シムシャール・パミールトレッキングとミングリク・サール(6,050m)登頂 Part-2

ミングリク・サール山頂付近から望むヒスパー・ムスターグ山脈
ミングリク・サール山頂付近から望むヒスパー・ムスターグ山脈

2024年8~9月にかけてのシムシャール・パミールの山旅、後編はミングリク・サール(6,050m)登頂からシムシャール村に戻るまでの道のりをたどります。

>>前編はこちら

 

■トレッキング7日目 ミングリク・サールB.C.(4,730m)→ミングリク・サール(6,050m)登頂

深夜、ファースト隊、セカンド隊それぞれミングリク・サールB.C.を出発です。外気温は-7℃。トランシーバーでコンタクトをとりながら進みます。ヘッドライトで足場を確かめながら進みます。そしてガレ場+ザレ場の急登を一歩一歩登っていきます。

 

ヘッドランプで足場を確かめながら進みます。
ヘッドランプで足場を確かめながら進みます。

稜線上(約5,320m)に到着。その後、ファースト隊とセカンド隊が合流し、セカンド隊が追い越してゆきます。やがて日が昇り景色も変わりました。岩の稜線を終え、雪面の直登取り付き点に到着。

 

背後を振り向くと素晴らしい山並みが!
背後を振り向くと素晴らしい山並みが
ガレ場の急登稜線を越えると、まもなく雪面へ
ガレ場の急登稜線を越えると、まもなく雪面へ

ここでアイゼンを着用し、アンザイレンして頂を目指します。先頭を歩くガイドがキックステップでトレースをつけてゆきます。素晴らしい山並みを背後に一歩一歩頂上を目指します。右手にK2も見えてきました!

 

一歩一歩着実に頂上を目指す
一歩一歩着実に頂上を目指す
果てしなく感じた頂上への登り 前方に先行したセカンド隊
果てしなく感じた頂上への登り 前方に先行したセカンド隊
山頂付近より ヒスパー・ムスターグ山脈の素晴らしい展望
山頂付近より ヒスパー・ムスターグ山脈の素晴らしい展望
遂に、ミングリク・サール(6,050m)登頂!!!
遂に、ミングリク・サール(6,050m)登頂
絶景を噛みしめます
絶景の中で

下山時は固く締まっていた雪が柔らかくなり、下りやすくはなっていましたが、油断は禁物です。歩一歩下ってゆきます。眼下にB.C.が見えるのですが、遥か遠くに感じられました。

 

慎重に下ります
下山時の景色

転倒や落石に神経を張り巡らせながら下り、全員がB.C.に戻ったのは、まもなく日が沈む頃…。長時間お疲れ様でした!

 

■トレッキング8日目 ミングリク・サールB.C.(4,730m)→アルバ・プリエン(3,900m)

朝、ヤクの鳴き声で目が覚めました。
前日に引き続き快晴の空のもと、下山開始です。往路と同ルートを引き返していきます。

 

ミングリク・サールB.C.の朝
ミングリク・サールB.C.の朝
アルバ・プリエン(3,900m)を目指す
アルバ・プリエン(3,900m)を目指す

シュイズへラブへの下りでは、左手にシスパーレ(7,611m)西壁が見えました。

 

シスパーレ(7,611m)西壁
シスパーレ(7,611m)西壁
往路で歩いたルートを引き返す
往路で歩いたルートを引き返す

往路同様にチコールにて昼食。ポーターも、ロバ、ヤクたちも皆リラックスムードで休憩しています。

 

チコールにて休憩 リラックスムードが漂う
チコールにて休憩 リラックスムードが漂う

落石地帯を無事に越え、夕方、赤土が目立つキャンプ地へ到着。標高4,000m以下に入り、一気に空気が濃く、そして暖かく感じられました。

 

■トレッキング9日目 アルバ・プリエン(3,900m)→パスト・フルズィン(3,550m)

凹んだ沢地形のキャンプ地からひと登りして、核心部へと向かいます。登りより難しい下りの危険箇所が待っているので、緊張感が漂います。

 

パスト・フルズィン(3,550m)へ
パスト・フルズィン(3,550m)へ

プリエン・サール(3,850m)からプリエン・ベンへの下り、そこからウッチ・フルズィン手前の吊り橋まで、マンツーマンサポートで着実に下りていきます。視界に下部が入ってくることで、足元も、メンタル的にもキツいルートが続きましたが、無事に全員通過。

 

緊張感のある下りが続く
緊張感のある下りが続く

後は引き続きパスト・フルズィン(3,550m)まで細い崖道を歩きました。

 

高度感のある細い崖道
高度感のある細い崖道
パスト・フルズィン(3,550m)のキャンプ地
パスト・フルズィン(3,550m)のキャンプ地

パスト・フルズィン(3,550m)キャンプ地に到着。翌日はトレッキング最終日です!

 

■トレッキング10日目 パスト・フルズィン(3,550m)→シムシャール村(3,100m)

登頂日以降、天気は回復し晴天のもと、最後の行進です。忍耐強く崖道を進み、ようやく前方視界が広がってきて、初日のキャンプ地ガーレ・サール(3,670m)に到着。ここから川までは、各自好きなペースで歩いていきました。

 

トレッキング最終日。シムシャール村(3,100m)へ!
トレッキング最終日。シムシャール村(3,100m)へ
崖道を進む
スライディングエリアを歩く
初日のキャンプ地ガ ーレ・サールに到着
初日のキャンプ地ガーレ・サールに到着

そしてついにシムシャール村が見えてきました!崖道も終えて、川原まで下っていきます。小屋での最終ランチの後、のんびりと平坦道を歩き村へ向かいました。

 

川のむこうはシムシャール村!
川のむこうはシムシャール村!

長かったようで短かったシムシャール・パミールの山旅。アプローチの険しさと高所キャンプの寒さを名残惜しみながら村に到着。大きなバケツでお湯をもらい、心身ともにリフレッシュしました。

 

コーラで乾杯の準備
コーラで乾杯の準備

夕食時には、お世話になったガイドやポーターたちが訪問してくれ、お別れの場を設けることができました。

 

お別れの儀
お別れの儀

長い様で一瞬で過ぎた10日間のトレッキング。決して容易ではない山行でしたが、山頂からの展望は格別で、苦労の末の達成感は大きく、この場所・このルートでしか決して味わうことのできない特別な体験となりました。

 

Photo & Text : Osamu KUSUNOKI

Visit : August 2024, Shimshal Pamir, Shimshal, Gilgit-Baltistan

 

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シムシャール・パミールトレッキングとミングリク・サール(6,050m)登頂 Part-1

シュイズへラブで放牧されるヤクたち
シュイズへラブで放牧されるヤク

2024年8月下旬から9月にかけてシムシャール・パミールの6,000m峰を目指した山旅の記録です。場所は「カラコルムの空白地帯」とも称され、トレッカーが訪れることも稀なシムシャール・パミール。私自身、2011年の夏に初めて訪問して以来、毎年のように“帰省”している場所です。

 

この地域は厳しい自然の中で放牧地を移動しながら、ワヒ族がヤギ、羊、ヤクを放牧しています。かつては移動しながら女性達が夏を過ごし乳製品を作っていましたが、暮らしの近代化が進み今は行われなくなてしまいました。(過去のシムシャールの夏の暮らしはこちらの記事をご覧ください。

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「シムシャール・パミール」の旅では、ワヒ族の夏の放牧地の暮らしにふれることができます。実際のところ、シムシャール村を出発しこの「夏の放牧地」を訪れるだけでも十分ハードなトレッキングですが、さらにその先に待つ6,000m峰への登頂は達成感が大きく、とても満足度の高いルートです。

 

トレッキングルート
トレッキングルート

■トレッキング1日目 シムシャール村(3,100m)→ガーレ・サール(3,670m)

初日はシムシャール村からガーレ・サール (3,670m)を目指します。小さな吊り橋(Michael Bridge)を渡り、ヤズギール氷河のエンドモレーンを眼前に望みながらシムシャール川沿いを直進。平坦な道ではありますが、川岸の大きい石がゴロゴロしていて歩きにくい箇所もあります。今回は川の水量が多く、ヤクは対岸からロープを渡して、引っ張って渡らせていました。

 

ヤクに乗って移動することもできます。「ヤク・サファリ」と呼ばれています。
ヤクに乗って移動することもできます。「ヤク・サファリ」と呼ばれています。
ヤズギール氷河のエンドモレーンを眼前に望みムシャール川沿いを直進
ヤズギール氷河のエンドモレーンを眼前に望みムシャール川沿いを直進

シムシャール川と支流のパミール・タング川が合流するポイントの橋で川を渡り、その先の小屋で昼食。この後から急登が始まります。まだ登り慣れていない足腰には堪えます…。

 

急登が始まります
急登が始まります

徐々にヤズギール氷河を見下ろす角度が変わり、しばらくして展望のよいキャンプ地に到着です。日が落ちると、シムシャール村の夕景を見ることができました。

 

展望のよいキャンプ地に到着
展望のよいキャンプ地に到着

■トレッキング2日目 プリエン・サール(3,850m)へ

ここからは絶壁、ランドスライド地帯など少々危ない箇所を歩きます。緊張感が高まると一層疲労が増します。やがて、急な谷を下りるとパスト・フルズィン(3,550m)のキャンプ地がみえてきました。さらに崖道を進み、休憩場所となるウッチ・フルズィン(3,365m)に到着。

 

谷を見下ろしながら歩く
谷を見下ろしながら歩く
ウッチ・フルズィンにて休憩
ウッチ・フルズィンにて休憩

吊り橋を対岸へ渡り、危険なトラバースを進みプリエン・ベン(3,596m)へ。緊張が続くルートですが、無事に谷を見下ろすポイントまで辿り着きました。

 

吊り橋をわたり対岸へ
吊り橋をわたり対岸へ
危険なトラバース
急な斜面のトラバース
プリエン・ベンを見下ろす展望地から、右上のコル(パスト・ダルワザ)まで ジグザグに急斜面を登る先行ポーター組を眺める
プリエン・ベンを見下ろす展望地から、右上のコル(パスト・ダルワザ)まで ジグザグに急斜面を登る先行ポーターを眺める

いよいよ、高低差約320mの急な登りに差し掛かります。足を滑らすことのないよう、スタッフと共にマンツーマンで一歩一 登ります。

 

標高差約320mの登り
高低差約320mの登り

無事に登りきった先は、石で作られた門のあるパスト・ダルワザ(下の門)。さらに石と木の階段を手を使いながら登り、ウッチ・ダルワザ(上の門)へ。宿泊地プリエン・サール(3,850m)に到着です!アプローチの核心部を無事に越えました。そして前方にはミングリク・サールの頭が見えてきました。

 

パスト・ダルワザ(下の門)
パスト・ダルワザ(下の門)
プリエン・サールのキャンプ地 左奥にはミングリク・サール(6,050m)の頂上がみえる
プリエン・サールのキャンプ地 左奥にはミングリク・サール(6,050m)の頂上がみえる

■トレッキング3日目 シュイズへラブ(4,350m)へ

今日は夏村シュイズヘラブを目指します。朝、ホワイトホルン(6,400m 左)とディスタギル・サール(7,885m)が太陽の光を浴びて、輝いていました。

 

朝日に輝くディスタギル・サール(7,885m)とディスタギル・サール(7,885m 影がついている奥の峰)
朝日に輝くディスタギル・サール(7,885m/左)とディスタギル・サール(7,885m/影がついている奥の峰)

前日とはうってかわって広々としたルートを進んでいきます。アルバ・プリエン(復路のキャンプ地)を経て進み、シュイズヘラブの川とガンジ・ドールの川との合流地点を越えていきます。

 

川の合流地点を目指す
川の合流地点を目指す

柳の木が生えるチコールで昼食。シュイズへラブ川沿いに進み、夏村が近付いてくると放牧されているヤクたちの姿が現れました。シュイズへラブはシムシャール村から移牧して登ってきたヤギや羊、ヤクが放牧されながら夏を過ごす村です。

 

チコールでパスタランチ
チコールでパスタランチ
ヤクの親子
ヤクの親子

■トレッキング4日目 シュイズヘラブ(4,350m)滞在

休養日です。ヤクの乳絞りや夏の住居の訪問などワヒ族の夏のパミールの暮らしを見学。ヤクは、ヤギ、羊とは異なり迫力があります。

 

家畜とともに生きるワヒ族の暮らしを見学
家畜とともに生きるワヒ族の暮らし
ヤクの乳絞り体験
ヤクの乳絞り
ヤクミルク
ヤクミルク

その後高所順応も兼ねて、隣丘のグルチンワシュク・サム(4,600m)までハイキング。標高差250mの登りです。上部では登頂日のガレ場登りの練習になりました。

 

グルチンワシュク・サムの丘にて
グルチンワシュク・サムの丘にて
登頂日のアンザイレン下山練習を兼ねて高所順応
登頂日のアンザイレン下山練習を兼ねて高所順応

■トレッキング5日目 シュイズヘラブ(4,350m)→ミングリク・サールB.C.(4,730m)

ミングリク・サールB.C.まで約3~4時間の道のりです。途中、ミングリク・サールを左手に通り過ぎます。角度によってはなだらかな山に見え、山麓にはザック・ゾーイ(小湖)とルップ・ゾーイ(大湖)の2つがあります。今回はザック・ゾーイ沿いにB.C.を設置しました。

 

ザック・ゾーイ沿いにB.C.を設置
ザック・ゾーイ沿いにB.C.を設置

天気予報では翌日から回復に向かうとのことだったので、もう1日高所順応日を設けることとしました。その間、シュウェルトで4万ルピーで購入してきた羊を捌き、日本風カレーでいただきました。

■トレッキング6日目 ミングリク・サールB.C.(4,730m)滞在

夜から雪が降り積もり、ベースキャンプは雪景色へと様変わりしました。気温も氷点下となり冷え込んできました。今日は動けないかと思っていましたが、雪が止んだので登頂ルートの視察も兼ねて高所順応トレッキングに出かけました。太陽が出て、どんどん天気が回復に向かっている様子が見てとれます。地面の雪もどんどん融けてゆきました。

 

高所順応トレッキングに出発!
高所順応トレッキングへ
高所順応途中(約4,000m)にB.C.方面を振り返る。
約4,000m付近でB.C.方面を振り返る。

午後は、装備チェックをしたり、ゆったりと過ごしました。体を動かしたいメンバーはさらに奥の村シュウェルト(4,670m)まで訪問しました。

 

ウスユキソウ属の花も逞しく咲いている
ウスユキソウ属の花
B.C.(4,730m)から望んだミングリク・サール(6,050m)
B.C.(4,730m)から望んだミングリク・サール(6,050m)

ミングリク・サールもはっきりと確認でき、士気も高まります。

後編へつづく。

 

 

Photo & Text : Osamu KUSUNOKI

Visit : Aug-Sep 2024, Shimshal Pamir, Shimshal, Gilgit-Baltistan

 

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