紀元前3世紀、マウリヤ朝のアショーカ王がガンダーラ地方で作ったストゥーパ(仏塔)が2基あります。1基はスワートにあるブトカラ遺跡にあるストゥーパ、もう1基がタキシラにダルマラージカー・ストゥーパです。
今日、全体の形が残っている最古のストゥーパはインドのサーンチーのものですが、ガンダーラ地方にも同型の、円形基壇に作られた巨大な仏塔があります。ただ、サーンチーの仏塔のように欄楯やトラナはなく、周りに祠堂や小ストゥーパ群が並んでいます。
基壇は径46m、その上に高さ14mの半球形の覆鉢がのるメインストゥーパ。
紀元前500年ごろ、クシナガラでお釈迦様が涅槃に入りました。7日後に荼毘にふされ、その遺骨(舎利)が8カ所の墳墓に舎利容器に入れて墳墓の中心部の底に納められました。これが最初のストゥーパ(仏塔)で、この舎利と舎利容器は崇拝の対象となりました。
紀元前3世紀になり、マウリヤ朝のアショーカ王が八舎利のうち七舎利を再発掘して8万4000塔に分納したそのうちの1つ、このダルマラージカー仏塔がそれにあたると言われています。
メインストゥーパをめぐる繞道があり、その周囲には紀元前1世紀から紀元後4世紀、ガンダーラを担ったクシャーナ朝時代に建てられた祠堂・小ストゥーパ(奉献塔)群があります。
小ストゥーパ群の方形基壇の壁面はコリント式の柱壁で仕切られたパネルや壁龕が施されたガンダーラ様式の建築が見られます。
小ストゥーパの基壇に施された装飾。象や人物像が基壇を支えています。この人物像、ギリシャの神アトラスなのです。
アトラスはギリシャ神話で世界の西の果てで天空を支える神。ガンダーラにおいては仏像の台座やストゥーパの基壇を支える役割として登場します。東西文化の融合の結果生まれた、ギリシャの神が支える仏教世界・・・なんともロマンチックです。
祠堂の中にはスタッコの仏像がありましたが残念ながら破壊されています。ストゥッコ(Stucco、化粧漆喰)像は粘土で作られた塑像で、ガンダーラでは紀元後3~4世紀に流行して作られました。
タキシラの観光では、タキシラ博物館・シルカップの都市遺跡・ジョウリアンの僧院というのが3点セットですが、ぜひダルマラージカーも訪問してみてください。
Photo & Text : Mariko SAWADA
Visit : Feb 2020 Dharmarajika Stupa, Taxila, Punjab (写真はドローン撮影を含みます。)
参考図書:パキスタンのガンダーラ遺跡と博物館を訪問する方にお勧めの一冊!「ガンダーラ美術の見方」監修:奈良康明監修、著:山田樹人著、写真:高倉一太(里文出版)、「ガンダーラの美神と仏たち、その源流と本質」著:樋口隆康(NHKブックス)
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