ユキヒョウ遭遇 vol.01(クンジュラブ国立公園 )- SNOW LEOPARD EXPEDITION

クンジュラブ国立公園の標高4,300m付近のユキヒョウ

 

クンジュラブ国立公園内を走るカラコルム・ハイウェイはコクサルから標高4,000mを越え、クンジジュラブ峠付近(約4,700m)まで一気に標高を上げていきます。その登りカーブの走行中に見つけた、ユキヒョウでした。

 

走行中に窓からユキヒョウを探していたフサインさんが「ちょっと車バックして」「ユキヒョウがいる、近い、近い、獲物を狙っている」と。私にはすぐに見つけることができませんでした。「近い、近い」と言われても、どのくらいの近さなのか・・・自分の視力を恨みました。

 

ようやく見えた、ユキヒョウ。50m+くらいの距離だったでしょうか。後ろ向きでカモフラージュ。後でわかったことですが、この岩場の下に傷ついたヤクがおり、そのヤクを狙っていたようでした。このユキヒョウはまだ私たちに気が付いていません。

 

私たちの存在に気が付きました、フセインさんが「もうすぐにいなくなるから、写真撮りきってしまいなさい」と。なんと恵まれた構図のユキヒョウの姿でしょう。

 

そして10秒もしないうちに、視界から姿を消しました。

 

ユキヒョウの獲物となる動物たちは敏感です。このユキヒョウが動いたとたん、ヤクが一斉にその方向を注視。

 

ユキヒョウの気配のする方向を見るアイベックス。群れが集まって警戒態勢に入っていました。

 

このアイベックスの群れ、しばらくユキヒョウの方を見ていましたが、私たちの方に近づいてきて、こちらを向いて座りました。その様子は「何かあったら助けてね」と言ってるようでした。

 

Photo & text :Mariko SAWADA

Observation : April 2021, Khunejrab National Park, Gilgit-Baltistan

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岩に描かれたユキヒョウ(インダス河畔、チラス)

パキスタン北部のインダス川(ギルギット川・フンザ川)流域、特にシャティアールからフンザにかけての河岸の岩場には多くの岩刻画が見られ、その数は5万点を越えると言います。

古いものは紀元前に遡り、狩猟の様子やアイベックスが描かれ、後にシルクロードを旅した商人や巡礼者、侵略者まで様々な人々によって「岩絵」は刻まれてきました。チラス周辺のインダス河畔はまさに「岩刻画ギャラリー」。一般のツアーでは移動途中に道沿いにある仏教徒が描いたものを見ますが、今回は「岩に描かれたユキヒョウ」を探してみました。

 

外国人ツーリストが良く使うホテル、チラスシャングリラホテルからほど遠くないカラコルムハイウェイ上から見ることができる「アイベックスを追うユキヒョウ」。

 

地元の仏教のイメージを嫌う人により岩刻画には、石灰のようなものが塗られていました。岩刻画を傷つけないように洗ってきれいにしました。

 

耳と体はオオカミっぽいフォルムですが、長くて太い尻尾はしっかりユキヒョウです。

 

カラコルムハイウェイ沿いの岩刻画は、地元の人たちによりペイントで消されたりしてかなりのダメージがありますが、橋を渡った反対側の河岸はこういった被害が少なく、比較的良い状態で岩刻画を探すことができました。

 

仏塔を描いた岩刻画。初期の岩刻画は固い石で刻まれましたが、仏教巡礼者の時代のものはノミを使って繊細な表現がなされています。「ガンダーラ」を目指した巡礼者たちはここでインダス川の水位が下がり渡渉できるのを待つ間、仏陀や仏塔のイメージを刻んだのでしょう。

 

仏教徒だけでなく、いろんな民族・宗教の人がこの地を越えていきました。これはアイベックスを仕留めた人物像、中央アジアから来た人でしょうか?

 

そしてこれは・・・ある資料には「神話の生き物」と説明がありましたが、角はマーコールですね!

 

無数の絵が刻まれた岩。

 

見えにくいですが、獲物を襲うユキヒョウ。

 

そしてこれは、さらにわかりにくいのですが、崖でアイベックスを襲うユキヒョウを描いたものです。「崖」を岩のキャンバスに描いている珍しいデザインです。そしてこの崖はなんと2匹の蛇なのです。古代のアーティストの観察力・発想に頭が下がります。

右がアイベックス、左がユキヒョウ。

 

今回は2時間歩いて3つのユキヒョウの岩刻画を見つけることができました。

残念なことに、このチラス周辺の岩刻画は、あと数年で完成するディアメールバシャダムにより水没してしまいます。一部の有名な岩刻画は移設されると聞いていますが、多くはこのまま永久に失われてしまうのです。

古代の人が描いた野生動物の姿とその時代を生きた証。何とか保存できないものでしょうか。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Visit : April 2021, Chilas, Gilgit-Baltistan, Pakistan

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(動画)アカギツネの狩り(クンジュラブ国立公園)

春、標高4,000mを越えるクンジュラブ国立公園の山の斜面も雪が解け、野生動物の動きが活発になります。

ネズミ(ナキウサギ?)を捕まえるアカギツネの狩りの様子です。ジャンプして雪に垂直にダイブしたり、獲物が「死んだふり」したり・・・。雪解けのカラコルムで見た野生動物の営みです。

 

A Red fox hunting  / 狩りをするアカギツネ

 

Videography : Mariko SAWADA

Observation : April 2021, Khunjerab National Park, Gilgit-Baltistan

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冬眠明け!春を迎えたオナガマーモット(クンジュラブ国立公園)

4月半ば、クンジュラブ峠付近の4,000mを越える高地の斜面には日光を浴びるオナガマーモット Long-tailed Marmot の姿が。滞在中、ちょうど冬眠明けの時期に当たったようで日に日にその数が増えていきました。

 

巣穴での可愛らしいオナガマーモットの様子です。

 

Long tailed Marmots in spring

 

Videography : Mariko SAWADA

Observation : April 2021, Khunjerab National park, Gilgit-Baltitstan

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(動画)杏の花咲くカイバル村

4月下旬、例年より遅れて杏の花が満開となった上部フンザのカイバル村の景色です。上部フンザにも開発の波が押し寄せています。いつまでもこの美しい村の景色が続くことを望みます。

 

Apricot Blossom in Khyber / 杏の花咲く北部パキスタン

 

Videography : Mariko SAWADA

Visit : April 2021, Khyber, Gilgit-Baltistan

Special Thanks : Hunza Hill-Gah – Khyber

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カワビタキ Plumbeous water redstart (チトラル)

カイバル・パクトゥンクワ州のチトラルに近いトゥーシ・シャシャ保護区(Tooshi-Shasha conservancy)の河原で見つけたカワビタキのオスです。

 

この日はあいにくの雨。その雨も雪に変わろうとしていました。マーコール Markhor の観察のために訪れ、午後に河原に来ることが多いよ、と言われ待機。その間に、カワビタキ Plumbeous water reed startとシロボウシカワビタキ White-capped water redstartを観察することができました。

 

尾羽を広げたカワビタキのオス。

カワビタキは南アジア、東南アジア、中国の標高2,000m~4,000m付近で繁殖し、冬は少し低いところへ降りてきて越冬します。パキスタンでは北部の標高があまり高くない山岳地帯で見られ、チトラル付近やマリーでは多いようです。

 

川の上の山の斜面を見ると、カシミール・マーコールの群れが。しかも立派な角のオスがいます!

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation :Dec 2020, Tooshi-Shasha conservancy, Chitral, Khyber Pakhtunkhwa

Reference : Helm field guides “Birds of Pakistan”

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ユキヒョウ遭遇!カラコルム・ハイウェイ

ユキヒョウを求めてやってきたパキスタン北部。アイベックスやハゲワシの観察をしながらカラコルム・ハイウェイを移動していました。

クンジュラブ国立公園内では道路上にも、河原の雪原にもたくさんのパグマークが。カラコルム・ハイウェイ上で、親子のユキヒョウが寝ていた跡や子供がかじって遊んでボロボロになったペットボトルも見つけました。人が通らない夜間や早朝のカラコルム・ハイウェイにユキヒョウがやってくるようです。

 

ユキヒョウの足跡だけがある吊り橋です!ユキヒョウは川幅が狭い場所や凍った場所を使って川を渡りますが、橋があるなら当然利用します。

 

昼頃、カラコルム・ハイウェイを走行していると、ガイドが「レオパード(Leopard)!」と叫び、車を止めて外へ。「ビスミッラー、ビスミッラー(Bismillah、Bismillah:神の御名において)」と見つめるその先にはユキヒョウの姿が。

 

道路のすぐそばの岩の上に座っていましたが、我々を見て歩き始めました。

ガイドが「シャウバシ、シャウバシ(Very goodとかWell doneという意味のワヒ語)」と喜んでいます。ユキヒョウガイドのプレッシャーが解けた瞬間です。

 

それにしても歩くのが早く、移動するユキヒョウに追いつくのが大変です。標高3,300mほどですが、興奮もあり息切れ。カメラを持つ手も震えます。

 

雪の上を歩くユキヒョウ。ユキヒョウの観察は、意外と岩が背景であることが多いので、雪の上のユキヒョウを観察できるのはうれしいものです。

 

どんどん登って遠くなっていきます。

 

さらに移動を続けます。草と重なると見失ってしまいそうになります。

 

数秒、こちらに顔を見せてくれました。これが最後の姿。岩場を歩き始め、姿が見えなくなりました。

 

最後の最後まで、ユキヒョウの姿を追った私たち。

 

スストに戻ったのは午後2時30分。遅いランチです。この日はスタッフたちの祝杯で(お酒はありません!)、ヤク肉メニューのオンパレード。ヤクのマントゥ(スストと接する新疆ウイグル自治区、中央アジアの料理)にヤクのニハリ(インド亜大陸の料理で牛のスネ肉と骨髄と煮込んだ料理)など、ヤク肉のフュージョン料理をみんなで楽しみました。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Dec 2020, Khunjerab National park, KVO area, Gojar, Gilgit-Baltistan

Special Thanks :  TOMO Akiyama and  Hussain Ali, Abul Khan

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セアカジョウビタキ Eversmann’s redstart(チトラル・ゴル国立公園)

セアカジョウビタキ Rufous-backed Redtart (Eversmann’s Redstart) はパキスタン北部の山岳地帯、標高1,500~2,500mほどの場所で見られる冬鳥。ギルギット・バルティスタン州からカイバル・パクトウンクワ州のチトラル周辺の山の斜面などで見られます。写真はオスのセアカジョウビタキ。

 

夏に中央アジアや南シベリアの標高の高い山岳地帯で繁殖しますし、冬はイラン・イラク南部、アラビア半島、パキスタン北西部、インド北西部で越冬します。

 

観察したのはチトラルの北にある、チトラル・ゴル国立公園 Chitral Gol National park。マーコールの観察のために訪れていましたが、山の斜面で待っている間にセアカジョウビタキを観察することができました。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Dec 2020, Chitral Gol National Park, Chitral, Khyber-Pakhtunkhwa

Reference : Helm Field Guide “Birds of Pakistan”

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ヒマラヤハゲワシ Himalayan griffon vulture (チトラル・ゴル国立公園)

パキスタン北部、カイバル・パクトゥンクワ州チトラル・ゴル国立公園のヒマラヤハゲワシです。

7,750ヘクタールのチトラル・ゴル国立公園には3つの深い谷があり、ハゲワシ類の観察には絶好の場所。マーコールの観察のために訪れたのですが、「崖から落ちて死んだマーコールにハゲワシたちが集まっているので見に行かないか」と誘われ、道なき山の斜面を歩き谷を見渡す断崖へ向かいました。

死んだマーコールは見えませんでしたが、谷を飛翔するヒマラヤハゲワシ、クロハゲワシ、そしてヒゲワシやイヌワシの姿が。しかもアイレベルでの飛翔もあり、たまらない光景でした。

 

ヒマラヤハゲワシ Himalayan griffon vulture ( Himalayan vulture) です。大ヒマラヤ山脈と隣接するチベット高原、パミール高原に生息するハゲワシで、パキスタンでは北部山岳地帯で見ることができます。

翼を広げると3mにもなる大きなハゲワシで、かつてはパキスタン北部で広く見られたそうですが、パキスタン中南部に生息するベンガルハゲワシと同様で、獣医薬ジクロフェナクに汚染された家畜の死肉を食べたことにより、その数が減ったと言われています。(※2006年にジクロフェナクは南アジアの国全域で使用禁止され、個体数の回復が期待されています)

 

ヒマラヤハゲワシの成鳥です。若鳥は首毛も含め全体が黒っぽい茶色です。

 

断崖のヒマラヤハゲワシとクロハゲワシ Cinereous Vulture。

 

この日、少なくとも4羽のヒマラヤハゲワシ、1羽のクロハゲワシ、複数のカラス(おそらくワタリガラス)が1頭のマーコールに集まっていました。この死んだマーコール、国立公園のレンジャーの話によるとユキヒョウやオオカミに襲われたのではなく、野犬の群れに追いこまれて崖から落ちて死んだといいます。

確かに、マーコールが一斉に走っているとその向こうに野犬の姿がありました。もしそれがユキヒョウだったら、夢のような光景なのですが。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Dec 2020, Chitral Gol National Park, Chitral, Khyber Pakhtunkhwa

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クロハゲワシ Cinereous Vulture (チトラル・ゴル国立公園)

カイバル・パクトゥンホア州のチトラル・ゴル国立公園で観察したクロハゲワシ Cinereous Vultureです。Cinereousとはラテン語で「灰色の」の意味があり、別の英名では Eurasian Black Vulture とも呼ばれています。

 

クロハゲワシ Cinereous Vulture はユーラシア―大陸中央の山岳地帯に生息する、大型のハゲワシ。ユーラシア大陸のハゲワシとしてはヒマラヤハゲワシ Himalyan Griffon Vulture と並んで大きなハゲワシで、開翼長も2.5~3m近く、羽の幅も広く、ずっしりと重いハゲワシです。

 

クロハゲワシは遠目には、頭の一部とくちばし以外黒く、成鳥は頭の一部と首毛が薄いブラウンで若鳥はより全体に黒くなります。この写真の個体は若い鳥のようですね。

一般的に、クロハゲワシは冬の間は平野部や砂漠に降りてきて、断崖をねぐらとして過ごしますが、この冬の時期に標高3,000mを越える山岳地帯にいるのは、若鳥だからでしょうか。

 

ヒマラヤハゲワシに混じって旋回していましたが、クロハゲワシ、獲物に着陸のようです!

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Dec 2020, Chitral Gol National Park, Chitral, Khyber Pakhtun Khwa

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