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添乗員ツアーレポート  アフリカ

アルジェリア探訪 前編:ティムガッド遺跡

  • アルジェリア

2023.02.20 update

北アフリカに位置するアルジェリア。地中海沿岸部には多くのローマ遺跡が、内陸部では伝統的なイスラームの生活を知ることができます。個人ではなかなか行きにくいこの国の魅力をご紹介します。

山々の間に突然現れるジェミラ遺跡

かつて「ローマの穀物庫」と呼ばれたアルジェリアには数多くのローマ遺跡が残ります。地中海とのコントラストが印象的なティパサ遺跡、「美しい」という意味の名を持つジェミラ遺跡、そして圧倒的な規模と保存状態の良さを誇るティムガッド遺跡。今回はこのティムガッド遺跡の魅力をご紹介致します。

 

ティムガッド遺跡

シアターの上からティムガッドを一望する

この遺跡はローマが最も拡大した紀元前1世紀、トラヤヌス帝の時に作られ、リビア出身のセプティミウス・セウェルス帝の頃に繁栄した都市でした。退役軍人の植民都市として拡大しましたが、8世紀ごろに起きた地震が原因で泥に埋もれています。長らく忘れ去られていた後、偶然にイギリス人の探検家がこの場所を見つけ、フランス植民地時代に本格的な発掘・復元が進められました。当初は遺跡のほとんどが4m程の高さまで埋もれていたそうで、それを発掘したとはなんとも気が遠くなる話です。

博物館の前に飾られている柱。この高さまで泥に埋もれていたそうです。

 

広場

ティムガッド市民が集った広場、フォーラムでは普段はそれぞれが思い思いに交流の時間を過ごしていました。世間話をしたり、おはじきのようなボードゲームに興じたり。階段の石畳には当時のラテン語で書かれた「落書き」が残ります。「狩りをし風呂にはいり戯れ遊ぶ。これこそが人生。」なんて羨ましい!なんて思ってしまいます。当時の人々が人生を謳歌している姿が目に浮かぶようです。

 
シアター(劇場)

更に先に進み、シアター(劇場)に到着します。約3500人を収容したという観客席の一番上まで登ると、ティムガッドの全景を一望することが出来ます。遠くに見える楕円形の建物は、今世紀に入ってから作られた劇場。実は以前はまさに遺跡そのものの上で夏に音楽祭が行われていたのですが、徐々に劣化や老朽化が進み、遺跡の保全のために新しく夏のコンサート用の劇場を作ったのだそうです。

シアター。半円の壁の片端で話すと、反対の片端まではっきりと伝わり壁電話ができます。

 

闘技場の後ろは空き地が広がるばかり。まだ発掘が進んでいないエリアです。予算の関係からあまり発掘は進まないそうで非常に残念に思われます。地面によく目を凝らすと、モザイクの欠片が所々に散らばっていました。

 

キャピトル(神殿)

シアター(劇場)の上から見えた、円柱の並ぶエリアはかつてキャピトル(神殿)だったところです。近づいてみると、前の道路には黒い石で「ここからが聖域」であることを示す線が引かれています。

通りから見たキャピトル

 

それをまたぎ奥へと進むと、ゴロンと柱頭が転がります。2m近い巨大なものです。円柱は数本のみ再建されていました。これほどまでに大きな柱頭を高さ約15mの柱の上に乗せたとは、当時の技術力の高さには圧倒されるばかりです。

身長約180センチのガイドさんと同じサイズの柱頭

 

市場
キャピトルを出て入口の方へ進むと市場だった地区に到着します。
小さな広場をぐるりと囲うようにお店のならんでいた市場。各商店のカウンターと看板がそのまま残り、まるでほんの少し前まで人々の往来があったかのようです。看板はそれぞれの商品が描かれた美しいレリーフとなっています。メロン、イチジク、葡萄酒、レモンなどなどが生き生きと掘り出されていました。

特徴的な形の葉はイチジクを表します。

 

葡萄の葉と実が描かれているのがわかります。モザイクでもよく見かけるモチーフです。

 

特徴的な楕円形はレモンです。

 

トラヤヌス帝の凱旋門

ティムガッドに残る多くの建造物の中でも、ひときわ目を引くのが遺跡の東に位置するトラヤヌス帝の凱旋門でしょう。高さは約12m。現在では細かな装飾は失われてしまっていますが、その威厳は色あせません。3つのアーチのうち、真ん中のものは車道。馬車が通りました。両脇の2つは歩道です。当時は門の両面に2神ずつの像が飾られ、また赤い大理石で華やかに飾られていとか。門の一番上には戦いの神アレスの像が飾られていたそうです。ティムガッドの都市全体を見守っていたのでしょう。

トラヤヌス帝の凱旋門

アフリカのポンペイとも呼ばれるティムガッド遺跡。他の場所では見ることのできない圧倒的な広さの遺跡が、当時の姿のまま残されています。

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