パンジャーブウリアル Punjab Urial(ソルトレンジ)

パンジャーブ州、ソルトレンジ<塩の山脈>の丘陵地帯に生息するパンジャーブウリアル Punjab Urialのレポートです。

 

ウリアル Urialは偶蹄目ウシ科ヒツジ属の哺乳類。雄の角は弧を描いて大きく巻き、首の下に長い毛の房がある野生のヒツジです。南アジアから中央アジアにかけての山岳地帯に生息。パキスタンのパンジャーブ地方に生息するウリアルはインドのラダックウリアル Ladakh Urialと同じ扱いをされていましたが、2016年に発刊された “BOVIDS of the World” (世界のウシ科動物)ではパンジャーブウリアル Punjab Urialとして独立種になりました。

 

パンジャーブウリアル Punjab Urial はパキスタンの固有種で、パンジャーブ州のジェルム川からインダス川の間にあるソルトレンジSalt Range(塩の山脈)とカラチッタ山脈 Kala Chitta Rangeのみに生息しています。

 

パンジャーブウリアルが生息するのは、ゆるやかな岩山の斜面があり、灌木が茂っているような場所です。

 

今回訪れたのはポトハル Potohar のコミュニティ保護区。現在、パンジャーブ州には5つのCBO (Community Based Organization)があり、その中では一番小さい保護区ですが、2017年に保護区が設立され違法な狩猟が禁止されてからウリアルの数は着実に増えているといいます。

 

尚、CBOはプライベートの保護区であり、毎年、年をとった角の大きなオスのハンティングの権利がオークションで売られ(主に外国人のハンター)、その収益がコミュニティに分配されたり保護活動に使われているというものです。いわゆる”トロフィーサイズ”と呼ばれるハンティングの対象となるオスの角は28~31インチ。同行してくれたレンジャーによると、トロフィーサイズのウリアルは12~13歳で、ほおっておいても14歳には死ぬので、ハンティングオークションによりコミュニティがうるおい、さらに他のウリアルの保護にもつながり、以前よりずっとよくなったとのことでした。

ちなみに2020年当時、ハンティングの許可は各CBOに3頭が割り当てられ、パンジャーブ州全体で年間15頭の許可を発行していました。オークションでの価格は1頭 15,000~16,000 USドルと高価なもの。確かにコミュニティに入るお金も大きくなります。ポトハルCBOでは16人のレンジャーが違法ハンティングを取り締まり、ウリアルの保護活動をしていました。

 

パンジャーブウリアル Punjab Urial の群れです。あまり大きなグループはみかけず、6~8頭くらいの小さな群れがほとんどでした。

 

パンジャーブウリアルのメスです。角は小さくまっすぐ伸びています。

 

パンジャーブウリアルの若いオスです。

 

灌木の茂みからこちらの様子をうかがっている”トロフィーサイズ”のオス。メスや若いオスの個体と違い、角の大きなオスはなかなか姿を現しません。狙われていることがわかってるようです。

 

一瞬、”トロフィーサイズ”の角をもったオスが姿を現してくれました。

 

大きく巻いた角、首の下の長毛の房、立派なパンジャーブウリアルです。

 

そしてあっという間に逃げ去ってしまいました。近年まで違法ハンティングが行われていた狩猟圧の高さを感じさせます。パキスタン北部山岳地帯のマーコールやアイベックスのように個体数が増え、コントロールされた狩猟だけが行われるようになると事態は変わってくるかもしれません。

 

家畜に追いやられ生息域を失い、高速道路により群れが分断されるなどして危機的に生息数を減らしていたパンジャーブウリアルですが、ハンティングオークションのシステム導入により保護が進んでいました。

同行したレンジャーに、ハンター以外でこの保護区に来た最初の外国人だと言われました。

 

Photo & text :Mariko SAWADA

Observation : Dec 2020, Potohar CBO, Punjab

Reference : BOVIDS of the World (Princeton Field guides)

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オナガマーモット Long-tailed Marmot (デオサイ高原)

夏のデオサイ高原で観察したオナガマーモット Long-tailed Marmot 。デオサイ高原はパキスタンの北部、インドとの国境付近にある平均標高4,100mの高原地帯で、1993年に国立公園に指定されました。

この数年でデオサイ高原を訪れるパキスタン人国内旅行客の数は一気に増加し、国立公園でありながら、マナーの悪い観光客の管理ができておらず、その自然環境への影響が大変心配されます。

キャンプ地ではパーティ―騒ぎをする観光客の姿があり、大自然を求めてきた人たちには興ざめな場所であるのも事実です。そしてその傍らに、短い「デオサイ高原の夏」を謳歌する野生動物たちの姿があります。

 

デオサイ高原でキャンプすると必ず出会うのがこのマーモット。デオサイ高原のマーモットは中央アジア・パミール高原で見られるマーモットと同じ、オナガマーモット Long-tailed Marmot / Golden Marmot です。

「キィキィ」というアラームコールを発し巣穴付近から立ち上がって様子をうかがう光景をよく目にします。もちろん、近づきすぎた人間にもアラームコールを発しますが、彼らはマーモットを狙うキツネや猛禽類などを常に警戒しています。

このオナガマーモット、標高3,200m-5,000mほどの高地の草原や岩のある場所に巣穴を掘ってコロニーをつくり、大家族からなる集団で暮らしています。一夫一婦で大変社会性の高い動物だそうです。

 

すぐに逃げられるように穴のそばに立っています。この巣穴は冬は冬眠に使われます。

 

道路のすぐそばにあったコロニーでゆっくり観察しました。するとマーモットも警戒心を解き子どもたちが出てきます。

 

お母さんマーモットと子どもが出てきました。マーモットの子どもは生まれてから6週間ほどを巣穴で暮らした後、外へ出てきます。

 

本当に、可愛らしい。

 

甘えています。

 

もう1匹出てきました。オナガマーモットは、一度に4匹ほどの子供を生みますが、最初の夏を乗り切れるのはその半分、さらに最初の冬眠で命を落とす子供が多いのだそうです。観察しているとこのコロニーには複数頭の子どもの姿がありました。

 

デオサイ高原は10月になると雪が降り始めます。以前、10月の第一週に訪れたときはマーモットたちはまだ活動していました。11月ごろには冬眠に入るのでしょう、この子達が冬を越せますように!

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation : Jul 2017, Deosai National Park, Gilgit -Baltistan

Special Thanks  : The late Mr.Zahoor Salmi,  Deosai National Park

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ユキヒョウ遭遇 vol.04(クンジュラブ国立公園 )- SNOW LEOPARD EXPEDITION

朝、目撃したユキヒョウの親子を一日中追った記録です。

早朝に仕留めたと思われるアイベックスの朝食を邪魔されたユキヒョウの親子は、獲物からそう遠くない山の斜面にいました。はじめは山肌に寝転がっていましたが、陽が強くなってくると草の中や岩陰を転々と移動。決してずっと寝ているのではなく日陰を求めて苦労していることがわかりました。

下記の映像はかなり遠方から日中のユキヒョウを撮影したものです。

 

Snow leopards during the daytime

 

そしてようやくお待ちかねの日没。はじめは親子3頭で一緒の場所にいましたが、夕刻時にはバラバラになっていました。お母さんユキヒョウが歩き始め、朝仕留めたアイベックスの元へ!

 

Snow leopard at dusk

 

獲物との微妙な距離の岩場から「早く行けよ」と言わんばかりのお母さんユキヒョウ。子供たちは上の岩場からその様子を見ていました。そして暗闇が訪れ、彼らの時間が始まります。

翌朝訪れると、アイベックスは「完食」されていました。

 

 

Videography & text :Mariko SAWADA

Observation : April 2021, Khunejrab National Park, Gilgit-Baltistan

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ユキヒョウ遭遇 vol.03(クンジュラブ国立公園 )- SNOW LEOPARD EXPEDITION

春のユキヒョウ・エクスぺディションも残り2日となった日の朝の出来事です。クンジュラブ国立公園を走行中、至近距離でユキヒョウを発見。母と子供2頭、3頭のユキヒョウがアイベックスを食べていました。

もちろんユキヒョウの親子は我々を見て驚いて、崖を登っていきます。時間にして3分くらいでしょうか、誰もが息をのみ、シャッター音だけが響き渡りました。

 

Snow leopards sighted from the Karakoram highway

 

親子が視界から消えた後、角度を変えてこの親子を探し、この日は一日彼らを追うことにしました。

 

Videography & text :Mariko SAWADA

Observation : April 2021, Khunejrab National Park, Gilgit-Baltistan

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ユキヒョウ遭遇 vol.02(クンジュラブ国立公園 )- SNOW LEOPARD EXPEDITION

クンジュラブ峠に近い、標高4,500m付近で観察した、とっても仲のいいユキヒョウの様子です。はっきりとはわかりませんが、この時期だとカップルではなく、2年目の子供と母親でしょうか。

1キロほど離れた距離での観察と撮影でしたが、この距離のおかげでユキヒョウの自然な姿をたっぷり見ることができました。

 

Snow leopards Khunjerab national park top area 1

 

Snow leopards Khunjerab national park top area 2

 

Videography & text :Mariko SAWADA

Observation : April 2021, Khunejrab National Park, Gilgit-Baltistan

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ユキヒョウ遭遇 vol.01(クンジュラブ国立公園 )- SNOW LEOPARD EXPEDITION

クンジュラブ国立公園の標高4,300m付近のユキヒョウ

 

クンジュラブ国立公園内を走るカラコルム・ハイウェイはコクサルから標高4,000mを越え、クンジジュラブ峠付近(約4,700m)まで一気に標高を上げていきます。その登りカーブの走行中に見つけた、ユキヒョウでした。

 

走行中に窓からユキヒョウを探していたフサインさんが「ちょっと車バックして」「ユキヒョウがいる、近い、近い、獲物を狙っている」と。私にはすぐに見つけることができませんでした。「近い、近い」と言われても、どのくらいの近さなのか・・・自分の視力を恨みました。

 

ようやく見えた、ユキヒョウ。50m+くらいの距離だったでしょうか。後ろ向きでカモフラージュ。後でわかったことですが、この岩場の下に傷ついたヤクがおり、そのヤクを狙っていたようでした。このユキヒョウはまだ私たちに気が付いていません。

 

私たちの存在に気が付きました、フセインさんが「もうすぐにいなくなるから、写真撮りきってしまいなさい」と。なんと恵まれた構図のユキヒョウの姿でしょう。

 

そして10秒もしないうちに、視界から姿を消しました。

 

ユキヒョウの獲物となる動物たちは敏感です。このユキヒョウが動いたとたん、ヤクが一斉にその方向を注視。

 

ユキヒョウの気配のする方向を見るアイベックス。群れが集まって警戒態勢に入っていました。

 

このアイベックスの群れ、しばらくユキヒョウの方を見ていましたが、私たちの方に近づいてきて、こちらを向いて座りました。その様子は「何かあったら助けてね」と言ってるようでした。

 

Photo & text :Mariko SAWADA

Observation : April 2021, Khunejrab National Park, Gilgit-Baltistan

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(動画)アカギツネの狩り(クンジュラブ国立公園)

春、標高4,000mを越えるクンジュラブ国立公園の山の斜面も雪が解け、野生動物の動きが活発になります。

ネズミ(ナキウサギ?)を捕まえるアカギツネの狩りの様子です。ジャンプして雪に垂直にダイブしたり、獲物が「死んだふり」したり・・・。雪解けのカラコルムで見た野生動物の営みです。

 

A Red fox hunting  / 狩りをするアカギツネ

 

Videography : Mariko SAWADA

Observation : April 2021, Khunjerab National Park, Gilgit-Baltistan

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冬眠明け!春を迎えたオナガマーモット(クンジュラブ国立公園)

4月半ば、クンジュラブ峠付近の4,000mを越える高地の斜面には日光を浴びるオナガマーモット Long-tailed Marmot の姿が。滞在中、ちょうど冬眠明けの時期に当たったようで日に日にその数が増えていきました。

 

巣穴での可愛らしいオナガマーモットの様子です。

 

Long tailed Marmots in spring

 

Videography : Mariko SAWADA

Observation : April 2021, Khunjerab National park, Gilgit-Baltitstan

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ユキヒョウ遭遇!カラコルム・ハイウェイ

ユキヒョウを求めてやってきたパキスタン北部。アイベックスやハゲワシの観察をしながらカラコルム・ハイウェイを移動していました。

クンジュラブ国立公園内では道路上にも、河原の雪原にもたくさんのパグマークが。カラコルム・ハイウェイ上で、親子のユキヒョウが寝ていた跡や子供がかじって遊んでボロボロになったペットボトルも見つけました。人が通らない夜間や早朝のカラコルム・ハイウェイにユキヒョウがやってくるようです。

 

ユキヒョウの足跡だけがある吊り橋です!ユキヒョウは川幅が狭い場所や凍った場所を使って川を渡りますが、橋があるなら当然利用します。

 

昼頃、カラコルム・ハイウェイを走行していると、ガイドが「レオパード(Leopard)!」と叫び、車を止めて外へ。「ビスミッラー、ビスミッラー(Bismillah、Bismillah:神の御名において)」と見つめるその先にはユキヒョウの姿が。

 

道路のすぐそばの岩の上に座っていましたが、我々を見て歩き始めました。

ガイドが「シャウバシ、シャウバシ(Very goodとかWell doneという意味のワヒ語)」と喜んでいます。ユキヒョウガイドのプレッシャーが解けた瞬間です。

 

それにしても歩くのが早く、移動するユキヒョウに追いつくのが大変です。標高3,300mほどですが、興奮もあり息切れ。カメラを持つ手も震えます。

 

雪の上を歩くユキヒョウ。ユキヒョウの観察は、意外と岩が背景であることが多いので、雪の上のユキヒョウを観察できるのはうれしいものです。

 

どんどん登って遠くなっていきます。

 

さらに移動を続けます。草と重なると見失ってしまいそうになります。

 

数秒、こちらに顔を見せてくれました。これが最後の姿。岩場を歩き始め、姿が見えなくなりました。

 

最後の最後まで、ユキヒョウの姿を追った私たち。

 

スストに戻ったのは午後2時30分。遅いランチです。この日はスタッフたちの祝杯で(お酒はありません!)、ヤク肉メニューのオンパレード。ヤクのマントゥ(スストと接する新疆ウイグル自治区、中央アジアの料理)にヤクのニハリ(インド亜大陸の料理で牛のスネ肉と骨髄と煮込んだ料理)など、ヤク肉のフュージョン料理をみんなで楽しみました。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Dec 2020, Khunjerab National park, KVO area, Gojar, Gilgit-Baltistan

Special Thanks :  TOMO Akiyama and  Hussain Ali, Abul Khan

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(動画)恋するマーコール チトラル・ゴル国立公園 

繁殖の季節になると普段は高地で過ごすオスのマーコールは、「ホット」なメスを求めて山を降りてきます。

オスがメスを追いかけまわしている光景はよく見かけますが、メスのほうがオスにアタックしているカップルを発見。そこへもう1頭のオスがやってきて・・・。

スタッフと夢中で観察した「恋するマーコール」です。

 

恋するマーコール Markhor in love, Chitral Gol National Park|西遊旅行

 

Video & text : Mariko SAWADA

Observation : Dec2020, Chitral Gol National Park, Khyber Pakhtunkhwa

Special Thanks : Wildlife Department of Khyber Pakhtunkhwa, WWF Pakistan, TOMO Akiyama

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