崑崙山脈6,000m峰 玉珠峰登頂
- 中国
2020.06.01 update
世界最高所を走る鉄道として知られる中国の世界遺産「青蔵鉄道」。車窓からは壮大な風景が広がり、2006年の開通以来多くの観光客を楽しませてきました。
この列車から眺める車窓の風景に「玉珠峰」という万年雪をかぶる美しい名峰(6,178m)があります。
玉珠峰は、中国から中央アジアまで東西3,000kmにもおよぶ崑崙山脈に属しており、現地にはその見事な山容を讃えるように、山名そのままの駅が存在します(残念ながら降車はできません)。
そのように一般には“眺めて”楽しむ山ですが、やはり見事な山ほど登りたくなるのが山人というもの。今回は5名のお客様をお連れして無事に全員登頂してまいりました。
中国に入国すると、登山の拠点となるゴルムド(標高2,800m)の町へ向かいます。ゴルムドの意味は、モンゴル語で“河川の集まる土地”。チベット高原のツァイダム盆地中南部に位置しています。
玉珠峰はこの町の南南西にあり、B.C.は玉珠峰の南麓に設けられています。町からB.C.までは車で直接行くことができ、距離は約200kmです。半日の移動で到着できるので、万が一登山中にトラブルが生じても迅速に町へ戻ることが可能です。しかし、B.C.は5,050mの標高があり、町からの標高差は約2,200mにもなるため、いきなり向かえば高い確率で高山病にかかることが予想されます。そのため、事前に付近の標高の高い場所に訪れる順応日を設けてから望みます。
※今回は、始めにチベット自治区のラサ(3,600m)と付近の約4,700m地点に訪れてから、鉄道を使ってゴルムドまでやってきました。
■玉珠峰登山 1日目
崑崙峠を過ぎ、東に向かってオフロードを小一時間進むとB.C.に到着します。玉珠峰が目の前に聳え立ち、目標はわかりやすく、皆さん心が引き締まります。
登山ガイド達と合流して挨拶を交わしたら、この日は周辺を散策して順応に努めます。
■玉珠峰 登山2日目
こちらの登山協会の方針では、基本的に朝食は9時から摂ります。日の出は7時前頃。
明るくなってから朝食までに時間が空きます。他の山の感覚だと7時には朝食を食べて、9時頃からは行動を始めたいところですが、何しろB.C.は標高が5,050mと高く寒い環境なので、日が中天に差し掛かるタイミングで本格的な行動を始めることになるのです。なお、日の入りは20時30分を過ぎた頃なので行動を急ぐ必要もありません。
待機時間は長く感じるかもしれませんが、この時間を高所順応として寛いだり散歩をする時間にあてれば有意義です。
本日は高所順応を意識しつつ、アイゼン歩行、ユマールの実践等、雪上での動き方のチェックをしました。午前中は装備の確認。午後から実践練習の流れです。下界でいくら問題なく使えても、ここの環境で思うように身体を動かせないといけません。
■玉珠峰登山 3日目
さて、次の日はC1(5,600m)へ向かいます。
氷河が溶けて流れる小川を何度か越えると尾根に取り付き、じわじわと尾根の付け根に向かって高度を上げていきます。
■玉珠峰登山 4日目
さて、いよいよ登頂日。夜はあまりの強風の音に何度か目が覚めましたが概ね眠ることができました。皆様も同じような感覚だったり、寝たような寝ていないようなといった感想でした。しかし、おかげさまで頭痛・吐き気等の重い症状はありません。
オートミール等の簡単な朝食を食べて、風がある程度おさまるまで待機します。いよいよ良いタイミングが来たらゆっくりと、しかし素早くアイゼンを装着して出発します。
暗闇の中ヘッドライトで足下を照らしながら一歩ずつ進み、時々深呼吸する時間を取って息を整えつつ再び足を繰り出します。傾斜はだんだんと高くなっていきますが、順調に進んでいます。例え一歩が小さくなったとしても、このまま歩を進められる限り問題ありません。(ただし中国の安全規制は厳しく、1時間遅れてしまうようなスピードになってしまうと途中で下山を命じられる可能性が高いです。)
そして、斜度が約40度といわれる5,900m地点では設置ロープにユマールを通して登ります。ロープが想定より柔らかかった為に扱いづらい面がありました。しかし安全の為、踏ん張って対応しました。
そして・・・眼前に壁のように伸びていた急斜面を登りきると頂上です!途中体調不良になった方もいらっしゃいましたが、全員崑崙山脈6,000mの頂に立つことができました!頂上は想像していたより平べったい空間があり、やや奥にタルチョが掲げられているポイントがありました。
振り返れば、白銀の足下以外は延々と荒野が広がっており、日本はもちろん、ヒマラヤでも見ないような光景がありました!
その後慎重に下山します。C1で一旦服装調整をして休んだ後、B.C.まで来た道を戻りました。
下山後、登山協会の方やポーター達スタッフの出迎えを受けて喜びを分かち合いました。
たった今登ってきたばかりの頂を見上げながら飲むコーヒーは格別の味でした。
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