チョウモス祭 – シシャオ・アドゥ:今も息づくカラーシャの儀式

カラーシャの神バリマインを迎えるための儀式が始まりました。女性の浄めの日、シシャオ・アドゥの様子です。

シシャオ・アドゥの前日は女性の浄めの儀式のためのパン、シシャオ作りのための石板を準備する日です。男性は山に入り適した石板を探し、使うまで女性が触れないように安全な場所に置いておきます。女性はシシャオ作りのための小麦粉を準備します。

 

シシャオ作りに使用する石板を運ぶ男性

シシャオ・アドゥの日の朝、川原には浄めの身支度で女性たちが集まっています。小屋で湯あみし、髪の毛を洗います。この後、聖なる期間があけるまで湯あみはできません。

 

身支度する少女たち

シシャオ・アドゥ Shishao Aduは女性を浄める日。この日以降、新しくランブール谷に入ることはできません。これは外国人も例外なく、谷に暮らすイスラム教徒もカラーシャの村には入れません。
子供の通過儀礼ゴシュニク Goshnikの祝いにボンボレットからやってくる親族の女性も、この浄めを受けなくてはなりません。私たち外国人も浄めを受けます。村を歩いていると、「シャワーした?新しい服着てる?」と聞かれ、この戒律をまもらない者が谷にいると災いがくると考えています。

 

神殿でシシャオ作りが始まりました。

 

シシャオのために準備された浄められた小麦をこねます。男性の手は浄められシシャオの材料以外のもの、自分を含めて触ることはできません。

 

山から取ってきた石板と石を使ってパンの中身となるクルミを砕きます。

 

家族の女性一人につき5枚のシシャオを焼く必要があり、メンバーの多い家庭では朝からシシャオ作りがされます。

 

女性の浄めの儀式、シシャオ・スチェクが始まりました。女性は新しい服を準備し、春のジョシ祭なみに着飾った少女達の姿もありました。

 

最初に水で手を浄めます。
5つのくるみパン、シシャオが配られます。
炎のついたジュニパーの枝の煙で浄めます。

こちらはとても画期的な頭飾りをつけた女性。お母さんが作ってくれたと。

 

伝統的なスタイルの頭飾りクッパースKupasですが、色彩はモダンです。

季刊民族学のカラーシャに関する記事やわだ晶子さんの本に登場する伝統的な素材・色彩のものは本当に見られなくなってきました。カラーシャの女性たちは常に新しいモードを追っているようです。

 

ジェスタックハン神殿でもシシャオ・スチェックの儀式が始まりました。儀式は野外でも行われます。

 

神殿に集まった家族メンバーの女性たち
浄めを受ける少女
浄めの儀式、シシャオ・スチェク

この浄めのあと、7日間は”pure”を保たなくてはなりません。「イスラム教徒に触ってはいけない」「チキンは食べない」「卵を食べない」「牛の乳と乳製品を食べない」「はちみつを食べない」など。

とても美しい、人々の暮らしと信仰を見た日でした。

 

Text & Photo: Mariko SAWADA

Visit: Dec 2024, Kalash Valley – Khyber Pakhtunkhwa

※情報は現地での聞き取りによるものです。資料により儀式の表記や説明が異なる場合があります、予めご理解ください。

 

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カテゴリ:■カイバル・パクトゥンクワ州 > カラーシャの谷
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チョウモス祭 – クタム: 今も息づくカラーシャの儀式

すべての収穫を終え、家畜が山から下りてきた12月上旬のカラーシャの谷。カラーシャの神バリマインを迎えるための儀式が始まりました。通過儀礼、浄めの儀式、神への生け贄が行われ、クライマックスとなる松明と大きな焚火でバリマインを見送ります。現代に生きる深い信仰と儀式に触れた旅のレポートです。

 

チョウモスの神聖な期間はイスラム教徒は谷に入れません。イスラマバードからのスタッフもガイドも谷に入れないため、アユンにカラーシャのスタッフが迎えに来てくれました。

 

カラーシャの村では、神聖な期間に新しい服を着るため、洗濯物がたくさん干されていました。浄めの儀式の前に湯あみをし、新しい服を着る必要があります。

 

家に飾られていたシャラビラ

ちょうどボンボレット谷でシャラビラ作りを見学することができました。シャラはマーコール、ビラは雄ヤギを差します。女性が翌日に配るチーズの入ったクルミのパンを焼いた後に、男性が小麦をこねてマーコールや雄ヤギの形を作ってストーブで焼きます。この儀式はクタムKutramと言います。

 

シャラビラ作りは夜に行われます。ちょうど訪れた時、谷に電気がなくストーブの火の光で美しい光景を見ることができました。女性がクルミのパンを焼いていました。

 

そして浄めをした男性が浄めた小麦粉を練って動物の形を作り始めました。

 

そしてストーブで焼きます。

 

完成したシャラビラ

クタムの儀式は各家庭で行われるほか、ジェスタック女神の神殿でも行われます。各家から集めた小麦でシャーラ(マーコール)を作ります。夜、男性が集まって作り、早朝まで壁に絵をかいたり、飲んだりして過ごします。朝4時頃に、「チッチッチ(ヤギを追う時の掛け声のよう)」と、シャラビラにデジラワトへ行くように促します。カラーシャの人々はシャラビラの魂がアフガン国境に近い場所デジラワトへ行くと信じています。

 

ジェスタックハン神殿の壁に描かれたシャラビラの絵。祭壇のそばに3つのシャラ(マーコール)。

 

神殿の壁の絵は、女性が用意したクルミの木の皮を燃やして作った炭で描きます。

 

2024年のクタムで描かれた絵

ところでみなさんはマーコールをご存じですか?パキスタンの国獣であり、トロフィーハンティングにおいては非常に高価なことで知られている動物です。2024-25冬のハンティングシーズンにおいては3頭のカシミール・マーコールのハンティング許可が出され、それぞれ231,000ドル~27,1000(3500~4200万)ドルで落札されました。このトロフィーハンティングの収入の80%が地元に還元されるとのことで、トロフィーを増やすために保護が行われ、確かにマーコールの数は増えていますが、動物好きの自分は複雑な気持ちです。

 

カシミール・マーコール(トゥーシシャシャ野生動物保護区)

マーコールはカラーシャの人々にとって超神聖な生き物。チトラールゴル国立公園やその付近の保護区で見ることができます。角の大きなオスは普段は山の標高の高い場所におり、冬の繁殖シーズンになると低い場所まで降りてくるので観察することができます。カラーシャの村からも1時間ほど山を登ると観察できる場所があるとのことでした。ちなみに、この地域のものは亜種、カシミール・マーコールです。

 

Text & Photo: Mariko SAWADA

Visit: Dec 2024, Kalash Valley, Toshi Shasha – Khyber Pakhtunkhwa

※情報は現地での聞き取りによるものです。資料により儀式の表記や説明が異なる場合があります、予めご理解ください。

 

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DISCOVER AFGHANISTAN : バンデアミール Band-e Amir

バーミヤンより西へ75km、標高約3,000m大地に忽然と現われる湖沼群がバンデアミール Band-e Amirです。 バンデアミールは「砂漠の真珠」とも例えられるほど美しい湖で、絶景の多いアフガニスタンでも随一のものです。

バーミヤンからバンデアミールへの道は、美しいシャヒダーンの渓谷と峠を越えて行きます。夏には、緑の草原に映える美しい高山植物や放牧の景色も見られます。今は湖の手前まで舗装され、ずいぶん簡単にアクセスできるようになりました。

 

ゴール朝時代の望楼

バーミヤンを出発し、アクラバト峠(Kotal Aqrabat)への検問所を過ぎてまもなく、正面にイスラム時代以降に作られた望楼が表れます。おそらくは12世紀のゴール朝時代に遡り、バーミヤン周辺の街道沿いに残されています。

 

シャヒダーン峠付近

シャヒダーンの峠を上がるとヒンドゥークシュの雪を抱いた山と滑らかな緑の草地、そこに放牧されている家畜たちの景色が表れます。

 

シャヒダーン峠付近

豊かな水、草に恵まれた健康的なヤギ・羊たち!

 

中世の建物跡 カラ・イ・シャヒダーン

シャヒダーンの村にある中世の城(要塞)の跡。昔から「シルクロード」の一部として人が行きかったしるしです。小さなバザールもあります。

 

学校へ駆け込む少女たち

学校もあり、ハザラの少女たちがちょうど授業に向かっていました。

 

燃料となる草を運ぶ少年

シャヒダーンより、景色の美しい道を走りシベルトゥ、カルガナトゥを経ていよいよバンデアミールへの道に入ります。最近、大きなゲートまで作られました。ここからは未舗装です。

 

バンデ・ズルフィカール

未舗装の道をゆっくり走っていくと正面に美しい湖面が表れます。これが最初に見るバンデアミールの景色です。これはバンデ・ズルフィカールの一部。荒涼とした風景の中に現れる「青」の美しさに驚きます。

この先にチケット売り場があり、さらに道を進めると中心となるバンデ・ハイバットの湖のビューポイントが表れます。

 

バンデ・ハイバット

このバンデ・ハイバットには第1駐車場、第2駐車場(週末は第3駐車場も・・・)があり、宿泊施設、食堂、そして遊園地的なものまで登場しました。新タリバン政権以降、これまでこの地域に来ることがなかった都市部からの観光客(特にパシュトゥーンの人々)が増え、訪問日が選べるなら「週末は避けた方がいい」くらいの賑わいを見せています。

 

バンデ・ハイバット

ボートライドが大人気。アフガン国内の観光客にとってバンデアミールのボートライドは Must to do アクテビティです。

 

バンデ・ハイバット

バンデ・ハイバットの高さ12mの天然のダム。バンデアミールの湖を隔てる壁(天然のダム)はトラバーチンという炭酸カルシウムで構成されています。岩だらけの地形にある断層や亀裂から染み出したミネラル豊富な水が長い時間を経て固まったトラバーチンの層を堆積させ、このような天然のダムを作り上げました。

 

バンデ・ハイバットの魚

バンデ・ハイバットの魚、種類はわかりません。バンデ・ハイバットは6つの湖の中で一番深く、ニュージーランドの潜水チームによる調査に深さ150mほどあるそうです。

 

バンデ・ハイバットからあふれ出る水

バンデアミールには全部で6つの湖があります。そのうち、バンデ・カムバールはほとんど干上がっています。

 

Band-e Zulfiqar  バンデ・ズルフィカール(アリーの剣の湖)

Band-e Haibat バンデ・ハイバット(おそれの湖)

Band-e Gholaman バンデ・グラマーン(奴隷たちの湖)

Band-e Qambar バンデ・カムバール(アリーの馬丁の湖)

Band-e Panir バンデ・パニール(チーズの湖)

Band-e Pudina バンデ・プディナ(はっかの湖)

 

バンデ・ハイバットのほとりにはハズラット・アリが一夜を過ごした場所として聖地になっている祠があり、昔から湖へ巡礼に訪れる人々がいました。巡礼地から一大観光地へ様変わりしました。

 

バンデ・ハイバットとバンデ・パニールの間の天然のダム

バンデ・ハイバット(左)とバンデ・パニール(右)、バンデ・プディナ(右中央上)の間にある天然のダム(トラバーチンの堆積物)。

 

バンデ・パニール、バンデ・プディナ

この写真は10年ほど前のバンデ・パニール、バンデ・プディナの写真です。今は地形が変わったように思われます。そして観光客用の施設も作られました。

 

湖の間の遊歩道

バンデ・パニール、バンデ・プディナの間にできた遊歩道。バンデ・ズルフィカールまで続きます。

 

バンデ・パニール

バンデ・パニール の周りに建てられたピクニック用の小屋。国内観光客にとってバンデアミールのピクニックは憧れです。

本当に美しいバンデアミール、週末ともなると大変にぎわう大観光地になりました。ただ、国内観光客の残すゴミや食べ物の残りを洗ったりする水質汚染が大変心配されます。

ところで、バンデアミールへの道では地元のハザラの人々が移動する様子など大変美しい光景に出会うことがあります。

 

ロバに乗って移動するハザラの家族。荒涼とした風景の中に赤色が映えます

 

燃料となる草を運ぶ

 

絶景バンデアミール、そこに生きるハザラの人々。アフガニスタンは常に大きな変化の中にありますが、アフガニスタンに暮らす全ての民族が平和に暮らせることを願います。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

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カテゴリ:- バーミヤン渓谷 > ◇ 番外編 アフガニスタン
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