カテゴリー別アーカイブ: トド Steller sea lion

Herring Run ニシンの大産卵! 春のシトカ・サウンド

3月下旬,ニシンの群れが産卵のためにシトカ・サウンドにやってきます - 北海道で1955年ごろに姿を消し、アラスカでも1993年から獲れなくなったニシン。アラスカでは保護と漁業管理の結果、シトカ、トギアク、コディアックの海にニシンが戻ってくるようになりました。2024年は近年では最大の規模の産卵が起こったといわれています。これらの地域でニシンが戻ってきたものの、日本からの「数の子」の需要が減り、捕獲しても買い取り手がつかないなど、ニシン漁業が再び活気を取り戻したわけではありません。トギアクではニシン加工業が廃業されたため漁業自体が行われませんでした。そのほかの地域も許容された数を下回る漁でした。

シトカに戻ってきたニシンの恵みを享受したのは野生動物たちのようです。そしてその姿を追う、フォトグラファーたち。2024年3~4月、大産卵が起こった日のシトカ・サウンドで見た生き物の様子をご紹介します。

停泊地から見る早朝のシトカ富士ことエッジカム山

シトカはアラスカ、バラノフ島西岸の町で、その名前は先住民族のトリンギット族の言葉で「海のほとり」という意味の Shee At’ikaに由来します。シトカは1867年にロシアがアメリカにアラスカを売却するまでロシア領でした。そのため町の中にはロシア正教会がありますし地名にはロシア語のものがたくさんあります。

シトカ・サウンドのニシン漁

シトカではニシン漁や先住民による子持ちコンブの収穫は昔から行われていましたが、近代漁業が始まるとニシンは肥料として収穫されていました。1955年ごろ日本でニシンが獲れなくなったことからアラスカで「日本市場」向けのニシン、「数の子」の需要が高まりました。これまでの「魚を獲る漁業」から「魚卵のための漁業」に変わりました。「数の子」となる良質の魚卵を採るためには産卵直前のニシンを捕獲する必要があります。1959年にアラスカの一部地域でニシンの天然魚卵の商業捕獲が始まり、1962年に日本への最初の輸出が始まりました。シトカでは1964年に始まり、魚卵を採取する「数の子」とコンブに産卵させた魚卵「子持ちコンブ」が収穫されました。そそして乱獲の結果1993年にはニシンが獲れなくなり、ニシン漁は規制と管理下に置かれるようになりました。乱獲だけでなく、ニシンにとって重要な産卵場所である海藻類の損失も大きな原因ではないかと推測されています。

2024年は3月28日ごろからシトカ・サウンド内で大きな産卵が起こりました。湾の中でも場所により29日だったり、さらに遅れて4月2日だったりしました。

ニシンの産卵・放精で白濁した海岸付近

アラスカの海は透明度が悪く、また規模が大きいため日本で見られる「群来」ほどくっきりと白濁した海水の違いはわかりませんでした。が、明らかに海面は白濁しています。

ニシンの産卵・放精が起こったあとの海面

シトカ・サウンドにはニシンとニシンの卵を目当てに野生動物が集まっていました。

ランジ・フィーデイングしているザトウクジラ

ザトウクジラです。南東アラスカを夏の採餌海域としている個体群は冬はハワイで子育て・繁殖しています。ハワイからアラスカへの移動は片道4800キロ以上、ノンストップでも6~8週間(最短で28日で移動した個体の記録があるそうです)かかると言われています。それを考えると3月下旬にシトカにやってくる個体群は2月にはハワイを出発していることになります。

シトカに現れるザトウクジラの動向記録を見ていると、ニシンの産卵前にシトカ・サウンドの太平洋に開いた沿岸部に現れ、産卵が始まるとばらばらになって南東アラスカの各地へと散らばったようでした。ソールズベリー・サウンドやチャタム海峡でも複数頭を観察できました。

ニシンの産卵前にはバブルネットフィーディングの集団行動が見られるほか、活発にランジフィーディングする様子が観察されました。

ランジ・フィーデイングしているザトウクジラ

ニシンを狙って集まるトドの群れ。

トド

大産卵の日のクルーゾフ島の海岸です。干潮の時間には産卵にやってきたニシンが海岸に残され、それを狙ったハクトウワシ、その数1000羽はいたでしょうか!

シトカ富士そびえるクルーゾフ島の海岸に集まるハクトウワシ

ハクトウワシはもうお腹いっぱいなのか、あまり活発に動いておらず、はねているニシンを見ていました。

この海岸の沖にはザトウクジラとトドの姿が。みんなニシンの恩恵に預かっています!

ザトウクジラとトド

水面行動が激しいクジラがいたので近づいてみました。交尾をしているようです!これは、コククジラです。コククジラの繁殖海域はもっと南のバハカリフォルニアです。どうしてここで交尾(または疑似交尾)?

コククジラの水面行動 ハート形のブロー

コククジラのペニス

コククジラの背中

コククジラの背中。背びれがなく、後部にはこぶ状のものがあるのが特徴です。コククジラは海底の泥や砂をヒゲで濾しとることによってカニなどの底生動物を捕食します。そのため、海岸近くでコククジラのブローを見ると、「お食事中」だと想像されます。

海岸で採餌するコククジラ

アラスカでは厳しくニシンの産卵がコントロールされており、魚卵の状態の確認した後に漁が「OPEN」となり一斉にニシン漁が始まります。網から直接吸い上げて船内にはいっていくため、「おこぼれ」のニシンがなく、鳥やトド、そして私たちもがっかりです。北海道の漁船の周りに鳥が集まるようにハクトウワシのニシンを狙った飛翔に期待したので残念でした。

漁船からはニシンのおこぼれはないので自力でニシンを獲ったハクトウワシ

ニシンを運べないカモメは腸(白子?)だけとっていました

ニシン釣りを楽しむ観光客

漁が許可された短時間での操業

4月に入ってすぐ、シトカ・サウンドの沖合にたくさんのブローが見えました。こんなにまとまった数のブローはザトウクジラではないか、と期待を胸に船を走らせました。かなりの数のクジラがいると思われました。

近づいて確認すると、それはコククジラのものでした。岩礁付近では数頭のグループが交尾または疑似交尾行動をしているようで、海岸付近ではたくさんのブローがあがり、採餌行動が行われているようでした。少なく見積もって50頭以上、いや100頭近くがこの海域にいるようでした。すでにシトカ・サウンドにはコククジラが入っていますが、この集団はちょうど太平洋からシトカ・サウンドに入ってきたばかりのようでした。

コククジラの水面行動

コククジラの口が水面に出ています♪

海岸にあがるブロー

この件が気になって調べたところ2023年に書かれたシトカのコククジラに関する記事がありました。以前からシトカ・サウンドではコククジラが目撃されていましたが、この2~3年の集まり方は顕著だと言います。しかも私たちが見たように、交尾と思われるような社会行動も目撃されています。この記事の著者は、コククジラたちはバハカリフォルニアからアリューシャン列島へと北上する途中でこのニシンの大きな群れと産卵を見ることになり、海岸に産み付けられた卵を求めて集まってきていると考察しています。コククジラの目撃場所はニシンの産卵場所と一致しているのは確実で、ククジラが潜水していた場所で切れたコンブが回収されたりしているそうです。

今後、シトカ・サウンドに集まるコククジラたちの動向と調査がまたれます。

美しい夕景の停泊地

さて、私たちの停泊していたシトカ・サウンドの奥で大産卵が起こりました。ハクトウワシがたくさん集まっておりスキッフに乗り換えて海岸で撮影をしていました。

ニシンを狙うハクトウワシ

「これ、全部ニシンの卵じゃないの?」よく見ると、潮が引いた海岸一面にニシンの卵が表れていました。

ハクトウワシの足元の薄卵色のものがニシンの卵

潮が引いた海岸はニシンの卵が一面に現れていました

大きな粒のニシンの卵

海に浮いていた海藻に付着していたニシンの卵

天然の子持ち昆布

夕食にも当然、採取した「子持ち昆布」をいただきました。すでに塩味が十分で大きな粒の卵を感謝していただきました。

アラスカから帰国して間もなく、天売島から「70年ぶりのニシンの産卵」が起こったというニュースが。ニシンがもたらす恵みが広がっていきますように・・・。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation  :Spring 2024, Sitka Sound and around, Alaska, USA

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

(動画)千島列島 キタオットセイとトドと泳ぐ(スレドネワ島)

千島列島、中千島にある小さな島、スレドネワ島(摺手岩)。ここはキタオットセイ (Northern fur seal) とトド (Steller sea lion) の繁殖地です。島の真ん中の方でトドが繁殖しており、海岸部はキタオットセイたちでいっぱいでした。

この時期の中千島、透明度が高く、これだけのキタオットセイ、トドがいるのに水中でバッチシ見えるコンディションです。そして豊かな昆布の海・・・

スレドネワ島のキタオットセイとトド

人懐っこく追いかけてくるキタオットセイ、少し離れたところからヒトを観察するトド。豊かな海に大感動です

Photo & Text  :Mariko SAWADA

Observation :  Jul 2019, Srednego Island – Ushishir Islands, Kuril Islands, Russian Far East

Special Thanks : Nik Pavlov &  Afina

★2020年の千島列島クルーズは11月ごろ発表予定です。

千島列島・スレドネワ島のキタオットセイ

スレドネワ島 摺手岩 キタオットセイ トド 繁殖地 Northern fur seal Steller sea lion  Srednego Island (3)

千島列島、中千島の小さな小さな島、スレドネワ島(摺手岩)。ここでは6月~8月にかけてキタオットセイ Northern fur seal とトド Steller sea lion が繁殖しています。

*キタオットセイは極東ロシアでは、サハリン島のチュレニー島(海豹島)、千島列島のスレドネワ島(摺手岩)、ロヴシュキ列岩(牟知列岩)とベーリング海に面したコマンドル諸島で繁殖しています。

スレドネワ島 摺手岩 キタオットセイ トド 繁殖地 Northern fur seal Steller sea lion  Srednego Island (1)

ドローン撮影で見るとこんな感じの島です。島というより岩礁で島の中央の方にトドが、海に近い付近にキタオットセイがハーレムを形成しています。潮だまりでは今年生まれた赤ちゃんが泳いでいます。

スレドネワ島 摺手岩 キタオットセイ トド 繁殖地 Northern fur seal Steller sea lion  Srednego Island (5)

キタオットセイのハーレムです。真ん中にいる大きいのが雄で回りはみんな雌。雄は資料によると、成獣の体長は2.1m、体重270Kg。それに対し雌は体長1.5m、体重50キロとだいぶ小柄です。

スレドネワ島 摺手岩 キタオットセイ トド 繁殖地 Northern fur seal Steller sea lion  Srednego Island (7)

赤ちゃんのいるメスをよく見たら、胎盤らしきものが出ており生まれたてのようです。おめでとうございます!

スレドネワ島 摺手岩 キタオットセイ トド 繁殖地 Northern fur seal Steller sea lion  Srednego Island (11)

キタオットセイに交じって海岸にやってきたトドの雄。成獣の雄は体長3.3mで体重は1トンにもなります。圧倒的に大きいです。

スレドネワ島 摺手岩 キタオットセイ トド 繁殖地 Northern fur seal Steller sea lion  Srednego Island (9)

キタオットセイ、トドを観察する皆さま。

スレドネワ島 摺手岩 キタオットセイ トド 繁殖地 Northern fur seal Steller sea lion  Srednego Island (8)

好奇心いっぱいのキタオットセイ、ボートに近寄て来て「ヒト」を観察します。

スレドネワ島 摺手岩 キタオットセイ トド 繁殖地 Northern fur seal Steller sea lion  Srednego Island (10)

ボートを走らせるとジャンプして並走するキタオットセイ。

スレドネワ島 摺手岩 キタオットセイ トド 繁殖地 Northern fur seal Steller sea lion  Srednego Island (2)

再びドローンから。水中のトドの姿も!

Photo & Text  :Mariko SAWADA,  Nik PAVLOV(Dronography)

Observation :  Jun-Jul 2019, Srednego Island, Kuril Islands, Russian Far East

Special Thanks : Nik Pavlov &  Afina

★2020年の千島列島クルーズは11月ごろ発表予定です。

キタオットセイと泳ぐ(スレドネワ島・千島列島)

キタオットセイ キタオットセイと泳ぐ Northern fur seal 千島列島 スレドネワ島 摺手岩 (9)

千島列島の中千島にある小さな島、スレドネワ島。6~8月にかけてキタオットセイとトドが繁殖のために上陸し、ハーレムを形成します。訪問した6月半ば~7月上旬にかけては透明度もよく、これだけの動物がいるのに水も濁っていませんでした。

キタオットセイ キタオットセイと泳ぐ Northern fur seal 千島列島 スレドネワ島 摺手岩 (7)

小型ゴムボートからシュノーケリングで海へ。入ったらいきなり昆布をバックにたくさんのキタオットセイたちが。

キタオットセイ キタオットセイと泳ぐ Northern fur seal 千島列島 スレドネワ島 摺手岩 (8)

近寄ってくるキタオットセイ。

キタオットセイ キタオットセイと泳ぐ Northern fur seal 千島列島 スレドネワ島 摺手岩 (10)

めっちゃ見にきてくれます。

キタオットセイ キタオットセイと泳ぐ Northern fur seal 千島列島 スレドネワ島 摺手岩 (1)

見に来てくれます。

キタオットセイ キタオットセイと泳ぐ Northern fur seal 千島列島 スレドネワ島 摺手岩 (3)

トドの雄もやっていました。キタオットセイほどは近寄りませんがこっちを見ています・・・。

キタオットセイ キタオットセイと泳ぐ Northern fur seal 千島列島 スレドネワ島 摺手岩 (5)

豊かな昆布の海での素敵なキタオットセイ、トドとの水中遭遇です!

Photo & Text  :Mariko SAWADA,

Observation :  Jun-Jul 2019, Srednego Island, Kuril Islands, Russian Far East

Special Thanks : Nik Pavlov &  Afina

★2020年の千島列島クルーズは11月ごろ発表予定です。

ルスカヤ湾のオオワシ(カムチャッカ半島)

オオワシ営巣地 Steller Sea Eagle Nest ルスカヤ湾 カムチャッカ Russkaya Bay Kamchatka (4)

2019年夏の千島列島クルーズからのレポートです。千島列島へはカムチャッカ半島のアバチャ湾を出港し、船でカムチャッカ半島の太平洋岸に沿って南下するのですが、その途中に何か所かオオワシ  Steller’s sea eagle が営巣している場所があります。そのうち、ルスカヤ湾入り口の灯台に近い巣は比較的観察しやすい場所にあります。

ルスカヤ湾 カムチャッカ Russkaya Bay Kamchatka (11)

ルスカヤ湾はアバチャ湾から60キロほど南にあるフィヨルドで、湾の入り口からおよそ7キロも奥まで続きます。湾の奥には真水を得られる川があり、古くから航海中に真水を得る場所として、そして悪天候時のシェルターとして利用されていた湾です。最近ではカムチャッカからの日帰りのボートツアーで訪問する人も増えている場所です。

ルスカヤ湾 カムチャッカ Russkaya Bay Kamchatka (17)

その湾の入り口の灯台付近に毎年、オオワシが営巣しているのが確認されています。この時の観察は6月18日。双眼鏡で確認します。

オオワシ営巣地 Steller Sea Eagle Nest ルスカヤ湾 カムチャッカ Russkaya Bay Kamchatka (14)

いました、オオワシと雛がいます。

オオワシ営巣地 Steller Sea Eagle Nest ルスカヤ湾 カムチャッカ Russkaya Bay Kamchatka (5)

しかも雛は2羽。資料によると、オオワシは通常1~3個の卵を産み(平均は2個)、成鳥まで育つのは1羽のみが多いとのこと。無事に2羽とも巣立ってほしいものです。

オオワシ営巣地 Steller Sea Eagle Nest ルスカヤ湾 カムチャッカ Russkaya Bay Kamchatka (2)

雛が口を開けているのが見えました!

オオワシ営巣地 Steller Sea Eagle Nest ルスカヤ湾 カムチャッカ Russkaya Bay Kamchatka (7)

親鳥が少し離れたところを見ながら何やら威嚇しています。でももう時間です、私たちも南下を開始しなくては翌朝にクリル第1海峡(シュムシュ海峡)につけません。無事に雛たちが巣立つことを祈りつつ、その場を離れました。

今回のルスカヤ湾ではほかにもいろんな動物との出会いが。

ゴマフアザラシ Spotted Seal ルスカヤ湾 カムチャッカ Russkaya Bay Kamchatka (15)

浅瀬でのんびりする、ゴマフアザラシ Spotted Seal。

トド Steller Sea Lion ルスカヤ湾 カムチャッカ Russkaya Bay Kamchatka (10)

太平洋岸に面した岩場にいるトド。ここでは繁殖はしておらず、独身オスがぶらぶらと集まっているHauling-outです。

その他にも、シノリガモ、ラッコ、シャチも観察できました。

Photo & Text  :Mariko SAWADA

Observation : Jun 2019, Russkaya Bay, Kamchatka Peninsula, Russian Far East

Special Thanks : Nik Pavlov &  Afina, 寺沢孝毅氏

★2020年の千島列島クルーズは11月ごろ発表予定です。

カムチャッカ・クロノツキー半島からコマンドルスキー諸島航路で出会った海の生き物

トド クロノツキー自然保護区 Kronotskiy nature reserve (2)

カムチャッカ半島東海岸を北上し、クロノツキー半島のオルガ湾へ。夏の間はコククジラが集まり、浅いところで海底の生き物をヒゲでこして食べていました。訪れた9月上旬でも湾内には10頭はいたでしょうか・・・。しかも時折ジャンプを見せてくれました。

クロノツキー半島からコマンドルスキー諸島(コマンダー諸島)の航路で出会った海の生き物のまとめ映像です。オルガ湾のコククジラ、クロノツキー半島のコズロバ岩礁のトド、ベーリング島のキタオットセイ・・・

ビデオは取れませんでしたが他にも出会いが。

コマンダー諸島 オルカ

コズロバ岬のトドのコロニー付近にいたシャチ。コマンダー諸島航路では遭遇チャンスが高い生き物です。

コマンダー諸島 ラッコ

ラッコ。昆布で満たされたベーリング島の沿岸で出会いました。その他、航行中にはザトウクジラのブローを何度も見かけることができました。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Sep 2018, Kronotskiy Nature Reserve, Bering Island, Russian Far East

Special Thanks to Afina & Nik Pavlov

 

千島列島の船旅で出会った海のいきもの

7月と8月に訪れた千島列島。母船やゾディアックボートから観察した「海のいきもの」をまとめてみました。水中のハシボソミズナギドリ、トド、ザトウクジラ、イシイルカ、そして「クリル・マジック」にも遭遇!!

千島列島の旅で出会った海のいきもの

7月のクルーズではシャチやマッコウクジラに出会いましたが、8月のクルーズではおもにザトウクジラでした。特にパラムシル島のオホーツク海側での遭遇チャンスが良いようでした。

シャチはビデオを撮れませんでしたが、親子シャチの写真をお客様が送ってくださいました!パラムシル島沖で出会ったシャチです。

千島列島 パラムシル島沖 シャチ

そしてマッコウクジラの大きなオス。ライコケ島沖で休憩していました。

千島列島 マッコウクジラ

Video & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Photography: Kyoji KANEKIYO 兼清恭二さま

Observation : Jul – Aug 2018, Kuril Islands, Russian Far East

Special Thanks to Afina & Nik Pavlov

★2019年の「千島列島エクスペディションクルーズ」発表しました!海鳥の繁殖の季節!千島列島に詳しいクルーといく人数限定企画です。

千島列島バードスペシャル 北の海鳥の大繁殖地「中千島」へ★2019年6月27日発11日間

海鳥の聖域 千島列島探検クルーズ★2019年6月15日発13日間★探検隊長として自然写真家・寺沢孝毅氏が同行。(外部リンク)

千島列島アドベンチャークルーズ シュムシュ島からウルップ島まで★2019年6月4日発13日間

 

ライコケ島のトド(千島列島)

トド ライコケ島 千島列島 Steller Sea Lion Raikoke Island Kuril Islands (8)

千島列島のライコケ島はトドの重要な繁殖地のひとつ。島の北岸でトドの赤ちゃんと出会うことができました。

トド ライコケ島 千島列島 Steller Sea Lion Raikoke Island Kuril Islands (6)

島に船を近づけると、もうトドが寄ってきます。カムチャッカ半島のアバチャ湾に近いホールアウトのトドは人間や船を見ても動きませんが、慣れていない千島列島のトドは大興奮。船やゾディアックの回りを一定の距離を置きながら泳ぐも、ゾディアックの真下を通ってみたり、大接近してみたりと、私たちへの興味を隠しません。

トド ライコケ島 千島列島 Steller Sea Lion Raikoke Island Kuril Islands (5)

ライコケ島からやってくるトドの群れ!私たちは貴重な海鳥も見たいのですが、私たちの回りを泳ぎ海鳥を蹴散らかしてしまうのでした。

トド ライコケ島 千島列島 Steller Sea Lion Raikoke Island Kuril Islands (7)

そばにやってくるトド。千島列島のトドの中でもライコケ島のトドが一番近くまでやってくる印象があります。

トド ライコケ島 千島列島 Steller Sea Lion Raikoke Island Kuril Islands (9)

大きなオスを観察。背景にはミツユビカモメの営巣地。

トド ライコケ島 千島列島 Steller Sea Lion Raikoke Island Kuril Islands (3)

赤ちゃんたちが海岸に集まっています!トドの赤ちゃんは1年から最大2年を母トドとともに過ごします。

トド ライコケ島 千島列島 Steller Sea Lion Raikoke Island Kuril Islands (4)

千島列島のホールアウトでも、すべてが母子が見られる繁殖地ではありません。ライコケ島はトドの親子が見られる貴重な島です。

トド ライコケ島 千島列島 Steller Sea Lion Raikoke Island Kuril Islands (2)

Text & Photo : 澤田真理子 Mariko SAWADA

Observation: end-Jul to mid-Aug 2018, Raikoke Island, Kuril Islands, Russian Far East

Reference : Nik Pavlov, Wikipedia(JP)

★2019年の「千島列島エクスペディションクルーズ」発表しました!海鳥の繁殖の季節!千島列島に詳しいクルー&スタッフといく人数限定企画です。

千島列島バードスペシャル 北の海鳥の大繁殖地「中千島」へ★2019年6月27日発11日間

海鳥の聖域 千島列島探検クルーズ★2019年6月15日発13日間★探検隊長として自然写真家・寺沢孝毅氏が同行。(外部リンク)

千島列島アドベンチャークルーズ シュムシュ島からウルップ島まで★2019年6月4日13日間

ブラディミラ岩礁のトド(シュムシュ島、千島列島)

トド シュムシュ島 ブラディミラ岩礁Vladimira Rock steller sea lion rookery (2)

千島列島の北にあるシュムシュ島(占守島)の太平洋側の岸近くにあるブラディミラ岩礁は200頭以上のトドが集まるホールアウトがあります。

トド シュムシュ島 ブラディミラ岩礁Vladimira Rock steller sea lion rookery (3)

“トド”という変わった和名は、アイヌ語の”トント”に由来するそうで、これは「なめし革」を意味します。そして英名 Steller Sea LionのSeal Lion はオスがライオンのようなたてがみがあることに由来します。

トド シュムシュ島 ブラディミラ岩礁Vladimira Rock steller sea lion rookery (1)

若いオス、まだ「たてがみ」とまでいきませんが。

Steller Sea Lionの”steller”のほうはドイツ出身のロシアの博物学者で、ベーリングの航海に同行したゲオルク・ヴィルヘルム・シュテラー(Georg Wilhelm Steller)にちなみます。シュテラーはベーリングがコマンダルスキー諸島の現ベーリング島で死んだ後の隊を率いてヨーロッパへ戻り、この地域の動物や鳥をヨーロッパに紹介した人です。

この人にちなんだ有名なものに Steller’s sea eagle オオワシ、Steller’s eider コケワタガモ、そして彼の報告がもとで絶滅した Steller’s Sea Cow ステラーカイギュウがあります。

さて、ブラディミラ岩礁のトドたち、近づくと興味深々で岩の上にいたトドはどんどん海に飛び込んでボート近くへやってきます。

トド シュムシュ島 ブラディミラ岩礁Vladimira Rock steller sea lion rookery (4)

ボートに併走泳ぎするトド、泳ぎながら一生懸命こちらを見ようとしています。

トド シュムシュ島 ブラディミラ岩礁Vladimira Rock steller sea lion rookery (6)

こんなに見られると人気者になった気分です。お客様もテンション高めです。

トド シュムシュ島 ブラディミラ岩礁Vladimira Rock steller sea lion rookery (8)

波の高めの日でしたが、楽しかったトド・ゾディアッククルーズ。ちょっと波で酔いそうですが動画もどうぞ!

 

Text & Photo, Video : 澤田真理子 Mariko SAWADA

Observation: July2018, Vladimira Rock, Shumshu Island, Kuril Island, Russian Far East(占守島、千島列島)

Reference : Nik Pavlov

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ライコケ島 Raikoke Island 千島列島の海鳥 

ライコケ島 千島列島 エトロフウミスズメ ウミオウム

中千島列島に位置するライコケ島 Raikoke Island。火山が海上に突き出た地形で島で、島の周囲は断崖が多く、海岸から山頂のクレーター部にかけてまで多くの海鳥が営巣する、まさに「海鳥の聖域」。


中千島に位置するライコケ島(Google Earth)

Райкоке by Nik (1)

ライコケ島の全景です。2.5キロメートル x 2キロメートルの火山島で、その名もライコケ山。

Райкоке by Nik (2)

ニック氏がドローンを飛ばして頂上部を見てみました。ライコケ山は標高551m。クレーターのふちまでびっちりフルマカモメがいました。ライコケ島はフルマカモメの一大営巣地です。

ライコケ島 千島列島 ウミガラス ハシボソウミガラス (4)

船からゾディアックボートでライコケ島の海岸へ。海岸では岩場、草地にさまざまな海鳥が。低い断崖はウミガラス、ハシブトウミガラス、ミツユビカモメが営巣していました。

ライコケ島 千島列島 ウミバト (1)

海岸の岩がごろごろした場所にいたウミバト<千島型>。羽の白い部分が少なく、中にはほとんどない真っ黒な個体もいました。

ライコケ島 千島列島 ウミガラス ハシボソウミガラス (5)

ウミガラスとハシボソウミガラスの営巣地。洋ナシ形の卵を見ることができました。

ライコケ島 千島列島  エトロフウミスズメ Crested Auklet (4)

岩乗りエトロフウミスズメ

ライコケ島 千島列島  エトロフウミスズメ Crested Auklet (2)

少し沖に出るとエトロフウミスズメが群れで浮いていたり飛んでいたりします。

ライコケ島 千島列島 ウミオウム

ウミオウムです。お客様のカメラの連写音が響きました!エトロフウミスズメにまざって小さい群れでいます。

ライコケ島 千島列島 トド (2)

そしてライコケ島は大切なトドの繁殖地でもあります。かつてはよく研究者が夏に来て観察や赤ちゃんトドの標識付けを行っていましたが、最近はオートマチックカメラが設置されています。

ライコケ島 千島列島 マッコウクジラ (1)

そして今日のボーナスは、ライコケ島沖で遭遇したマッコウクジラ。大きなオスです。かなり近づいてもプカプカ浮いていてくれたマッコウクジラでした。

Text & Photo : 澤田真理子 Mariko SAWADA

Observation: Jul&Aug 2018, Raikoke Island, Kuril Islands, Russian Far East

Reference : Nik Pavlov, Wikipedia(JP)

Special Thanks : Nik Pavlov(Drone photography) , Hobby’s World 吉成才丈さま

★2019年の「千島列島エクスペディションクルーズ」発表しました!海鳥の繁殖の季節!千島列島に詳しいクルー&スタッフといく人数限定企画です。

千島列島バードスペシャル 北の海鳥の大繁殖地「中千島」へ★2019年6月27日発11日間

海鳥の聖域 千島列島探検クルーズ★2019年6月15日発13日間★探検隊長として自然写真家・寺沢孝毅氏が同行。(外部リンク)

千島列島アドベンチャークルーズ シュムシュ島からウルップ島まで★2019年6月4日13日間