秘境ツアーのパイオニア 西遊旅行 / SINCE 1973

【視察レポート】ケララ北部の秘祭を撮る
テイヤムの神と女神たち【その4】

  • インド

2019.10.01 update

【その3】では、芸術として評価されるテイヤムと、北ケララ周辺のみどころについてご紹介しました。今回は、400以上もの神がいるというバラエティに富んだテイヤムの演目から、代表的なテイヤムの神々と、それにまつわる神話の一部をご紹介します。

 

[1]ムチロット・バガバティ MUCHILOT BHAGAVATHI
昔ある時、ブラフマンが村の賢い女の子を疎んで追放しました。その女の子は孤独から火に飛び込み自害を試みますが、燃えることができずにいました。そこに、ココナッツオイルを採取するバニヤ・カーストの男性が通りがかり、オイルを火に注ぐと、女の子は燃えきることができました。その晩、男性が自宅に戻るとポットのオイルが満杯に。女の子が神になって現れたのだと語られました。

早朝に火を使って踊る「ムチロット・バガバティ」

早朝に火を使って踊る「ムチロット・バガバティ」

大祭の最後に火を持って祠を回る

大祭の最後に火を持って祠を回る

[2]クッチ・チャタン KUTTI CHATHAN
KUTTIは⼩さい悪魔、CHATHANはパワーの意味。シヴァとパルバティの子どもバルロワは低カーストの子どもとして生まれますが、ブラフマンに預けられ、小さい頃から横暴で皆から疎まれていました。ある日、食事に石と髪の毛が入っていたことからバルロワは大激怒。怒りにまかせて水牛を殺し、血を飲み干しました。それを見たブラフマンは憤慨し、バルロワを切り刻み火へ投入。すると390のクッチ・チャタンが生まれ、家を燃やし悪さを働くようになりました。ブラフマンは、もはや子どもではないと制裁を加え、その後クッチ・チャタンは神となりました。

ムトゥンガル・バガバティ寺院の「クッチ・チャタン」

ムトゥンガル・バガバティ寺院の「クッチ・チャタン」

そのほか、祭りで見られるテイヤムの神々(一部)をご紹介!

カブンバイ・バガバディ

なんと全長約5m!長い頭飾りが特徴の「カブンバイ・バガバディ」。
残念ながら詳細なストーリーはわからないのですが、最強の力を持つといわれているそう…!

「ポリオカナン」の寸劇は子どもたちに大人気

村を護る神「グリカン」

緻密でビビッドな化粧やユニークな衣装など、その鮮烈なビジュアルが強く印象に残ることから、アートや芸術としても注目されるテイヤム。しかし、テイヤムの魅力は、地元の人々の暮らしや文化と強く結びつき、2000年以上前から継承される生きた宗教儀礼だからこそ生みだされるものです。
テイヤムは、外部からの観光客がほとんどいないという貴重な環境で、神降ろし儀式のプロセスをいちから目にすることができる独特のお祭りです。その熱気を、ぜひ現場で見て、肌で感じてみてください。

 
参考図書:「神話と芸能のインド」- 儀礼と神話にみる神と人(古賀万由里)(鈴木正崇 編/山川出版社)

 

関連ツアーのご紹介

ケララ北部の秘祭を撮る テイヤムの神と女神たち

【新企画】ケララ州北部に伝わる秘祭テイヤムを、4日間にわたりたっぷりと満喫する旅。ヒンドゥーの神々と土着の信仰が相まった、インドの他地域にはない独特の祭り・文化を体感。

 

キーワード

【視察レポート】ケララ北部の秘祭を撮る
テイヤムの神と女神たち【その3】

  • インド

2019.08.28 update

【その2】では、テイヤムの魅力・みどころを実際の祭りの流れに沿ってご紹介しました。今回は、芸術という視点から見たテイヤムと、祭り見学の合間に訪れた北ケララ郊外のみどころを紹介します。
 
芸術としても評価されるテイヤム
テイヤムの祭儀は、神の存在の信憑性が、装飾の美しさや舞いの迫力など演者の技量で左右される性質があることから、芸術や学術的な考察など多様な解釈が生じています。顔や身体に施される鮮やかなペイントも、アートとしてとらえられる大きな要素でしょう。

鮮やかな原色が美しいペイントと衣装

鮮やかな原色が美しいペイントと衣装

近年はその芸術性が評価され、一部ではアートやパフォーマンスとしてとらえられる傾向もあります。寺院ではないケララ州外の舞台や、インド国内にとどまらず海外の芸術祭などでも演じられ、芸能化されているものもあります。また、そうしてアートとして扱われることや海外との接触によって、演者自身にも「アーティスト」としての自意識が芽生えるなど、担い手の価値観も変わってきているといいます。
 
生活や信仰との深い結びつき
しかし、テイヤムは単なる伝統芸能や宗教儀礼という側面だけではありません。カーストや親族とのつながり、土地の慣習などと深く結びついていて、テイヤムに携わる人々の生活を支えています。そのため、慣習と切り離した芸能化に対しては、他地域の伝統芸能と比較しても、地元の人々の抵抗が強いといわれています。

テイヤムには、単なるパフォーマンスでは生み出すことのできない、人々の生活と結びつき実際に信仰され続けている、本物の“生きた”儀式だからこそ感じられる魅力があります。

供物を手に、祭りに参加する女性たち

PARIPPAYI MUCHILOT KAAVUの寺院にて

 

北ケララ郊外のみどころ

・カラリパヤットの道場
ケララ発祥とされる古代武術「カラリパヤット」。動物にみたてた姿勢や、蹴り技・間接技など素手の打撃技が特徴で、盾や剣を使う武器術も。テイヤム演者がカラリパヤットを幼少期に経験するという風習があるようで、テイヤムの踊りに影響しているという見方もあります。

カラリパヤットの道場内部

カラリパヤットの道場内部

・ヤシのロープを作る村
年間を通してヤシの木々が生い茂る、緑豊かなケララ州。ヤシは葉や実など様々な利用価値がありますが、実の内側の繊維からはロープが作られます。このロープは、アラビア海に面したケララ州の豊かな漁場で貝を獲るために利用されるそうです。

機械を使って手でヤシのロープを作る

機械を使って手でヤシのロープを作る

できあがったヤシのロープ

できあがったヤシのロープ

・織物工場
織物工場では、サリーや男性用の腰巻布などを制作する現場を訪問しました。大きな織機が所狭しと並べられ、織子の女性が注文に応じて布を織ります。工場内では販売も行っていて、ここで織られた布地を買うこともできます。

郊外の村にある織物工場にもお邪魔しました

織機で作業をする様子

次回は、代表的なテイヤムの神とその神話、ユニークな神々の一部をご紹介します!
 
参考図書:「神話と芸能のインド」- 儀礼と神話にみる神と人(古賀万由里)(鈴木正崇 編/山川出版社)
 

関連ツアーのご紹介

ケララ北部の秘祭を撮る テイヤムの神と女神たち

【新企画】ケララ州北部に伝わる秘祭テイヤムを、4日間にわたりたっぷりと満喫する旅。ヒンドゥーの神々と土着の信仰が相まった、インドの他地域にはない独特の祭り・文化を体感。

 

キーワード

【視察レポート】ケララ北部の秘祭を撮る
テイヤムの神と女神たち【その2】

  • インド

2019.08.21 update

【その1】では、テイヤムの祭りがどんなものか、開催時期や場所を含めて大まかにご紹介しました。今回は、テイヤムの魅力・みどころを、祭りの流れに沿って具体的にご紹介します。

 

みどころは人間が神へと変化していくプロセス
原色の派手な衣装を纏ったテイヤムが舞い踊る場面は、もちろん会場も大いに盛り上がり圧巻です。しかし、テイヤムの大きな魅力は、演者に神が憑依しテイヤムの神となるその過程を実際に見学できる点です。
祭儀で展開されるストーリーは、大きく分けて2種類。ひとつはヒンドゥーの神話をモチーフにしたもの、もうひとつは地域で語られる伝説で、その両方を合わせもつものもあります。儀式の主な流れは、夕方にテイヤム演者のテイヤッカーランが祈りをささげて身を清めたあと、祭司を通して祠から神の力を受け取ることから始まります。そして、始まりの合図として、祠の前で太鼓を打ち鳴らしながら1~2時間ほどトーッタムを唱えて神霊を呼び降ろします。

 
▼テイヤム|神を呼び降ろすトーッタムの様子

 

次に、寺院脇のテントで、テイヤッカーランの顔や身体に1~2時間かけてペイントを施します。赤、黒、白、オレンジ、緑などの顔料をココナッツの葉脈につけて顔に塗っていきます。伝統的な顔料には、ウコンや石灰、煤を用いるそう。化粧の紋様や衣装は、テイヤムごとにそれぞれ異なるスタイルが決められています。なかには5m(!)もの大きな頭飾りを付ける衣装もあります。衣装を完成させたら、鏡を見て自分の姿を自覚することで神が降臨・憑依し、テイヤムの神となります。

精緻に化粧を施されるテイヤッカーラン

精緻に化粧を施されるテイヤッカーラン

祠の近くに座って頭飾りを装着

祠の近くに座って頭飾りを装着

そして神の力を得たテイヤムは、太鼓の音に合わせてゆっくりと回ったり、ときに激しく踊ります。なかには祭司も刀を持ってテイヤムと一緒に踊ったりするものもあり、踊りの内容はテイヤムの神によって異なります。

全身を使って豪快に踊る場面も

全身を使って豪快に踊る場面も

▼テイヤム|ムチロット・バガバティの火踊り

 

踊りが終わると、ココナッツや米などの供物を受け取り、生贄として鶏や山羊の生き血をささげます。最後は、ターメリックの粉や米を与えて人々を祝福。私たちも観覧席から降りてくるよう呼ばれて、祝福を受けました。参拝者は列をなしてテイヤムにお布施を渡し、お告げや相談事のアドバイスをもらったりしていました。

参拝者は真剣に相談し、アドバイスをもらっていました

参拝者は真剣に相談し、アドバイスをもらっていました

このように、祈りをささげて神霊を呼び降ろし、化粧や衣装を身に纏い踊るという行為を通して、じょじょにテイヤッカーランに神が憑依していき、テイヤムの神へと変容する様子をリアルタイムで見学できるのが、テイヤムの大きなみどころのひとつです。

次回は、芸術として評価されるテイヤムと、北ケララ郊外のみどころについてご紹介します。

 
参考図書:「神話と芸能のインド」- 儀礼と神話にみる神と人(古賀万由里)(鈴木正崇 編/山川出版社)
 

関連ツアーのご紹介

ケララ北部の秘祭を撮る テイヤムの神と女神たち

【新企画】ケララ州北部に伝わる秘祭テイヤムを、4日間にわたりたっぷりと満喫する旅。ヒンドゥーの神々と土着の信仰が相まった、インドの他地域にはない独特の祭り・文化を体感。

 

キーワード

【視察レポート】ケララ北部の秘祭を撮る
テイヤムの神と女神たち【その1】

  • インド

2019.08.14 update

ケララ州北部に古代から伝承される「テイヤム」の祭りは、憑依儀礼とも表現される、いわゆる神降ろしの祭儀。日本ではまだあまり知られていませんが、地元には「テイヤム・プランタン」と呼ばれるテイヤム“オタク”がいるほど。奇抜なメイクアップや衣装の強烈なインパクトは、一度見たら忘れられません。
何千年もの時を経て今なお地元で受け継がれている、南インドの“秘祭”を視察してきました。

テイヤムの神のひとつ「クッチ・チャタン」

テイヤムの神のひとつ「クッチ・チャタン」

原色を用いた奇抜な衣装と派手なメイクアップ、繰り出されるアクロバティックな芸やパフォーマンス。一見すると観光客向けのショーのようにも思えますが、これらはすべて実際に行われている本物の儀式です。

現地の観客以外には外国人観光客はほとんどおらず、私たちが訪れた2019年3月も、儀式の様子をじっくりと間近で見学することができました。テイヤムは北ケララでは有名で、2018年にオープンしたカヌールの空港には、テイヤムの神を描いた絵が飾られていたり、街中には祭りを知らせるポスターが貼られ、土産物店にはテイヤムの神を形どった人形も売られています。

開催を知らせるポスター

マラヤーラム語で書かれた、開催を知らせる現地のポスター

テイヤムの神をモチーフにした人形

テイヤムの神をモチーフにした人形

どんな祭り?
テイヤム(Theyyam)は、ケララ州北部で伝承されている神降ろしの宗教儀礼。「テイヤム」とは、サンスクリットで神を意味する「デイヴァム(daivam)」が、ケララで話されるマラヤーラム語に変化したもので、祭儀に登場する神々の総称や祭り自体のことを指します。その起源は2000~3000年前といわれ、祭儀で唱えられるトーッタムという文章の中で語られたり、口伝によって伝承されています。テイヤムの神々は、古代からの女神信仰や英雄崇拝、祖先、動物、精霊、疫病の神など、⼟着の信仰にヒンドゥーの宗教が影響した独特の型をもち、400以上もの神がいるといわれています。

女神「パタラムルティ」

女神「パタラムルティ」

ヴィシュヌの化身のひとつ「ナラシンハ」

ヴィシュヌの化身のひとつ「ナラシンハ」

いつ、どこで行われる?
祭りが行われるのは11~5月。カヌール地区・カーサルゴード地区に点在する「カブー」とよばれる寺院で、3~4日間にわたって行われます。寺院ごとに祀られる神が違うため、見られる祭儀の種類も寺院によって異なり、なかには夜通し行われるものもあります。私たちはPYYANNUR EDATTU KAAVUという寺院で、朝から晩まで6種類のテイヤムを見学させてもらいました。敷地内は土足厳禁のため、裸足(靴下はOK)。演目中もあまり人がおらず自由に会場を行き来することができ、観覧席や日陰で休憩することもできました。昼食は、この村の祭りで提供される施しの食事で、南インドらしいバナナの葉にのったベジタブルミールスをいただきました。

儀式が行われるカブー。太鼓が打ち鳴らされる

儀式が行われるカブー。太鼓が打ち鳴らされる

観客や村の人たちと一緒に食事

観客や村の人たちと一緒に食事

演者は北ケララのみに存在するカーストの人々
テイヤムの神が憑依する霊媒「テイヤッカーラン」を担うのは、北ケララにのみ存在する、世襲によるテイヤム演者のカーストの人々。99%が男性で、彼らはアウト・カーストのため社会的地位は低いのですが、祭りでは自ら神が降りてくる器となり、神の起源を語り、神託を行います。また、テイヤッカーラン以外にも、祭儀に携わる人々の役割はカーストによって細かく分担されています。例えば、祭司の服を洗うのは洗濯をするカーストの女性、道具を磨くのは鍛冶のカースト、椰子酒の供物を用意するのは椰子酒作りのカーストといった決まりがあります。期間中に振舞われる⾷事や演者への⽀払いなど、祭りの費⽤は中規模のものでも60万Rs(約8,600ドル) ほどかかるそう。費⽤の負担は村によって様々で、祭りのオーガナイザーが⽀払ったり、村⼈たちで出し合ったり、寄付で賄います。

主なテイヤム演者のカースト
1. Malaya
2. Vannam
3. Munnoottan
4. Anjoottan
5. Velan
6. Pulaya
7. Koppalan

 
次回は、テイヤムのみどころポイントや、具体的な祭りの流れをご紹介します!
 
参考図書:「神話と芸能のインド」- 儀礼と神話にみる神と人(古賀万由里)(鈴木正崇 編/山川出版社)
 

関連ツアーのご紹介

ケララ北部の秘祭を撮る テイヤムの神と女神たち

【新企画】ケララ州北部に伝わる秘祭テイヤムを、4日間にわたりたっぷりと満喫する旅。ヒンドゥーの神々と土着の信仰が相まった、インドの他地域にはない独特の祭り・文化を体感。

 

キーワード

ドロミテ周遊トレッキング

  • イタリア

2016.06.01 update

ドロミテは、イタリアアルプス東部、イタリアとオーストリア国境付近に広がる山岳地帯に位置しています。数多の奇峰群が織りなす独特な山容、美しい自然景観、地形・地質学的価値が認められ、2009年にはユネスコ世界自然遺産にも登録されています。そのドロミテが1年で一番美しいと言われる、花咲く季節に、2016年6月に周遊トレッキングに行ってまいりました。

ラガツォイ小屋より眺めるドロミテの奇峰群ラガツォイ小屋より眺めるドロミテの奇峰群

トレチメ・デ・ラバレド周遊トレッキング

ドロミテの象徴とも言える岩山群トレチメ・デ・ラバレド。ミズリナ湖畔のロッジから、車でアウロンツォ小屋まで上がり、トレッキング開始です。反時計回りに、トレチメ・デ・ラバレドを一周します。軽いアップダウンを繰り返しながら、刻一刻と見え方が変わるトレチメ・デ・ラバレドを楽しむことができます。ここは、第一次世界大戦時の激戦地でもあり、防空壕跡をそこかしこに見ることができます。かつて、グランデ(大峰)の上に、砲台が引き上げられて設置され、猛威をふるっていたというから驚きです。下山後は、アルプスの一大リゾート、コルティナ・タンベンツォの街にも立ち寄りました。

  • 左から順にピコラ(小峰)、グランデ(大峰)、オベスト(西峰)左から順にピコラ(小峰)、グランデ(大峰)、オベスト(西峰)
  • 今なお残る防空壕跡今なお残る防空壕跡
  • コルティナ・タンペンツォの街並みコルティナ・タンペンツォの街並み

トファナ山群トレッキング~ファネス渓谷トレッキング~サスデラ・クルスクトレッキング

今回のツアーのハイライトともいえる、山小屋泊での2泊3日のトレッキングです。宿泊地のディボナ山小屋から目の前のトファナ・デ・ローゼの裾野をトラバースしていきます。晴天にも恵まれ、非常に気持ちのよいトラバースルートを進み、最後は急登を登りきると、ラガツォイ小屋に到着です。

ラガツォイ小屋は標高2,752mの断崖の上にありドロミテ随一の好展望地。ドロミテ最高峰のマルモラーダ(3,343m)をはじめ、チベッタ、プエズ、サッソルンゴ、ペルモなどドロミテの名峰群の展望が広がります。小屋のカフェにてビールやソフトドリンクをオーダーして、小屋のテラスで過ごす時間は格別です。チェックイン後は、十字架のあるところまでの往復トレッキングもお楽しみいただきました。

  • トファナ・デ・ローゼの裾野を歩きますトファナ・デ・ローゼの裾野を歩きます
  • 気持ちの良いトラバースルート気持ちの良いトラバースルート
  • ラガツォイ小屋のテラスラガツォイ小屋のテラス

2日目はファネス渓谷トレッキングです。朝は、ラガツォイ小屋直下の斜面の残雪がまだ固く、傾斜が緩やかなルートへ迂回しての、緊張を要する下りが続きましたが、アイゼンは不要でした。風光明媚なスコットーニ湖まで来ると一先ず安心です。峠を越えてファネス渓谷に入ると、そこはまさに別天地。眩暈がするほどのお花畑が広がっていて、度肝を抜かれました。特にキンポウゲが密度が凄まじく、「花」に関しては、ここが本ツアーのハイライトでした。アルペ・デ・ファネスの山小屋も、湖と牧草地の広がる雰囲気のある立地です。

  • 峠を越えて、ファネス渓谷へ峠を越えて、ファネス渓谷へ
  • 一面のキンポウゲ畑を歩きます一面のキンポウゲ畑を歩きます
  • アルペ・デ・ファネスの山小屋アルペ・デ・ファネスの山小屋

3日目は、アルペンローゼやエリカの花が広がるエリアを抜けて登ると、カルスト地形の大地が顔をだします。独特の奇岩帯が広がり、ちらほらとマーモットの姿も見かけることができます。このように、歩きながら様々な景観を楽しめるところも、ドロミテトレッキングの醍醐味です。セッラ山群、サッソルンゴ山群の展望を味わった後は、メデスク峠から長い下山ルートを歩き、コスタデドイ村へ到着。バディア渓谷では久々のホテル泊となります。

  • 美しい湖と花畑の中を歩きます美しい湖と花畑の中を歩きます
  • 奇岩帯の広がるカルスト地形奇岩帯の広がるカルスト地形
  • 巣穴からひょっこり顔を出したマーモット巣穴からひょっこり顔を出したマーモット

プエズ山トレッキング

車で移動し、リフトにて、一気に2,038m地点まで上がります。ドロミテのリフトは、風よけもついており、非常に快適です。プエズ山群を見据えながら、トラバースし、ゆっくりと上がっていきます。鞍部に登り、台地上に出ると、正面にヴァレルンガ渓谷が広がり、セッラ山群、サッソルンゴ山群が綺麗に見えてきます。昼食は、プエズ小屋の前で食べ、美しいヴァレルンガ渓谷(イタリア語で「長い谷」という名の通り長い渓谷です)を下っていきます。道中、山の展望だけでなく、ドロミテの花々も楽しめるコースでした。

  • 長く美しいヴァレルンガ渓谷長く美しいヴァレルンガ渓谷
  • プエズ小屋の前で昼食を食べましたプエズ小屋の前で昼食を食べました
  • 夕食に興じるガイドさんたち夕食に興じるガイドさんたち

オドレ山群トレッキング

車でダフネイまで上がり、そこからトレッキング開始です。歩き始めると、すぐに一面のお花畑に迎えられました。ステビア山を右手に見ながら、まっすぐに登って行くとフィレンツェ小屋に到着。ちょうど、豪雨につかまったので、小屋で雨宿りをしました。その後、気持ちのよい稜線歩きをし、好展望地のコルライザーへ。タカネシオガマ、リンドウ、キンボウゲ、悪魔のかぎ爪などの花が咲き誇る芝生でピクニックランチを楽しんだ後、リフトで下山をしました。昨日に引き続き、セルヴァ・デ・ヴァルガルデーナの綺麗なホテルで連泊です。連泊があると、ゆったりとドロミテを満喫することができます。

  • あともう少しでコルライザーあともう少しでコルライザー
  • コルライザーの花畑コルライザーの花畑
  • リフトで下山しますリフトで下山します

サッソルンゴ周遊トレッキング

車で移動し、モンテパナからリフトでサッソルンゴの裾野へ。2日かけての周遊トレッキングです。こちらもアップダウンも多くなく、ドロミテらしい景観を楽しめるコースです。サッソルンゴはずっと遠くから見ていた山。岩壁も見事で、クライミングルートもたくさんあります。

まずは、リフト降り場のキンポウゲ畑を抜けると、簡単なアップダウンがあります。分岐にて昼食。分岐は、サッソルンゴの横断ルートとなっています。反対側にはリフトもあり、冬はスキーで滑れます。鉄塔が見えてきたら、その下がもうフレドリック・オーガスト小屋です。ここもテラスが素敵な小屋です。ドロミテの有名な登山家の名前にちなんでつけられました。

  • アルペンローゼとタマキンバイアルペンローゼとタマキンバイ
  • 草原地帯をトラバース草原地帯をトラバース
  • フレドリックオーガスト小屋フレドリックオーガスト小屋

サッソルンゴ周遊トレッキング2日目。この日も朝から快晴でした。残り半周を美しいセッラ山群を眺めながら歩きます。中でも、サッソピアトの5本の岩峰は見事です。岩の町と呼ばれる奇岩帯を抜けて、コミチ小屋で休息しました。コミチ小屋から、緩やかな斜面を越えて、最後の登りを終え、リフト降り場に到着です。プエズ山群、ステビア山、ヴァレルンガ渓谷、オドレ山群と見慣れた景観が戻ってきました。お花畑でランチの後、リフトで下山。フェダイア湖畔の山小屋へ車で移動。いよいよ旅も終盤です。

  • アネモネとサッソピアトアネモネとサッソピアト
  • 奇岩帯の広がる「岩の町」奇岩帯の広がる「岩の町」
  • リフト乗り場前のお花畑でピクニックランチリフト乗り場前のお花畑でピクニックランチ

マルモラーダの山頂付近展望台とマルガ・オンブレッタハイキング

朝起きると、小屋前のフェダイア湖にマルモラーダが綺麗に映っていました。9時の運行開始に合わせて、ゴンドラ乗り場へ車で移動。マルモラーダのゴンドラは2回乗り継ぎで、約2000mの高度差をわずか10分で一気に上がります。高山病対策で、深呼吸しながら歩きます。一つ目のゴンドラで雲を突き抜け、上は好天です。本来であれば、旅のハイライトとして今まで通ってきたコースを上からは眺めることができるのですが生憎、雲に隠れて見ることができませんでした。その代わりに、見事な雲海と、一瞬だけ雲の上の現れたブロッケン現象を見ることができました。

ゴンドラで降りてから、今度はマルガ・オンブレッタトレッキングです。今まではずっとマルモラーダの北面を見ていましたが、このトレッキングでは急峻な南壁を詰め上がります。ここもクライミングルートがたくさんあります。終着のチーズ小屋前で、ピクニックランチをした後、同じルートを下山し、車でカナツェイに移動。最後の夜はイタリアらしく、ピザで締めくくりました。

  • フェダイア湖に映るマルモラーダフェダイア湖に映るマルモラーダ
  • マルモラーダ山頂から望むサッソルンゴどセッラ山群 歩いてきたコースを一望できます(2015年6月ツアー時のもの) マルモラーダ山頂から望むサッソルンゴどセッラ山群 歩いてきたコースを一望できます(2015年6月ツアー時のもの)
  • 本場イタリアのピザ本場イタリアのピザ

ドロミテのもう一つの主役。咲き誇る高山植物たち

初夏のドロミテの主役は、高山植物と言っても過言ではありません。
山々を華やかに彩る、ツアーで見ることができた高山植物を紹介いたします。

  • エーデルワイスエーデルワイス
  • 悪魔のかぎ爪悪魔のかぎ爪
  • アルペンローゼ>アルペンローゼ
  • コケマンテマコケマンテマ
  • エリカエリカ
  • イエローポピーイエローポピー
  • タマキンバイタマキンバイ
  • イワカガミダマシイワカガミダマシ
  • フタマタ・アウレアタンポポフタマタ・アウレアタンポポ
  • オキナグサオキナグサ

 

PAGE TOP