【視察レポート】ケララ北部の秘祭を撮る
テイヤムの神と女神たち【その2】
- インド
2019.08.21 update
【その1】では、テイヤムの祭りがどんなものか、開催時期や場所を含めて大まかにご紹介しました。今回は、テイヤムの魅力・みどころを、祭りの流れに沿って具体的にご紹介します。
みどころは人間が神へと変化していくプロセス
原色の派手な衣装を纏ったテイヤムが舞い踊る場面は、もちろん会場も大いに盛り上がり圧巻です。しかし、テイヤムの大きな魅力は、演者に神が憑依しテイヤムの神となるその過程を実際に見学できる点です。
祭儀で展開されるストーリーは、大きく分けて2種類。ひとつはヒンドゥーの神話をモチーフにしたもの、もうひとつは地域で語られる伝説で、その両方を合わせもつものもあります。儀式の主な流れは、夕方にテイヤム演者のテイヤッカーランが祈りをささげて身を清めたあと、祭司を通して祠から神の力を受け取ることから始まります。そして、始まりの合図として、祠の前で太鼓を打ち鳴らしながら1~2時間ほどトーッタムを唱えて神霊を呼び降ろします。
▼テイヤム|神を呼び降ろすトーッタムの様子
次に、寺院脇のテントで、テイヤッカーランの顔や身体に1~2時間かけてペイントを施します。赤、黒、白、オレンジ、緑などの顔料をココナッツの葉脈につけて顔に塗っていきます。伝統的な顔料には、ウコンや石灰、煤を用いるそう。化粧の紋様や衣装は、テイヤムごとにそれぞれ異なるスタイルが決められています。なかには5m(!)もの大きな頭飾りを付ける衣装もあります。衣装を完成させたら、鏡を見て自分の姿を自覚することで神が降臨・憑依し、テイヤムの神となります。
そして神の力を得たテイヤムは、太鼓の音に合わせてゆっくりと回ったり、ときに激しく踊ります。なかには祭司も刀を持ってテイヤムと一緒に踊ったりするものもあり、踊りの内容はテイヤムの神によって異なります。
▼テイヤム|ムチロット・バガバティの火踊り
踊りが終わると、ココナッツや米などの供物を受け取り、生贄として鶏や山羊の生き血をささげます。最後は、ターメリックの粉や米を与えて人々を祝福。私たちも観覧席から降りてくるよう呼ばれて、祝福を受けました。参拝者は列をなしてテイヤムにお布施を渡し、お告げや相談事のアドバイスをもらったりしていました。
このように、祈りをささげて神霊を呼び降ろし、化粧や衣装を身に纏い踊るという行為を通して、じょじょにテイヤッカーランに神が憑依していき、テイヤムの神へと変容する様子をリアルタイムで見学できるのが、テイヤムの大きなみどころのひとつです。
次回は、芸術として評価されるテイヤムと、北ケララ郊外のみどころについてご紹介します。
参考図書:「神話と芸能のインド」- 儀礼と神話にみる神と人(古賀万由里)(鈴木正崇 編/山川出版社)
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