秘境ツアーのパイオニア 西遊旅行 / SINCE 1973

2021年2月。厳冬期の上高地に訪れました。
上高地は、長野県の飛騨山脈南部の梓川上流に位置する日本屈指の景勝地であり、国の文化財(特別名勝・特別天然記念物)に指定されています。険しい山々と森に囲まれた上高地には、山小屋から温泉宿、高級感溢れるホテルまで多様な宿もあり、異なる目的をもった様々な方々が滞在を楽しむことができます。特に夏休みと秋の紅葉のシーズンは多くの登山客と観光客で賑わう上高地ですが、冬は人気のない静まり返った場所となります。

 

 

そもそも冬はアクセスが厳しくなります。通常だと上高地は車両で上高地バスターミナルまで一気に移動しますが、冬は上高地へ続く入口・釜トンネル(通称釜トン)が閉鎖されて車両通行止めになっているため、トンネルの入口より歩いていかなければなりません。

 

また、トンネル内は所々非常灯や注意灯がありますが、基本的には真っ暗です。釜トンネルは全長1,310m、その後上高地トンネル590mと2つのトンネルが続きます。

 

勾配もあり、トンネルの入口と最後では、標高差が200m弱あります。しかし、トレッキングが「暗闇のトンネル」から始まるというのは何とも珍しく、冒険心が掻き立てられます。当日は車で5分の場所に位置する「中の湯温泉」より、送迎車でトンネルへ向かいました。

 

 

到着後、ヘッドライトを点けてスタート。トンネルを抜けた先にはどんな景色が待っているのでしょうか…?

※スノーシューは、トンネル内では手持ちかザックに括り付けて持っていきます。

 

 

準備体操後、ゆっくりとトンネルの中を進んでいきました。今回は約40分かけて通過しましたが、待っていたのは……澄みきった青空と真っ白な雪山の世界でした…!!

 

まずは雪を被った焼岳が見えます。焼岳は今も活発に動いている活火山で、よく見ると薄っすらと噴煙が出ているのがわかります。

焼岳(別名:硫黄岳/2,455m)

 

その後しばらく進むと凍結した大正池が現れます。大正池の向こうに聳え立つのは、北アルプスを代表する名峰・穂高連峰。

 

左から、西穂高、奥穂高、吊り尾根を経て前穂高、明神岳

 

冬景色というだけでも魅力的ですが、夏は多くの方がバスで通過してしまうポイントを歩いて眺めることができるのも、このコースの大きな魅力の一つです。

 

大正池越しに真っ白な焼岳を眺める

辺りの山々は、夏・秋には広がるカラマツやコナラの林から頭を覗かせるように聳え立ちますが、冬はすっかり落葉しているため、全身をすっきり眺めることができます。

 

 

ここからは、河童橋までほとんど平坦な道を歩いていきます。

周りに響くのは「ザッザッ」というスノーシューで歩く音だけ。雪に覆われた静寂の上高地です。道中では、冬の限られた餌を求めて歩くニホンザルの群れや、小動物のしっぽのように可愛いらしく芽生えたネコヤナギの冬芽等を観察しながら歩きます。

 

 

道中の木道には雪が積もって、手すりより高いところを歩くこともあります。

 

 

そして、ようやく河童橋に到着。遠くから見えた穂高連峰がぐっと近づき迫力の景色を楽しむことができました。

主峰~五峰まで並ぶ明神岳の岩峰群

梓川越しに角度を変えて望む焼岳もまた壮観です。

 

 

 

その後、景色の良い場所でお弁当の昼食を食べて、往路とは若干異なる道を歩きながらトンネルまで戻り、再びトンネルを抜けて、中の湯温泉まで戻りました。

 

 

冬だけしか味わえない特別な上高地。

高低差はトンネル内の200mしかないので、登山初心者の方にもオススメです。

 

皆様のご参加を心よりお待ちしております。

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9月末、西遊旅行初となる、両生類・爬虫類を観察するハーピングツアーを催行いたしました。

 

ハーピングとは、両生類・爬虫類学を意味する「Herpetology」から派生してできた言葉で、両生類・爬虫類を観察に行くことを意味します。日本では、まだまだあまりなじみのない言葉ですが、日本にも多くの固有種がいて、じっくり観察するととてもかわいい生き物が沢山いることに気づかされます。今回は、世界自然遺産に登録されて間もない沖縄本島北部のやんばるの森でハーピングをしてまいりました。本来はやんばるの森と渡嘉敷島での観察の予定でしたが、台風の影響で渡嘉敷島へのフェリーが欠航となってしまい、沖縄本島北部でで2日間にわたり観察してきました。滞在中に観察した生き物たちを紹介します。長靴にヘッドライトを付けて夜のジャングルに出発です。

 


 
まず初めに現れたのは、日本で一番美しいカエルと名高いオキナワイシカワガエルです。絶滅危惧ⅠB類、沖縄県指定天然記念物、国内希少野生動植物種などに指定されていて、世界でも沖縄本島の北部にしか生息していないカエルです。今回我々が観察したのは黄色の色素が欠乏した青色の珍しい個体でした。青色の個体は時々生まれるのですが自然界では外敵から目立ちやすいため生存率がとても低く、観察できたのはとても幸運でした。


 
ノーマルの個体はこのような緑色をしています。この一見すると派手な模様も苔の生えたジャングルの石の上ではカモフラージュになっています。


 
次に現れたのは、リュウキュウアカガエルです。個体によって茶色から鮮やかな赤色・黄色をしています。口の周りが白くなっているのが特徴で、そのおかげか他のアカガエルよりもキリっとした顔立ちでイケメンです。


 
我々が今回一番のメインにしていたクロイワトカゲモドキです。ヤモリの仲間なのですが、指の裏に鱗は無く壁に張り付くことができないうえに、瞼を持っているため瞬きができるなど、原始的なヤモリの特徴を持っています。赤い目にバンド模様が特徴的ですが、住む地域や島によって様々な種や亜種の色や模様が存在しています。


 
自切して間もない個体も観察できました。一度尾を自切するともう骨は生えてこないため、姿や形は全く違う尻尾が生えてきます。


 
先ほどの個体とは車で1時間ほど離れた場所で見た個体ですが、模様が全く違います。移動能力が低く、生息できる環境が限られるため細分化が進んでいるのでしょう。垂直な壁に必死にしがみついて、エサを待つ姿はとてもかわいいです(写真の縦横は間違ったいません)。


 
また、日本で一番大きな毒ヘビ・ホンハブも現れました。とても危険なイメージですが毒はニホンマムシの15%ほどの強さしかありませんが、体が大きいのでその分毒の量も多く、勿論細心の注意が必要です。
金色のボティに真っ赤に輝く目がとてもきれいなヘビです。実は、ヘビは手足だけでなく耳や瞼もありません。そこで身を守るために取る行動が、逃げるか噛むかくらいしかないのです。危険なイメージを持たれている方がいらっしゃるかも知れませんが、彼らは身を守ろうとしているだけなのです。実際に、このホンハブもとても臆病な性格をしていました。


 
運よく木の上で寝ているヤンバルクイナも観察することができました。外敵に襲われないように登りにくい木を選んで寝るそう。真っ黒なジャングルに綺麗なオレンジ色がとても映えていました。


 
その他にも、夜のジャングルでは様々な生き物が活動していました。

ジャンプ力の非常に高いハナサキガエル


 
ひし形の目が特徴的なナミエガエル


 
ハブをも食べるアカマタ。マダラヘビ科最大になるヘビで、今回は沢山の個体を観察できました。中でも、小さくて若い個体の方が色が鮮やかで、大きな個体ほど黒っぽくなるなど、個体による変化を愉しむことができました。


 
シリケンイモリの幼生です。ウーパールーパーのようにまだ鰓が生えています。


 
ヤンバルカタマイマイ


 
オキナワキノボリトカゲ。日本に生息する唯一のアガマの仲間。ニホンのトカゲというよりもどちらかと言うとイグアナやカメレオンに近い仲間です。


 
沖縄には5種のサワガニが生息していて今回はそのうち4種の観察に成功しました。

こちらは、オキナワオオサワガニです。同じ種でもいろいろな色をしているので見ていて飽きません。


 
オキナワミナミサワガニ


 
ハーピングと言いながらも、昆虫や甲殻類まで様々な生き物の観察を行いました。

オキナワマルバネクワガタ。大型の個体でした。成虫になってから飛ばずに歩いてパートナーを探すというとても不思議な生態をしています。


 
子供のゲジを食べるオオゲジ


 
夜のジャングルは、カラフルな生き物に囲まれてとても楽しいです。西遊旅行として新たな領域にチャレンジとなりますが、第一回は大成功に終わり、今後のツアーにも期待が高まります。1月には繁殖期のカエルをメインに観察するコースを設定しております。皆様のご参加をお待ちしております。

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2021年冬の道東ツアーの様子第2弾です。
今回は羅臼や野付半島の動物たちの様子をお届けします。今年の羅臼は1月は積雪が多く、毎日雪かきが大変だったのですが、2月に入ると落ち着きました。そんな羅臼の海は今年流氷が少なかったのですが、オオワシ、オジロワシを間近で見ることができました!オオワシは冬にしか見ることができません。

オオワシ

 

開翼長は2m以上!

 

オオワシ(右)とオジロワシ(左)

 

シルエットもかっこいい

また、羅臼ではこの時期には珍しくシャチも見ることができました。

突然現れた海の王者にみなさん大興奮でした。

シャチと羅臼町

1月はトドと出逢えるチャンスもあります。

ひょっこり顔出すトドたち

 

続いては野付半島。

ここは日本最大の砂嘴となっており、鳥獣保護区でもあります。

エゾシカやキタキツネなどを見ることができました。

エゾシカ

キタキツネ

 

そして何と言っても今年の道東で話題となったのはこちらのエゾシカでしょう。

国後島とエゾシカ

オス同士が激しいケンカの末、角が絡まり首が折れ、その後なんとか引きちぎったのか、首が角に絡まった状態になっていたエゾシカです。何事もなかったかのように草を食んでいましたが、自然の凄さを感じずにはいられませんでした。

まさにワイルドライフ

 

野生動物を追い求めるツアーは、空振りもあるのが正直なところです。

ただ、まったく予想だにしていなかった出会いもあります!!そんな瞬間に出会えた時の喜びは言葉では言い尽くせません。ぜひ皆様のご参加をお待ちしております。

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皆様こんにちは。今年の冬の道東ツアーの様子を2回に分けてご紹介させて頂きます。

今回は鶴居村のタンチョウなどを撮影した時の様子をお届けします。

 

北海道の東側にある鶴居村は、釧路湿原に囲まれた小さな村です。夏はカヌーやサイクリング、冬はタンチョウの給餌が行われ、世界中からフォトグラファーが集まります。

 

音羽橋

不凍川の雪裡川に架かる音羽橋には、毎年冬になると多くのフォトグラファーが川で眠るタンチョウを撮影しようと訪れます。今年はコロナの影響で例年よりも人手が少なく、ゆったりと観察することができました。

音羽橋から

寒い日はマイナス25℃を下回るので、徹底的な防寒対策が必要です。

条件が揃えば周囲の木々に霧氷が付くのでとても幻想的な雰囲気になります。

日の出直後

日が昇り、ふと角度を変えて川を見てみると、凍った水蒸気が太陽に反射し、キラキラと輝いていました。

ダイヤモンドダスト

早朝5時過ぎから日の出まで撮影しましたが、後半は手がかじかんできました。

一旦ホテルに戻り朝食を食べ、今度は飛び立つ瞬間を狙います。

給餌が始まると飛び立ってゆく

近くの給餌場で給餌が始まると、その時間に合わせて飛び立ってゆきます。

 

鶴居・伊藤サンクチュアリ

こちらは、伊藤良孝氏(故人)が長年タンチョウの給餌活動を続けてこられた土地を「日本野鳥の会」が引き継ぎ、日本全国から寄せられた募金で建てられた施設です。毎年冬にタンチョウの給餌活動を行っています。

求愛ダンス

この時期はオスとメスの求愛ダンスが盛んに行われます。

最初にオスが「コーッ!」と鳴くと、メスが「カッカッ!」と短く鳴き、舞踏会の様に踊り始めます。

タンチョウの吐く息も白くなる

人だけでなく、タンチョウも吐く息が白くなっていました。

最近は給餌量を調整し、自然な採餌場の保全などに力を入れているそうです。

タンチョウの他にも鶴居村ではエゾフクロウが見られることもあります。

エゾフクロウ

 

つがいでいることも

 

次回は冬の羅臼や野付半島についてお届けします!

 

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「中山道・木曽路を歩く」  後編のツアーレポートです。

鳥居峠への道中から藪原宿を眺める

中山道、鳥居峠越え。道中より、木曽の山々と藪原宿を望む

 

福島宿の福島関所跡

福島関所は東海道の箱根、新居、中山道の碓氷と並ぶ日本四大関所のひとつで、中山道の要衝として「入鉄砲」「出女」を取り締まりました。往時を再現した福島関所跡を見学しました。木曽福島はかつて福島宿と呼ばれていました。江戸時代、福島宿は木曽谷の中心地として栄えましたが、昭和2年の大火で、古い町並みはほとんど焼失してしまいました。福島宿を歩き、福島宿の本陣跡も訪れましたが、本陣は明治半ばに壊され、石碑が残るのみとなっています。

福島関所跡

福島関所跡

木曽福島の木曽川

木曽福島を流れる木曽川。山のふもとに福島関所跡があります

福島宿の本陣跡

福島宿の本陣跡。わずかに石碑が残るのみでした

 

藪原宿(やぶはらじゅく)から鳥居峠を越えて奈良井宿(ならいじゅく)へ

木曽福島(福島宿)の後は、藪原へ。着後、かつての宿場町、藪原宿(やぶはらじゅく)を歩きました。藪原宿は、江戸時代から300年近い歴史を持つ「お六櫛」の産地で、お六櫛の店が目立ちました。江戸時代末期、皇女和宮も宿泊したという藪原宿の本陣は、今はもう残されていません。

藪原宿

藪原宿を歩く

藪原宿のお六櫛屋

藪原宿、お六櫛(おろくぐし)の店

藪原宿の本陣跡

藪原宿の本陣跡

 

藪原宿を歩いていくと、次第に坂道になり、中山道の山道に入ります。山道をゆっくり上り、鳥居峠(1,197m)を目指しました。鳥居峠の手前には、御嶽神社があります。天気の良い日には、御嶽神社から御嶽山(おんたけさん、標高3,067m)が展望できるそうです。戦国時代、木曽義元が御嶽山に戦勝祈願のため、峠に鳥居を建てたことから、鳥居峠と呼ばれるようになったといわれています。

藪原宿から鳥居峠へ

山道をゆっくり上り、鳥居峠(1,197m)へ

御嶽神社

御岳神社には鳥居峠の名前の由来となった鳥居がありました

鳥居峠

鳥居峠(1,197m)。地元団体が設置した石碑が建てられています

鳥居峠から奈良井宿へ

鳥居峠からは山道をゆっくり下り、奈良井宿へ

 

鳥居峠(1,197m)越えは、江戸時代の旅人たちにとって、わらじ履きの足を泣かせる中山道屈指の難所と聞いていましたが、実際に歩いてみると、普段からハイキングをされている方なら、どなたでも無理なく歩ける山道でした。地元案内人の話では、鳥居峠まで散歩に行く地元の方も多いそうです。江戸時代の雰囲気の残る、中山道ハイキングを楽しみました。

奈良井宿に到着

奈良井宿に到着

 

すっきりしない天気だった鳥居峠(1,197m)越えでしたが、翌日は天気に恵まれ、奈良井宿の宿場町歩きを楽しみました。

奈良井宿

翌日、快晴下の奈良井宿。山の中腹にあるのが、鳥居峠(1,197m)です

 

中山道・木曽路の魅力が凝縮された、ゆったりウォーキング&ハイキング・ツアーでした。江戸時代の姿を色濃く残す、中山道の宿場町の滞在も楽しみながら、中山道の山道も是非一度歩いてみてはいかがでしょうか。再訪もお勧めです。

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