秘境ツアーのパイオニア 西遊旅行 / SINCE 1973

アジャンタ・エローラ 西インド世界遺産紀行

  • インド

2011.09.01 update

インド最大の都市ムンバイを擁する「西インド」。この地には、インドが誇る珠玉の遺産が多く残されています。
怪しいまでに美しい膨大な仏教壁画、世界最大の彫刻芸術、仏塔を覆う精緻を極めた彫刻美、密林に潜む知られざる石窟、
そして1万5千年間に渡る岩絵が残る太古の岩窟…。それはインド美術の源流をたどる旅と言えるでしょう。
悠久の歴史、人々の力、篤き信仰…今もそのエネルギーを全身で感じる、圧巻の遺跡巡りへご案内します。

アジャンタ石窟
第26窟に横たわる全長7.27mに及ぶ涅槃仏(アジャンタ石窟)

二大石窟巡りの拠点 ― オウランガバードでの滞在

旅のハイライトとなるアジャンタ・エローラの二大石窟巡りは、観光拠点となるオウランガバードでの3連泊で過ごします。
それぞれの見学に1日たっぷりと時間を取り、世界遺産を”堪能”。ゆったり過ごせるのはもちろん、遺跡見学を楽しむためだけの身軽な格好で出かけられるのも魅力です。また、オウランガバード市内ではバザール見学やミニタージと呼ばれる霊廟など、ちょっとした観光も。ムガル帝国の6代皇帝の名にちなんで付けられたこの町、実は「ヒムロー」という織物の生産地としても有名。
金糸を使った美しい織り柄が特徴で、中にはアジャンタ石窟の壁画のデザインがあしらわられているものも。
ご希望の方がいればのご案内ですが、このツアーの隠れた楽しみのひとつです。

  • ミニタージと呼ばれる霊廟「ビービーカマクバラ」
    ミニタージと呼ばれる霊廟「ビービーカマクバラ」
  • バザールの様子
    町のバザールを散策

1000年もの間、人々に忘れさられていた膨大な壁画 ― アジャンタ石窟

デカン高原の北西部、渓谷に沿った馬蹄型の岩山におよそ600mに渡って残る大小30の石窟寺院。その内部は、極彩色の仏教壁画や彫刻で埋め尽くされています。
ハイライトは第1窟、インド美術の最高傑作と名高い「蓮華手菩薩」。飛鳥時代の日本美術に影響を与えたと言われています。薄暗い岩壁に浮かび上がるしなやかに曲げられた身体と半眼の表情は1500年以上の月日が経った今なお妖艶な美しさをはなっています。この他、第17窟には「六牙白象本生」「大猿本生」などの代表的なジャータカが比較的良い状態で残っています。また、第26窟には全長7.27mに及ぶインド最大級の涅槃仏が横たわっており、もう一つの見どころと言えるでしょう。この石窟寺院群は、二期にわたって造営されています。紀元前1~1世紀までの前期窟と5世紀中から7世紀までの後期窟。2つの石窟は混在していますが、簡素な造りの前期窟に対し、後期窟は内部の列柱やヴォールト天井の装飾も豪華。ストゥーパ自体が信仰の対象であった前期と違い、後期ではストゥーパ正面に仏像が表わされるようになり、仏教の変容を伺い知ることができます。この違いを意識しつつ見学するのも楽しみ方のひとつ。 壁画の内容は主に仏伝とジャータカ。 テンペラ画で描かれており、その方法は壁面に粘土や牛糞を混ぜて塗り石灰を重ねて下地とし、その上に顔料をのせたもの。後期に描かれたものが多く6~7世紀に世俗の絵師によって描かれたとのことです。
アジャンタ石窟
後期のチャイティヤ窟。ストゥーパの前に仏陀が表されるようになる
アジャンタ石窟
「蓮華手菩薩」身体を首、胴、腿の3つに曲げた描き方(トリバンガ)で描かれ、華麗な宝冠を被っている。

この石窟は、紀元前1世紀頃に仏教僧たちが雨季の雨を避けて修行が続けることができるよう、岩盤の中に祈りと修行の場を作ったことに始まります。しかし、8世紀頃インド仏教の衰退と共に忘れ去られ、1819年、トラ狩りに来たイギリス人士官が偶然発見するまでの1000年以上もの間、密林の中でひっそりと眠ることとなりました。1983年、インドの世界遺産登録第一号となったのち、見学のための道路も整備され、思う存分その芸術を楽しむことができるようになっています。

はみだしコラム「ジャータカ(本生物語)」

仏陀が前世において自己犠牲などの善行を積む話。 仏陀はシッダールタとして生まれる以前、その姿は白い象や猿、水牛や時には人間であったりしたとされている。

 

3つの宗教建築が混在する巨大石窟群 ― エローラ石窟

古代三大宗教の石窟寺院が一同に会する世界で唯一の場所―それがエローラ石窟でしょう。6~10世紀にかけて開窟された、仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の石窟が互いに破壊し合うことなく、南北2Kmに及んで集結。最大の見どころは、デカンの岩山を上から堀り進んだ「世界最大の彫刻芸術」と称される、カイラーサナータ寺院。第16窟にあたるこのヒンドゥー教寺院の圧倒的な存在感には声を上げずにいられません。ノミとツチだけで堀り進められ作業は1世紀近くの年月を要したとのことです。シヴァが棲む聖山「カイラス山」を表したとされる巨大寺院はその建築技術だけではなく、一面に彫られた躍動感溢れるヒンドゥーの神々にも目を奪われます。本殿の下部には「世界を支える象」と呼ばれる象が一周して彫られており、その重さに首にシワがよっているという芸の細かさ。この寺院、お勧めの見方は寺院裏手の岩山を登り、上から全体像を眺めること。デカン高原の雄大な景色をバックに望む巨大な彫刻は、圧倒的な迫力を誇ります。掘り進んだ職人たちに思いを馳せ、この景色を眺めていると違う時間が流れていくようです。 第1~12窟は仏教窟でほとんどが僧院窟です。ヒンドゥー教のダイナミックさを後にして訪れると、そのシンプルな造りに静謐なたたずまいを感じることができます。ジャイナ教窟は第30~34窟で、ヒンドゥー教と違い像に動きはないのですが装飾が華やかなことが特徴です。この3つの宗教のそれぞれの魅力が凝縮された寺院群、どんなに時間があっても見飽きることはありません。
玄武岩を掘り下げた造られたカイラーサナータ寺院
20万トンもの玄武岩を掘り下げて造られたカイラーサナータ寺院
「世界を支える象」カイラサナータ寺院の本殿を数十頭の像が支えている
岩壁に並ぶ仏教窟。雨季には滝がかかる

はみだしコラム「石窟の種類」

インド各地には多くの石窟寺院が残ります。それらは、修行中の僧侶達が寝泊まり、居住する僧院窟「ヴィハーラ」とストゥーパを祭る礼拝窟「チャイティヤ」の2種類の窟で構成されています

 

サンチー仏塔
「樹下ヤクシー像」樹木は発展と繁栄の象徴あり、樹木に住む女の精霊をヤクシーと呼ぶ。ヴェーダ以前からの民間信仰に発するが、仏教やジャイナ教の説話にもよく登場する

精緻を究めた石の絵本 ― サンチー仏塔

高さ100m程の丘の上に、大小3つのストゥーパをはじめとする、アショカ王の時代からグプタ朝期までの各時代の仏教遺跡が残っています。インドの古代初期仏教美術はストゥーパを中心に展開されましたが、その多くは原型を留めていません。そんな中、原始仏教美術を今に残す貴重な仏塔がこのサンチー仏塔です。
私的、このツアー最大の見どころはサンチー遺跡・大ストゥーパ第1塔を囲む塔門(トラナ)の彫刻美です。
東西南北の4つの塔門(トラナ)は無仏像時代の仏教説話の彫刻で埋め尽くされており、その密度と完成度の高さには息を呑みます。最大の特徴は、仏陀を仏陀の姿で表さない無仏像時代の作品であるということ。仏像が作られるようになる以前のものなので、仏陀の姿は菩提樹や法輪といったシンボルで表現されています。その内容は、ジャータカに比べ仏伝図が圧倒的に多いです。画面ごとに様々なストーリーが描かれ、その精緻な彫刻美は見事。また、仏陀の生涯を少し勉強していけば私達でもレリーフを読み解ことができるという点も魅力です。
これは古代仏教芸術の究極の形であり、仏教を教え説く「石の絵本」であったのです。 東門の梁を支える美しい天女の像は、民間信仰に根付いたヤクシー像。インド美術固有の官能美を漂わせ、原始仏教美術の代表的レリーフとして扱われています。他にも様々な動物や、聖なる生き物、神々が登場し、私達の興味を掻き立てます。

はみだしコラム「無仏像時代」

仏像が世に登場するのは、1世紀頃。それ以前、仏教美術に仏像は存在せず。仏陀の姿は法輪や聖樹、宝傘、宝座など仏陀を象徴するレリーフを用いて表現されており、視覚的表現よりも観念的表象を求めた初期仏教の精神性が伺える。

サンチー仏塔
仏陀の出城の場面。宮殿を出発し(画面左端)、森に入り出家する(画面右端)までのシーンを表し、仏陀の存在を宝傘が示している。
くり返し宝傘と馬を描くことで、場面が進行していることを1つ面で表現している
  • サンチー仏塔
    左:サルナートでの初転法輪の場面。法輪で仏陀を表現し、アショカ王をはじめとする王たちが説法を聞いている
    右:天界にいる母に説法をされたあと、地上に降下する仏陀。三本の階段の道が設けられ、上と下に表された聖樹が仏陀を示し、上から下へ降りた様子を表現している
  • サンチー仏塔
    第1塔北門の裏面。
    上段:六牙象を含む象たちが聖樹に蓮華を捧げている
    中段:悪魔たち(左)と聖樹へ礼拝する王族
    下段:ヴェッサンタラ本生物語

知られざる遺産の魅力 ― 西遊旅行ならではの西インド

西遊旅行では西インドに残る隠れた見どころにもご案内。意外な魅力に取りつかれる方も少なくありません。

ピタルコーラ ― 密林に隠れたもう1つの石窟

オウランガバード郊外で大通りを離れ、山道を進むとそこにはもう一つの石窟群が。アジャンタ石窟の前期窟と同時期に造営されたとされる全部で13の石窟が渓谷に広がっています。窟の多くのファザードは崩壊してしまっていますが、孔雀石を顔料とする青緑の彩色が鮮やかに残る壁画や、象の彫刻が並ぶテラスが残っています。この秘密の石窟を訪れるには、雨季には川を渡り、滝の前を通過するなど、ちょっとした探検家気分を味わえるのも魅力です。

ビーマベトカ ― 100を超す古代岩壁画が残る

ボパールの南約46kmの丘の上にある世界遺産の岩絵群。最古のもので12000年程前の石器時代から紀元後に至るまでの数百に及ぶ岩絵が残されています。およそ15000年間という長きに渡って人間が住み続けたことにより、ここには人間の進化と共に変化していく、壁画の内容・技術を一度に見ることができるという魅力があります。実際に、初期のものは「牛の群れ」や「弓矢を使って狩りをする姿」、紀元後のものは「騎馬での戦闘の様子」や「象に乗り戦う者の姿」など、その変遷を一つの場所で確認することができます。

  • ピタルコーラ遺跡
    列柱に色鮮やかな壁画が残るピタルコーラ遺跡。発見当時は柱の三分の一は土に埋もれていた
  • ビーマベトカ
    馬に乗り槍や弓矢を使って狩りを行っている様子。人間の体が棒状から三角形を組み合わせた形で描かれるようになる

日本の約9倍の面積を持つ広大なインド亜大陸。何度行ってもインドの旅は終わりません。
今度は、西インドならではの魅力を感じにでかけてみませんか。
そこには、当時のエネルギーを今に伝える遺産の数々が私達を待っています。

関連ツアーのご紹介

アジャンタ・エローラ 西インド世界遺産紀行

二大石窟とサンチー仏塔、インドが誇る珠玉の世界遺産巡り。仏教美術、太古の壁画、近代建築、計6つの世界遺産を訪問。オーランガバードで3連泊、アジャンタ、エローラ石窟をじっくり見学。

ガンジス源流氷河トレッキング

  • インド

2011.09.01 update

トレッキングの始まりはヒンドゥー教四大聖地の一つ、ガンゴトリ(3,048m)です。

ガンゴトリ氷河横断
ガンゴトリ氷河横断

トレッキングの始まり

ガンゴトリ(3,048m)はデリーからは車で2泊3日かかります。ここからバギラティ川という川沿いを歩いて行きます。
しばらく歩くと前方にはスダルシャン、バギラティ山群の白い雪山が姿を現し始めます。比較的なだらかな道のりが続きますが、標高も高いのでゆっくりと焦らずに上ります

ガンジス川の最初の一滴の始まるところ「ゴウムク」

チルバサからボジバサまでは山腹を緩やかに登っていくことになります。ボジバサが近づくと同時にバギラティ山群が迫力を増し、シブリンの頭もわずかに見え始めます。
ここまで来ると辺りの風景は灌木帯となり、高所まで歩いてきたことを実感します。さらにゆるやかなに歩いて行くとやがてガンゴトリ氷河の末端部が見え始めました。
それこそが、ガンジス川(バギラティ川は下流でガンジス川と名前を変える)の最初の一滴の始まるところ、「ゴウムク」です。ガンジス川はジヴァ神が自分の長い髪の毛に天の川だったガンガー女神を伝わらせて受け止め、ゆっくりと地上に下ろしたところから始まると言い伝えられています。
そんな聖なるゴウムクにはトレッカーだけではなく、ヒンドゥー教の巡礼者も数多く訪れています。崩れ落ちた氷の塊が浮かぶ川の中で、巡礼者達が沐浴する姿も眺めることが出来ました。

タボバンへ

更に標高を上げ、タボバン(4,463m)へ。
いよいよガンゴトリ氷河横断です。アップダウンのある自然の造り出した氷上を、列をつくって歩いて行きます。パックリと口をあけるクレバスを横目に、慎重に横断を続けます。
横断が終わると目の前にはタボバンへ続く急登が待ち受けています。この急登を登りきれば、そこは終着地点のシブリン・ベースキャンプのタボバンです。

最後の一歩で急登を登り切り、視線を空へ移すと、インドのマッターホルンと讃えられ、インドでは聖山と崇められている名峰、シブリンが迎えてくれました。ここで朝に夕に刻々と変化するシブリンを楽しみました。

また、ここにはサドゥーと言われる修行僧も住んでおり、様々な修業に励んでいました。このような標高の高い場所に住み、冬は雪で閉ざされてしまう場所で生活する彼らと接することはとても貴重な体験となりました。

ガンゴトリからチルバサへ
ガンゴトリからチルバサへ
ゴウムクに聳え立つガンゴトリ氷河の末端
ゴウムクに聳え立つガンゴトリ氷河の末端
朝日を浴びる聖山シブリン
朝日を浴びる聖山シブリン
「言葉を発しない」という修行を続けるサドゥーとの筆談の様子
「言葉を発しない」という修行を続けるサドゥーとの筆談の様子

関連ツアー

ガンジス源流氷河トレッキング

ガンジス源流氷河トレッキング

ガンジス最奥の聖地、仙境シブリンベースキャンプに泊まり、「インドのマッターホルン」怪峰シブリンを仰ぎ見る。「ガンジス最初の一滴」が流れ出る最源流部のゴウムクも訪問。

インド最北ラダックの名峰へ
ストック・カンリ遠征隊 6,153mの頂に立つ

  • インド

2011.08.01 update

より難しい山に登りたい。より高い山に登りたい。登山が好きな方なら誰もがそう望みます。標高3,776m(富士山頂)が最高所の日本では、決して体験することのできない未知の標高への挑戦、酸素の薄い過酷な環境での戦い。高所登山・トレッキング経験の豊富な方やキリマンジャロ(5,895m)登頂では飽き足りない方、次は標高6,000mの壁を越えてみませんか?
今回は2011年8月に実施したストック・カンリ登頂ツアーの記録をご紹介いたします。


深夜11時52分、ベースキャンプを出発した一行。ヘッドランプの明かりを頼りに歩き、翌朝8時44分、全員無事登頂成功。
標高6,153mの山頂では、はるか遠くまで見わたせるザンスカール山脈が一行を出迎えてくれた。

標高5,620mのカフェでティータイム

8月4日(木)蒸し暑いインドの首都デリーから飛行機で約1時間半。景色はまるっきり変わり、乾燥したレーに到着しました。標高3,500m、富士山頂の付近と同じ高さにあるインド最北のレーでは、街に到着したときから既に登山が始まっていると言っても過言ではありません。ここでは高度順応の為にどう過ごすかが重要になってきます。体調が優れないからと言って昼寝などは厳禁です。体内の酸素が不足しないよう腹式呼吸を心がけながら、レーの街を散策しました。効果的な高度順応のため、レーには2連泊します。6,000mの標高に少しでも慣れるため、翌日、自動車世界最高地点のカルドゥン・ラ(峠:5,620m)を訪れました。何と峠にはカフェがあり、チャイを飲むことが出来るから驚きです。ここでも深呼吸をし、慎重に行動します。1時間ほど体を慣らしてからレーへと戻りました。

登山の拠点・ベースキャンプを目指す

8月6日(土)レーに到着して3日目。車でインダス河を対岸に渡り、登山のスタート地点となるストック村へ向かいました。その後、トレッキング開始。歩き易い谷間をゆっくりと進み、15時頃には最初のキャンプ地モンカルモ(4,300m)に到着。ここでも2連泊し、慎重に高度順応を狙いました。頭痛や軽い吐き気などの高度障害が出始めた方もいらっしゃったので、良い判断であったと思います。翌日は身体を慣らすために、標高4,700m付近まで歩きました。


自動車世界最高地点のカルドゥン・ラ(峠:5,620m)

序盤はストック川沿いをのんびりあるく

深夜11時52分、アタック開始

8月8日(月)いよいよストック・カンリB.C.(5,000m)へ。しっかり高度順応し、翌日万が一の為のロープワーク講習を行いました。昼食後、深夜の登頂に備えて仮眠をとり、夜11時に起床。11時52分、B.C.から出発しました。一般的に、ストック・カンリは深夜からアタックを開始します。ヘッドランプの灯りを頼りに、まずはB.C.裏に聳える峠を越えます。今回、気温は6℃とさほど冷えませんでした。峠を越えた先にある狭いトラバース道を進んで行くと、月明かりの中、前方にストック・カンリ―。今回の獲物が浮かび上がってきました。トラバース道が終わると氷河が現れます。本来、ここでアイゼンを装着するのですが、今回は表面がザクザクしており、アイゼン無しで横断しました。いよいよ傾斜がきつくなってくると、アイゼンを装着し、雪渓の斜面から標高を稼いで行きます。雪渓が終わりアイゼンを外すと、今度はガレた斜面をトラバースするように南稜を目指しました。ここは雪の付き具合によってルートが変わります。前年度の西遊視察隊では積雪が多かったので、南陵に向かわず南壁をアイゼン歩行で直登しました。


  • ストック・カンリB.C.付近での高度順応

  • 終盤、南稜のガレ場を登る

自分を信じて─ 全員無事登頂!!

標高はすでに5,500mを越えており、ペースが落ちてきました。眠気と戦いながら、お互い励まし合いながら、何とか南陵まで辿り着くことができました。そこから山頂までの稜線歩きでは、幸いにも雪は無し。断崖絶壁の箇所もあるので、雪があると特に注意が必要です。ペースも大分乱れて来ましたが、皆様自分を信じて、一歩一歩、なかなか近づかないピークを目指しました。そして翌朝8時44分、全員(男性6名様と女性1名様、添乗員)で登頂。皆様、6,000m峰に登頂した達成感に溢れ、お互いの健闘を称え合いました。K2などのカラコルム山脈には雲がかかっていましたが、ザンスカール山脈の展望は見事の一言。陽の光が冷えた体を温めてくれ、私たちを祝福してくれているようでした。登頂後、B.C.まで下り、翌日には無事にレーに到着。6,000m峰の中では比較的難易度が低いだけでなく、日本から12日間の行程で行けるアプローチの良さもこの登山の魅力です。更なるステップアップに、初めての6,000m峰登山に、ストック・カンリを選んでみてはいかがでしょうか。


  • 南稜へ抜けるガレ場の斜面を登る

  • 山頂から望むザンスカール山脈

関連ツアーのご紹介

ラダックの名峰ストック・カンリ(6,153m)登頂

高度順応に配慮した日程で初めての6,000m峰登頂にチャレンジ!山頂からは360度広がる大パノラマ山岳風景。天候の安定するベストシーズンにインドヒマラヤの名峰を登る。

ザンスカール・トレッキングパートⅠ

  • インド

2011.07.01 update

荒涼とした大地が広がる北部インドのザンスカール地方。
古いチベット仏教の教えや伝説が生きづく大地を7日間かけて歩きました。

トレッキングの終着地、川原のザンラのキャンプ地
川原のザンラのキャンプ地

フォトクサールのキャンプ地から

フォトクサールのキャンプ地から歩き始め、早速目に飛び込んできたのは対岸の崖にへばり付くように建てられた村の光景です。ザンスカールの天候は雨が少なく乾燥しており、土砂崩れなどの心配がないので、このような斜面に建てることが可能だそうです。冬は雪で閉ざされてしまうザンスカールの過酷な環境。
そんな場所で暮らす人々の生活に思いを馳せながらトレッキングは始まりました。
風の音以外は何も聞こえてこないような静かな大地を歩いていきます。ボウミツェ・ラ(4,400m)を超え、続いて待ち受けているのがシンギ・ラ(5,000m)です。ゆるやかに、しかし確実に標高を上げます。シンギ・ラから臨む気の遠くなるほどの山の連なりは息を呑む光景です。こうして、草地のキャンプ地マルリン、小さな村のスキューパタを経てリンシェへ。
自然の造り出した大きな起伏のある道を連日歩くので簡単なトレッキングではありません。しかし峠を越える度に変化する風景、躍動感あふれる台地が常に私たちの目を楽しませてくれます。

リンシェ村

リンシェ村のリンシェ僧院では偶然お祭りに参加することができました。これは生きた「チベット仏教」を私たち外国人にも感じさせてくれるものでした。このお祭りでは僧院に納められている経典を高僧が4日間程かけて完読します。
私たちが僧院に到着した時は、既にお祭りが始まっており、読経の最中でした。読経が行われている中、勧められ席に着くと、参加者一人ひとりにバター茶などが振る舞われました。最後には着飾った男性と女性が混同で踊り、なんとも賑やかな光景です。トレッキングの最中、こうした僧院を巡り、宗教行事を体験できるのはザンスカールトレッキングの楽しみの一つです。

 

シンギ・ラより山々を眺めながら下る
シンギ・ラより山々を眺めながら下る
リンシェ僧院のお祭りにて読経する僧侶たち
リンシェ僧院のお祭りにて読経する僧侶たち
荒涼とした大地の中に力強く花々が咲き誇る
荒涼とした大地の中に力強く花々が咲き誇る

高山植物の宝庫

「ザンスカール」という名前を聞いてどんな場所か想像できる人は少ないと思いますが、ザンスカールが実は高山植物の宝庫だということを知っている人は、きっとここを歩いたことのある人だけでしょう。この7,8月の時期はちょうど野花の季節です。
荒涼とした大地の中で健気に咲き誇る小さな花々を目にすると、まるでここで生きる人々の力強さを表しているようでもあります。

自然の意外な一面を間近で感じ、古き良きチベット仏教の世界と関わることのできる「ザンスカール・トレッキング」は特別な思い出となりました。そして旅の終わりには、この行程を歩きつくした充実感で身も心も満たされました!

関連ツアー

ザンスカール・トレッキング完全踏破

ザンスカール・トレッキング完全踏破

ラダック~ザンスカール~マナリへ。インドヒマラヤの懐深く、美しくも過酷な大自然、 初夏の高山植物が咲き誇るザンスカールを大踏破。パドゥムでは、名刹を訪れ何世紀も経て残る仏教美術の世界を堪能。

花のロータン・パスとダラムサラ 標高3,980m
霧がかるインドヒマラヤの麓に幻の花を求めて

  • インド

2011.07.01 update

岩陰にひっそりと咲く可憐な”青”を探す旅へ足を運んでみませんか…
そこには、まだ貴方の知らないインドが待っています。

霧雨に濡れて透ける"青" ブルーポピー
標高3,000m以上の高地にしか咲かない花「ブルーポピー」

霧雨に濡れて透ける”青” ― ブルーポピーの妖しい魅力

ブルーポピー
インドヒマラヤの麓に咲く幻の花「ブルーポピー」

世界で200種を超えるケシ科の植物。その中でひとつのまとまったグループを形成するメコノプシス(Meconopsis)属の仲間に「ヒマラヤの青いケシ」で知られる種があります。それは、通称「ブルーポピー」と呼ばれ、長く幻の花として人気を誇ってきました。 透き通るような美しい青色の花をつけること、それがヒマラヤや中国奥地の空気も薄い高地に咲くこと、そしてそこへは容易に近づけないことが人気に拍車をかけてきました。標高3,000mを超すこれらの地域は、長い間外国人が近寄りにくい場所であったため、その調査・解明が遅れたことも、神秘性を高めている理由です。このメコノプシス属は、青だけではなく他に赤や黄色、紫などの種がありますが「青」の美しさは別格。 ふれると壊れてしまいそうな繊細さを持つ、可憐で、神秘的な”青”…
インド北部、ヒマラヤの麓に妖しい花を探しに行きませんか。

簡単なハイキングで美しい高山植物に出会える場所 ― ロータン・パス

インド北西部ヒマラヤ山脈西端に位置するヒマーチャル・プラデーシュ州。ここに隠れた花の名所が残っています。
ラダック・レーに通じる道が走る峠、標高約3,980mのロータン・パス付近には様々な高山植物が自生しており、毎年雨季(6月後半~7月後半頃)に入ると、キンポウゲやサクラソウ、アヤメ、ツリフネソウなどの花々で、時期が合えば一面お花畑となるのです。
そこには、ブルーポピーも含まれ標高3,000mを超すあたりから岩影にひっそりと姿を現します。
このツアーでは、ロータン・パス付近まで専用車で上り、花々をゆっくりと観察しながら下っていきます。峠周辺にはきつい勾配はなく、まさにトレッキングなしでブルーポピーに出会える場所となっています。ツアーはもちろん花咲くベストシーズンに限定。峠の周辺でも十分に可憐な高山植物たちをお楽しみいただけます。 運良く晴れた日にロータン・パス最高地点に辿りつければ、迫力ある5,000m級のラホールやスピティ渓谷に連なる山々などを眼前に仰ぐことができます。

  • ロータン・パス
    ロータン・パス付近をハイキング
  • ロータン・パス
    迫力ある山々の景観も魅力
  • ロータン・パス
  • ロータン・パス
    インドヒマラヤに咲く高山植物を堪能
  • ロータン・パス

独特の建築文化を持つヒマラヤ杉の町 ― マナリ

ロータン・パスはインド北東部、クル渓谷に位置する人気の避暑地マナリから車で1時間程の所にあります。そのため、フラワーハイキングの拠点はこのマナリに3連泊。マナリのあるこの地方は、樹木が豊富で雨が多いため、勾配屋根をかけた木造建築文化が根付いており、石造建築が主なインドでは特徴的な地域となっています。それは、ヒマラヤ杉にスレートの瓦屋根をかけ、1階の石積みの厚い壁の上に木造の2階が大きく張り出し、バルコニーが巡らせてあるという格好で、マナリの旧市街(オールド・マナリ)ではこのような伝統的な民家が並ぶ景色を目にすることがでます。このあたりではクル渓谷付近の伝統的な帽子や民族衣装を着た人々に出会えることもあります。 また、同じヒマラヤの息のかかった地方でありながらカシミールのイスラム、ラダックのチベット仏教とは対比的にヒンドゥー教を主とする木造寺院も見どころです。イメージするインドとは違うようでやはりインドのような…不思議な感覚を味わうことができるのもヒマーチャル・プラデーシュ州マナリの魅力のひとつです。

  • マナリ
    伝統的な帽子や民族衣装を着たおじいさん(オールド・マナリにて)
  • マナリ
    古い民家が並ぶ

インドの山奥にあるLittle Lhasa ― ダラムサラ

ダラムサラ
森に抱かれるようにして広がるダラムサラの街

このツアーで、忘れてはならないのがチベット亡命政府の拠点、ダラムサラの訪問です。ヒマラヤ山脈の西縁に連なる標高1,800メートルの丘陸地帯、その山々の森に抱かれるようにダラムサラの街は広がっています。
ダラムサラには、6000人以上のチベット人が生活をし、カンチェン・キション(雪有る幸福の谷)という場所に亡命政権の官庁街があります。チベット文化を守る研究所や大学などの施設もあり、チベット民族の伝統を守る最後の砦といえる地です。今回は、ツアーでも2連泊するこのダラムサラの魅力をご紹介します。

  •  ダラムサラの歩き方 1
    「チベット僧院をめぐる」

    ツアーでは、ナムギャル僧院・セチュリン僧院という二つの僧院を訪れることができます。ナムギャル僧院は、ダライ・ラマ公邸の正面に位置するゲルク派の総本山。ダライ・ラマのお家を目の前に見ることはできないのですが、実はこの寺院からほんの少しだけですがダライ・ラマ宅屋根の一部を見ることができます。僧院内では五体投地をする人々、マニ車を回す人々など、チベットらしい光景を目にすることができます。

  •  ダラムサラの歩き方 2
    「チベットの文化と教育にふれる」

    ダラムサラ観光で欠かせないのが、ノルブリンカ芸術研究所とチベット子供村の訪問です。ノルブリンカでは、チベット仏教の芸術文化の発展・保存と青年たちの経済的自立を目指した養成を行っており、実際にタンカ絵師などの訓練に励む姿を見学できます。またチベット子供村では、乳児から18歳までのチベット難民または2世3世の子供たちが暮らしており、人なつっこく私達の手を握ってくる姿が忘れられない体験となるでしょう。

  • ダラムサラ
    セチュリン僧院
  • ダラムサラ
    タンカの製作風景
  • ダラムサラ
    チベット子供村にて
  •  ダラムサラの歩き方 3
    「宗教と世俗、チベットとインドの混在を味わう」

    それは、ダラムサラの中心地マクロード・ガンジーを歩くことです。そこには、なんとも言えない雑多な空気が漂います。周囲は霧がかる深い森、その中に並ぶ民芸品や土産物を売る店、外国人長期滞在者向けのカフェやゲストハウス、そこにチベット独特の仏塔を持つ寺院が建ち、チベットから持ち込まれた仏具やダライ・ラマの顔写真を売る店が同時に軒を連ね、赤い袈裟をまとった僧侶たちが携帯電話を片手にその通りを歩いている。そんな光景の中を歩く時間はダラムサラならではの、面白さといえるでしょう。

  •  ダラムサラ(と周辺)の歩き方
    「ヒマーチャル文化を感じる」

    チベット仏教の中心地ダラムサラですが、そこはインド、ヒマーチャル・プラデーシュ州の町。「雪山の地」を意味するヒマーチャル特有の文化にも出会えます。ツアーでは、野菜をふんだんに使ったヒマーチャル料理もお楽しみいただけます。ヒマーチャルの人々は、独自の生活習慣を持ち、厳しい寒さを凌げるよう、服装も独特です。男性はウール地の丸い帽子にコートやベスト、女性はサリーではなく毛織りのパトゥを巻きつけ、頭にスカーフを巻いていたりします。ダラムサラからマナリのへの道中では、そんなヒマーチャルの人々を目にするかもしれません。

  • ダラムサラ
    ダラムサラの街角にて
  • ダラムサラ
    マクロード・ガンジー
  • ダラムサラ
    ヒマーチャル料理(一例)

花のロータン・パスとダラムサラ、インドの山奥に幻の花を求める旅は、インドヒマラヤの麓に生きる様々な世界にふれる旅でもありました。 インドではないインドを味わう旅へ、そして岩陰にひっそりと咲く可憐な“青”を探しに、足を運んでみませんか。

関連ツアーのご紹介

花のロータン・パスとダラムサラ

高山植物が咲き乱れるベストシーズン限定企画。幻の花・ブルーポピーを求めてインドの隠れた花の名所、ロータン・パスをハイキング。シク教の聖地アムリトサルも訪問。

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