秋のデオサイ国立公園ワイルドライフキャンプ ヒマラヤヒグマを求めて

秋、冬眠前のヒマラヤヒグマを求めてデオサイ国立公園へ。秋深まる高原のワイルドライフレポートです。

アストール側のチラム・チェックポストからデオサイ国立公園へ入りました。入り口にはとても美しい夏のヒマラヤヒグマの写真が。

 

チラムのチェックポスト/国立公園の入口にて

チラムの国立公園入口から高原までどんどん高度を上げていきます。途中、野鳥の観察。今回、高原で観察できた野鳥は少なく、一番種類が多かったのがチラムからシェオサル湖までの登り途中でした。

 

ベニヒタイセリンの幼鳥 アストール渓谷からデオサイ高原への道中でよく見かけます
シベリアノビタキ 秋の渡り
ムネアカイワヒバリ アスト-ル渓谷からデオサイにかけて見られ、冬は標高2,000m付近に移動します

ナンガパルバットが見えシェオサル湖に近づいたとき、前方に犬らしき動物の姿が。同行スタッフに「ここって犬が来る?」と聞くと、「いや、民家は遠いしここには来ないでしょう、見間違いじゃない?」と。しばらくあたりを探しましたが見つかりません。やはり見間違いかと思い、シェオサル湖畔へ。そこに、この動物がいました。オオカミです。デオサイ高原ではヒグマを見るより難しい、チベットオオカミ!

 

チベットオオカミ 中型のオオカミでハイイロオオカミの亜種。チベットやヒマラヤ地域に生息しています
チベットオオカミ

このオオカミは群れではなく一匹で行動していたようです。この後、デオサイ高原滞在中に2回チベットオオカミを遠くに観察する機会がありましたが、いずれも単体でした。国立公園スタッフも、5日間の滞在で3回もオオカミを見るのは異例で、冬眠前のマーモットを狙って活発に動いているのではないかと推測していました。

デオサイ高原に入ると、シェオサル湖、カラパニを経てバラパニのキャンプ地へ。

 

シェオサル湖(4,200m)から見る、世界第9位峰の高峰ナンガパルバット(8,126m)
オナガマーモット

シェオサル湖付近はパキスタン国内観光客が多く、餌を期待するオナガマーモットが現れます。相当人に慣れている個体もおり、国立公園当局は野生動物に人間の食べ物を与えないようにもっと厳しく注意するべきです。

 

バラパニの私たちのキャンプ。レンジャースタッフの施設エリアに設立したプライベートキャンプです。夏は山で活躍しているIndus Caravanのキャンプチームがテント、ダイニングテント、トイレテントを設立してくれました。テントの前には川が流れ大自然の中での滞在です。

 

冬の渡り鳥オオズグロカモメ いつもテントの前の川にいました
毎朝、川にはカワアイサのペアの姿 。カワアイサも冬の渡り鳥です
デオサイ高原を歩く。遠くに見える雪山はナンガパルバット(8,126m)

ヒマラヤヒグマの観察はその確率が高い場所が何か所かありますが、いずれの場所も歩かないと近くで見ることはできません。標高4,000mを越える高原を歩くのは決して楽ではありません。そしてヒマラヤヒグマは大変臆病で、2キロ先に見つけても風向きが悪いと私たちの臭いを感知し、あっという間に遠ざかっていきます。

 

ヒマラヤヒグマ

ヒマラヤヒグマの雄の姿を確認。気づかれないように遠くから撮影。この個体は風向きが良くなく遠くからの観察だけになりました。そしてこの個体の奥にいた親子グマにすこし近づいてみることにしました。

 

ヒマラヤヒグマの親子、なんて愛らしい光景!
デオサイ高原を歩く

高原を歩くのは大変です。湿地帯や草の下に隠れる凹凸に気をつけながら進まなければなりません。

 

ヒマラヤヒグマ

ヒマラヤヒグマはヒグマの亜種でインド・パキスタン・アフガニスタンの北部山岳地帯に生息し、デオサイ国立公園の最後のセンサス(2022年)で77頭が確認されています。2023年の秋に3頭に発信機が取り付けられ、それまで不明だった冬眠場所もわかってきました。3頭のうち2頭はアストール渓谷へ下り冬眠し、1頭はデオサイ高原のバラパニ付近で冬眠していました。

 

ヒマラヤヒグマ

風が味方してくれました、ヒグマの方からこちらへ近づいてきました。「何かがいる」とわかっているようで興味をもってこちらを見ています。

 

愛らしい見た目のヒマラヤヒグマ
高原でのピクニックランチ

観察チーム、高原でのランチ。おにぎりを作って行ったら「Japan’s アニメフード」と言われました。動物好きのスタッフは、日本のアニメも大好きでした。

ところで、ヒマラヤヒグマはとても臆病で遠くからしか観察することができないこともあります。下の写真の中央の小さな黒い点がヒマラヤヒグマです。でも、夜は大胆にもキャンプにやってくるのです。

 

中央の小さな点がヒマラヤヒグマ
夜、キャンプにやってきたヒマラヤヒグマ

キャンプ地に現れたヒマラヤヒグマ。人がいないと食料を探してキャンプに近寄ってきます。ライトで照らしてもすぐに逃げることもなく、昼はあんなに臆病なのに夜はこんなに堂々として・・・。暗闇でこちらから見えていないと思っているのでしょうか・・・。4泊したすべての夜にヒマラヤヒグマはやってきました。しかも、毎日異なる個体でした。事故を防ぐために国立公園のキャンプ地の食料とゴミの管理が急務です。

 

Text & Photo: Mariko SAWADA

Visit: Sep 2024, Deosai National Park-Gilgit Baltistan

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夏のデオサイ高原にヒマラヤヒグマを求めて

2022年の夏のヒマラヤヒグマの観察は苦労しました。国立公園のスタッフと歩き、探し、「どうしていつもの場所にいないのか」と頭を抱えました。

最初に思いついた原因は「観光客の増加」。しかしそれは今年だけのことではありません。次が、遊牧で暮らす人々がデオサイ高原のヒグマエリアに家畜を持ち込んだこと。これはさすがに影響があるはずです。しかし、ヒグマのコアゾーンにもいない・・・大きな理由はやはり、積雪の少なさによる「乾燥」に起因すると考えられます。ヒグマの好物の草が、いつもの場所に育たず、餌をもとめて移動してしまった・・・というのが国立公園スタッフの意見でした。

残念ながら、ヒマラヤヒグマはその生態についてほとんど研究されていません。正直なところ、発表されている個体数も正確なものではないでしょう。

 

一番楽して見れる可能性がある場所が、バラパニの国立公園詰め所の奥にある「ウォッチング・ポイント」。運がいいと近くの丘を歩くヒグマの親子の姿を見ることができますが、距離は遠く、双眼鏡かスコープがあったほうがいい場所です。

 

今回の滞在中、ヒマラヤヒグマを求めて4か所のヒグマエリアを歩きました。途中、デオサイ高原のあちこちから見える世界第9位の高峰、ナンガパルバット Nanga Parbat (8,216m)の南東からの山容です。

 

ヒグマがねぐらに使っていたくぼみです。大きなくぼみと小さなくぼみ。親子ヒグマのもののようです。

 

糞も大きな糞(母グマ)と小さい糞(子熊)が大量にありました。ただ、国立公園スタッフによると、一番新しいものが3~4日くらい前でその後の新しいものはないと。この親子ヒグマもこの場所を去ってしまったようです。

 

コアゾーンと呼ばれるエリアで、スキャン。ようやくヒマラヤヒグマを見つけました。

 

とっても若いヒマラヤヒグマです!

 

私たちのにおいがしたのでしょう、立ち上がって、私たちを探し始めました。

 

もう、私たちの存在に気が付いてしまいました。この後は、遠ざかる一方です。

 

草原を走って見えなくなってしまいました。まだかなり若い個体なので近くに母グマがいたのか、それとも別れたばかりなのか。無事に育ってくれることを祈ります。

 

別の大きなヒマラヤヒグマがいました、夢中で食べています。

 

食べるのに夢中でなかなか顔を上げてくれません。食べている間に少しづつ距離を詰めていきました。風向きは反対、チャンスです。

 

ヒマラヤヒグマ撮影中。

 

こちらのことは気づくことなく草を食むヒマラヤヒグマ。高山植物の花に囲まれ、キガシラセキレイがヒグマの周りで虫を捕食する、自然な光景を見ることができました。

 

これまでも何度かヒマラヤヒグマの観察チャレンジしてきましたが、今回が一番歩き、探すのに苦労し、そして異常気象がデオサイ高原の乾燥とヒマラヤヒグマに与える影響が恐ろしくなりました。

 

いつもはみずみずしい緑と花で覆われたデオサイ高原が、この夏は乾いた大地が露出し、そこを無数の観光客の車が砂埃をあげながら走る光景は、デオサイがいつか砂漠になってしまうのではないかと心配させられる光景でした。

 

Image & Text : Mariko SAWADA

Observation : JUL 2022, Deosai National park, Gilgit-Baltistan

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