【視察レポート】ケララ北部の秘祭を撮る
テイヤムの神と女神たち【その4】
- インド
2019.10.01 update
【その3】では、芸術として評価されるテイヤムと、北ケララ周辺のみどころについてご紹介しました。今回は、400以上もの神がいるというバラエティに富んだテイヤムの演目から、代表的なテイヤムの神々と、それにまつわる神話の一部をご紹介します。
[1]ムチロット・バガバティ MUCHILOT BHAGAVATHI
昔ある時、ブラフマンが村の賢い女の子を疎んで追放しました。その女の子は孤独から火に飛び込み自害を試みますが、燃えることができずにいました。そこに、ココナッツオイルを採取するバニヤ・カーストの男性が通りがかり、オイルを火に注ぐと、女の子は燃えきることができました。その晩、男性が自宅に戻るとポットのオイルが満杯に。女の子が神になって現れたのだと語られました。
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早朝に火を使って踊る「ムチロット・バガバティ」
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大祭の最後に火を持って祠を回る
[2]クッチ・チャタン KUTTI CHATHAN
KUTTIは⼩さい悪魔、CHATHANはパワーの意味。シヴァとパルバティの子どもバルロワは低カーストの子どもとして生まれますが、ブラフマンに預けられ、小さい頃から横暴で皆から疎まれていました。ある日、食事に石と髪の毛が入っていたことからバルロワは大激怒。怒りにまかせて水牛を殺し、血を飲み干しました。それを見たブラフマンは憤慨し、バルロワを切り刻み火へ投入。すると390のクッチ・チャタンが生まれ、家を燃やし悪さを働くようになりました。ブラフマンは、もはや子どもではないと制裁を加え、その後クッチ・チャタンは神となりました。
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ムトゥンガル・バガバティ寺院の「クッチ・チャタン」
そのほか、祭りで見られるテイヤムの神々(一部)をご紹介!
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なんと全長約5m!長い頭飾りが特徴の「カブンバイ・バガバディ」。
残念ながら詳細なストーリーはわからないのですが、最強の力を持つといわれているそう…!
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「ポリオカナン」の寸劇は子どもたちに大人気
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村を護る神「グリカン」
緻密でビビッドな化粧やユニークな衣装など、その鮮烈なビジュアルが強く印象に残ることから、アートや芸術としても注目されるテイヤム。しかし、テイヤムの魅力は、地元の人々の暮らしや文化と強く結びつき、2000年以上前から継承される生きた宗教儀礼だからこそ生みだされるものです。
テイヤムは、外部からの観光客がほとんどいないという貴重な環境で、神降ろし儀式のプロセスをいちから目にすることができる独特のお祭りです。その熱気を、ぜひ現場で見て、肌で感じてみてください。
参考図書:「神話と芸能のインド」- 儀礼と神話にみる神と人(古賀万由里)(鈴木正崇 編/山川出版社)
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