島で繁殖していることになっていましたが、観察できたのは初めてでした!

ハイイロヒレアシシギ Red phalarope コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (14)

ハイイロヒレアシシギ Red phalarope

渡りの途中のハイイロヒレアシシギ Red phalarope。夏にユーラシア大陸、アメリカ大陸北部の北極圏で繁殖し、冬にはアフリカや南米までの長距離の渡りをします。アリューシャン列島、コマンドルスキー諸島で夏に観察されます。

ハシボソミズナギドリ Short-tailed Shearwater コマンドルスキー諸島の海鳥 アリーカメン岩礁 海鳥繁殖地 Komandorski Islands Ariy Kamen ea BIrds Breedng Islands (15)

ハシボソミズナギドリ Short-tailed Shearwater

そしてこちらも長距離の渡りをする ハシボソミズナギドリ Short-tailed Shearwaterの群れ。ベーリング海までオキアミを求めてはるばるオーストラリア南東部・タスマニアからやってきます。コマンドルスキー諸島もザトウクジラが見られ、オキアミを求めてハシボソミズナギドリもやってくるわけです。

ここまでで14種の海鳥を1時間30分ほどのゴムボートのクルーズで観察しました。渡りの鳥は北半球のアホウドリ3種含め、詳しい人が見たらもっと見つかるのだと思います。

これだけの海鳥が暮らせるということは、豊富な魚資源があるということ。コマンドルスキー諸島は本土から遠方すぎるため漁業は発達しておらず、村の人は遡上するサケからイクラをとる程度。停泊中にカムチャッカ半島では見れない位大きなオヒョウを釣ったこともあり、この人を近寄らせない「距離」が魚と海鳥の聖域を作り上げているのですね。

 

Photo & text :Mariko SAWADA

Observation : Aug 2021, Ariy Kamen, Komandorski Islands, Russian Far East

伊豆大島の海・海底ジオパーク(2)

伊豆大島のダイビング、「ここにしかない景色」はケイカイの”早朝ハンマー”。

Dive in Izu oshima|テンクロスジギンポ、トラウツボ、ハンマーヘッドシャーク 伊豆大島ダイビング

エントリー場所から溶岩の海岸で、潜航していくと溶岩の流れが迷路のような水路を創り出しています。ここはまさに「海底ジオパーク」。

Underwater Geopark,Keikai Beach, Izuoshima, 海底ジオパークのようなケイカイを行くオーナー

溶岩の水路を潜航していきます。夜明けと同時でまだ海の中も暗いのです。

ハンマーヘッドシャーク ケイカイ浜 伊豆大島 Hammerhead Shark Izu Oshima keikai Beach (4)

エントリーしてすぐにハンマーの姿が。5~30匹ほどの群れで次々に現れました。水深15mくらい、しかも潮を避けて岩につかまりながらハンマーを観察。初心者の方にもハンマーチャンスがあるポイントです!

ハンマーヘッドシャーク ケイカイ浜 伊豆大島 Hammerhead Shark Izu Oshima keikai Beach (3)

正面からやってくるハンマー。しかも近い!

ハンマーヘッドシャーク ケイカイ浜 伊豆大島 Hammerhead Shark Izu Oshima keikai Beach (2)

毎朝、日の出直後の時間がハンマー遭遇チャンスとのこと。6月半ばから10月半ばくらいまで見られるそうで、我々は3回潜って3回ともハンマーに出会えました。

ハンマーヘッドシャーク ケイカイ浜 伊豆大島 Hammerhead Shark Izu Oshima keikai Beach

夜明けとともに深い海から上がってきてサメの一級漁場を目指しているのでしょうか・・・。

お祝いの飾り、ハンマーヘッドシャーク 100本記念ケーキ

そしてこちらは100本記念ダイブを”ケイカイのハンマー”で迎えたお客様のお祝いケーキのデコレーション。西遊大阪支社の前田梨恵さん作です。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2021, Keikai Beach, Izu-oshima, Tokyo, JAPAN

伊豆大島の海・海底ジオパーク(1)

ケヤリとテンクロスジギンポ Piano fanglenny 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima (4) 王の浜

9月に行った伊豆大島ダイビング合宿のレポートです。東京からだと本当に近いのでびっくりしました。そしてフォト派にうれしい、海の生き物天国。一番の狙いは早朝のハンマーヘッドシャークでしたが、「王の浜」「秋の浜」ではいろんな海の生き物の観察が楽しめました。

伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 王の浜のケヤリ (3)

「王の浜」のケヤリという海藻です。工夫して写真を撮るとクジャクの羽根のように美しく撮れるのでフォト派に人気の海藻です。ケヤリの名は大名行列の先頭が持って歩く、鳥毛を飾り付けた「毛槍」と似ていることに由来するそうで、日本の海で広く分布していますが、黒潮があたる地域のものはより色がキレイなのだそうです。

ケヤリとテンクロスジギンポ Piano fanglenny 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 王の浜(1)

そしてケヤリと一緒に構図に入ってくれる、テンクロスジギンポ。テンクロスジギンポは日本の太平洋側の海で見られ、体長は10センチほど。今回2回同じ場所で見ましたが、全身を見せてはくれませんでした。ケヤリを背景に顔をのぞかせる姿が大変可愛らしいテンクロスジギンポでした。

テングダイ 王の浜 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima (2)

「王の浜」はテングダイが見られます。テングダイは50センチほどに成長する魚で、海の中で大変目立ちます。ここの個体は結構ダイバーに慣れています。

テングダイのアゴヒゲ 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 王の浜

テングダイの名前は口(吻)がテングのように出ていることに由来します。そしてヒゲダイのように、下あごに細かいひげがあり、これは皮膚の突起だそうです。

コケギンポ 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 王の浜

「王の浜」をエグジットするときに立ち寄った「コケギンポの岩」。打ち寄せる波に揺られながら、みなさんがんばって撮影。

野田浜 ソフトコーラル

「野田浜」のソフトコーラル。

ムチカラマツ類とガラスハゼ

今回、一番たくさんの生き物が観察できたのは「秋の浜」でした(エントリーもとても楽なポイントでみんな大好きでした)。

ムチカラマツ類についているガラスハゼです。

ニシキフウライウオの伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 秋の浜 (2)

そして少し深いところにいたニシキフウライウオ。サンゴと同化してわかりにくいですね!

ニシキフウライウオの伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 秋の浜 (1)

サンゴと同じ色で擬態するニシキフウライウオの雄。ニシキフウライウオはカミソリウオ科カミソリウオ属の仲間で、以前はカミソリウオの種内変異だと考えられていましたが1994年に独立種になりました。

ニシキフウライウオのペア伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 秋の浜

ニシキフウライウオのペアです。メスは腹びれで卵を抱いていました。ニシキフウライウオの英名はHarlequin ghost pipefish または Ornate ghost pipefishで、”Harlequin”は道化者、”Ornate”は華やかな、という意味です。和名のニシキフウライウオも素敵ですが、英名も負けていませんね!

ナンヨウハギ

ナンヨウハギの子供たち。

オルトマンワラエビ 秋の浜

オルトマンワラエビ。

トラウツボ Dragon Moray 伊豆大島ダイビング 秋の浜 Diving at Izu-oshima (2)

そしてガイドしてくださったイエローダイブの古山さんによると、外人ダイバーの見たいものリクエストの筆頭にくるのが、このDragon Morayトラウツボとのこと。

トラウツボ Dragon Moray 伊豆大島ダイビング 秋の浜 Diving at Izu-oshima

私には「トラ」には見えず(柄はどちかというと「ヒョウ」ですね)、「ドラゴン」の方が的確に思えます。いや、中国神話に現れる伝説上の動物「麒麟(きりん)」の方が近いかも・・・。

5日間で訪問した伊豆大島でしたが、最終日は台風接近のため1日切り上げて東京へ。

年齢高い目の我々には慣れない「ビーチエントリー」に少々てこずりましたが、その苦労が報われる「伊豆大島の海」でした。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2021, Izu-oshima, Tokyo, JAPAN

(動画)冬眠前のヒマラヤヒグマとナンガパルバット

10月半ば、冬眠前のヒマラヤヒグマの映像と好天に恵まれた国内線から撮影したナンガパルバットの動画です。

Himalayan Brown Bear in Autumn|デオサイ高原のヒマラヤヒグマ

イスラマバードからスカルドゥへの国内線から撮影したナンガパルバット Nanga Parbat(8,126m)。ピークが近すぎてびっくりしました、機内もパキスタン人国内客が大騒ぎ。

Nanga Parbat from PK451|ナンガパルバット(空撮)

ナンガパルバットは世界第9位峰で主峰は8,126m。いくつものピークがありその姿はまさに「山塊」。ナンガパルバットを展望するいくつかのビューポイントがありますが、デオサイ高原もそのひとつです。

デオサイ高原から見るナンガパルバット Nanga Parbat from Deosai Plateau (3)

デオサイ高原の南端、ショーサル湖の奥に現れるナンガパルバット。

デオサイ高原から見るナンガパルバット Nanga Parbat from Deosai Plateau (1)

デオサイ高原からアストール谷へ下る道から見るナンガパルバット。

デオサイ高原から見るナンガパルバット Nanga Parbat from Deosai Plateau (2)

ナンガパルバットとの記念撮影もこんな感じです♪♪

 

Image & text :Mariko SAWADA

Observation : Oct 2021, Deosai National Park, Gilgit-Baltistan & PK451

Special Thanks : Deosai National Park, PIA

10月のデオサイ高原へ、ヒマラヤヒグマにナンガパルバット!

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (5)

10月半ば、今年最初のまとまった雪が降ったデオサイ高原へ。平均標高4,200mにもなる高原は、雪の後オナガマーモットが一斉に冬眠に入ってしまいとても静かでした。

デオサイ高原がどこにあるかというと、パキスタンの首都イスラマバードから国内線でスカルドゥへ飛び、そこからオフロードの道を4WDで3時間かけて行きます。

ワイルドライフと関係ないのですが、このイスラマバードからスカルドゥへの国内線が世界第9位峰のナンガパルバットを望む大展望フライト。10月は晴天率も高く、本当にラッキーでした。

Nanga Parbat from PK451 ナンガパルバット PK451便スカルドゥ線より (1)

パキスタン航空PK451便から見るナンガパルバット Nanga Parbat のピーク(8,126m)です。これまでも何度も乗っている路線ですが、この日のフライトは一番ピークに近く飛んでくれました。本当に、登っている人がいたら見えるくらいの距離です。

Indus River from PK451 インダス川と渓谷 PK451便スカルドゥ線より (2)

到着前にはインダス川の景色が。インドのラダックから流れてくるインダス川はここからパキスタンの中央を南北に貫き、アラビア海へと注ぎます。この渓谷沿いは渡り鳥のルートでもあります。

Skardu Airport PK451 スカルドゥ空港 PK451便スカルドゥ線より (3)

そしてフライトはインダス川の河畔の砂漠にある空港へ着陸。スカルドゥへは冬を除き、イスラマバードだけでなくカラチやラホールからもフライトが飛ぶようになり、滑走路・空港の拡張工事が進められてました。「カトマンズ」のように観光のハブになる街にしたいとのこと。いやいや、自然を残し地元文化を大切にするツーリズムに注力してほしいものです。

10月の半ばのオフシーズンにも関わらずフライトはパキスタン人の国内客で満席、新興国のパワーを見せつけられました。

BARAPANI Deosai National Park Pakistan バラパニ デオサイ国立公園 (1)

そしてやってきた、雪化粧のデオサイ高原、バラパニ付近です。オナガマーモットはもう冬眠に入り、そしてデオサイ国立公園のスタッフももう下山の準備。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (4)

朝、道路から比較的近い場所でヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear を発見。観光客が少ない朝と夕方は道路(川)の近くに現れることがあります。2021年はヒマラヤヒグマの個体調査は行われませんでしたが、およそ80頭が国立公園内に生息していると考えられています。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (2)

冬眠前のまるまると太ったヒマラヤヒグマ。ヒマラヤヒグマは9月になると脂肪のたまったオナガマーモットを食べ、さらに太るのだといいます。

●P1288624

標高4,200mの高原でヒマラヤヒグマを観察。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (7)

ヒマラヤヒグマは座り込んでしまいました。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (6)

デオサイ国立公園のスタッフによると、ヒマラヤヒグマも間もなく標高の低い谷に移動し、冬眠の準備をするとのこと。デオサイ高原でヒマラヤヒグマを見るのはもうこれが最後の季節です。

Red Fox Deosai National Park Pakistan アカギツネ デオサイ国立公園 (3)

今回、オナガマーモット Log-tailed Marmotは冬眠してしまったため観察できませんでしたが、代わりにアカギツネ Red foxの姿を何度も見かけました。アカギツネは冬眠しませんが、きっともうすぐ標高の低い位置に移動するのでしょう。高原でヤギや羊などの家畜を追っていた人たちもみんな下山し、次の大雪が降ったら来年の6月頃までデオサイ高原は雪で閉ざされます。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (8)

バラパニのキャンプ地にある看板です。 この数年、デオサイ国立公園を訪れるパキスタン人国内客が増え、キャンプ場のごみの処理が問題となっています。2018年、ヒグマの糞の80%がプラチックだったという衝撃的な報告がなされました。その後、国立公園のスタッフが毎週一度の清掃活動を行うようになりました。また国立公園内のキャンプ場のゴミ捨て場にヒグマが現れることが知られており、対策が求められます。

緑を背景にした、夏のデオサイ高原のヒマラヤヒグマにも出会いたいですね♪

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Oct 2021, Deosai National Park

Special Thanks : Deosai National Park

抱卵するオイランヨウジ Banded Pipefish(屋久島)

オイランヨウジ Banded pipefish 屋久島 (1)

屋久島一湊湾で観察したオイランヨウジ Banded Pipefishのペアです。オイランヨウジはベースの体色は白くて吻端から尾びれにかけて赤褐色の横じまがあり、まさに「花魁(おいらん)」のイメージの華やかな尾びれを持つヨウジウオ科の魚。

オイランヨウジのペア(屋久島)A Pair of Ringed pipefish

オイランヨウジ Banded pipefish 屋久島 (6)

オイランヨウジはオスが育児嚢を持ち抱卵します。100個ほどの卵を抱き、卵は10日ほどで孵化、体長6mmの稚魚が誕生します。

オイランヨウジ Banded pipefish 屋久島 (3)

オイランヨウジは動物プランクトン食。このカップルのひそむ岩の隙間の入り口は小さな小さな稚魚で溢れ、捕食に大忙しでした。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Jun 2021, 屋久島、鹿児島

Special Thanks : 潜り屋さま

ニシキフウライウオ Harlequin ghost pipefish(屋久島)

ニシキフウライウオ Harlequin ghost pipefish 屋久島 (6)

屋久島の海で出会えたニシキフウライウオ Solenostomus paradoxus のペアです。2匹で擬態する、それはそれは美しい光景でした。

ニシキフウライウオのペア(屋久島)A pair of Harlequin ghost pipefish

ニシキフウライウオはカミソリウオ科カミソリウオ属の仲間で、以前はカミソリウオの種内変異だと考えられていましたが1994年に独立種になりました。

ニシキフウライウオ Harlequin ghost pipefish 屋久島 (9)

鰭や体に多数の皮弁があり、縞模様の斑紋があります。ベースの体の色は白色透明ですが縞模様の色はバリエーションは様々。

ニシキフウライウオ Harlequin ghost pipefish 屋久島 (5)

大きい方がメス、小さい方がオスです。オスが抱卵するヨウジウオの仲間と違い、カミソリウオの仲間はメスが受精した卵を腹鰭で保護します。

ニシキフウライウオ、英名はHarlequin ghost pipefish または Ornate ghost pipefishで、”Harlequin”は道化者、”Ornate”は華やかな、という意味です。和名のニシキフウライウオも素敵ですが、英名も負けていません。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Jun 2021, 一湊湾、屋久島

Special Thanks : 潜り屋さま

 

琉球ハーピング(3)

前回に引き続き、9月末に行った「琉球ハーピング」のレポートを姫野よりお届けします。今回は、沖縄本島の森で観察したエキゾチックな生き物たちをご紹介いたします。

アカマタ(学名: Dinodon semicarinatum、 英名: Ryukyu odd tooth snake

アカマタ(学名: Dinodon semicarinatum、 英名: Ryukyu odd tooth snake

アカマタは今回沢山の個体を観察できました。本州のシロマダラ(学名: Dinodon orientale、英名: Oriental odd-tooth snake や対馬のアカマダラ(学名: Dinodon rufozonatum 、 英名:Red banded odd tooth snak )などの属するマダラヘビ属最大のヘビで大きいものでは2 mを超えます。アカマタはヘビも食べるヘビで、自分の体よりも小さければ、日本最大の毒蛇ホンハブさえも食べてしまいます。とても臆病な個体が多く近くで観察をすると首をもたげて威嚇してきます。

2,アカマタ

ヘビは、手足だけでなく耳もありません。また、目も透明のうろこで覆われているため瞼がなく視力も弱いです。その為、危険を感じると身を守るために噛むという行動に出ます。 よくヘビは噛んで危険というイメージを持たれていますが、身を守るための行動の一つであり向こうから進んで噛もうとしてくることはありません。

ホンハブ (学名 Trimeresurus flavoviridis 、 英名: Yellow spotted pit viper

ホンハブ (学名 Trimeresurus flavoviridis 、 英名: Yellow spotted pit viper)

ホンハブは。金色の体に赤色の目が美しい クサリヘビ科のヘビです。沖縄本島の中部では外来種のタイワ ンハブ 学名:Protobothrops mucrosquamatus、英名: Taiwan pit viper)が増えているため、ホンハブは生息数を減らしています。また、 体が大きく多量の 毒をもつために 、危険とみなされ 殺されてしまうことも多いです。正しい知識を付けて、ヘビにも人間にも 安全に共存できる在り方が模索されています。

4,ホンハブ

今回のハーピングでは 2 匹のホンハブの観察に成功しました。

オキナワキノボリトカゲ(学名: Japalura polygonata polygonata、英名: Okinawa tree lizard )

オキナワキノボリトカゲ(学名:Japalura polygonata polygonata、英名: Okinawa tree lizard )

オキナワキノボリトカゲは昼行性で、木に登りながらアリなどを捕食します。夜は葉や枝の上に登って休みます。

6,オキナワキノボリトカゲ

日本に生息する唯一のアガマ科のトカゲです。本州の トカゲ とは違い 、 どちらかと言うと イグアナやカメレオンなど の 近縁種になります。

ヒメハブ(学名: Ovophis okinavensis 、英名: Dwarf lancehead v iper )

ヒメハブ(学名: Ovophis okinavensis 、英名: Dwarf lancehead viper )

ヒメハブは、夜の沖縄本島北部で一番遭遇率の高い毒ヘビ。ずんぐりむっくりな体で、カエルを好んで食べるため水辺に現れることも多いです。

8,ヒメハブ

実際に、川辺で観察したこの個体ですが落ち葉に紛れて危うく踏みそうになりました。

ヤンバルクイナ(学名: Hypotaenidia okinawae 、英名: Okinawa Rail )

ヤンバルクイナ(学名:Hypotaenidia okinawae 、英名: Okinawa Rail )

世界でも沖縄北部にのみ生息する飛べない鳥。天敵から逃れるために登りにくい木を選んで寝ます。今回観察した個体は、登りにくい場所を選んで いった結果、我々からは観察しやすい場所に出てきていました。

オキナワマルバネクワガタ(学名: Neolucanus okinawanus 、英名:不明)

オキナワマルバネクワガタ(学名:Neolucanus okinawanus 、英名:不明)

オキナワマルバネクワガタは、クワガタにも関わらず、飛ぶことは無く歩いてパートナーを探します。人間によって作られたコンクリ―トの道路が彼らにとってはパートナー探しの大きな壁になっています。また、特徴的なフォルムが人気で密猟も絶えないそう。今回は、かなり大型の個体の観察に成功しこの美しい生き物の保護の重要さを再認識しました。

今回の「琉球ハーピング」では沢山の生き物の観察に成功することができました。
これからもさらなる生き物を求めて世界中を旅してまいります!

Photo & text : 姫野航 Wataru HIMENO
Observation : End of SEP, Okinawa Island “Forest of Yanbaru”

琉球ハーピング(2)

姫野による、琉球ハーピングブログ第2弾は、9 月下旬に沖縄本島のハーピングで観察した両生類たちをご紹介します。

最初に出てきたのは、日本一美しいカエルとも名高い オキナワイシカワガエルです。

1,オキナワイシカワガエル(青)

オキナワイシカワガエル (学名:Odorrana ishikawae 、 英名 Okinawa ishikawa’s frog )

絶滅危惧ⅠB 類 、沖縄県指定天然記念物、国内希少野生動植物種などに指定されていて、世界でも沖縄本島の北部にしか生息しないカエルです。今回我々が観察したのは黄色の色素が欠乏した青色の個体でした。青色の個体は時々生まれるのですが自然界では外敵から目立ちやすいため生存率がとても低く、観察できたのはとても幸運でした。

2,オキナワイシカワガエル

通常の個体は、緑色に黒ぶちの体色をしています。

3,オキナワイシカワガエル

一見こちらも派手ですが、生息地の苔の生えた岩に綺麗に擬態しています。

4,リュウキュウアカガエル

リュウキュウアカガエル(学名:Rana ulma、英名:Ryukyu brown frog )

本州のアカガエルと比べて口の周りの白くなった模様が特徴的です。真冬の1 月頃に繁殖期を迎えることが知られています。繁殖のために条件の整った渓流に沢山のリュウキュウアカガエルが集まります。 必死に鳴いてメスを呼ぶオスたち、数匹のオスにしがみつかまれ、そのまま溺れていくメスなど、懸命に生き抜くカエルの ドラマが生まれる季節です。また、エサの少ない冬ですので、ヒメハブやガラスヒバアなどのカエルを好む生き物たちも集まります。

5,ヒメハブ

水辺でカエルなどのエサを待ち伏せするヒメハブ。

6,リュウキュウアカガエル

脇をヒルに吸われるリュウキュウアカガエル。

7,リュウキュウアカガエル

ジャングルの落ち葉に綺麗にカモフラージュしています。

8,ナミエガエル

ナミエガエル(学名: Limnonectes namiyei、英名: Namie frog )

ナミエガエルも観察できました。こちらも沖縄本島北部にしか生息しないカエルです。ひし形の目が特徴の半水生のカエルで、渓流の近くに生息しています。現在は保護されていますが、以前は食用として扱われていたそう。 他のカエルとは違い、水中でカニやエビを食べている種ですので美味しいのでしょうか。

9,ナミエガエル

ナミエガエルのひし形の目!水中で餌を食べることも多いことからもわかるように、水中を滑らかに泳ぐ姿が観察されました。

10,ハナサキガエル

ハナサキガエル (学名 Odorrana narina、 英名:Ryukyu tip-nosed frog )

また、今回一番多く観察されたカエルのハナサキガエル です。綺麗に木に同化した茶色の個体。

11,ハナサキガエル

こちらは明るい色の個体。

12,ハナサキガエル

緑色の個体など様々な色合いの子がいてとても魅力的です。
奄美大島には、また色合いの違うアマミハナサキガエル、先島諸島にはオオハナサキガエル、コガタハナサキガエルなど近縁種が沢山生息しているので全種類観察し違いを確かめてみたいです。

手足がとても長いため、ジャンプ力が非常に高く、一度動くとすぐに見失ってしまいました。沖縄本島北部の固有種のうち、ハナサキガエルのみ天然記念物に指定されていないという逆に珍しいカエルです。

13,リュウキュウカジカガエル

リュウキュウカジカガエル(学名: Buergeria japonica 、英名: Ryukyu kajika frog)

リュウキュウカジカガエルとも出会いました。学名のジャポニカとあるように以前は、二ホンカジカガエルと呼ばれていたそうですが、本州にいるカジカガエルとは、全くの別種です。色合いがとて綺麗ですが、沖縄本島では全土で一般的に観察される種類です。先島諸島には、ヤエヤマカジカガエルなどの近縁種がいます。

14,リュウキュウカジカガエル

クワズイモの 茎の間で休む、リュウキュウカジカガエル 。

15,オキナワシリケンイモリ幼生

オキナワシリケンイモリの幼体

16,オキナワシリケンイモリ

オキナワシリケンイモリ(学名:Cynops ensicauda 、 英名:Fire-bellied Newts)

ウーパールーパーのようなエラのまだ生えたオキナワシリケンイモリにも出会いました。本土に生息するアカハライモリよりも陸上で生活することが多いイモリです。写真に収めることはできませんでしたが、幼生のお腹は黒色で驚きました。沢山の両生類の観察でき、沖縄の自然の豊かさを実感するハーピングでした。

Photo & text : 姫野航 Wataru HIMENO
Observation : End of SEP, Okinawa Island “Forest of Yanbaru”