カテゴリー別アーカイブ: – デオサイ国立公園

デオサイ高原キャンプで出会った、ヒマラヤヒグマ(パキスタン)

夏のデオサイ高原、キャンプ&ウォーキングで出会ったワイルドライフと景色。2022年の夏のデオサイ高原は例年になく乾燥していました。いつもは水があふれ高山植物の花が咲き乱れるデオサイは、乾燥し水がないため秋と同じような色をしている植物がたくさん見られました。理由は冬の降雪の少なさです。

パキスタンではスワート渓谷、シンド・バロチスタン州の洪水報道の一方、降雨の少なさで生態系が狂う場所もあるという、異常気象の恐ろしさを実感です。

晴れた日のデオサイ高原は本当に美しく、透き通った水の流れる川、湿原、山が迎えてくれます。

オナガマーモット Long-tailed Marmot

オナガマーモット Long-tailed Marmot(またはGolden Marmot)です。クンジュラブ峠付近で見られるのと同じ種ですが、その毛皮の色はだいぶ落ち着いた色です(クンジュラブ峠のものはまさにGolden Marmotと呼ぶにふさわしい、濃い色の毛皮を纏っています)。

キガシラセキレイ Citrine Wagtail

キガシラセキレイ Citrine Wagtailの雄。川沿いの藪で繁殖しており、朝・夕に雛に虫を運ぶ姿が観察されます。

ハマヒバリ Horned Lark

こちらはハマヒバリ Horned Larkの雄。こちらも雛に餌を運ぶのに大忙しでした。滞在していた7月半ばはちょうど雛の巣立ちの季節のようで、まだあまり飛べない雛が車道付近にいるのをドキドキして見ていました。

ムネアカイワヒバリ Robin Accentor

ムネアカイワヒバリ Robin Accentor です。キャンプ地の周りにはいませんでしたが、シャトゥン地区の家畜の放牧エリアで見かけました。パキスタンではデオサイ高原から北にかけての限られた地域でのみ見られる鳥です。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bearを求めて毎日歩きました。今夏の例外的な乾燥のため、いつもいるはずの場所にヒグマがいませんでした。夕方まで探しても見られない日がありました。

国立公園のスタッフと歩き、探し、「どうしていつもの場所にいないのか」と頭を抱えました。

最初に思いついた原因は「観光客の増加」。しかしそれは今年だけのことではありません。次が、遊牧で暮らす人々がデオサイ高原のヒグマエリアに家畜を持ち込んだこと。これはさすがに影響があるはずです。しかし、ヒグマのコアゾーンにもいない・・・大きな理由はやはり、積雪の少なさによる「乾燥」に起因すると考えられます。ヒグマの好物の草が、いつもの場所に育たず、餌をもとめて移動してしまった・・・というのが国立公園スタッフの意見でした。

残念ながら、ヒマラヤヒグマはその生態についてほとんど研究されていません。正直なところ、発表されている個体数も正確なものではないでしょう。

今回の滞在中、ヒマラヤヒグマを求めて4か所のヒグマエリアを歩きました。途中、デオサイ高原のあちこちから見える世界第9位の高峰、ナンガパルバット Nanga Parbat (8,126m)の南東からの山容です。

ヒグマがねぐらに使っていたくぼみです。大きなくぼみと小さなくぼみ。親子ヒグマのもののようです。

糞も大きな糞(母グマ)と小さい糞(子熊)が大量にありました。ただ、国立公園スタッフによると、一番新しいものが3~4日くらい前でその後の新しいものはないと。この親子ヒグマもこの場所を去ってしまったようです。

コアゾーンと呼ばれるエリアで、スキャン。ようやくヒマラヤヒグマを見つけました。

とっても若いヒマラヤヒグマです!

私たちのにおいがしたのでしょう、立ち上がって、私たちを探し始めました。

もう、私たちの存在に気が付いてしまいました。この後は、遠ざかる一方です。草原を走って見えなくなってしまいました。まだかなり若い個体なので近くに母グマがいたのか、それとも別れたばかりなのか。無事に育ってくれることを祈ります。

別の大きなヒマラヤヒグマがいました、夢中で食べています。

食べるのに夢中でなかなか顔を上げてくれません。食べている間に少しづつ距離を詰めていきました。風向きは反対、チャンスです。

ヒマラヤヒグマ撮影中。

こちらのことは気づくことなく草を食むヒマラヤヒグマ。高山植物の花に囲まれ、キガシラセキレイがヒグマの周りで虫を捕食する、自然な光景を見ることができました。

キャンプ地に戻ると、大きなマスが(注:ちゃんと国立公園の許可証をとってスタッフが捕まえたものです)。デオサイ高原には、もともといたマスとイギリス人が植民地時代に釣りのために放流した外来のマスがいます。このマスがどちらなのかはわからないのですが、もともといるマスはIndus Snow Troutと呼ばれる珍しい種だそうです。

マスを見たら、喉が渇きます。パキスタンのビール、マリービールで乾杯です(注:標高4,000mありますのでマネしないでください)。この缶はMurree BreweryのMILLENNIUMというビールで、個人的に一番おいしいと思っているビールです。イギリス植民地時代の遺産で一番感謝しているものです。

デオサイ高原の星空・・・明かりのないデオサイ高原の空の撮影はおすすめ。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear

そしてキャンプ地に現れたヒマラヤヒグマ・・・キャンプ地のゴミを目当てにしている個体がおり、しょっちゅうやってくるそうです。カメラトラップにしっかり映っていました。

今年は乾燥していたため、ヒグマの観察には苦労し、高山植物の少ないシーズンとなってしまいましたが、この異常気象が生態を狂わさないことを祈るばかりです。

 

Image & Text : Mariko SAWADA

Observation : JUL 2022, Deosai National park, Gilgit-Baltistan

西遊旅行パキスタン支店 INDUS CARAVAN のパキスタンの野生動物特集

西遊旅行のパキスタンツアー一覧

 

(動画)冬眠前のヒマラヤヒグマとナンガパルバット

10月半ば、冬眠前のヒマラヤヒグマの映像と好天に恵まれた国内線から撮影したナンガパルバットの動画です。

Himalayan Brown Bear in Autumn|デオサイ高原のヒマラヤヒグマ

イスラマバードからスカルドゥへの国内線から撮影したナンガパルバット Nanga Parbat(8,126m)。ピークが近すぎてびっくりしました、機内もパキスタン人国内客が大騒ぎ。

Nanga Parbat from PK451|ナンガパルバット(空撮)

ナンガパルバットは世界第9位峰で主峰は8,126m。いくつものピークがありその姿はまさに「山塊」。ナンガパルバットを展望するいくつかのビューポイントがありますが、デオサイ高原もそのひとつです。

デオサイ高原から見るナンガパルバット Nanga Parbat from Deosai Plateau (3)

デオサイ高原の南端、ショーサル湖の奥に現れるナンガパルバット。

デオサイ高原から見るナンガパルバット Nanga Parbat from Deosai Plateau (1)

デオサイ高原からアストール谷へ下る道から見るナンガパルバット。

デオサイ高原から見るナンガパルバット Nanga Parbat from Deosai Plateau (2)

ナンガパルバットとの記念撮影もこんな感じです♪♪

 

Image & text :Mariko SAWADA

Observation : Oct 2021, Deosai National Park, Gilgit-Baltistan & PK451

Special Thanks : Deosai National Park, PIA

10月のデオサイ高原へ、ヒマラヤヒグマにナンガパルバット!

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (5)

10月半ば、今年最初のまとまった雪が降ったデオサイ高原へ。平均標高4,200mにもなる高原は、雪の後オナガマーモットが一斉に冬眠に入ってしまいとても静かでした。

デオサイ高原がどこにあるかというと、パキスタンの首都イスラマバードから国内線でスカルドゥへ飛び、そこからオフロードの道を4WDで3時間かけて行きます。

ワイルドライフと関係ないのですが、このイスラマバードからスカルドゥへの国内線が世界第9位峰のナンガパルバットを望む大展望フライト。10月は晴天率も高く、本当にラッキーでした。

Nanga Parbat from PK451 ナンガパルバット PK451便スカルドゥ線より (1)

パキスタン航空PK451便から見るナンガパルバット Nanga Parbat のピーク(8,126m)です。これまでも何度も乗っている路線ですが、この日のフライトは一番ピークに近く飛んでくれました。本当に、登っている人がいたら見えるくらいの距離です。

Indus River from PK451 インダス川と渓谷 PK451便スカルドゥ線より (2)

到着前にはインダス川の景色が。インドのラダックから流れてくるインダス川はここからパキスタンの中央を南北に貫き、アラビア海へと注ぎます。この渓谷沿いは渡り鳥のルートでもあります。

Skardu Airport PK451 スカルドゥ空港 PK451便スカルドゥ線より (3)

そしてフライトはインダス川の河畔の砂漠にある空港へ着陸。スカルドゥへは冬を除き、イスラマバードだけでなくカラチやラホールからもフライトが飛ぶようになり、滑走路・空港の拡張工事が進められてました。「カトマンズ」のように観光のハブになる街にしたいとのこと。いやいや、自然を残し地元文化を大切にするツーリズムに注力してほしいものです。

10月の半ばのオフシーズンにも関わらずフライトはパキスタン人の国内客で満席、新興国のパワーを見せつけられました。

BARAPANI Deosai National Park Pakistan バラパニ デオサイ国立公園 (1)

そしてやってきた、雪化粧のデオサイ高原、バラパニ付近です。オナガマーモットはもう冬眠に入り、そしてデオサイ国立公園のスタッフももう下山の準備。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (4)

朝、道路から比較的近い場所でヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear を発見。観光客が少ない朝と夕方は道路(川)の近くに現れることがあります。2021年はヒマラヤヒグマの個体調査は行われませんでしたが、およそ80頭が国立公園内に生息していると考えられています。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (2)

冬眠前のまるまると太ったヒマラヤヒグマ。ヒマラヤヒグマは9月になると脂肪のたまったオナガマーモットを食べ、さらに太るのだといいます。

●P1288624

標高4,200mの高原でヒマラヤヒグマを観察。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (7)

ヒマラヤヒグマは座り込んでしまいました。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (6)

デオサイ国立公園のスタッフによると、ヒマラヤヒグマも間もなく標高の低い谷に移動し、冬眠の準備をするとのこと。デオサイ高原でヒマラヤヒグマを見るのはもうこれが最後の季節です。

Red Fox Deosai National Park Pakistan アカギツネ デオサイ国立公園 (3)

今回、オナガマーモット Log-tailed Marmotは冬眠してしまったため観察できませんでしたが、代わりにアカギツネ Red foxの姿を何度も見かけました。アカギツネは冬眠しませんが、きっともうすぐ標高の低い位置に移動するのでしょう。高原でヤギや羊などの家畜を追っていた人たちもみんな下山し、次の大雪が降ったら来年の6月頃までデオサイ高原は雪で閉ざされます。

Himalayan Brown Bear Deosai National Park Pakistan ヒマラヤヒグマ デオサイ国立公園 (8)

バラパニのキャンプ地にある看板です。 この数年、デオサイ国立公園を訪れるパキスタン人国内客が増え、キャンプ場のごみの処理が問題となっています。2018年、ヒグマの糞の80%がプラチックだったという衝撃的な報告がなされました。その後、国立公園のスタッフが毎週一度の清掃活動を行うようになりました。また国立公園内のキャンプ場のゴミ捨て場にヒグマが現れることが知られており、対策が求められます。

緑を背景にした、夏のデオサイ高原のヒマラヤヒグマにも出会いたいですね♪

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Oct 2021, Deosai National Park

Special Thanks : Deosai National Park

夏のヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear(デオサイ高原、パキスタン)

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (6)

パキスタン北部にあるデオサイ高原はヒマラヤヒグマの生息地として知られています。ヒマラヤヒグマについてはこちら(2015年10月の観察記録)

ただし、デオサイ高原に行けば見れるというものではなく、レンジャーと一緒に歩いてヒマラヤヒグマの暮らすエリアに行かなくてはなりません。また、長年ハンティングの対象であったこともあり非常に臆病ですぐに逃げていきますので、ある程度距離をおいての観察となります。

夏はデオサイ高原のベストシーズンですが、観光客が多すぎてヒマラヤヒグマたちは谷のより奥にいるため観察にはずいぶんと歩かなくてはなりません。

デオサイ高原国立公園スタッフの間で「シャイターン」と呼ばれるグループの地域へ行って見ました。「シャイターン」は「サタン=悪魔」の意味ですが、このグループを「悪魔」と呼んでいるのではなく「いたずらっこ」のような意味なのだそうです。

標高4,000mほどのキャンプから少し高度をあげ無数の小川が流れる谷へ。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (1)

同行レンジャー氏が、「Bear!」と。三脚を立ててせいいっぱいのズームで見ると熊が2頭、親子です。お母さん熊がたって何かを見ています。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (2)

お母さん熊が見ていた方向にいたのは雄のヒマラヤヒグマです。親子グマはこの雄を避けて小川沿いの草の中を私たちのほうへ歩いてきました。ラッキーなことに私たちは風下におり、クマに気づかれずにヒマラヤヒグマの観察としては比較的近い位置まで来ることができました。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (3)

あ、小熊に見つかってしまいました。見られてしまいました。なんてかわいいのでしょう。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (4)

お母さん熊が立ち上がってこちらを見ています。お母さん熊にも見られてしまいました。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (5)

ふたたび小熊がこちらを見ています・・・

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (8)

ついに2頭で私たちを見ています。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (7)

もう、ばっちし目が合いました。夢のようなアングルです。この後、2頭は歩いて離れていきました。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (11)

少し離れたところに現れた親子熊。このあと、2頭は草原でいろいろ見つけながら移動していきます。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (12)

しばらくすると、親子が岩の上に乗って別の方向を見ていました。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (13)

なんと、別のメスの熊が現れその通過待ちでした。もう1頭のメスは完全にスルーでした。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (14)

その後の親子は・・・小熊がお花畑で少し寝たり、遊んだり。

ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear デオサイ高原 Deosai National Park (15)

そして丘を越えて見えない場所へと行ってしまいました。大変美しい光景でした。

デオサイ国立公園(DNP)のスタッフによると2017年の個体数調査では、ヒマラヤヒグマの個体数は80頭を越えた、とのことです。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Jul 2017, Deosai National Park, Pakistan

Reference : Mr.Ghulman Raza – Deosai National Park, Mr.Zahoor Salmi

オナガマーモット Long-tailed Marmot (デオサイ高原、パキスタン)

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (12)

夏のデオサイ高原で観察したオナガマーモット Long-tailed Marmot 。デオサイ高原はパキスタンの北部、インドとの国境付近にある平均標高4,100mの高原地帯で、1993年に国立公園に指定されました。

この数年、デオサイ高原を訪れるパキスタン人国内旅行客の数は一気に増加、国立公園当局(DNP)は道でない場所に車を走らせたり、ゴミをばらまくマナーの悪い観光客に困っていました。国立公園当局も率先してゴミ拾いをしていましたが、スタッフによると、前はシーズンは最初と最後、中間くらいにしていた清掃活動を、ほぼ「毎日」しなくてはならない、それほどのゴミが出されると嘆いていました。デオサイ高原は10月半ばには閉鎖され、11月~5月は雪に覆われます。「パキスタン人観光客の多い7~8月さえ乗り切ればもとの静寂なデオサイ高原がもどってくる」と。

観光客が多いことはキャンプ地がうるさくて大変ですが、夏のデオサイ高原は花が咲き大変美しい季節を迎えます。そして、短い夏を謳歌する動物たち・・・

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (1)

デオサイ高原でキャンプすると必ず出会うのがこのマーモット。デオサイ高原のマーモットは中央アジア・パミール高原で見られるマーモットと同じ、オナガマーモット Long-tailed Marmot / Golden Marmot です。

「キィキィ」というアラームコールを発し巣穴付近から立ち上がって様子をうかがっている光景を目にします。もちろん、近づきすぎた人間にもアラームコールを発しますが、彼らはマーモットを狙うキツネや猛禽類などを常に警戒しています。

このオナガマーモット、標高3,200m-5,000mほどの高地の草原や岩のある場所に巣穴を掘ってコロニーをつくり、大家族からなる集団で暮らしています。一夫一婦で大変社会性の高い動物だそうです。

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (13)

すぐに逃げられるように穴のそばに立っています。この巣穴は冬は冬眠に使われます。

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (3)

道路のすぐそばにあったコロニーで少しゆっくり観察しました。するとマーモットも警戒心を解き子どもたちが出てきます。

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (4)

お母さんマーモットと子どもが出てきました。マーモットの子どもは生まれてから6週間ほどを巣穴で暮らした後、外へ出てきます。

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (7)

いやあ、かわいい。

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (9)

甘えているのでしょうか。

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (5)

もう1匹出てきました!

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (10)

オナガマーモットは一度に4匹ほどの子供を生みますが、最初の夏を乗り切れるのはその半分、さらに最初の冬眠で命を落とす子供も多いのだそうです。このコロニーには複数頭の子どもがいました。

オナガマーモット デオサイ高原 Golden Marmot Long-tailed Marmot Deosai PlateauJPG (11)

デオサイ高原は10月になると雪が降り始めます。前に10月の第一週に訪れたときはマーモットたちはまだ活動していました。11月までには冬眠に入るのでしょうか、この子達が冬を越せますように!

 

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Jul 2017, Deosai National Park, Pakistan

Special Thanks : The late Mr.Zahoor Salmi, Deosai National Park

ハマヒバリ Horned Lark(デオサイ高原、パキスタン)

デオサイ高原 パキスタン (4)

ワイルドフラワーに包まれた、7月中旬のデオサイ高原で出会ったハマヒバリたちのレポートです。デオサイ高原(デオサイ国立公園)はパキスタン北部、ヒマラヤ山脈の端っこにある平均標高4,200mの高原で、無数の小川が走り、高原湿地が広がるまさに「天空の花園」と呼ぶにふさわしい場所です。

> デオサイ高原のワイルドライフついて

Horned Lark ハマヒバリ デオサイ高原 (11)

ハマヒバリ Horned Lark はユーラシア大陸北部や北米で夏に繁殖し、冬は南へと渡り越冬する野鳥ですが、パキスタンの北部では一年を通じて観察することができます。チトラールからデオサイ高原までの北部山岳地帯の標高3,300m – 5,100m付近に暮らしています

デオサイ高原 パキスタン (1)

デオサイ高原の7月半ばはワイルドフラワーの花盛り。特に湖の周辺や湿地帯は標高に応じてさまざまな花が咲き誇っていました。まさに、「天空の花園」。

デオサイ高原 パキスタン (3)

ハマヒバリの暮らすデオサイ高原の風景。山岳地帯の岩陰や地面のくぼみに巣を作って繁殖しています。

Horned Lark ハマヒバリ デオサイ高原 (10)

ハマヒバリのオスです。英名Horned Lark の通り、角のような冠羽が左右にあるのがオスのハマヒバリの特徴です。地域によって顔からのどにかけてが黄色になるハマヒバリもいますが、パキスタンでは白~クリーム色なのだそうです。

Horned Lark ハマヒバリ デオサイ高原 (5)

後ろから見たハマヒバリ。両サイドに飛び出た角が、たまらなくかわいらしいです。

Horned Lark ハマヒバリ デオサイ高原 (6)

ハマヒバリの幼鳥です。親と同じくらいの大きさになっていました。

Horned Lark ハマヒバリ デオサイ高原 (8)

草の実を食べるハマヒバリ

Horned Lark ハマヒバリ デオサイ高原 (2)

幼鳥に食事を運んできて与えるハマヒバリの親鳥

Horned Lark ハマヒバリ デオサイ高原 (1)

キャンプ地付近は食事のおこぼれがあるため、一番観察しやすい場所で、パキスタン人の観光客も一緒にバードウォッチングを楽しんでいました。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Jul 2016 , Deosai National Park – Pakistan

Reference : Helm Field Guide “Birds of Pakistan”, Wikipedia(EN) (JP)

 

キガシラセキレイ Citrine Wagtail(デオサイ高原、パキスタン)

キガシラセキレイ Citrine Wagtail デオサイ高原 (3)

夏のパキスタン、デオサイ高原で出会ったキガシラセキレイ Citrine Wagtail。 繁殖羽のオスは黄色い頭と黒い翼のコントラストが美しく、花咲き乱れる高原を飛ぶ姿をあちこちで見かけました。

> デオサイ高原についてはこちら

デオサイ高原 パキスタン バラパニ(5)

パキスタンのキガシラセキレイは夏の繁殖期は北部山岳地帯、ヒマラヤの川沿いや湖沼地帯で過ごし、冬は南のインダス平野部に渡り越冬します。写真はデオサイ高原のバラパニ付近(標高4,000m)。キャンプ地に近い河原でキガシラセキレイたちを観察することができました。

キガシラセキレイ Citrine Wagtail デオサイ高原 (9)

河原に現れた繁殖羽のキガシラセキレイのオス。頭の毛が濡れています。

キガシラセキレイ Citrine Wagtail デオサイ高原 (7)

繁殖期のオスは黄色い頭、メスは薄い黄色い色をしていますが、幼鳥や、1年目の若鳥は灰色の体をしています。

キガシラセキレイ Citrine Wagtail デオサイ高原 (8)

キガシラセキレイの若鳥

キガシラセキレイ Citrine Wagtail デオサイ高原 (5)

キガシラセキレイの若鳥、河原の石の間の虫を捕まえていました。

キガシラセキレイ Citrine Wagtail デオサイ高原 (20)

繁殖羽のオス

キガシラセキレイ Citrine Wagtail デオサイ高原 (13)

虫を捕食

キガシラセキレイ Citrine Wagtail デオサイ高原 (18)

緑の草原のキガシラセキレイ

デオサイ高原 パキスタン (2)

満月の夜でした。バラパニのキャンプ地の光景です。標高4,000m、透きとおる、冷たい空気の夜。

デオサイ高原 パキスタン (3)

朝、霜が降りていました。7月でも十分な防寒が必要です。

デオサイ高原 パキスタン (4)

霜が降りて、キラキラ光る草原。日が昇って氷が解けるまでの、ほんの短い時間だけの輝きです。

デオサイ高原 パキスタン ナンガパルバット

快晴のデオサイ高原、バラパニから東にハイキングに出かけると、途中の丘からは世界第9位峰のナンガパルバット 8,125mが姿を現しました。大きなヒマラヤの「山塊」の頂上まできれいに見えました。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Jul 2016 , Deosai National Park – Pakistan

Reference : Helm Field Guide “Birds of Pakistan”, Wikipedia(EN) (JP)

デオサイ高原のヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear

Himalayan Brown Bear ヒマラヤヒグマ (8)

パキスタンのデオサイ高原は、希少なヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bearが暮らす平均標高4,100mの高原です。急激に個体数を失ったヒマラヤヒグマの保護のため1993年に国立公園に指定されました。

ヒマラヤヒグマについて

ヒマラヤヒグマ Himalaya Brown Bear はヒグマの亜種でヒマラヤ山脈とその周辺に暮らすヒグマ。もともと、ネパール、チベット、北インド、北パキスタンに広く生息しましたが、トロフィー・ハンティングや毛皮・薬の材料目的として狩猟され、また生息地域を失い激減しました。ブータンではすでに絶滅したと考えられ、インドの北部山岳地帯に数百頭、パキスタンに150~200頭ほどが生息するのみとなりました。

デオサイ国立公園で最初のセンサスが行われた1994年には30~40頭ほどを数えるだけでしたが、狩猟が取締りされ、保護が徹底された結果、2013年のセンサスによると72頭に増えました(国立公園の資料では60頭ですが、センサスに参加した職員によると子供を含めて72頭だと)。20年でほぼ2倍にはなりましたが、まだまだ厚い保護が必要な状態です。ヒマラヤヒグマは3年ごとに1~2頭の子供を産みます。国立公園の人によると11~12月には冬眠に入り5月ごろに出て来て夏の間、草を食べ、時にはマーモットを捕食する光景も見られるそうです。

 

キュートなヒマラヤヒグマと遭遇

これまでも何度かデオサイ高原を訪れ、そのたびにガイド氏から「ここにはヒマラヤ・ブラウン・ベアーがいます」と説明を受けながらも見たことは一度もありませんでした。

10月、デオサイ国立公園カラパニ地区のヒマラヤヒグマ保護観察をしているグルマン・ラザ氏と一緒にサイティングにチャレンジしました。私に与えられたサイティング・チャンスの時間は合計で2日。バラパニのデオサイ国立公園と警察の詰め所にキャンプし、ここをベースとしました。

デオサイ キャンプ (1)

バラパニの国立公園チェックポストにキャンプ

デオサイ高原 (1)

ヒマラヤヒグマを探す、グルマン・ラザ氏

ヒマラヤヒグマをジープ道から見ることは難しく(たまにはあるそうです)、本格的なサイティングのためにはヒマラヤヒグマが頻繁に目撃される谷や湿地帯へ行ける所までジープで行き、その後は歩いて探します。到着した初日は、ヒマラヤヒグマの観察で一番アクセスのいい「ウォッチング・ポイント」と呼ばれるところへ行き、双眼鏡で探しましたが見つかりませんでした。

この日はもう、夕暮れ、タイムアウトとなりキャンプへ。夜は満点の星空を撮影。夜、テント内にも霜がおり、すべての液体が凍りました。

朝7時30分、キャンプ場に十分に日が当たり、活動開始。再び、ウォッチングポイントを目指しますが、ヒマラヤヒグマはいません。少し遠出してバリラ方面の谷、シャトゥン・ナラの谷を見に行きますが見当たらず。そしてランチ・ブレイク。残された時間が少なくなり、少々焦りが出てきました。

2日前の目撃例をもとに、バラパニの谷をジープで行ける所まで行き、そこから歩いて川原を見渡すポイントへ。

双眼鏡で必死になって探しました。「ベアー!!」グルマン・ラザ氏が、草を食べるヒマラヤヒグマを発見。

でも遠い・・・双眼鏡で「点」のように見えるヒマラヤヒグマ、写真はおろか「どれがクマ?」のような状態です。距離にして約4~5キロ。現在15:30。ここは標高4000mの湿地帯。日没時間、歩くスピードを考えた結果、近づくことにしました。

はじめは猛スピードで移動しましたが、クマに近くなるとしゃべらずに、体をかがめて歩きます。

Himalayan Brown Bear ヒマラヤヒグマ (1)

ようやく、クリアーにヒマラヤヒグマが見えてきました。もう少し近づきます。風上に私たちがいると臭いで感づかれるので気をつけて、音を立てないように歩きます。

Himalayan Brown Bear ヒマラヤヒグマ (7)

もう、これ以上近づくと良くないだろうというところまで来ました。若いオスのクマのようで、私たちに気づかずせっせと草をはんでいます。

Himalayan Brown Bear ヒマラヤヒグマ (6)

ようやく気がつきました。大きなレンズを構えて写真を撮る私の姿は怖いはず。ごめんなさい。

Himalayan Brown Bear ヒマラヤヒグマ (2)

冬眠前のまるまるとした体。そしてなんてかわいらしい。夕方の美しいライティングの中で出会うことができました。

Himalayan Brown Bear ヒマラヤヒグマ (3)

しばらくこちらを見ていましたが、ついに後ろを向いて歩き出してしまいました。

Himalayan Brown Bear ヒマラヤヒグマ (4)

大きなおしりです。もこもこしていてたまりません。そしてついに走り出してしまいました。怖かったのでしょう、ごめんなさい。

そして私たちもタイムアウト、日没までにジープのあるところへ戻るギリギリの時間になっていました。山で陰になった冷たい湿地帯を歩きながら、今日の出会いに感謝です。

2015年8月、デオサイ高原の保護をめぐるニュースがありました。ギルギット・バルティスタン州政府が、ラマ湖からアストール、そしてデオサイ高原にかけてのラリーやポロ競技などの大型イベントの企画をしたことに対し、WWFパキスタンを中心にソーシャルメディアを通じて反対運動が起こり、このイベントを中止させた、というものです。パキスタンの人々の自然保護への意識が高くなってきたことを実感すると同時に、旅行ブームでパキスタン人観光客が急激に増えたデオサイ高原のゴミ問題・環境破壊が発生しているのも事実です。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Oct 2015, Deosai National Park, Pakistan

Reference : Mr.Ghulman Raza – Deosai National Park, Wikipedia( EN)

パキスタン デオサイ高原のワイルドライフ

パキスタンのオコジョ (1)

パキスタンのデオサイ高原はパキスタン北西部、ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈の間にある高原です。

広さは3,000平方キロメートル、平均標高は4100m。決して広大とは言えない高原ですが、急激に個体数を失ったヒマラヤヒグマの保護のため1993年に国立公園に指定されました。

デオサイ高原 (2)

11月~5月は雪に閉ざされ、「天空の湿地帯」とも呼べる豊かな植生が残されています。現在はDNP=Dosai National Parkが運営・管理し、WWFやUS-AIDの支援行われています。よくよく考えるとこれだけの大自然、無数の小川が走り、野生動物を育む湿地帯が残っていることは大変貴重であり重要なことなのです。

さて、10月初旬、標高4,000mの高原でキャンプ、寒さに耐え出会った、デオサイ高原のワイルドライフをご紹介します。

デオサイを一番有名にしているのが、ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bearの存在です。

Himalayan Brown Bear ヒマラヤヒグマ (2)

ヒマラヤヒグマ Himalaya Brown Bear はヒグマの亜種でヒマラヤ山脈とその周辺に暮らすヒグマ。もともと、ネパール、チベット、北インド、北パキスタンに広く生息しましたが、トロフィー・ハンティングや毛皮・薬の材料目的として狩猟され、また生息地域を失い激減しました。ブータンではすでに絶滅したと考えられ、インドのヒマーチャール・プラデーシュ州の国立公園に35頭ほど、パキスタンに150~200頭ほどが生息するのみとなりました。標高4,000mを越える高原を歩き、近づいて撮影した1枚です。

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デオサイ キャンプ (3)

デオサイ高原の湖や川原には渡り鳥が来ていました。

デオサイ キャンプ (4)

オオズグロカモメ Pallas’s Gullです。ロシア南部~中央アジアで繁殖し、冬はアラビア半島からインドの沿岸へと渡ってくるカモメ。その渡りの途中でこのデオサイ高原にいるのでしょうか。

オオズグロカモメ

オオズグロカモメ Pallas’s Gullは繁殖期の個体は頭が黒いですが、そうでない個体と若い固体は頭は白です。目のふちの白と黒の模様が特徴的です。

ヒマラヤマーモット

ヒマラヤ・マーモット Himalayan Marmot はデオサイ高原で簡単に出会うことができる動物です。キャンプ場の近くにも巣穴があり、親子のマーモットを観察できました。もうすぐ冬眠の季節です。

パキスタンのオコジョ (2)

たまらなくかわいいオコジョ Stoat

ヤマイタチとも呼ばれるオコジョ、顔が丸っこく、さらに耳も丸いのです。季節ごとに毛の色が変わり、夏は背中側は茶色、お腹側は白、冬は全身真っ白で尻尾の先が黒くなります。この写真の子はもう冬バージョンです。

デオサイ高原に滞在中、キツネも観察することができました。秋のデオサイ高原は本当に寒く、キャンプの朝はテント内でもマイナス5度まで気温が下がりました。

最後に、ワイルドライフではありませんが、デオサイ高原の星空です。標高4,000mの星空、秋晴れの夜空ならでは景色。

デオサイ高原 (5)

降るような、星空でした。

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Oct 2015, Deosai National Park, Pakistan

Reference : Mr.Ghulman Raza – Deosai National Park, Wikipedia( JP & EN), Helm Field Guide “Birds of the Indian Subcontinent”