インド最北ラダックの名峰へ
ストック・カンリ遠征隊 6,153mの頂に立つ
- インド
2011.08.01 update
より難しい山に登りたい。より高い山に登りたい。登山が好きな方なら誰もがそう望みます。標高3,776m(富士山頂)が最高所の日本では、決して体験することのできない未知の標高への挑戦、酸素の薄い過酷な環境での戦い。高所登山・トレッキング経験の豊富な方やキリマンジャロ(5,895m)登頂では飽き足りない方、次は標高6,000mの壁を越えてみませんか?
今回は2011年8月に実施したストック・カンリ登頂ツアーの記録をご紹介いたします。
深夜11時52分、ベースキャンプを出発した一行。ヘッドランプの明かりを頼りに歩き、翌朝8時44分、全員無事登頂成功。
標高6,153mの山頂では、はるか遠くまで見わたせるザンスカール山脈が一行を出迎えてくれた。
標高5,620mのカフェでティータイム8月4日(木)蒸し暑いインドの首都デリーから飛行機で約1時間半。景色はまるっきり変わり、乾燥したレーに到着しました。標高3,500m、富士山頂の付近と同じ高さにあるインド最北のレーでは、街に到着したときから既に登山が始まっていると言っても過言ではありません。ここでは高度順応の為にどう過ごすかが重要になってきます。体調が優れないからと言って昼寝などは厳禁です。体内の酸素が不足しないよう腹式呼吸を心がけながら、レーの街を散策しました。効果的な高度順応のため、レーには2連泊します。6,000mの標高に少しでも慣れるため、翌日、自動車世界最高地点のカルドゥン・ラ(峠:5,620m)を訪れました。何と峠にはカフェがあり、チャイを飲むことが出来るから驚きです。ここでも深呼吸をし、慎重に行動します。1時間ほど体を慣らしてからレーへと戻りました。 登山の拠点・ベースキャンプを目指す8月6日(土)レーに到着して3日目。車でインダス河を対岸に渡り、登山のスタート地点となるストック村へ向かいました。その後、トレッキング開始。歩き易い谷間をゆっくりと進み、15時頃には最初のキャンプ地モンカルモ(4,300m)に到着。ここでも2連泊し、慎重に高度順応を狙いました。頭痛や軽い吐き気などの高度障害が出始めた方もいらっしゃったので、良い判断であったと思います。翌日は身体を慣らすために、標高4,700m付近まで歩きました。 |
自動車世界最高地点のカルドゥン・ラ(峠:5,620m) 序盤はストック川沿いをのんびりあるく |
深夜11時52分、アタック開始
8月8日(月)いよいよストック・カンリB.C.(5,000m)へ。しっかり高度順応し、翌日万が一の為のロープワーク講習を行いました。昼食後、深夜の登頂に備えて仮眠をとり、夜11時に起床。11時52分、B.C.から出発しました。一般的に、ストック・カンリは深夜からアタックを開始します。ヘッドランプの灯りを頼りに、まずはB.C.裏に聳える峠を越えます。今回、気温は6℃とさほど冷えませんでした。峠を越えた先にある狭いトラバース道を進んで行くと、月明かりの中、前方にストック・カンリ―。今回の獲物が浮かび上がってきました。トラバース道が終わると氷河が現れます。本来、ここでアイゼンを装着するのですが、今回は表面がザクザクしており、アイゼン無しで横断しました。いよいよ傾斜がきつくなってくると、アイゼンを装着し、雪渓の斜面から標高を稼いで行きます。雪渓が終わりアイゼンを外すと、今度はガレた斜面をトラバースするように南稜を目指しました。ここは雪の付き具合によってルートが変わります。前年度の西遊視察隊では積雪が多かったので、南陵に向かわず南壁をアイゼン歩行で直登しました。
ストック・カンリB.C.付近での高度順応
終盤、南稜のガレ場を登る
自分を信じて─ 全員無事登頂!!
標高はすでに5,500mを越えており、ペースが落ちてきました。眠気と戦いながら、お互い励まし合いながら、何とか南陵まで辿り着くことができました。そこから山頂までの稜線歩きでは、幸いにも雪は無し。断崖絶壁の箇所もあるので、雪があると特に注意が必要です。ペースも大分乱れて来ましたが、皆様自分を信じて、一歩一歩、なかなか近づかないピークを目指しました。そして翌朝8時44分、全員(男性6名様と女性1名様、添乗員)で登頂。皆様、6,000m峰に登頂した達成感に溢れ、お互いの健闘を称え合いました。K2などのカラコルム山脈には雲がかかっていましたが、ザンスカール山脈の展望は見事の一言。陽の光が冷えた体を温めてくれ、私たちを祝福してくれているようでした。登頂後、B.C.まで下り、翌日には無事にレーに到着。6,000m峰の中では比較的難易度が低いだけでなく、日本から12日間の行程で行けるアプローチの良さもこの登山の魅力です。更なるステップアップに、初めての6,000m峰登山に、ストック・カンリを選んでみてはいかがでしょうか。
南稜へ抜けるガレ場の斜面を登る
山頂から望むザンスカール山脈
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