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「エベレスト街道パノラマビュートレッキング 名峰ひしめく好展望地を訪ねて」は本当にパノラマビューなのか【その1】

  • ネパール

2022.05.13 update

タンボチェ・リ手前より望むエベレスト山群(エベレスト8,848m、ローツエ8,516m、アマダブラム6,812m)

言わずと知れた世界最高峰エベレスト(8,848m)。誰もが人生で一度は、ご自身の眼で見てみたい山でしょう。
眺めるもよし、撮るもよし、描くもよし。登頂ルート同様に、展望ルートもアクセスはネパール側かチベット側です。大きな違いは、歩いて近付くか(ネパール)、歩かずに近付くか(チベット)。歩ける方は、歩いた方が(苦労をした方が)感動もひとしおです。今回は、モンスーン期を除く10月~5月がシーズンにあたるネパール側の展望トレッキング(初級者レベル)に焦点を当てます。

 

「エベレスト街道パノラマビュートレッキング」のコースは、6泊7日(トレッキング期間)、最高宿泊高度は3,867m、最高到達地点は4,239mです。「富士山(3,776m)にさえ登ったこともなく、長期海外トレッキングも初めてなので、怖くて行けない…」といった声が聞こえてきそうです。回答は、「ハードルを高く考え過ぎないでほしい!」です。

 

第1の理由は、標高です。
登山難易度=標高と考えられがちですが、必ずしも比例するとは限りません。実際、日本では最高峰の富士山より難しい山は多くあります。そして、1日における体力消耗度は富士山(1泊2日)よりも小さく歩くことが可能です。
第2に、ルートです。エベレスト街道のルートはそこに暮らす山麓民族の生活道にもなっています。整備されていることに加え、村から村へと風景は常に移り変わります。露店やレストラン、畑や家畜に囲まれて、登っているという感覚すら時に忘れさせてくれる気分転換を含めた新しい発見の連続です。

トレッキングの起点ルクラ(2,827m)の空港

出発前は準備運動

川沿いのルートを進む

色鮮やかな雑貨が並ぶ露店

吊り橋を何度も渡る

学校へ通う子供ともすれ違う

マウンテンバイカーにもすれ違う

第3は、サービスです。ネパールでは運搬サービスが充実していて、かつ雇用も産み出しているためにWin/Winの関係が築かれています。運搬方法は、動物であったり、屈強な人々(時に女性も!)であったり。その日を歩き通すのに必要な荷物のみお持ちいただき、
歩くことが可能です(寝袋等は預けましょう)。

ウシ科のヤクやゾッキョはとても力強い

馬やロバも運搬を担う

凄まじい歩荷根性

何でも運び屋

独特の休憩スタイル

更に、山岳観光産業国でもあるため、ロッジや専属コックが提供する食事の質も各国のトレッカーに合わせて向上しており、体調管理しやすい環境も整っています。真面目で懇切丁寧な現地スタッフの姿勢には驚かれる方が多く、励まされたり交流を楽しみながら歩けることも魅力です。

ネパールの名物モモ(餃子)

ヤクのチーズは量り売り

とはいえ、現実として酸素は薄くなり気圧は低くなるので、高所順応が必要となります。しかし、水分を失わない様な汗をかかない歩き方、酸素を効率よく取り入れる呼吸法、宿泊地での過ごし方、ストレスを感じさせない雰囲気づくり等、添乗員や現地スタッフがひとつひとつ丁寧にご案内させていただきます。ご自身が高度障害(頭痛や吐き気等)で後々苦しまないためにも、序盤からきっちり順守いただければ大丈夫です。

ロッジで充電も可能

様々なネパール産ビールがあるが高所では厳禁!

さて、前置きが長くなりましたが、

次回、【その2】では本題、山の展望について触れて参ります。

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夏の八ヶ岳山麓ハイキング 6つの湖沼と雲海の絶景」のツアーでは、美しい信州の花々を鑑賞しながらハイキングをお楽しみいただきます。今回は、ツアーで訪れる6つのハイキングスポットをご紹介いたします。

 

1. 八千穂高原

 

八ヶ岳北麓に位置する日本一の白樺林が広がる自然園で、約200ヘクタールに及ぶ白樺林があり「東洋一」と言われています。白樺、新緑、ピンクのミツバツツジ(6月)の対比や、山野草の花を楽しみながら歩きます。途中、青く透き通る湖「遊亀湖」(ゆうきこ)があります。

 

2. 白駒池

 

標高2,100m以上の湖としては日本最大の天然湖である白駒池には、485種類の苔が生息しています。樹齢数百年の時を刻んだコメツガ、トウヒ、シラビソの原生林の散策を楽しみながら、高見石までの往復ハイキング。上空から、原生林に囲まれた神秘的な湖を一望できます。

 

3. 坪庭自然園

 

国定公園第一種特別保護地域に指定されている自然園で、北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅から散策します。横岳の噴火で噴出した溶岩が固まってできた溶岩台地に自然にできた庭園にて、6月下旬~7月上旬は特に多くの高山植物が観察できます。

 

4. 横谷渓谷

 

横谷渓谷は八ヶ岳の西側に位置し、渓流沿いに続く全長約6キロメートルの散策路があります。乙女滝、王滝、霜降の滝、おしどり隠しの滝といった数々の渓流を鑑賞しながらのハイキングをお楽しみください。

 

5. 車山高原

 

霧ヶ峰の最高峰で標高は1925mの車山は、長野県茅野市と諏訪市の境目に位置する山で、車山高原と呼ばれており、様々な小動物や草花などを見る事ができます。リフトにて上り、山頂より車山湿原や中腹に咲く花々を鑑賞しながらのハイキングをお楽しみください。

 

6. 八島湿原

 

標高1,630m、長野県のほぼ中央に位置する八島湿原には、3000ヘクタールの大草原が広がっており、国の天然記念物の指定、および国の文化財としても登録されました。中でもミズゴケの種類は18種にのぼり、約490倍もある日本最大級の釧路湿原とほぼ肩を並べています。自然豊かな湿原を一周し、高山植物や夏の花々を鑑賞しながら「天空の箱庭」とも称される美しい風景をお楽しみください。

 

 

これからベストシーズンを迎える八ヶ岳山麓。各所でハイキングを楽しみながら、ぜひ信州の大自然をご体感ください。

 

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今回は都内周辺から気軽に行ける豊かな自然スポット、福島県裏磐梯の魅力についてご紹介いたします。

 

裏磐梯とは百名山で知られる会津磐梯山の北側のエリアを指しますが(人口の数や交通量が少ないため”裏側”の印象になる)、1888年に起こった大規模な噴火にともなう山体崩壊によって、多くの尊い命が奪われてしまった場所になります。

 

ただし、当時は土砂や岩石で覆われた景色が広がっていたものの、全滅した森林を復活させるべく立ち上がった、会津若松生まれの遠藤現夢の指揮の下、多くの人々の手によって植林再生が進められました。そして、荒野に植えられたアカ松から始まり、次第にカエデ、ブナ等の広葉樹林が育ち、長い年月を経て今や深い森林が広がるオアシスのような人々の癒しの場所にまで回復したのです。

 

また、山体崩壊によって、以前より流れていた数本の沢が堰き止められて自然のダムができ、多くの湖沼群が生まれました。檜原湖を始めする豊な緑に囲まれた湖は大変美しく、登山・カヌー・釣り・バードウォッチング等様々なアクティビティを楽しむことができます。小さな沼や池の一部では、磐梯山の火山成分が溶けだすことで、ただの水たまりでは決して見ることのできない色彩を帯びるようになり、そうした特殊な色相をもつ池沼が顕著に集まる場所が五色沼として知られるようになりました。

 

2020年の夏と秋には、こうして生まれた裏磐梯の美しさを知ってもらうべく、神秘の湖沼群と磐梯山(1,816m)・安達太良山(1,700m)登頂を企画し、多くのお客様に参加していただくことができました。

 

裏磐梯を代表する”磐梯山”と”安達太良山”は、上記のような自然史とは別に、その見事な山容や、深田久弥の選ぶ百名山に選ばれていること、また比較的登りやすい山として知られます。ここで登りやすい山というのは「途中までロープウェイを使える」、「標高の高い場所からの短いルートがある」といった意味なのですが、せっかくツアーとして現地のガイド同行で行くのですから、個人では選ばないような、火山の魅力を感じることができる、達成感を一層感じることのできるコースを選びました。どちらも爆裂火口に近づく迫力のあるルートです。

 

まずは磐梯山。裏磐梯登山口より裏磐梯スキー場を経て、爆裂火口エリアへ。眼前には古い地層が露わになった火口壁が左右に延びます。復路で脇を通りましたが、この周辺に強酸性の銅沼(あかぬま)が存在しており、そこから酸性の水が地中を通って麓に流れる過程で、段々とPH値がアルカリ性になり、五色沼の様々な色合いを生む根源となっているのです。

 

ここからは急登が始まり、磐梯山山頂と櫛ヶ峰のコル(鞍部)を目指します。再び森へ入ると次第に段差が大きくなっていき、途中から手すり付きの登りとなります。

 

ゆっくり身体をぐ~っと押し上げながら登っていくと、急に視界が開きます。振り返れば森の奥に大きな檜原湖が見えます! 鬱蒼とした森を抜けたのでそよ風があたり気持ち良いです。

 

既に標高を抜いてしまいましたが、後ろに見える櫛ヶ峰の姿がこれまた見事。景色がどんどん変化していきます。さらに登って弘方清水小屋で休憩し、ハイマツ帯と岩場を抜けると頂上です!

 

反対側では猪苗代から那須高原、会津若松の方まで一望できます。何といっても眼下の猪苗代湖は美しいです。天鏡湖という呼び名がありますが、高い角度から覗き込むことによって空を映す姿がよりはっきりとわかり、その名の相応しさを感じます。

 

景色を堪能した後は、一部別のコースを通って始めの裏磐梯登山口へ。銅沼(あかぬま)から望む磐梯山の姿もコントラストがとても綺麗で何度見ても飽きません。なお、その時の天候や環境にもよりますが、厳冬期にはこの辺りに幻の黄色い滝・イエローフォールがひっそりと生成されるのです。

 

下山後、ホテルで源泉かけ流しの温泉に身体も心もふやけます…。

そして翌日はクールダウンの日。檜原湖畔にて磐梯山を大パノラマで望むカヌーと湖畔の探勝路散策をのんびり楽しみました。

 

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大阪支社 高橋です。
これまで2回に分けてご紹介した「日本屈指の景勝地・上高地」も今回が最終回です。

 

滞在3日目(最終日)は、徳沢から河童橋、上高地バスターミナルへ戻ります。
朝食前、徳沢園の周辺の散歩(散策)を楽しむと、梓川より前穂高岳と明神岳を望むことができ、さらに奥には朝靄のかかる幻想的な風景も楽しむことができました。

 

梓川に出ると幻想的な風景が広がります

 

朝食後、8時に徳沢園を出発し、まずは明神を目指すため、昨日と同じ梓川左岸の林間ルートを歩きます。同じ道なので淡々と歩くことも良いかもしれませんが、向いている方向が変わることで、昨日に見落としていた花や景観などを楽しむことができます。7月の時は、夕方から夜にかけて雨が降ったこともあり、林間ルート内の緑が洗われて非常に色鮮やかな林間ウォークを楽しむことができました。「同じ道を戻るというのはつまらない」という気持ちも判りますが、往路では気付かなかった植生や展望、自然を感じることができ、考え方1つで同じ道を戻るのも楽しいものです。

 

明神岳の変わりゆく山容を楽しんでいると、明神エリアに戻ってきました。

 

上高地を流れる美しい梓川の流れ
梓川は、信濃川水系犀川(さいがわ)上流域を示す別称で、長野県松本市の北西に位置する北アルプス・槍ヶ岳に源を発し南流します。流域は古くは「梓の産地」であり、梓弓の材料として朝廷にも献上されていたことが川の名の由来とされています。

 

水は本来無色透明です。
では、上高地を流れる梓川はなぜ美しい青色をしているのでしょうか。
太陽の光は虹の七色に代表される様々な色の光が集まっていますが、水は赤い光を吸収しやすい性質があり、深さがあるほど赤色が減り(吸収され)、その分青さが際立って見えます(反射)。
専門ガイドの解説では、上高地で特筆すべきは「砂の白さ」とのことでした。
上高地でご覧いただける白い砂(場所によっては砂浜のように溜まっている場所も)の正体は「花崗岩が砕けたもの」。花崗岩は⾧石(白い粒)、石英(透明な粒)、黒雲母(黒い粒)で形成されていますが、この3 種は熱膨張率が違い、隣り合った粒同士がそれぞれの比率で伸縮し、その結果隙間ができてバラバラに割れてしまいます。上高地はこの脆い花崗岩の砕けた砂が川床にあることで川の青さが際立つという効果もあるそうです。

 

美しい梓川の流れ(明神周辺)

 

明神エリアから梓川左岸ルートを歩く
明神エリアでの休憩後は、昨日とは別のルートである梓川右岸ルートを歩きました。
昨日歩いた左岸ルートと比べ、少しアップダウンがあり、時折木段などもありましたが、小さな沢の流れもあり、非常に印象的な風景でした。
足元に広がる笹の葉、針葉樹と広葉樹が混在する木々の緑も美しく、陽光が射し込むことで、色鮮やかな風景となり、上高地らしい風景の中、気持ちよく歩くことができました。

 

緑鮮やかな梓川右岸ルート

 

水の流れが美しい 岳沢湿原
色鮮やかな林床に陽光が射しこむ風景や、木々の間から大正池の畔に聳える焼岳の展望を楽しみながら、のんびりと歩いていると、岳沢湿原エリアに入ります。

 

岳沢湿原は、梓川左岸に位置し、岳沢より流れ来る筋と善六沢が合流するあたりに位置する湿原です。湿原上の展望ウッドデッキから正面に見える六百山(標高2,450m)と立ち枯れの木、澄んだ湧水が何とも趣のある風景を創り出しています。
岳沢湿原からの展望を楽しんでいると、上高地では年間を通じて棲息するマガモ(カモ科)をご覧いただけることもあります。

 

岳沢湿原の風景

岳沢湿原から六百山を望む

 

河童橋周辺より最後の穂高連峰の風景を楽しむ
岳沢湿原より梓川右岸ルートの最後の区間を歩くこと10 分、穂高連峰の展望ポイントに到着します。さらに、そこから数分歩くと上高地のシンボル・河童橋となります。
前日に穂高連峰の景観を楽しめなかったとしても、このタイミングで再度穂高連峰の展望を楽しんでいただけるチャンスがあります。
7月のツアーでは、滞在1,2日目は雲がかかり、スッキリとした展望は楽しめませんでしたが、最終日に快晴の中で穂高連峰の風景を楽しむことができ、奥上高地自然探勝ハイキングが終了と同時に、心ゆくまで穂高連峰の風景を楽しみました。

 

穂高連峰と梓川の展望

河童橋から望む焼岳

 

ゴール後は、カフェで優雅にコーヒーとレアチーズケーキと共にのんびりと過ごしたり、土産店巡りを楽しんだり、それぞれの時間をお過ごしいただきます。その後、到着日にお世話になったホテル(西糸屋山荘)で預かってもらっていた荷物を受け取り、3日間に渡って堪能した上高地とお別れをします。

 

上高地からは乗合シャトルバスで松本駅へ向かいますが、バスに乗ったら終わりではありません。乗合シャトルバスは自由席のため、必ず「進行方向右側の席」を確保してください。出発直後は林間の車道を走行しますが、すぐに大正池や焼岳の風景が右側にご覧いただけます。さらに振り返ると、穂高連峰の風景もご覧いただけ、これが上高地との本当のお別れです。

 

車窓より大正池と穂高連峰を望み、上高地とお別れしました

 

3回に分けて「日本の名勝・上高地」をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
ツアーレポートの掲載しきれない上高地の見どころはまだまだ沢山ありますので、またの機会にご紹介したいと思います。

 

また、10月は上高地の紅葉シーズンとなります。
弊社でも「”清流の国” 岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング」では奥上高地自然探勝ハイキング(徳澤園宿泊)を組み入れており、「秋の千畳敷カール・乗鞍・上高地を撮る」では、徳澤までは訪れませんが、上高地で1泊するため、朝夕など刻一刻と変化する上高地の風景の撮影を心ゆく間で堪能することができます。
このツアーレポートで上高地へ興味が湧いた方、また上高地へ再び訪れたいと思われた方も、是非上高地に訪れてみてください。

 

7月には、『上高地ネイチャーガイド FIVESENSE(ファイブセンス)』の専門ガイドさんにお世話になりました。各所で上高地の自然・植生・地勢など幅広く解説してくれ、何より上高地への愛情がこちらへも伝わってくる素晴らしいガイドさんでした。

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大阪支社 高橋です。
前回に引き続き、日本屈指の景勝地である上高地の見どころをご紹介します。

 

滞在2日目。上高地の専門ガイドと共に奥上高地・徳沢を目指す『奥上高地自然探勝ハイキング』(約7km)へ出掛けます。
朝9時にホテルで専門ガイドと合流し、朝の静けさの中で河童橋を渡り、梓川左岸ルートへ入りますが、天気が良ければ、スタート早々から穂高連峰、振り返ると焼岳の風景をご覧いただくことができます。

 

梓川の下流方向には焼岳も展望


<現地ガイド情報>

現地ガイドより、河童橋から望む焼岳は、天候の目安になるという解説がありました。
梓川下流に望む焼岳は、河童橋から見て西寄りとなるため、こちらの空に雲がなく焼岳がキレイに見えている時はその後も晴天が続きやすいそうです。
ただ、焼岳の硫黄の匂いが河童橋まで漂って来たりすると「西から湿った風が吹いている」ということで雨になりやすいそうです。

 

湧水口から梓川に合流するまで300mほどしかない透明度に驚かされる清水川などの風景を楽しみながら歩いていると、小梨平キャンプエリアに差し掛かります。

 

驚きの透明度を誇る清水川に陽光が射しこむ

 

河童橋近くのキャンプエリア 小梨平
上高地では、その昔リンゴ栽培が計画され、その際に接ぎ木としてコナシ(小梨)が植えられたことが、この地の名の由来です。コナシは一般的にズミ(酢実)の名で知られ、上高地ではよく似たエゾノコリンゴ(蝦夷の小林檎)も同じく「コナシ(小梨)」と呼ばれているそうです。現在の小梨平では、コナシの木はかなり減ってきており、大正期に植林されたカラマツが多く見られるキャンプエリアです。
キャンプをしなくても、賑やかな河童橋周辺から少し離れているため、静かに森で佇みたい方にはオススメのスポットです。

 

小梨平キャンプ場

 

溶結凝灰岩から噴き出す風穴
小梨平キャンプエリアを通過した後、梓川左岸の林間ルートを歩いていると、様々な見どころに出会います。
岩体や石積みなどの内外での温度差や気圧差によって風の流れが生じて出入口部を通じて大気が循環している穴を風穴(ふうけつ)と言います。
石積みの中に熱が蓄積されると、冷たい空気は下へ、暖かい空気は上へ移動します。春先に雪解け水が蓄冷熱した岩体を通過することで地下に氷の塊を作り出し、夏でも涼しさを保ち、天然の冷蔵庫とも言われています。上高地にもいくつか風穴があるそうで、河童橋のホテルでは食材の保管などで使われているそうです。
なお、梓川左岸の林間ルートにある風穴周辺の岩壁は、176万年前の大噴火で火山灰が圧縮された「溶結凝灰岩」と呼ばれています。

 

火山活動で形成された溶結凝灰岩から噴き出す風穴

 

 

ユニークな姿で成長する針葉樹
林間ルートを歩いていると、腰の曲がった姿から「黄門様」という別名を持つものや、ユニークな形に成長するカラマツやシラビソなどのマツ科の針葉樹も多く見られます。
専門ガイドの解説だと、カラマツは上に向けて成長する性質があり、枝の先端などが折れたり、枯れたりしてそれ以上伸びなくなると周辺の枝が変わって上に向けて成長を始めるため、様々な形状を見せるのだそうです。

 

黄門様のカラマツ

 

散策ルートに突如現れる登り坂
その後、林間ルートを歩いていると起伏のある道が続くことがあります(胸突き八丁のような坂ではないのでご安心を)。
梓川に流れ込む沢が雪解け水や雨水と共に大量の土砂を運び、長年にわたって堆積して丘のようになったことが要因だそうです。
大雨などによる増水時にできた激流の沢の跡は、上高地を散策していると至るところで遭遇し、改めて自然の驚異というものを感じる瞬間でもあります。

 

大雨などによる増水時にできた激流の沢の跡

 

 

明神岳の麓に鎮座する穂高神社奥社と明神池
穂高神社奥宮は、穂高見神(ほたかみのかみ)を祀る長野県松本市にある穂高神社の奥宮です。
太古の昔、奥穂高岳に天降ったと伝えられる穂高見神(ほたかみのかみ)は海神綿津見神(かいしんわたつみのかみ)の御子神で、海神の宗族として遠く北九州に栄え信州の開発に功をたてた安曇族の祖神として奉斎されています。
上高地明神付近は古くから「神合地」、「神垣内」、「神河内」などとも呼ばれ、神々を祀るにふさわしい神聖な場所とされてきました。

 

穂高神社奥宮の鳥居

 

明神池は、針葉樹林に囲まれた穂高神社奥宮の境内にあり、穂高神社の神域で古くは「鏡池」とも称されていました。
梓川の古い流路に明神岳からの湧水が溜まってできた池で、常に伏流水が湧き出ているため、冬でも全面凍結しません。また、かつては一之池、二之池、三之池がありましたが、土砂崩れで三之池は埋まってしまいました。

 

明神池・一之池

 

因みに穂高神社は、長野県安曇野市穂高にある本宮(里宮)のほか、上高地・明神池に奥宮、奥穂高岳山頂に嶺宮があることから「日本アルプスの総鎮守」の通称があります。

 

明神エリアより望む明神岳

 

かつての上高地の入口は明神にあった
釜トンネルが開通されるまでは、松本市の島々(しましま)から徳本峠(2,135m)を越えて上高地へ、8時間ほど歩いて入るのが一般的なルートでした。徳本峠を越えて上高地への入口が明神エリアを出発してすぐの場所にあります。
因みに「徳本」と書いて「とくごう」と読み、専門ガイドの解説では、読み方と漢字にそれぞれ別の由来があるためだそうです。読み方の「とくごう」はかつて明神地区を指した地名「徳郷」や木こりの名前「徳吾」が由来とされ、漢字の「徳本」は医師または僧侶の名からとったと言われているそうです。

 

かつて上高地の入口は明神にあったそうです

 

その後も静寂に包まれた林床内の植生を楽しみながら、徳沢を目指します。
上高地には様々な岩石があり、風穴のあった場所にあった溶結凝灰岩は176 万年前にできた岩で桁違いの古さですが、上高地で最も古いのが1 億5,000 年前にできた頁岩(けつがん)です。明神を通過して徳本峠への分岐点を過ぎたあたりに多く、海溝の底に泥が堆積してできた岩石とのことです。
専門ガイドより「上高地という山岳リゾートとして有名な景勝地に、かつては海だった名残があるというのも不思議なこと」というお話を伺った際、「海神の御子神である穂高見神が海神の宗族である安曇族とともにこの地に移ってきたことと、大昔この地が海だったこととは関係はないのか・・・」、そんなことを一人で考えて歩いていました。
私は各所に咲く花々に夢中になり過ぎてしまい、最も古い岩を見落としてしまいました。またの機会に写真は掲載します。

 

針葉樹と広葉樹が混在する林間ルートを歩く

 

かつては牧場だった 奥上高地・徳沢
13時過ぎ、標高1,550mの上高地の奥座敷・徳沢に到着。
今では信じられませんが、かつては牧場だったのです。
明治以前に上高地へ出入りしていたのは木こりたちだけだったそうですが、明治時代に入ると、地元島々の上條百次良氏は松本周辺で牛や馬を集め、徳本峠を超えて上高地に入り、許可を得て放牧を行っていたそうです。牧場は、小梨平、明神、徳沢の3ヶ所にあり、特に徳沢は『徳沢牧場』と呼ばれ、古きよき時代の牧歌的な光景の一部として訪れる登山者に親しまれていたそうです。昭和9 年(1934)北アルプス一帯が中部山岳国立公園に指定されると牧場は閉鎖されました。
当時、牧場の番小屋だった建物は山小屋となり、現在では「氷壁の宿 徳澤園」として営業しています。

 

かつて牧場だった徳沢の風景

 

どこからどこまでの範囲が上高地?
昼食後は徳沢で自由時間。ご希望の方と共にさらに先の横尾へ向かうこととしました。

 

上高地の範囲を調べてみると、資料によって様々。ガイドブックでは「上高地~河童橋まで」、上高地の散策マップも明神エリア、徳沢エリアまでを示すものが大半です。
自然公園法に基づいた管理計画の中で上高地は「中部山岳国立公園・上高地管理計画区」とされ、『釜トンネル~徳沢と横尾の間にある新村橋』とされています。
また、穂高連峰の麓、梓川沿いに開けた平地一帯いう点から『平地の終点・横尾まで』とする考えもあります。それ以降が本格的な涸沢や槍ヶ岳などを目指す登山道となることが要因かもしれません。
個人的には『梓川沿いの平地の始点~終点』という観点と観光客が問題なく歩ける(制限時間は別として)エリアという2 つの点から『上高地は大正池から横尾までの区間』と考えています。
自然探勝が目的のツアーでしたが、横尾へ向かった事で「上高地を端から端まで歩こう」という想いを達成することができました。中にはのんびりと新村橋までの散策を楽しまれ「自然公園法に基づいたエリアの最奥まで歩けた」と、参加された皆様が様々な思いを達成できたことが喜ばしいことでした。

 

徳沢から明神岳と前穂高岳を望む

 

この日は、井上靖の長編山岳小説『氷壁』の舞台となった『氷壁の宿 徳沢園』で宿泊
上高地・徳沢という静寂と自然に囲まれながら山小屋とは到底思えない徳澤園での宿泊は、非常に有意義なひとときでした。
翌日は、徳沢から再び河童橋へ戻ります。ただ戻るだけではなく、往路とは違う「梓川右岸ルート」を歩き、梓川の水の色に驚き、〇〇湿原を見学しながら歩いたのですが・・・、それは次回にご紹介。 つづく

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