カテゴリー別アーカイブ: ノガン科

インドショウノガンの求愛ディスプレイ Breeding Dispray of Lesser Florican

インドショウノガン Lesser Florican ( Sypheotides indicus ) は、インド亜大陸固有種の野鳥で、かつてはインドの北西~南部、パキスタンの南部に分布していましたが、生息地の消滅と狩猟により数が減り、ICUNのレッドリストでCN(絶滅寸前)に指定されている鳥です。

モンスーンの時期にお気に入りの草原へやってきて、オスが跳躍の求愛ディスプレイをします。ラジャスタン州アジメール周辺の草原や農地に現れることが知られており、鳥ガイドのサンジャイさんと探しに行ってきました。

動画:インドショウノガンの求愛ディスプレイ The Leaping Breeding Display of Lesser Florican

毎年現れるポイントが変わるため、シーズンの最初はその特定が大変です。今年は草原よりも農地に現れているという情報をもとに早朝からでかけました。インドショウノガンは草原・牧草地・農地を好み、モンスーンの季節にここで繁殖します。

探し始めて間もなく、いました、インドショウノガンです。写真の鳥がいる農地はレンズ豆(lentils、ダル豆)の畑で、後ろの背丈の高い草が生えている農地はトウモロコシ畑。この季節、レンズ豆畑を歩いてくれていると見つけられますが、トウモロコシ畑に入ると見えません。ちなみに訪問した時から2週間もするとレンズ豆も育つため、探すのは困難になりますが、そのころには巣があるのであまり動かないため、「跳躍ディスプレイ」を一度見つければ観察できるのだそうです。

インドショウノガン Lesser Florican 繁殖羽の雄。頭部から腹部まで黒くなり、後頭部にはリボンのような飾り羽が。インドショウノガンはオスが46cm、メスが51cmとメスの方が大きく、メスは跳躍もしないし地味なので、見つけるのは困難とのことでした。

インドショウノガン 求愛ディスプレイ Lesser Florican’s breeding disprays

インドショウノガンのオスは、この農地を歩いて歩いて、そして少し立ち止まり、ジャンプします。観察していると傾向がわかってきます。そしてこのわかりやすさのため、狩猟されやすく、その数が減ってしまいました。インドでは1972年に狩猟を禁止する法律が施行され、その後の狩猟はありませんが、生息地を失ない「絶滅寸前」種となってしまいました。2000年に3,500羽生息するとされていましたが、2018年の調査情報で4州に264羽が確認されたのみ、というショッキングな事実がわかりました。隣国のパキスタンでは狩猟は禁止されていないため、ほぼ絶滅したと考えられています。

インドショウノガン、求愛の跳躍ディスプレイ。

人との距離が近いのが、インドらしい。一般のインドの村人がインドショウノガンを脅かすことはありませんが、村人は一生懸命畑をメンテナンスしており、化学肥料や農薬の影響が心配です。

インドショウノガン 求愛ディスプレイ Lesser Florican’s breeding disprays

インドショウノガン 求愛ディスプレイ Lesser Florican’s breeding disprays

ちなみに、距離はそこそこ遠く、撮影に関しては本当に良い望遠レンズがあったほうがいいです。車中からの撮影となります。

インドオオノガン Indian Great Bustard は2018年に150羽まで減り、国を挙げての保護の取り組みが始まりました。インドショウノガン Lesser Florican、そしてベンガルショウノガン Bengal Florican の保護も早急な対応が必要です。

インドではサファリや野生動物写真を好む人が増え、より多くの人が野生動物保護に注意を払うようなってきました。ベンガルトラの数が回復してきたように、インドがその他の野生動物・野鳥の保護を推進してくれることを期待します。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : July 2022, Ajmer, Rajasthan, India

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インドオオノガン Great Indian Bustard (ラジャスタン、インド)

インドオオノガン Great Indian Bustard ラジャスタン Desert National Park (5)

かつては広くインドの草原・半砂漠地帯に分布した鳥、インドオオノガン、 GIBこと Great Indian Bustard。それが今ではトラと並んで自然保護の象徴として扱われています。現在、インドに残された数は150羽以下 (2018年)。

昔からその肉が美味しくハンティングの対象とされていましたが、インドの発展により生息地を急激に失い、食料となる果実の不作などが追い打ちをかけあっという間に生息数が減ってしまいまいました。

インドオオノガン Great Indian Bustard ラジャスタン Desert National Park (2)

タール砂漠を飛ぶインドオオノガン。

最近までグジャラートのパキスタン国境付近にもいたと言いますが、2019年現在「もうグジャラートでは見られない」「パキスタン領に入って狩猟された」「ラジャスタンの群れに合流した」と、いろんな話を聞かされます。

インドオオノガン Great Indian Bustard ラジャスタン Desert National Park (6)

インドに残された個体数はおよそ150羽、タール砂漠のデザート国立公園 Desert National Park で柵を張って家畜が入らないようにして管理し、人工ふ化が行われています。

このインドオオノガンに最後に残された場所はインドとパキスタンの国境。かつて「何もない」と考えられた広大な国立公園の土地は住人による耕作が認められ、家畜が離されました。そして今、それを止めることもできず、柵でせめて家畜が入らない、「インドオオノガンの最後の砦」が作られました。観光客も制限され、専門チームが常時観察をしています。

インドオオノガン Great Indian Bustard ラジャスタン Desert National Park (4)

雌のインドオオノガンの群れ。

個体数の回復を祈るばかりです。同じノガンの仲間のインドショウノガン Lessr Floricanも絶滅の危機に直面しています。その数、250羽 (2018年)ほどと推測されインドの草原の保全が必要です。

 

Photo & Text :Mariko SAWADA

Observation : Dec 2019, Desert National Park, Rajasthan, India

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セアカアフリカオオノガンArabian Bustard(エリトリア)

アラビアオオノガン セアカアフリカオオノガン Arabian Bustard (3)

エリトリアのブリ半島で観察したセアカアフリカオオノガン Arabian Bustardです。

エリトリアは「アフリカの角」の紅海に面した小さな国で、「アフリカのシンガポール」を目指していたそうですがエチオピアとの戦争やその後の国民の情報取り締まりなどから「アフリカの北朝鮮」とも呼ばれる、不思議な国。

旅行者は首都アスマラ以外は自由に旅行できず(民間バスには乗れません)、許可を取得して旅行する必要がある国です。小さな国ですが、「2時間で3つの季節が体験できる国」とも言われ、標高3,000mの高原から紅海の島、砂漠まで変化に飛んだ国土を持つ国です。

そして、ここは知られざる野鳥の聖地。ハンティングが厳しく取り締まられており、他のアフリカの国では少なくなったダチョウやオオノガンなどの大型の野鳥を観察しやすい国です。

アラビアオオノガン セアカアフリカオオノガン Arabian Bustard (1)

エリトリア紅海沿岸に小さく突き出たブリ半島。アファール族が暮らす、アカシアとわずかな草原が広がる乾燥した大地です。

アラビアオオノガン セアカアフリカオオノガン Arabian Bustard (2)

水汲みをする子供たち。人、家畜、そして野生動物が一緒に暮らしているのがブリ半島。ヤギの群れの向こうにダチョウやガゼルがいたりします。

アラビアオオノガン セアカアフリカオオノガン Arabian Bustard (9)

英名 Arabian Bustard で和名はセアカアフリカオオノガン、アラビアオオノガンと呼ばれる、アフリカの乾燥した場所で見られる大きな鳥です。アフリカオオノガン Kori Bustard よりは小さめ、エレガントで、地域によって色や体の白班模様が少ないなど個体差があります。

アラビアオオノガン セアカアフリカオオノガン Arabian Bustard (4)

セアカアフリカオオノガンは体も重く、あまり飛ばないのですが、着地地点へ近づいてみました。

アラビアオオノガン セアカアフリカオオノガン Arabian Bustard (7)

羽毛が逆立っています。首太い!

アラビアオオノガン セアカアフリカオオノガン Arabian Bustard (6)

すこし落ち着いてきました。

アラビアオオノガン セアカアフリカオオノガン Arabian Bustard (8)

羽毛が寝て、首が細くなりました。

アラビアオオノガン セアカアフリカオオノガン Arabian Bustard (5)

こちらはすっきりとした姿勢のセアカアフリカオオノガン。メスの方がすこし小さく、色が灰色っぽいのだそうです。

アフリカの他の地域では、その肉のおいしさから狩猟の対象になり、アラブ人が狩りにやってくるなどという話も聞きますが、エリトリアではハンティングは禁止されているというので、ほっとします。アカシアの林の中を優雅に歩く姿は素敵です。

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Dec 2015 ,Buri Peninsula, Eritrea

Reference : Helm Field Guide “Horn of Africa”, Wikipedia(EN)

★エリトリアは560種以上の「アフリカの角」の野鳥が観察出来る国。紅海の海抜0mから標高3,000m以上の高原まで変化に飛んだバードウォッチングが楽しめる場所です。個人旅行・グループ旅行の手配についてはお気軽に、担当までお問い合わせください。

↓↓↓ ツアー情報★エリトリアを訪問するコース(これはバードウォッチングのコースではありませんが、各地でたくさんの野鳥と出会うチャンスがあります)↓↓↓

知られざるアフリカの角 エリトリア
アクスム王国の遺跡から紅海のダラク諸島、ブリ半島まで

アビアッタ・シャラ湖国立公園 アフリカリフトバレーのワイルドライフ(エチオピア)

Lesser Flamingo コフラミンゴ Greater Flamingo オオフラミンゴ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (19)

アビアッタ・シャラ湖国立公園 Lake Abiata-shala National Park はアフリカ大地溝帯湖沼群の湖で、アビアッタ湖とシャラ湖の2つの湖からなる国立公園。シャラ湖はカルデラ湖で水深260mもある湖ですが、アビアッタ湖はアルカリ性の高いとても浅い湖でフラミンゴたちが集まることで知られています。

この国立公園は保護区と村との境界があいまいで、家畜が公園内に入っていたり、湖もミネラルと水の過剰摂取により水位が下がり続けているなどの問題もあるそうです。

Lesser Flamingo コフラミンゴ Greater Flamingo オオフラミンゴ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (12)

ここで見られるのは コフラミンゴ Lesser Flamingo と オオフラミンゴ Greater Flamingo。くちばしの先がピンクと黒で色が分かれているほうが、オオフラミンゴです。

Lesser Flamingo コフラミンゴ Greater Flamingo オオフラミンゴ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (18)

車で行けるところまで行って、フラミンゴたちのいるところまでは少し歩かなくてはなりません。

Lesser Flamingo コフラミンゴ Greater Flamingo オオフラミンゴ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (19)

国立公園のレンジャーによると、ここのフラミンゴは4~7月はケニアに行くが、それ以外の季節はアビアッタ湖で観察できるとのこと。

エリマシギ Ruff アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (20)

エリマキシギ Ruff たちです。ユーラシア大陸北部で繁殖し、冬にアフリカに渡ります。フラミンゴたちの足元でせっせと捕食していました。

アカシアの林で覆われた国立公園で出会った野性動物、野鳥たちです。

Common Ostrich ダチョウ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (7)

ダチョウ Common Ostrich のオスです。アビアッタ・シャラ湖国立公園では、個体数が減ってしまったダチョウの繁殖と保護をしており、入り口の事務所付近にたくさんいました。

Common Ostrich ダチョウ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (6)

ダチョウ Common Ostrich のメス

イボイノシシ Warthog アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (1)

イボイノシシ Warthog くん。アフリカのサバンナに暮らす、イノシシ。

アフリカオオノガン Kori Bustard アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (21)

いました!アフリカオオノガン Kori Bustard です。大きな大きな鳥で、まるで貴婦人のように優雅にアカシアの林を歩いていました。

グラントガゼルのオス Grant's Gazelle アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (8)

グラントガゼル Grant’s gazelle のオス、立派な角の個体です。

グラントガゼルのメス Grant's Gazelle アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (9)

こちらはグラントガゼル Grant’s gazelle のメス

Superb Starlingツキノワムクドリ  アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (10)

エチオピアでよく見かけるツキノワテリムク Superb Starling。 胸とお腹の間に白いラインがあることからツキノワ(月の輪)なのですね。

Von der Decken’s Hornbill セグロコサイチョウ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (11)

セグロコサイチョウ Von der Decken’s Hornbill のオスです。オスはくちばしが赤、メスは黒。

White-bellied Go-away-bird シロハラハイイロエボシドリ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (4)

シロハラハイイロエボシドリ  White-bellied go-away-bird  エチオピアを中心に標高1,500mくらいの乾燥した林でみられる鳥。メスのくちばしは黄緑色、オスのくちばしは黒色です。

White-bellied Go-away-bird シロハラハイイロエボシドリ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (2)

観察していたら、ラブラブでした。

White-bellied Go-away-bird シロハラハイイロエボシドリ アビアッタ・シャラ湖国立公園エチオピア (3)

繁殖期だったんですね。

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Jan 2016 , Lake Abiata-Shala National Park – Ethiopia

Reference : Information from Park Ranger, Helm Field Guide “Birds of Horn of Africa”, Mr.Tedy – Tedy Tour & Travel service, Wikipedia (EN,JP) , Lonely Planet

★★バレ山地も訪問するエチオピア・ネイチャーツアー 2018年発表★★

雨期明けの美しい季節11月限定出発★バレとシミエン エチオピアの固有種を追う
アフリカ大地溝帯山岳部のエチオピアオオカミとゲラダヒヒ