カテゴリー別アーカイブ: ■動物を観察した地域・国

和良川のオオサンショウウオとホタル(1)

世界最大の両生類・オオサンショウウオ

世界最大の両生類・オオサンショウウオ

岐阜県飛騨と美濃の中間にある山里を流れる和良川には、日本固有種で、国の特別天然記念物でもあるオオサンショウウオが多く生息しています。また、6月中旬になると、和良川の支流ではたくさんのホタルを鑑賞することができます。

観察時の注意事項として、オオサンショウウオに触れることは一切出来ません。何故ならオオサンショウウオは、日本の特別天然記念物であり絶滅危惧種Ⅱ類(VU)(環境省レッドリスト)に指定された天然記念動物として手厚く保護されている生き物だからです。そのため、皆さんは観察しか出来ませんが、水中マスク越しに写真や動画撮影をしていただけます。

石の中に隠れるオオサンショウウオ

石の中に隠れるオオサンショウウオ

オオサンショウウオは夏場は数分おきに水面に顔を出して呼吸をします。生息場所から水面まで上がり、鼻を水面に出して呼吸し、元の位置に戻るので、泳ぎが苦手のオオサンショウウオが必死に元の位置に戻る姿は、母性本能をくすぐられるような可愛さがあります。

オオサンショウウオの正面顔

オオサンショウウオの正面顔

河原をのそのそと歩く

河原をのそのそと歩く

観察をする日中、夜行性のオオサンショウウオは頭を石の中に入れて隠れています。明るい場所が嫌いなのですが、呼吸をする時は顔を水面に出しやすい場所に移動しますので、後ろ向きのオオサンショウウオでもじっと待っていれば正面顔をしっかり撮影できます。粘りと根性があれば、スーパーショツトを撮影していただけるでしょう。また、観察できると一番嬉しいのがおおあくびです。オオサンショウウオが口を全開させるこのシーンはなかなかタイミングが難しいですが、捉えることが出来れば最高です。このほかにも魚を捕食したり、脱皮をする様子など、オオサンショウウオの様々な仕草を楽しむことができます。

オオサンショウウオは時には川から上がり、堰堤の上などに上陸してくれることも年に数回あります。こんな場面に遭遇した方は超ラッキーです。この和良川の地区では広い範囲に数多くオオサンショウウオの生息が確認されていますが、2025年1月現在でも中国オオサンショウウオとの交雑個体は発見されておらず、日本固有の純血のオオサンショウウオのみが生息しています。

カワヨシノボリ

カワヨシノボリ

日本固有種のニホンイシガメ

日本固有種のニホンイシガメ

オオサンショウウオのほかにも、川辺に生息する生き物たちも紹介しています。和良川に生息する鮎は、今では「和良鮎」と呼ばれるブランド鮎に変貌しました。和良鮎の最大の魅力は、なんといっても香りです。涼しげなスイカのような香りで、その香気で夏の河原一帯を満たしてしまうほどです。良質な藻類をいっぱいに詰め込んだ腹ワタは、食べた瞬間にその香りが口の中いっぱいに広がり、ほろ苦さの中に甘さと旨味もある絶妙な風味があります。

古民家 「七福山」

古民家 「七福山」

宿泊は築170年の古民家。囲炉裏を囲みゆっくりおしゃべりしたり、お酒を酌み交わしたりと、日本の伝統を感じることができます。

食事は和食を中心に、川魚、山菜など季節の素材を活かした料理が提供されます。山家ならではの静かな空間は、行きかう旅人の癒しの場。ここを切り盛りする女将さんも話好きなので、ツアーに参加した際にはぜひ女将さんとお話を楽しんでいただきたいです。

Text & Photo : Yoshihiro ITO

★関連ツアー:水中写真家・伊藤義弘さん同行 和良川のオオサンショウウオとホタルの乱舞

プロフィール:伊藤 義弘 (いとう よしひろ)
水中写真家、ダイビングインストラクター。西表島での体験ダイビングで海に目覚め、インストラクターの資格を取得。世界各地の海と川を潜る中で、豊かな生態系を有するふるさと岐阜県の川に魅了される。誰もやっていない分野のガイドになる決意をし「伊藤潜水企画」を設立。川に住む生きものをテーマに、川の生きもの案内人として観察会等を企画運営。

モリイノシシ Giant Forest Hog (ウガンダ)

赤道直下の国ウガンダのクイーンエリザベス国立公園にて、珍しい「モリイノシシ」の家族に出会いました。

クイーンエリザベス国立公園の入り口すぐそばにいて、「ぬた場(沼田場)」で体に泥をこすり続けていました。

「ぬた打ち」という行動で身体に付いた寄生虫や汚れを落とすために、泥に身体をこすりつける行動のことをいいます。体を冷やす効果や虫除けの効果もあるそうです。
(※もだえ苦しむことを意味する「のたうち回る」の語源とも言われ、人が苦しむ動きがぬた打ちの動きとが似ていることからついた言葉のようです。)

モリイノシシはアフリカの赤道近辺で、森林と草原が混在する地域にのみ棲息する珍しいイノシシです。6~14頭程度で群れを作りますが、生息密度が低く臆病でもあるためサファリで出会う事はあまりありません。食肉を目的とした密猟のために個体数が減少していることにも出会いにくい原因の一つです。

モリイノシシは世界最大級のイノシシとしても知られ、アメリカ大陸のペッカリーやインドネシアのバビルサなどを含めても、モリイノシシが世界最大で体重は280kgにもなります。アフリカのサファリでよく見られるイボイノシシや、日本のイノシシはどちらも通常は50-150kg程度で、モリイノシシの半分程度です。

オスは成長すると、眼の脇にお皿のような大きなイボが発達します。上の写真の子はまだ若いからか膨らみは小さかったです。オス同士でこの皿のようなイボをぶつけ合うこともあります。

モリイノシシは夜行性と言われますが、今回観察ができたのは昼の2時ごろでした。人間から保護されている地域では昼行性の場合もあるようです。どちらかというとそれが本来の姿なのかもしれません。

7頭のモリイノシシの群れの中に、2頭の赤ちゃんもいました。

足の裏が可愛いです。

暇さえあれば2頭でじゃれあっています。

泥浴びをした後にもじゃれあう2頭。

家族そろってぬた場で泥浴びをするモリイノシシの家族団らんをのんびりと観察できました。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Aug 2024, Queen Elizabeth National Park, Uganda

★西遊旅行のウガンダ・ルワンダのワイルドライフの旅を発表しました!
ウガンダ・ルワンダ マウンテンゴリラ&ゴールデンモンキートレッキング

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秋のデオサイ国立公園へ ヒマラヤヒグマを求めて(パキスタン)

秋、冬眠前のヒマラヤヒグマを求めてデオサイ国立公園(パキスタン)へ行ってきました。秋深まるデオサイ高原のワイルドライフレポートです。デオサイ国立公園へは首都のイスラマバードから国内線でスカルドゥへ飛び、そこから車で走って3時間ほど。インドとの国境に近い標高4,000,~4,200mの高原です。

国立公園の入り口(チラム)にはとても美しい夏のヒマラヤヒグマの写真が

今回、私たちはスカルドゥ側からではなくアストール渓谷を走ってチラムのチェックポストからデオサイ国立公園へ入りました。このルートは世界第9位峰ナンガパルバットを望む絶景ドライブです。アストール渓谷の紅葉も大変きれいでした。

シェオサル湖の奥に聳えるのがナンガ・パルバット(8,126m)

今回、シェオサル湖湖畔でチベットオオカミに出会うことができました。ヒマラヤヒグマよりも遭遇は難しく、これまで見た人は何人もいますが、撮影は非常に難しかった生き物です。チベットオオカミは 中型のオオカミでハイイロオオカミの亜種。チベットやヒマラヤ地域に生息しています。

チベットオオカミ

このオオカミは群れではなく一匹で行動していたようです。この後、デオサイ高原滞在中に2回チベットオオカミを遠くに観察する機会がありましたが、いずれも単体でした。国立公園スタッフも、4日間の滞在で3回もオオカミを見るのは異例で、冬眠前のマーモットを狙って活発に動いているのではないかと推測していました。

国立公園レンジャーの敷地に設営したキャンプ

バラパニの私たちのキャンプ。レンジャースタッフの施設エリアに設立したプライベートキャンプです。夏は山で活躍しているIndus Caravanのキャンプチームがテント、ダイニングテント、トイレテントを設立してくれました。テントの前には川が流れ大自然の中での滞在です。

キャンプ地から少し標高をあげるとこの景色。高原のあちこちからナンガ・パルバットを望むことができました。

ヒマラヤヒグマの観察のチャンスが良い場所は何か所かありますが、いずれも歩かないと近くで見ることはできません。標高4,000mを越える高原を歩くのは決して楽ではありません。そしてヒマラヤヒグマは大変臆病で、2キロ先に見つけても風向きが悪いと私たちの臭いを感知し、あっという間に遠ざかっていきます。

ヒマラヤヒグマの雄の姿を確認。気づかれないように遠くから撮影。この個体は風向きが良くなく遠くからの観察だけになりました。そしてこの個体の奥にいた親子グマにすこし近づいてみることにしました。

なんと可愛らしい!!

少し離れた場所に大きな子供を連れた親子グマがいました。風向きが味方してくれました。「何かいる?!」とこちらに近づいてくるではないですか。

少し立ってこちらを見ています。

本当に近くまで来てくれました。手前の草で見えにくいほどの距離です。

この親子グマ、何か嫌な気配を感じ始めたのか、こんどは私たちから離れる方向に歩き始めました。もう高原も冬の一歩手前で、マーモットも間もなく冬眠します。そうするとヒマラヤヒグマも冬眠に入ります。

ヒマラヤヒグマはヒグマの亜種でインド・パキスタン・アフガニスタンの北部山岳地帯に生息し、デオサイ国立公園の最後のセンサス(2022年)で77頭が確認されています。2023年の秋に3頭に発信機が取り付けられ、それまで不明だった冬眠場所もわかってきました。3頭のうち2頭はアストール渓谷へ下り冬眠し、1頭はデオサイ高原のバラパニ付近で冬眠していました。

デオサイ高原でのピクニックランチ

観察チーム、高原でのランチ風景。おにぎりを作って持って行ったら「ジャパニーズ・アニメフード」と言われました。動物好きのスタッフは、日本のアニメも大好きでした。

ところで、ヒマラヤヒグマはとても臆病で、遠くからしか観察することができないこともあります。下の写真の中央の小さなこげ茶色の点がヒマラヤヒグマです。でも、夜は大胆にもキャンプにやってくるのです。

中央のこげ茶色の点がヒアラヤヒグマ

夜、キャンプ地に現れたヒマラヤヒグマ

夜のキャンプ地にヒマラヤヒグマがやってきました。人がいないと食料を探してテントに近寄ってきます。ライトで照らしてもすぐに逃げることもなく、昼はあんなに臆病なのに夜はこんなに堂々として・・・。暗闇でこちらから見えていないと思っているのでしょうか。4泊したすべての夜にヒマラヤヒグマはやってきました。しかも、毎日異なる個体でした。事故を防ぐために国立公園のキャンプ地の食料とゴミの管理が急務です。

Text & Photo : Mariko SAWADA
Visit : Sep 2024, Deosai Bational Park, Pakistan

 

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★西遊旅行パキスタン支店 INDUS CARAVAN のパキスタンの野生動物特集

 

春の天売島のウトウ – Rhinoceros Auklet on Teuri Island in spring

「ウトウの帰巣」を見に6月に天売島に来られる方が多いのですが、繁殖は3月には始まっています。その頃はまだ雪があり訪問するのはむつかしいのですが、4月に訪問した「ウトウ繁殖地」の様子をご紹介します。

>>春の天売島・ワイルドライフと70年ぶりの郡来(くき)

4月下旬のウトウの繁殖地はイタドリが芽吹いたばかりでウトウの巣が見える状態でした。そのため、ウトウの帰巣が始まると着地して巣穴に入るまでの様子を観察することができます。この時期のウトウは抱卵中のため夜の帰巣は親鳥の「交代」のためです。海に出ていた片方の親鳥が暗闇に帰ってきて、それまで1日中卵を抱いていたもう片方の親鳥は海へと出かけます。そのため育雛時期に比べると見られるウトウの数自体は少ないのですが、巣穴に出入りする様子をゆっくり見られるのはイタドリが巣穴を覆い隠す前のこの時期だけなのです。しかもイタドリは芽吹き始めると日に日に成長してあっという間に巣を覆い隠します。

赤岩展望台にて夕景を見ながら帰巣を待ちます。

ウトウの営巣地です。イタドリが一定の高さで切られたように見えますが、この高さはその冬の積雪の高さを示します。雪に埋まっていた部分だけが残り、雪から出た部分は厳しい風でなくなってしまいました。おかげでウトウの巣穴もよく見える状態です。

満月の夜でした。空気が澄んだ天売島で見る満月は大変美しいものです。

月明りで海に「光の道」ができました。

ウトウたちの帰巣が始まりました ♪♪

着地してしばらくこちらの様子を見ているのか、すぐに巣穴に向かわないウトウ。雛が生まれると、餌を銜えて戻ってきた親鳥は一目散に巣穴に入っていくのでゆっくり観察する余裕はありません。雛もお腹を空かしてまっているし、他の餌を採れなかったウトウに横取りされたりするからです。雛の誕生していないこの時期はゆっくり観察するチャンスです。

巣穴が道路の観察場所に近い個体はこちらの様子をみながら近づいてきます。私たちの足元の道路の下に巣があるようで途中から猛スピードで巣穴に走りこんでいきました。

巣穴にすぐには入らず、ゆっくりとしているウトウも。

二度目の天売島訪問の方には、この季節もお勧めです。さらに運が良ければ「群来(ニシンの産卵)」や渡り鳥たちとの遭遇もある季節です。4月の天売島の様子はこちらのブログをご覧ください>>>春の天売島・ワイルドライフと70年ぶりの郡来(くき)

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : April 2024, Teuri Island, Hokkaido

★ TEURI ISLAND. ☜天売島のHPを公開しています!

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エレファント・ハイド(マシャトゥ動物保護区・ボツワナ)


ボツワナ東端のマシャトゥ動物保護区にて、水場近くに設置された観察小屋「エレファント・ハイド」に入ってきました。マシャトゥ動物保護区はボツワナ・南アフリカ・ジンバブエの3ヶ国の国境近くにあります。

正式にはマテボレ・ハイド(Matebole Hide)といい、世界中のフォトグラファーの憧れのハイドです。


このハイドが素晴らしいのは「水場のすぐそばで半地下にあるハイド」という点で、通常のジープサファリとは違い目線の高さを野生動物と合わせられます。動物が近づいてきた場合には、下から煽る写真も撮ることができます。普通のサファリカーからは絶対に撮れない写真が撮れます。

ハイドは水場のすぐ横にあり、コンテナが地下に埋め込まれていて、階段を下りてその中に入っていきます。

枝などを置くことで、動物たちからあまり気にならないように配慮されています。


撮影用に横に長い窓が設置されていて、窓が地表とほぼ同じ高さになっています。

コースターのような形状の雲台も窓のそばに設置されています。
豆袋(ビーンバッグ)も。

この日は、朝早く日の出の直後からハイドに入りました。
最初は動物たちが水場に一切いないので大丈夫かと不安になりましたが、待っているとすぐにチャップマンシマウマが現れました。


慎重に近づいてきますが、肝心の水場にはなかなか近づきません。他に動物がいないからか警戒しているのかもしれません。
ただ一度飲む動物が現れると、その後は続々と草食動物たちが順番にやってきます。

イランド

クドゥ(メス)

競うように水を飲むインパラ

オグロヌー

コウヨウチョウの群れ

マシャトゥは「ランド・オブ・ジャイアンツ Land of the Giants」とも呼ばれ大型野生動物が多い保護区として知られています。ゾウの個体数は約1000頭と私有保護区としては世界最大級。この水場には入れ替わりで、毎回違うゾウの群れが現れます。

通常のサファリドライブ用に持っていった望遠レンズ(100-400mm)だと広角の100mmでも近すぎて、ハイド付近に来るゾウなどの大型動物は写しきれません。
ゾウが複数匹来た場合などは超広角レンズがないと全ては入りません。


まだ鼻をうまく使えない子供のゾウが、口を直接つけて水を飲んでいました。

泥まみれの子供のゾウ


↑は暑い時間帯となり、水浴びを始めたゾウの動画です。


かなり近くで水浴びをしたためハイドの中まで泥が飛び散って入ってきました。


今回は幸運なことにブチハイエナが水場まで来てくれました。その間は他の草食動物たちは来なくなってしまいます。

若い個体で好奇心が旺盛なのか、ハイドにいる人間が気になるのかかなり近くまで接近してきます。


ハイドの穴からこちらを覗いてきます。


さすがにこの距離までブチハイエナに近づかれると、こちらもかなりドキドキしました。


普段はそれほど可愛いとは思っていなかったブチハイエナも、この距離と角度で見るととても可愛かったです。

運が良いとライオンやチーター、ヒョウなどが現れることもあるとのこと。
次回はぜひ大型肉食獣をこの角度と距離で見てみたいです。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : May 2023, Mashatu Game Reserve, Botswana

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マウンテンゴリラ Mountain gorilla(ヴィルンガ山地・ルワンダ)

今年 (2024年) の3月にウガンダのブウィンディ原生国立公園でマウンテンゴリラを観察、そして8月にはルワンダのヴィルンガ山地(ヴォルケーノ国立公園)でマウンテンゴリラと再び出会うことができました。

今回、私たちが出会えたのは世界で最も有名なマウンテンゴリラとも言われている「タイタス(Titus)」のグループでした。

タイタスグループのゴリラたち

野生ゴリラ研究の開拓者であるダイアン・フォッシーの調査対象としても有名なグループで、フォッシーのお気に入りのゴリラであるディジットの甥っ子にあたるのがタイタスです。また日本のゴリラ研究の第一人者である山極壽一さんが2年間タイタスと一緒に過ごしていたそうです。その他ドキュメンタリーなども多数出ていたタイタスですが、2009年に亡くなってしまったので、今回出会ったのはタイタスの子供にあたるPato(パト)とUrwibutso(ウルウィブツォ)の2頭がシルバーバックになります。

ヴィルンガ山地のシルバーバック

ブウィンディ原生国立公園とヴィルンガ山地では同じマウンテンゴリラではありますが、見た目がだいぶ違います。それぞれ「ブウィンディ個体群」と「ヴィルンガ個体群」と呼ばれ、一時期は両者を別の亜種とすることも検討されていたほどです。

ブウィンディ個体群は主にウガンダに生息し、ヴィルンガ個体群はコンゴ・ルワンダ・ウガンダの三ヶ国国境にまたがって生息しています。

ヴィルンガの個体は全体的に体毛が濃く長い、特に腕の毛が長いです。
逆にブウィンディの個体は体毛が薄く短めです。
(↓2024年3月のブウィンディの写真)

毛の薄いブウィンディのマウンテンゴリラ

ブウィンディの標高1,200m~2,600mとヴィルンガの標高2,200m~3,600mと生息する標高に違いがあります。標高の高いヴィルンガの方が気温が低いため、毛が長くなっていると考えられます。

ふさふさの毛が生えるヴィルンガの子供ゴリラ

今回出会った「ヴィルンガ個体群」はマウンテンゴリラに分類されていますが、最近の遺伝子の研究によると、同じマウンテンゴリラのブウィンディ個体群よりも別の亜種であるヒガシローランドゴリラ(グラウアーゴリラ)と近い関係にあると言われています。

木の芽を食べる赤ちゃんゴリラ

標高の低いブウィンディにはさまざまな樹木や植物が生い茂る熱帯雨林でフルーツも豊富、対して標高の高いヴィルンガはフルーツが少ない木が生い茂るだけです。そのためブウィンディの個体は果実食と葉食の組み合わせ、ヴィルンガの個体は葉食中心となっています。そのことが顔にも表れていて、固い繊維質の葉や茎を食べるヴィルンガの個体の方が顎がしっかりとしています。

顎がしっかりしているヴィルンガのゴリラ

鼻にも違いがあり、ヴィルンガのゴリラの鼻の穴は角ばって大きく、鼻筋に割れ目が見られます。ブウィンディのゴリラの鼻は丸みを帯びて小さいようです。また人間の指紋と同じようにゴリラの鼻紋は生涯変わらないので個体識別に使われます。

子供のゴリラが大きくなっても変わらない鼻紋

制限時間はウガンダのブウィンディ原生国立公園と同じ1時間だけです。
あっという間に観察の時間が終わってしまいました。

お昼寝するゴリラたちともう少し一緒の時間を過ごしたかったです。


帰り道は美しい姿のビソケ山(3,711m)をバックに歩いて帰ります。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : Aug 2024, Volcanoes National Park, Rwanda

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ミナミセミクジラの白い赤ちゃん(バルデス半島)

2024年9月のバルデス半島・ヌエボ湾では、5頭の白いミナミセミクジラの赤ちゃんが産まれました。

5日間のクルーズ中、白い個体に3日間出会えました。

写真を見返してみると模様が似ているという点と、出会った場所も近いという点から、同じ個体だったのかもしれません。とてもフレンドリーで可愛らしい子でした。


ボートの間近に寄ってきたり


ボートの真下をくぐったり


アルゼンチンのパタゴニア北部にあるバルデス半島は、ミナミセミクジラの世界最大の繁殖地で、毎年1,500頭以上のミナミセミクジラが繁殖のためにバルデス半島に訪れます。

ミナミセミクジラの研究によると、新生児のうち3~5%程が白い赤ちゃんだと推定されていますが、大きくなるにつれて灰色に変化していきます。英語でグレイモルフ(Grey morphs)やブリンドル(Brindle)と呼ばれます。日本語では灰色型でしょうか。白い個体はオスのみに表れ、メスの場合は、部分的に灰色になる個体(Partial grey morph)しか見つかってないようです。

同じセミクジラ属のタイセイヨウセミクジラとセミクジラでは灰色型は記録されていないとのことで、ミナミセミクジラ固有の現象のようです。

母クジラが深い海(今回の水深は110m程のエリア)に潜り、採餌をしている間に一人で過ごす子供たち。子供だけのタイミングで、ブリーチングやペッグスラップなど活発な行動を起こすことが多いです。


子供ながら迫力のブリーチング


テイルスラップの練習のようなことも


お腹を上にして泳いでみたり


白いので、胸びれの中の指まではっきリと見えます。
ミナミセミクジラの指は人間と同じ5本とのことですが、そこまではわかりません。


白い個体は、海の上からも見つけやすいため、マゼランカモメに狙われやすい気がしました。背中の傷が目立ちます。

 

今回出会った白い個体以外にも、パンダ柄のような白と黒が入り混じった個体も見られました。こちらはホワイトブレイズ(White blaze:白いぶち)と呼ばれ、また別の遺伝子が影響したミナミセミクジラのようです。


パンダ柄のブリーチング


こちらの個体も赤ちゃん(右)で、お母さんクジラ(左)と一緒に泳ぎます。


お母さんクジラの胸びれに抱きかかえられるようにして甘えています。


また別の日の夕暮れに出会った白い個体。
模様が少し違うので、また別の個体だったかもしれません。

 

Image & text : Wataru YAMOTO

Observation : Sep 2024, Valdes Peninsla, Argentina

参考文献
Cellular and ultrastructural characterization of the grey-morph phenotype in southern right whales (Eubalaena australis)

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Youtube : ミナミセミクジラのスキムフィーディング

Youtube : オタリアと遊ぶミナミセミクジラ

Youtube : ミナミセミクジラの海・ヌエボ湾

西遊旅行のワイルドライフツアー一覧

ハティンラングール Hatinh Langur(クアンビン省、ベトナム)

ベトナムのクアンビン省トゥエンホアにて出会った、希少な霊長類ハティンラングールです。

ハティン・ラングールは、ベトナムとラオスに固有のサルで、全身が真っ黒、唇の上から耳に続く白い口髭と、頭頂の逆立った冠毛が特徴です。クアンビン省の隣のハティン省の名前がついたサルですが、実際にはハティン省にはほとんど生息していないそうです。発見した研究者が地名を勘違いしたと言われています。

ハティンラングールを観察するためには、地元の農家の人の手助けが必要になります。畑のそばにある石灰岩の岩山に生えている森の中にハティンラングールが出てくるため、畑で働く農家の人からハティンラングールの情報を聞いて、情報のあった場所まで、農道やあぜ道を歩いて向かっていきます。

最初に到着した場所ではハティンラングールは見えたのですが、距離がありすぎて、しっかりとは見えにくい場所でした。その後また別の情報を得ると急いでその場所まで向かっていきます。

アンナン山脈の中で、森林の多いカルスト石灰岩地帯に生息しています。

「リーフイーター」と呼ばれるサルの仲間で、木の葉を主食としています。手で一枚一枚葉っぱを摘み取り、長時間噛んで、飲み込む前に葉っぱを細かく砕きます。あまり噛まず消化管だけで食べ物を分解する他のリーフモンキーの行動とは異なります。

群れの大きさは2~15頭、平均8頭前後で、大人のオス1頭、複数のメス、子供がいます。日本の動物園などでも有名な「フランソワルトン」の近縁種になり、英名ではHatinh Lutung (ハティンルトン)とも呼ばれます。ベトナム北部に生息するハティンラングールは、以前は中国南部の石灰岩地帯に棲息するフランソワルトンの亜種として考えられてきましたが、今は別の種とみなされています。

正面からみるとフランソワルトンと区別はつきにくいのですが、白いひげが耳の後ろまで伸びているのが特徴です。

今回、幸運にも生まれたばかりの赤ちゃんのハティンラングールを見ることができました。オレンジ色をしていますが、生後数週間でこの色は薄れ始め、2 か月後には暗くなり、3ヶ月までには真っ黒になるそうです。

この子はまだ1ヶ月ほどでしょうか。

毛の色はまだオレンジですが、生まれてすぐにはない白い口髭も少し見えています。

授乳している様子も見られました。

かわいい赤ちゃんのハティンラングールも見ることができた、大満足のサイティングでした。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : January 2024, Tueng Hoa, Quang Binh, Vietnam

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ベトナムの森 ワイルドライフスペシャル

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十勝岳のナキウサギ The Japanese Pika of Tokachi-dake Mountain

北海道中央部の高山には氷河期の生き残りといわれる可愛らしいナキウサギが棲んでいます。ここで見られる種はキタナキウサギ (学名:Ochotona hyperborea, 英名:Northern Pika) の亜種、エゾナキウサギ(学名:Ochotona hyperborea yesoensis, 英名:Japanese Pika)です。冷涼な気候を好み、12度前後が適温と言われています。

ナキウサギの外観

ナキウサギとは? 

近縁のウサギと外観はかなり異なり、体長15~18cmと小さく、耳は丸くて短く、尾は短くて体毛に隠れて見えなく、足は短いので、一見するとネズミやハムスターのような姿です。しかし、歯の構造はウサギと同じで、ネズミの様に前足で物をつかむことはできません。名前の通り、オスはキチッ、キチッ、キチッ、と連続して4~16回強く鳴きますが、メスは単音、または不規則な連続音のみです。

ナキウサギの棲む環境

棲みかは「露岩帯」とか「ガレ場」といわれる大小の岩が積み重なったところで、天敵のエゾオコジョ、イイズナ、キタキツネなどの捕食者からの逃げ場所となるとともに、夏に岩の隙間には冷涼な空気が保たれます。また、近くに食料が得られる灌木や森林があることも条件となっています。

望岳台から見た十勝岳

十勝岳のナキウサギ

十勝岳の登山口である望岳台のガレ場には多くのナキウサギが見られます。冬眠をしないナキウサギは秋に食料を蓄えるために活動が活発になるのでベストシーズンとなります。特に晴れて風がなくてほどよく暖かいときには岩の上でじっとして日光浴をしますので、撮影や観察には良いでしょう。また、同様な環境を好むシマリスも見ることができます。

鳴き声をあげるナキウサギ

日光浴しているナキウサギ

地衣類を食べるナキウサギ

シマリス

白金温泉に宿泊して、ナキウサギの観察のついでに、早朝は「白金温泉の青い池」を訪ね、午前中はナキウサギの観察、午後は「美瑛の丘」巡りというプランも時間的に充実ですね!空気が澄む秋はお勧めです。

 

Photo & text : Hiromichi HAYASHI

Observation : Tokachi-dake Mountain, Hokkaido

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キホオテナガザル Yellow-cheeked Gibbon(カッティエン国立公園、ベトナム)

「歌うサル」と呼ばれるテナガザルの仲間キホオテナガザルに、ベトナム南部のカッティエン国立公園で出会えました。キホオテナガザルはベトナム南部だけでなく、ラオス南部やカンボジア東部の熱帯林にも生息します。

テナガザルの仲間は約20種いると言われていますが、いずれの種も共通して森の中で歌を歌います。オスとメスがデュエットするように交互に声をシンクロさせながら歌い、森の中に済んだ歌声が響き渡ります。歌うことは、群れの縄張りのアピールでもあり、異性を惹きつける効果もあるようです。特に早朝には大きな歌声が聞こえてきます。

観察する我々としては声を頼りに見つけやすいのですが、実際には森の奥深くにいると近づけないため、声はすれど姿は見えずということもあります。

キホオテナガザルは名前の通り、手が長いので樹上での生活に適しています。特に樹冠の高い位置で生活して、危険の伴う木の下の方に降りてくることは少ないです。雲梯のように腕渡りをするブラキエーションで木々を移動しますが、時速50kmを超えることもあるそうです。

キホオテナガザルは一夫一妻で、多くても4頭ほどの子どもからなる小さな家族で暮らしていて、イチジクの実や木の葉などを食べています。

キホオテナガザルはオスとメス、子供、赤ちゃんで色がそれぞれ変わってくるという特徴があります。

大人のオスは全身が黒に、黄色の頬(キホオ)。

大人のメスは全身クリーム色に頭の黒い帽子が特徴になります。

赤ちゃんはオスもメスも全身クリーム色で、お母さんと同じ色をすることで抱っこされたときにお母さんの色に溶け込みます。そして数か月後にオスメス関係なく、一旦オスと同じように頬以外が黒くなります。その後、性成熟が近づくとメスのみまた全身クリーム色に頭の黒い帽子となります。

まとめると
メスの場合はクリーム色→黒色→クリーム色と2回も色が変わり、
オスの場合はクリーム色→黒色と1回色が変わります。

上の写真の子はおそらくクリーム色の赤ちゃんから、少し黒に変わりだしている時期の子供に見えます。

綺麗な歌声を聞きつつ、森を歩く・・・ベトナムの美しい森の朝の時間です。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : January 2024, Cat Tien National Park, Vietnam

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