世界最高地点を走行する青蔵鉄道の旅
- 中国
2024.05.09 update
旅好きなら一度は憧れる、列車の旅。
チベットの聖地ラサへと向かう青蔵鉄道についてご紹介。
青蔵鉄道とは
青蔵鉄道は北京、上海、成都、広州などの大都市とチベットの都、ラサを繋いでいます。2006年7月に開業し、世界で最も高い場所を走る寝台列車で「天空列車」とも呼ばれています。ちなみに青蔵鉄道の名前の由来は「青」が青海省、「蔵」は中国語でチベットを意味します。少し酸素は薄いですが列車の中は設備も充実しており列車の中は暖かい。標高5072mにも達する場所へ鉄道に乗り、まさに秘境ともいえるような場所の景色を車窓から眺められてしまう。そんな夢のような列車が青蔵鉄道なのです。
青蔵鉄道の列車
<青蔵鉄道5つの世界一>
①世界最高所にレールを引く鉄道 全長は1,142km
②世界最高所のトンネル風火山トンネル全長 1,386m 標高4,905m
③世界最高所、最長のトンネル 崑崙山トンネル全長 1,686m 標高4,600m
④世界最高所の駅 タングラ駅 標高5,072m
⑤世界最高所の鉄橋 三岔河大橋 標高3,800m 全長690.19m
まずは、西寧駅に到着
西寧駅は立派で大きい。北京、上海、成都といった大都市とチベットを結ぶジャンクション駅です。まず駅の入り口でパスポートと列車のチケットを提示し、その後荷物チェックがあります。水などは持ち込みが可能ですが、ハサミ、フルーツナイフ等の刃物類、時には爪切りさえセキュリティーチェックに引っかかってしまうことがあるので持参はあまりお勧めできません。スルーしてもらえれば問題はないですが引っかかると全て駅に入る前に没収となってしまいます。
西寧駅構内
無事にセキュリティチェックを終え、私たちは改札近くの椅子に座り改札が開くのを待っていました。ホーム内への改札口で列を作る人もいますが「硬座(こうざ)」と呼ばれる普通車の乗車客が殆どです。
今回、私たちは「軟臥(なんが)」と呼ばれる一等寝台なので駅構内にある電光掲示板で時間を確認しながらその間に最終荷物の入れ替えや最終準備をしておくと乗車後スムーズ。私達は前日に用意をしていましたが列車内ではスーツケースを開くスペースが無いため、事前に洗面具、タオル、列車内用スリッパ、懐中電灯、水筒、一泊分の洋服、お手洗い用のティッシュ等をひとまとめに用意しておく必要があります。いよいよ、改札前で再度チケットのチェックを受けてホーム内へ。
西寧駅改札口
西寧駅のホーム
西寧から拉薩までの青蔵鉄道の列車
各車両のドアの前には制服を着た担当の車掌さんが出迎えてくれます。
ホーム内、列車の写真を撮影し列車内へ。
いよいよ、青蔵鉄道に乗車!
乗車しまずはスーツケースを荷物置き場の一角に。ひとまとめにしておいた一泊分の用意と貴重品を持ってそれぞれの部屋へ。乗車して部屋に到着してからチケットは車掌さんに預け引換証を代わりに貰います。部屋は二段ベッド二つの4人部屋です。部屋は清潔感があり快適に過ごせそうな車内です。それぞれの部屋に枕、布団は勿論のことポット、ごみ箱、お盆、机があり机の下にはコンセント、それぞれのベッドに灯りと高山病対策の酸素吸入口があります。
列車内の洗面所
列車内のお手洗い
軟臥寝台列車の通路
私達が乗車した列車は5号車と6号車で7号車が食堂車になっています。車両ごとの間に、給湯器、洗面所、お手洗いがあり、5号車側は和式、6号車側は洋式になっています。お手洗い内には日本のように備え付けのトイレットペーパーは無いので自身で用意が必要です。19時半、定刻通りに西寧駅を出発します!世界の屋根を目指して西に進みます。マンション住宅街の灯りが見えますが1時間もすれば別世界となります。列車の外は既に暗く景色はこの日見る事が出来ませんがその代わり天気が良ければ素晴らしい満点の星空を車窓から見る事が出来ます。この日は運がよく天の川も見る事ができました。
夜中の2時頃に列車が25分間のみゴルムド駅でディーゼル機関車連結の為、停車します。青蔵鉄道は全45駅(有人8駅)からなり停車する駅はわずかです。このタイミングを狙い希望の方のみでゴルムド駅停車時にこの連結を見に行くことになりました。2時前には皆さん暖かい恰好で準備をしいざ、列車外へ。無事写真に収めて、寒いのですぐ列車内へ。因みにNJ2型の機関車には2パターン存在し上部が白色の2トーンカラーと緑1色のものがありますが白色が高地の紫外線に耐えられない為、今後は緑1色の列車になるとかならないとか。また、このゴルムド駅標高2829mより酸素吸入が始まります。
ゴルムド駅での連結作業
酸素吸入口はそれぞれのベッド横にありますがチューブは車掌さんに貰いに行く必要があります。体調不良の方はその時はおらずこの日はゆっくりとお休みいただきました。
青蔵鉄道乗車2日目
翌日、朝の8時から食堂車にて朝食です。大皿で中華料理を何品かオーダー。お粥などもあり日本人にとってもありがたい朝食です。注意が必要なのはお箸は食堂車に用意がありますが、取り皿やコップなどがないため日本から持参したものを利用していただきました。私が訪れたのは年末ですが朝日は丁度、8時。車窓右側に綺麗な朝日と長江の源流でもある標高4547mのトト河を見る事ができます。
車窓からの朝日
朝食後は各自自由に列車内で車窓からの風景を楽しんで頂きます。10時過ぎには最高所のタングラ駅、12時ごろアムド駅を通過するとツォナ湖が見えてきます。駅の停車は殆どなく最高所のタングラ駅の看板も撮影するのにカメラを持ち、待ち構えての撮影。タングラ駅ではタングラ峠に建つ石碑も見る事ができました。
タングラ峠の駅舎
部屋の外の通路にも折り畳みの椅子とコンセントがあり自由に使用することが出来ます。車内は暖かく快適で列車の窓ガラスも二重構造のおかげで曇ることもなく、綺麗な景色を見ながらそれもこんな高所にいることが出来ることを有難く思えてきました。車内では時折、車内販売の女性がやってきてヤクのヨーグルトやジャーキー、青蔵鉄道のはがきセットなども売っています。
列車内の食堂車
調理されるプランターに植わったままの野菜
昼食も食堂車で頂きます。人数が多いため私たちは事前に予約をしていました。驚いたのは列車内での野菜の保存方法。プランターに植わったままでこれを調理場へと運んでいました。確かに野菜の中華料理がおいしい。味はどれも日本人好みの味付けで美味しく頂きました。
車窓からの風景
16時頃、車窓左側から7162mのニンチェンタンラ山脈が見えました。ここを通るといよいよ聖地ラサに近くなっきたことを実感します。お手洗いは到着の約1時間前に使用が出来なくなってしまうため準備をして到着を待ちわびます。ラサの南側に流れるキチュ川を渡り速度を落としトンネルに入ります。このトンネルを抜けるとそろそろラサ駅へ到着。飽きずに車窓の右側を見ていると小さくくポタラ宮を見る事ができます。
聖地ラサへ到着
いよいよ最終地点の聖地ラサへ到着です。荷物を各自持ってラサ駅に降りたちます。暖かそうな民族衣装を着こんだ人たち、出稼ぎに来たのか荷物を沢山持った若い青年、伝統的な巡礼作法である右肩だけ上着を脱いだ女性など、たくさんの人々で駅のホームが賑わいます。残念ながらラサ駅では列車の写真撮影は可能ですが駅構内の写真は撮ることができません。
列車で通ってきた標高に比べると高さはたいしたことないですがそれでも標高3658mのラサ。ここからチベットの旅が始まります。まだまだ旅の序盤であったことを忘れてしまいそうになる程、満足度の高い青蔵鉄道。生涯に一度は青蔵鉄道に乗って聖地を目指す旅をしてみてはいかがでしょうか。