Markhorは日本語でマーコールと発音する、ウシ科ヤギ属の動物でヤギ科で最も体が大きいヤギの仲間。
このマーコールのオスは、動物ファン、いえ「角もの(Horned Animal)ファン」にはたまらない、「角のある動物の王様」「野生ヤギの王様」なのです。
インド西部、中央アジアに生息していますがコア・ゾーンはパキスタンの山岳地帯。一時は密猟などで生息数が減りましたが、2020年現在、コントロールされたトロフィー・ハンティングだけが認められ違法な狩猟が取り締まられた結果、生息数は大きく回復にあるようです。
訪れたのはトゥーシ・シャシャ保護区(Tooshi-Shasha Conservancy )。川の対岸にマーコールを見るチャンスがある場所です。
1979年、1,045ヘクタールから始まったトゥーシ保護区は1998年に20,000ヘクタールに拡張され、周囲の7つ村の共同体管理の保護区となりました。狩猟が禁止されている国立公園と違い、管理下の狩猟が認められている保護区です。
狩猟のため野生動物が人をおそれるのが普通のパキスタン。それでもこのトゥーシ・シャシャ保護区では近くで観察することができした。
マーコールのオスです。この付近でみられるマーコールは「カシミール・マーコール」と呼ばれる亜種。パキスタンの北部ではギルギット周辺に生息する「アストール・マーコール」とこの「カシミール・マーコール」の2種が見られます。
立派な角のオスです。この季節、雌を求めて標高の低い地域へやってきます。
カシミール・マーコールのグループ。普段、雌と若いオスが一緒に群れでいますが、この季節はオスが合流します。
オスが降りてきました。
近いです。雄の角は最大で160センチ(63インチ)にもなるそうです。ちなみに雌の角は25センチ(10インチ)で小さく、角だけでなく、体の大きさも全然違います。
さて、もっと近づいてきたオス。表情が何やら・・・怪しい。
口をむいたり、舌を出したり・・・フレーメン反応でしょうか、発情周期にある雌に反応しているようです。
繁殖の季節=マーコールの恋の季節は、悲しいことに人間による「ハンティング・シーズン」。大きな角を狙ったハンターが「許可証」をオークションで獲得してやってきます。
2020年はコロナのことがあり、オークションで「許可証」は売れたけどハンターが本当に来るかどうかはわからない、と聞いていましたが、私たちが訪れた翌日に外国からハンターが到着しました。20,000ヘクタールのトゥーシ・シャシャ保護区に生息するとされる1,400頭ほど(2015年の調査による)のマーコールのうち、毎年2頭が「トロフィー・ハンティング」として献上されます。
カシミール・マーコールのオークションはUS$9000~10,000からスタートし、一番高値を付けた人が落札します。この収益の8割がコミュニティに還元され、学校・医療などのために使われています。
2頭のトロフィー・ハンティングが地元の収益となり、種の保護につながっている・・・これが、現在のパキスタンの「野生」と「人々の暮らし」の共存のひとつの形のようです。
Photo & text : Mariko SAWADA
Observation : Dec 2020, Tooshi-Shasha Conservancy, Chitral, Khyber Paktunkhwa
Special Thanks : KPK Wildlife Department, WWF Pakistan, TOMO Akiyama
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