シムシャール・パミールトレッキングとミングリク・サール(6,050m)登頂 Part-1

シュイズへラブで放牧されるヤクたち
シュイズへラブで放牧されるヤク

2024年8月下旬から9月にかけてシムシャール・パミールの6,000m峰を目指した山旅の記録です。場所は「カラコルムの空白地帯」とも称され、トレッカーが訪れることも稀なシムシャール・パミール。私自身、2011年の夏に初めて訪問して以来、毎年のように“帰省”している場所です。

 

この地域は厳しい自然の中で放牧地を移動しながら、ワヒ族がヤギ、羊、ヤクを放牧しています。かつては移動しながら女性達が夏を過ごし乳製品を作っていましたが、暮らしの近代化が進み今は行われなくなてしまいました。(過去のシムシャールの夏の暮らしはこちらの記事をご覧ください。Shimshal Pamir シムシャール・パミール ある夏のクッチ

 

「シムシャール・パミール」の旅では、ワヒ族の夏の放牧地の暮らしにふれることができます。実際のところ、シムシャール村を出発しこの「夏の放牧地」を訪れるだけでも十分ハードなトレッキングですが、さらにその先に待つ6,000m峰への登頂は達成感が大きく、とても満足度の高いルートです。

 

トレッキングルート
トレッキングルート

■トレッキング1日目 シムシャール村(3,100m)→ガーレ・サール(3,670m)

初日はシムシャール村からガーレ・サール (3,670m)を目指します。小さな吊り橋(Michael Bridge)を渡り、ヤズギール氷河のエンドモレーンを眼前に望みながらシムシャール川沿いを直進。平坦な道ではありますが、川岸の大きい石がゴロゴロしていて歩きにくい箇所もあります。今回は川の水量が多く、ヤクは対岸からロープを渡して、引っ張って渡らせていました。

 

ヤクに乗って移動することもできます。「ヤク・サファリ」と呼ばれています。
ヤクに乗って移動することもできます。「ヤク・サファリ」と呼ばれています。
ヤズギール氷河のエンドモレーンを眼前に望みムシャール川沿いを直進
ヤズギール氷河のエンドモレーンを眼前に望みムシャール川沿いを直進

シムシャール川と支流のパミール・タング川が合流するポイントの橋で川を渡り、その先の小屋で昼食。この後から急登が始まります。まだ登り慣れていない足腰には堪えます…。

 

急登が始まります
急登が始まります

徐々にヤズギール氷河を見下ろす角度が変わり、しばらくして展望のよいキャンプ地に到着です。日が落ちると、シムシャール村の夕景を見ることができました。

 

展望のよいキャンプ地に到着
展望のよいキャンプ地に到着

■トレッキング2日目 プリエン・サール(3,850m)へ

ここからは絶壁、ランドスライド地帯など少々危ない箇所を歩きます。緊張感が高まると一層疲労が増します。やがて、急な谷を下りるとパスト・フルズィン(3,550m)のキャンプ地がみえてきました。さらに崖道を進み、休憩場所となるウッチ・フルズィン(3,365m)に到着。

 

谷を見下ろしながら歩く
谷を見下ろしながら歩く
ウッチ・フルズィンにて休憩
ウッチ・フルズィンにて休憩

吊り橋を対岸へ渡り、危険なトラバースを進みプリエン・ベン(3,596m)へ。緊張が続くルートですが、無事に谷を見下ろすポイントまで辿り着きました。

 

吊り橋をわたり対岸へ
吊り橋をわたり対岸へ
危険なトラバース
急な斜面のトラバース
プリエン・ベンを見下ろす展望地から、右上のコル(パスト・ダルワザ)まで ジグザグに急斜面を登る先行ポーター組を眺める
プリエン・ベンを見下ろす展望地から、右上のコル(パスト・ダルワザ)まで ジグザグに急斜面を登る先行ポーターを眺める

いよいよ、高低差約320mの急な登りに差し掛かります。足を滑らすことのないよう、スタッフと共にマンツーマンで一歩一 登ります。

 

標高差約320mの登り
高低差約320mの登り

無事に登りきった先は、石で作られた門のあるパスト・ダルワザ(下の門)。さらに石と木の階段を手を使いながら登り、ウッチ・ダルワザ(上の門)へ。宿泊地プリエン・サール(3,850m)に到着です!アプローチの核心部を無事に越えました。そして前方にはミングリク・サールの頭が見えてきました。

 

パスト・ダルワザ(下の門)
パスト・ダルワザ(下の門)
プリエン・サールのキャンプ地 左奥にはミングリク・サール(6,050m)の頂上がみえる
プリエン・サールのキャンプ地 左奥にはミングリク・サール(6,050m)の頂上がみえる

■トレッキング3日目 シュイズへラブ(4,350m)へ

今日は夏村シュイズヘラブを目指します。朝、ホワイトホルン(6,400m 左)とディスタギル・サール(7,885m)が太陽の光を浴びて、輝いていました。

 

朝日に輝くディスタギル・サール(7,885m)とディスタギル・サール(7,885m 影がついている奥の峰)
朝日に輝くディスタギル・サール(7,885m/左)とディスタギル・サール(7,885m/影がついている奥の峰)

前日とはうってかわって広々としたルートを進んでいきます。アルバ・プリエン(復路のキャンプ地)を経て進み、シュイズヘラブの川とガンジ・ドールの川との合流地点を越えていきます。

 

川の合流地点を目指す
川の合流地点を目指す

柳の木が生えるチコールで昼食。シュイズへラブ川沿いに進み、夏村が近付いてくると放牧されているヤクたちの姿が現れました。シュイズへラブはシムシャール村から移牧して登ってきたヤギや羊、ヤクが放牧されながら夏を過ごす村です。

 

チコールでパスタランチ
チコールでパスタランチ
ヤクの親子
ヤクの親子

■トレッキング4日目 シュイズヘラブ(4,350m)滞在

休養日です。ヤクの乳絞りや夏の住居の訪問などワヒ族の夏のパミールの暮らしを見学。ヤクは、ヤギ、羊とは異なり迫力があります。

 

家畜とともに生きるワヒ族の暮らしを見学
家畜とともに生きるワヒ族の暮らし
ヤクの乳絞り体験
ヤクの乳絞り
ヤクミルク
ヤクミルク

その後高所順応も兼ねて、隣丘のグルチンワシュク・サム(4,600m)までハイキング。標高差250mの登りです。上部では登頂日のガレ場登りの練習になりました。

 

グルチンワシュク・サムの丘にて
グルチンワシュク・サムの丘にて
登頂日のアンザイレン下山練習を兼ねて高所順応
登頂日のアンザイレン下山練習を兼ねて高所順応

■トレッキング5日目 シュイズヘラブ(4,350m)→ミングリク・サールB.C.(4,730m)

ミングリク・サールB.C.まで約3~4時間の道のりです。途中、ミングリク・サールを左手に通り過ぎます。角度によってはなだらかな山に見え、山麓にはザック・ゾーイ(小湖)とルップ・ゾーイ(大湖)の2つがあります。今回はザック・ゾーイ沿いにB.C.を設置しました。

 

ザック・ゾーイ沿いにB.C.を設置
ザック・ゾーイ沿いにB.C.を設置

天気予報では翌日から回復に向かうとのことだったので、もう1日高所順応日を設けることとしました。その間、シュウェルトで4万ルピーで購入してきた羊を捌き、日本風カレーでいただきました。

■トレッキング6日目 ミングリク・サールB.C.(4,730m)滞在

夜から雪が降り積もり、ベースキャンプは雪景色へと様変わりしました。気温も氷点下となり冷え込んできました。今日は動けないかと思っていましたが、雪が止んだので登頂ルートの視察も兼ねて高所順応トレッキングに出かけました。太陽が出て、どんどん天気が回復に向かっている様子が見てとれます。地面の雪もどんどん融けてゆきました。

 

高所順応トレッキングに出発!
高所順応トレッキングへ
高所順応途中(約4,000m)にB.C.方面を振り返る。
約4,000m付近でB.C.方面を振り返る。

午後は、装備チェックをしたり、ゆったりと過ごしました。体を動かしたいメンバーはさらに奥の村シュウェルト(4,670m)まで訪問しました。

 

ウスユキソウ属の花も逞しく咲いている
ウスユキソウ属の花
B.C.(4,730m)から望んだミングリク・サール(6,050m)
B.C.(4,730m)から望んだミングリク・サール(6,050m)

ミングリク・サールもはっきりと確認でき、士気も高まります。

後編へつづく。

 

 

Photo & Text : Osamu KUSUNOKI

Visit : Aug-Sep 2024, Shimshal Pamir, Shimshal, Gilgit-Baltistan

 

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Shimshal Pamir シムシャール・パミール ある夏のクッチ

パキスタン北部、中国との国境近くシムシャール村の女性と家畜が”パミール”へ大移動する「クッチ」。2011年6月20日に行なわれた「クッチ」の記録です。

2010年はカラコルムハイウェイ上にアッタバード湖が誕生し、この交通規制を受けて参加できなかったクッチ。2011年は西遊旅行の「シムシャール・パミール」のツアーのお客様、手配旅行のお客様・現地スタッフが参加。シムシャール村始まって以来最大級の“ヤク・サファリ”グループで最大の難関ショポディン峠 5,346mは 52頭のヤクと61人が峠越えをするという、私達のグループ自体がまさに「大移動、クッチ」そのものでした。

2011年のクッチ当日の様子です。2018年、2019年と村の女性の参加者数が激減し、もう過去の伝統となってしまったのではないか心配です。

 

クッチの朝、5月20日~6月20日までを過ごしたシュイジェラブの夏村の家を戸締りして出発の準備。年配の女性が手を回して尊敬の念で皆を見送ってくれます。

 

シュイジェラブの羊とヤギの囲いが開けられ、大きな群が最初の峠を登ってきます。村の女性は手にランタンとまだ歩けない生まれたてのヤギの赤ちゃんを抱いています。

 

シュイジェラブの丘をあがったところで村人の記念撮影。家族、仲良い村人が協力し合って行う伝統的なクッチ。

 

子供と子ヤギを抱いて歩くシムシャールの女性たち。ヤギ・羊は歩くのが遅いので別動隊として女性が面倒を見ていました。

 

ヤクのメスと子供の群とともにヤクに乗って進む私たちのグループ。クッチの日のヤクは、後ろから追われているためさらにスピードを出して歩きます。標高4,500mを越える高地をこのスピードで歩くシムシャールの女性達の強さに驚かされます。

 

振り返ると、後ろから家畜の群れが押し寄せてきます。シムシャール峠(4,735m)からはメスと子供のヤクの群、村人と共に歩いて目的地“シュウェルト”を目指しました。標高の高さを忘れてしまうほどの興奮のひと時です。

 

シムシャールの女性が6月20日から3ヶ月を暮らすシュウェルト(4,670m)の夏村。シムシャールの人々の言う“パミール”とは豊かな牧草地、人と家畜が一緒に暮らせる場所のことです。その“パミール”に無事に到着した神への感謝の儀式に参加させてもらい、村人とともにシムシャールのチーズをいただきました。

数え切れない、ヤギ、羊、ヤクの群。メーメー(羊、ヤギの鳴き声)、ブーブー(ヤクの子供の泣き声)の喧騒の中、一緒に“パミール”を目指して歩く臨場感。一生の宝物です。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Visit : Jun 2011, Shimshal Pamir, Shimshal, Gilgit-Baltistan

※この記事は2011年7月にアップしたブログ「サラームパキスタン」の記事を加筆・訂正したものです。シムシャールのクッチの伝統は急速になくなりつつあります。2018年、2019年と村の女性の参加する姿はほとんど見られなくなったと聞いています。

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Shimshal Pamir シムシャール・パミール 52頭のヤクと61人のショポディン峠(5,346m)越え

2011年6月のシムシャール・パミールの旅の様子です。この旅では徹底的に「ヤクの道」にこだわりました。1993年にできたヤクの通れない“タング・ルート“は歩かず、伝統的にシムシャールの人々がヤクを連れて歩いてきた牧草地と峠と村をつなぐ”ヤクの道“を歩く旅。そのルートのひとつ、難関でありハイライトでもあるのがショポディン峠(5,346 m)越えです。

今回はシムシャールの歴史にも残る、52匹のヤクと61人(11人の日本人、3人の西遊パキスタン現地スタッフ(パキスタン人)、47人のシムシャールの村人)による峠越えとなりました。

 

ショポディン峠の登り。6月末、5,000m過ぎから雪が残りそこから雪解け水が流れ出してぬかるみや滝を作っていました。150mほどの岩場を登り、そこから峠の頂上まで一気にヤクに乗って進みました。

 

もうすぐ峠の頂上へ。シムシャール村のヤク・マスターともいえるカズィさん。若い頃は登頂ポーターとして8,000m峰を登った彼も、今日は自分のヤクに乗って峠へ。

 

峠への到着直前、感謝の祈りを捧げていました。

 

ショポディン峠の頂上で。天候にも恵まれ、ヤクと村人と供にたどり着いた峠の景色は格別です。ショポディン峠5,346mの絶壁からは、はるか上部フンザ・パスーのシスパーレからヒスパー・ムスターグ山群のディスタギルサール、アドベルサールなどの7,000m峰を望むパノラマが広がりました。

そしてショポディン峠の頂上でお祝いの踊り。うれしいと踊る・・・これは町のパキスタン人も山のパキスタン人も同じこと。シムシャールの山旅の要所で長老による歌、「パミール」=「人と家畜が一緒に暮らせる豊かな牧草地」を愛でる歌を何度も聞きました。自然の中での暮らしに感謝する歌、その美しさに感動したものです。

 

ショポディン峠の難しさは登りではなく下りです。雪の斜面と相対する乾燥した35度角の下り斜面がこの峠の厳しさ。一部は雪解け水でぬかるみ、一部は岩盤むき出しで滑りやすい。

 

そんな下りを約2時間、麓のザルガルベン渓谷ショポディンのキャンプ地を目指しました。もちろん、ヤクたちはあっと言う間に斜面を駆け下り、草を食んでいます。

 

翌日にはシムシャール村に到着です。ヤクと村人と歩く最後の日。12日間をともにしたチームと一緒に過ごすのは残り数時間になっていました。

シムシャールの村人、ヤク使い、山ガイド、ポーター・・・ご参加の皆様とツアーを支えてくださったすべての人に感謝申し上げます。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Visit : Jun 2011, Shopodin Pass, Shimshal, Gilgit-Baltistan

※この記事は2011年7月にアップしたブログ「サラームパキスタン」の記事を加筆・訂正したものです。

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Shimshal Pamir シムシャール・パミール あなたもクッチ?私もクッチ。

 

Shimshal Pamir 夏の”クッチ=移動”に参加
シムシャールの夏と言えば「パミール」の暮らし。そして「パミール」に家畜をつれて大移動をするのことが「クッチ」。5月末、シムシャール村から最初の夏村シュイジェラブへ、そして6月末「パミール」の夏村シュウェルトへと「クッチ」がおこなわれます。

 

あなたもクッチ?私もクッチ。
2009年の6月のある日。シムシャールの「ヤクの道」をシュイジェラブへと歩いていました。足の遅い私をどんどん追い抜くシムシャールの村人。みんな口々に「クッチ」。この大移動を手伝うために町に行った若者や村の男性が手伝いにシュイジェラブを目指していました。シュイジェラブにつくと既に集められた、あふれんばかりのヤギ・羊が。
「クッチ」の日まで待つ間も、朝・夕に私のテントの横を通っていく羊・ヤギたちを眺め、乳絞りに参加し、シムシャールの夏の暮らしを体験。

 

「パミール」を目指す
昨日の晩、「明日はクッチだ」と決定。朝から荷造りがはじまります。

 

オスのヤクに家財をつみ、家をかたづけ、そして9時、最初の荷ヤクの群が出発。続いてヤクの囲いが開けられいっせいにパミールへ歩き出しました。羊・ヤギは足が遅いので遅れてやってきます。高原に出ると6000m峰ミングリクサールの麓をとおり美しい湖ルップゾーイをすぎ、いよいよシムシャール峠へ。

 

シムシャールの6,000m峰ミングリクサールの麓を通過する荷を運ぶヤク。ヤクの背にあるのはブハリ(ストーブ)でその中に歩けないヤギが入って運ばれています。

 

ここから後方を振り返るとたくさんのヤクが押し寄せるパノラマが広がりました。標高4,900mの高所であることも忘れてヤクと一緒にパミールの村「シュウェルト」まで一気に歩く幸せ。

 

シムシャル峠を越えるメスのヤクと子供の群れ

 

クッチの無事終了と夏の暮らしを祈る儀式

 

シュウェルトの夏の始まり
シムシャールの女性たちが放牧と乳製品づくりをして3ヶ月を暮らす村がシュウェルト。クッチが終わるとすぐにこの夏の無事と収穫を祈る儀式が行なわれ、人々は家の準備、家畜の世話をします。そして夕方にはいつも通りの「乳搾り」の光景。


シュウェルトの家畜小屋。朝・夕の乳絞り。

お世話になった人々に別れを告げ、シュウェルトを出発するとき、この景色が惜しく、何度も振り返りました。

 

Photo & Text : Mairko SAWADA

Visit : Jun 2009, Shimshal Pamir, Shimshal, Gilgit-Baltistan

※この記事は2011年3月にアップしたブログ「サラームパキスタン」の記事を加筆・訂正したものです。シムシャールのクッチの伝統は急速になくなりつつあります。2018年、2019年と村の女性の参加する姿はほとんど見られなくなったと聞いています。

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Shimshal Pamir シムシャール・パミールってどこ?

2009年から通うこととなったシムシャール村のその奥、シムシャール・パミール。宿泊高度が4,700mを越える高所で簡単にける場所ではありませんが、山や大自然の景色だけではなく、ワヒ族の暮らしと伝統、人と家畜の大移動「クッチ」を体験することができる特別な場所です。

 

シムシャール村ってどこ?

シムシャール村は2003年に自動車道でつながった上部フンザの村。地図でいうとパキスタンと中国の国境付近、クンジェラブ峠の東側にあたります。カラコルム・ハイウェイを北上し、フンザの中心カリマバードを越え、アッタバード湖のトンネルを通り、パスーの村から未舗装の道を60キロほど走ったところにあります。2003年以前はパスーから歩かなくてはなりませんでしたが、四輪駆動車でアクセスできるようになりました。それでも道はかつての「トレッキングルート」。自動車道といえど、道中の険しい峡谷、村の手前に広がるムルングティ氷河など雄大な景色が続きます。

 

シムシャール村

標高3,000mの渓谷に広がるのがシムシャル村。1973年までフンザのミールの領土として乳製品や家畜を税として収めていました。1973年にフンザとともにパキスタン・イスラム共和国の一部になり、シムシャールの土地の一部は「クンジュラーブ国立公園」になりました。2003年には自動車道でつながるようになり、生活は便利になりましたが若者が都会へとでていくようになりました。村にはゲストハウスも数軒あり、不安定ながらも小さな水力発電の電気も通りました。この数年はトレッキングを含め村を訪問する観光客も増えてきました。

 

シムシャール・パミールへ

雪に閉ざされた長い冬が終わると、人々は5月末から放牧へとでかけます。シムシャールの暮らしで一番大切なのが「家畜」。ヤク、ヤギ・羊をつれて夏の放牧へ。特にシムシャールでは伝統的な「クッチ」と呼ばれる家畜をつれて夏の放牧地「パミール」を目指す「大移動」が行なわれます。

 

夏の家畜の世話と乳製品づくりは女性の仕事(残念ながらこの伝統は急速に失われています)。男性はより厳しい放牧にでかけたり、町に仕事に行ったり、山岳ポーターやガイドとして働いたりしてます。

 

イスラマバードからカラコルム・ハイウェイを旅してくると、カリマバードやパスーでも十分に山奥。そのさらに山奥のシムシャール村へ、そして歩いてシムシャール・パミールへ・・・。二の足を踏むかもしれませんが、本物の山の暮らし、家畜とともに生きるシムシャールの暮らしに触れることができる場所です。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

※Photos were taken between 2009 and 2012 at Shimshal village & Shimshal Pamir

※この記事は2011年3月にアップしたブログ「サラームパキスタン」の記事を加筆・訂正したものです。

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10月、秋のシムシャール村の風景

10月下旬のシムシャール村の風景です。パミールから家畜たちも戻り、村は厳しい冬を迎える準備です。

 

パミールから戻ったヤクたちが畑に離されていました。大きな雄や一部の雌はパミールに残り冬を越します。食料の少ない冬を乗り切るための伝統です。

 

洗濯日和・・・晴れた日のシムシャール村。

 

シムシャールの谷から見たカールンコー Karun Koh。上部フンザのスストに近い山で標高は資料によって6,977mだったり、7,164mだったり、7,350mだったり。

 

シムシャールの村を出たところにあるのが真っ黒なモロングティ氷河 Molonguti Glacierと背後にそびえるディスタギルサール  Disthagil Sar 7,885m。ここから渓谷添いのオフロードを3時間走るとパスー近くのカラコルムハイウェイへと出ます。

 

カラコルムハイウェイから1歩奥、シムシャール村へ!

 

Photo & Text : 澤田真理子 Mariko SAWADA

Visit : Oct 2014, Shimshal, Gilgit-Baltistan

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秋のシムシャール シムシャール川のつり橋で 秋のクッチ -4

ついにひと夏をパミールで過ごしたヤギ・羊たち、そして村人がシムシャール村に到着です。ほとんどの村人は家畜を運ぶために一時的にパミールへ行きますが、中にはひと夏を家畜の世話、乳製品づくりをした女性たちも。これらの伝統も無くなりつつあります。

 

川の対岸で家畜を待つ人々。シムシャール川のつり橋を渡り、家畜を連れた村人たちが到着です。

 

やってくる、羊・ヤギ、そして村人。

 

つり橋までもうすぐです。

 

家族と家畜の到着を待つ人々。この美しい光景に、夢中でシャッターを切りました。

 

まだ歩けない子羊を抱いてつり橋をわたる村人。

 

橋をわたるとそのまま村の中心へとみんなで歩いていきます。

 

村に集められた、パミールから戻ってきたばかりのヤギ・羊。

 

村に到着すると、預かっていたヤギ・羊を確認し、それぞれの持ち家へと帰っていきます。

この日、シムシャール村で見たクッチKUCHの到着・・・村人が協力し合い築いてきた、美しい伝統の景色でした。

 

Photo & Text : 澤田真理子 Mariko SAWADA

Visit : Oct 2014, Shimshal, Gilgit-Baltistan

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秋のシムシャール パミールからシムシャール村へ! 秋のクッチ -3

ついにヤクたちと一緒にシムシャール村へ戻る日です。ウッチフルズィーン Wuch Furzeen からパスフルズィーン Past Furzeenにかけては急な上り下り、スライディングエリアも。

 

岩場をゆくヤクたち。

 

下から急斜面を移動しているヤギ・羊たちが見えました。カーブの下りは滑らないか心配な個所です。

 

村へと急ぐ、ヤギ・羊たち。ヤクに比べて歩きが遅いので、村へはヤクたちの翌日に到着する予定です。

 

山の斜面を登るヤクと村人たち。

 

村への途中に見えたヤズガル氷河 Yazgar Glacier 。

 

そしてシムシャールの白い角こと、White Hornと呼ばれるアドベルサール Adver Sar (6,400m)の展望。

 

そしてガーレサール Ghare Sar の下りです。ここを降りるとシムシャール村です。

 

シムシャール川を渡ります。村人が小さなヤクが流されないように守ります。

 

川を渡り、家族の待つシムシャール村へ。

 

村人とヤクたち、シムシャール村への到着です。本当にお疲れさまでした!

 

Photo & Text : 澤田真理子 Mariko SAWADA

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秋のシムシャール ヤク・ヤギ・羊が帰ってくる!秋のクッチ -2

アルバパリエン Arbab Parien のキャンプを出発しようとした時、「クッチ Kuch」は既にシュイジェラブを出発したと聞き、アルバパリエンから少しいった見晴らしの良い場所で「クッチ Kuch」がやってくるのを待つことにしました。

待っていると、昨日村へむかって村人と歩いていた赤ちゃんヤクがパミールに残るお母さんヤクのところへ戻ろうと逆走してきました。村人たちが赤ちゃんヤクを捕まえます。メスのヤクは冬の間、村に戻るグループとパミールに残るグループに分かれるのだそうです。この子のお母さんヤクは村には戻らず、冬をパミールで過ごすのですね。

 

シュイジェラブ Shuijerab から最初に到着したのは赤ちゃんヤクと雌の小グループ。峠を越えていきます。

 

続いて羊とヤギのグループが通過していきます。

 

歩きながらお母さん羊にミルクをもらう赤ちゃん。

 

パリエンサール Parien Sar の門をくぐって村を目指すヤク。

 

難所、パリエンベン Parien Benへの下りです。砂煙をあげて下っていくヤクたち。

 

斜面を下っていくヤクたち。ヤクに近いスピードで駆け降りるシムシャールの村人たち。そして私たちも彼らを一生懸命に追いますが、この傾斜はなかなか怖いものです。

 

続いてパリエンベン Parien Ben の川渡り。

 

つり橋を渡るヤギ、羊たち。本日のキャンプ地、ウッチフルズィーン Wuch Furzeen を目指します。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

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秋のシムシャール シムシャール・パミールへ 秋のクッチ -1

シムシャール村の伝統のひとつ、クッチKUCH

クッチとは家畜を連れての大移動のことで、牧草地を求めて夏にシムシャル・パミールに行った家畜たちが一斉に戻ってくるのが”秋のクッチ”。10月、パミールから戻る”秋のクッチ”を出迎えたいと思い、シムシャール村へ向かいました。

 

シムシャール・パミールへの旅の準備

朝、荷物を運ぶヤクたちが集まってきました。シムシャール・パミールへの道は険しく、これまで2度訪問しましたが、その度に疲れてはヤクの背に乗ることを覚え、乗り心地がいいようにカスタマイズしてきました。

何よりも動物が好きな人にとってはヤクと一緒に入れること自体、大変うれしいものです。

 

こちらは「人を乗せられるヤク」。鞍をつけてマットを引いて、カスタマイズされていきます。

 

シムシャール村を出発

シムシャール村を出発すると最初にシムシャール川を渡らなくてはなりません。つり橋を渡れるヤクもいますが、ほとんどは川を歩いて渡ります。

 

シムシャール川を渡るヤク。

 

ガーレサール Ghare sar の登りです。シムシャール川によって削られた雄大な谷の景色が広がります。

 

本日のキャンプ地パスフルズィーン Past Furzeenに到着。荷を運ぶヤクさんもおつかれさまです!

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Visit : Oct 2014, Shimshal, Gilgit-Baltistan

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