北大西洋に浮かぶアイルランド島は、アイルランド共和国と英国領北アイルランドから構成されています。ゲール語という独自の言語を持ち、緑豊かな大地に、ケルトの文化が脈々と流れています。自然と歴史の両方を楽しむことができるアイルランドの見所を紹介します。
アイルランドの至宝「ケルズの書」
旅の始まりでもある首都ダブリン。この町の最大の見所はトリニティカレッジに残る旧図書館です。この旧図書館には「ケルズの書」と呼ばれる装飾写本が保存されています。ケルズの書は「ダロウの書」「リンディスファーンの福音書」と共にケルトの三大写本とも呼ばれ、アイルランドの国宝のひとつとなっています。 四編の福音がラテン語で書かれており、9世紀初めに作成されたと考えられています。1653年にダブリンに送られ、1661年に現在のトリニティ・カレッジに保管されるようになりました。 また、アイルランドで出版される全ての本がこの図書館に保管され、2階のロングルームと呼ばれる書庫には天井まで続く本棚に所狭しと古書が並べられ、その歴史を感じることができます。
ケルトの聖地アラン諸島
アイルランド西部に浮かぶアラン諸島へは、ゴールウェイから日帰りで訪れることができます。3つの島々で構成され、中でもイニシュモア島にはケルトの聖地とされるドン・エンガス遺跡が残っています。岩盤で出来たこの島では、作物の栽培は簡単ではありませんでした。古来、この地に積みついたケルトの人々は限られた土が風で飛ばされないように畑を石垣で囲み、岩盤を槌で砕き、海藻と粘土を敷き詰めて土をつくることから始めたのです。島の中部に残るドン・エンガス遺跡。緩やかな石段を30分ほど登ると遺跡に到着します。海面から90メートルにも及ぶ断崖絶壁の上に築かれたケルトの聖地とされている場所なのです。考古学者の調査によると紀元前1100年頃に、砦の建設が始まり、政治、経済、宗教の中心となったと考えられています。砦に住むことができたのはエリートの人々だけであり、800年頃まで繁栄を続けました。まだ、謎が多い遺跡ではありますが、19世紀末には国の記念建造物となり、広範囲な修復が行われています。また、天気が良ければ断崖の素晴らしい景色が広がり、5月~6月には野花も咲き、一層華やかになります。
ロングルームに保管される貴重な古書
トリニティカレッジの旧図書館 2階のロングルーム
ドンエンガス遺跡
初期キリスト教会の遺跡群
ケルトの人々がアイルランドにやってきたのは紀元前200年頃と言われています。彼らはゲール語という独自の言語を使い、自然崇拝の信仰を持ち、口頭伝承で神話や文化が引き継がれてきました。しかし、キリスト教がヨーロッパで広がり始めると、その波はアイルランドにも波及してゆきました。5世紀頃になると、アイルランドではケルトの宗教や民族性と融合する形でキリスト教が広まってゆくこととなったのです。 中でもアスローンに残るクロンマクノイズ遺跡は保存状態も良く、当時の姿を今に残しています。円筒計の長いラウンドタワーはアイルランド特有の建造物。内部に経典や貴重品の保管のために使われたと考えられています。“ケルトの十字架”はアイルランドのキリスト教最大の象徴です。8世紀から12世紀にアイルランド各地で造られ、経典の教えや祈祷者の喚起のため、地所の目印として使われました。現在、クロンマクノイズで最も美しいとされるオリジナルの十字架は保存のため、ビジターセンター内で見ることができます。
クロンマクノイズ遺跡 オリジナルのケルトの十字架
クロンマクノイズ遺跡のラウンドタワー
クロンマクノイズ遺跡
アラン諸島に残る初期キリスト教遺跡セブンチャーチズ
ジャイアンツ・コーズウェイ
英国領北アイルランドの最大の見所ジャイアンツ・コーズウェイ。柱状節理によって出来た六角形の奇観が広がり、ユネスコ世界自然遺産に指定されています。巨人フィン・マックールが恋人をアイルランドに渡らせるために造ったという古くからの伝説が残っています。
ジャイアンツ・コーズウェイ
今回ご紹介したものは、アイルランドの見所のごく一部にすぎません。緑豊かな大地が広がる美しい島アイルランド。
ケルトの歴史、文化そして、陽気なアイルランドの人々との出会いなど変化に富んだ旅を楽しむことができる国です。
アイリッシュ・パブを訪れ、ギネスビールで乾杯することも是非お忘れなく。
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