カラコルムの自然を守る – クンジェラブ峠清掃活動を実施

この4月のパキスタンのユキヒョウツアーはサイティングにも恵まれ素敵な旅となりましたが、訪れたクンジュラブ峠付近はごみが散乱しマーモットがごみを巣穴に運ぶ姿もみかけました。ツアーご参加のみなさまのご支援を受け、アブル・ハーン氏とモルホン村のボーイスカウトが5月4日にクンジュラブ峠付近の清掃活動を行いました。行政へお願いしても迅速な対応は期待できず、パキスタン国内観光客のごみに対する意識改革にも時間を要します。今シーズンはあと2回の清掃活動を行う予定にしています。

 

ごみを巣穴へ運ぶマーモット

 

冬眠明けのお腹を空かせたマーモットがごみを食べる姿はつらいものでした。

 

モルホン村のコミュニティホールで清掃活動についての説明をするアブル氏。

 

中国との国境付近は観光客の最終目的地で一番ごみが多い場所です。標高4,600mを越える高所での作業は地元の人々の協力が強力が必要です。

 

カラコルムハイウェイ添いの溝を清掃。お菓子のパッケージ、ペットボトル、オムツ、マスクなどが落ちていました。どうして車窓からごみを投げ捨てることができるのでしょうか。

 

ごみ拾いに参加した子供。

 

集めたごみは、峠で焼却処分しました。

今年はシーズンの前と後の2回の清掃を行いたいと思っています。今なら美しい自然を取り戻すことができます。「世界の尾根」と称されるカラコルム山脈、パミール高原の自然と野生動物の環境を守るため、微力ですができるとことからやっていきたいと思います。

 

<ご支援のお願い>

西遊旅行の取り組み ”持続可能なツーリズムを目指して” カラコルムの自然を守る クンジェラブ国立公園 クリーンナップ募金のご案内

Image & text : Mariko SAWADA , dated on 10May

 

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Balkasar Bear Sanctuary バルカサール・ベアーサンクチュアリ 虐待されたクマたちの保護を!

Balkasar Bear Sanctuary、バルカサール・ベアーサンクチュアリの話です。

ハンティングのツーリズムの仕事をしている知人から、自分の所属するBalkasar Bear Sanctuary バルカサール・ベアーサンクチュアリに来てみないか、と誘われ行ってみました。行って現実を見るまで、正直、何のことかわかっていませんでした。

 

ここにいるクマたち・・・「熊使い(熊を使ったショービジネス)・・Bear vs Dog Fighting(熊と犬のフィテイングショー)やDancing Bear(踊る熊ショー)」に使われたクマたちが保護され集められていました。

クマたちのほとんどは、パキスタンの南部(パンジャブ州南部、シンド州、バロチスタン州)の地主たちの所有物で、その歯と爪は抜かれ、中には飼い主によって腕を切り落とされた個体もいました。手足のないクマを目の前にして、ヒトはどうしてこんなに残酷なのか、人間の醜さに涙が止まりませんでした。

 

施設にやってきて訓練中のヒマラヤツキノワグマ。

 

連れてきてくれた知人はパキスタンでハンティングの仕事に従事している人ですが、このクマの保護のプロジェクトに参加し、野生へ戻すオペレーションを担当しています。パキスタンのハンティング事情はこれまでもブログで書いてきた通り毎年厳しい条件と許可数が決められ、対象を大きな角の老いた個体とし、収益を地元に還元することから違法ハンティングを防ぎ、野生動物の保護につながっているという点があります。ただ、これもトロフィーハンティングの対象となる野生動物の話ですべての野生動物のことではありません。

ここに私を連れてきた彼も、ハンティングの仕事をしていますが、本物の野生動物の姿を知るからこそ、町に連れてこられ芸をさせられるクマたちの悲惨な運命は受け入れられるものではなかったのでしょう。

 

食事の時間です。

 

Balkasar Bear Sanctuary の施設には現在54頭のクマがいます。そのほとんどがヒマラヤツキノワグマ Himalayan Black Bearでした 。

施設の専門家によると、現在のパキスタンの野生のクマの生息数は、ヒマラヤツキノワグマ Himalayan Black Bear が600~650頭、ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear が200~250頭と推測されるそうです(きちんとした統計はとられていません)。ということは・・・およそ6~7%のパキスタンのクマが保護されてこの施設にいるのです。

 

このクマたちはどうやって連れてこられるのか聞いたところ、多くは冬眠中の親子グマを狙い、母熊を殺し子熊を連れてきて売るのだそうです。こんなことをする人間、買う人間がいることが信じられません。

それらの熊はひどい扱いを受け、この施設にやってきた時にはそのひどい状態に係員も目をそらすくらいだといいます。この施設に協力するパキスタン、そして外国の獣医たちによって救われたクマたちもたくさんいます。

でも、このクマたちは野生に帰ることはできません。その牙も、爪も、心ない人間に取り去られてしまいました。この施設はそんなクマたちが、ほかのクマたちとの社会行動も含め、自然な状態で余生を過ごせることを目的としています。

 

そしてこの施設のもう一つの目標として、野生下で生き延びることができそうなクマ(施設で生まれた子熊を含む)を野生環境に戻す取り組みです。

2016年の初夏に3頭のヒマラヤツキノワグマを野生に戻すことに成功し、続いて2017年の初夏に、野生に戻る訓練をしたヒマラヤヒグマの子熊(2歳半)2頭をクンジュラーブ国立公園エリアに放しました。この施設を訪問した2019年10月現在、その2頭は野生環境下で生き延びています。マイクロチップを埋め込み、その動きがモニターされていました。

施設では2020年に野生下への復帰が見込まれるヒマラヤツキノワグマの子熊たちもいました。子熊たちは標高の高いナティヤガリの施設で魚の取り方などの訓練を受ける予定です。同時に政府への働きかけが行われています。

 

Balkasar Bear Sanctuary は政府や寄付などの援助資金で活動しているのではなく、自分たちの菜園の収入で活動をまかなっている点も、驚くべきポイントです。

 

もともと地方の地主などの有力者の持ち物であったクマを交渉して手に入れ、保護し、その子供たちを野生へ帰す・・・並大抵の苦労と努力ではありません。

 

トロフィーハンティングの対象としてアイベックスなどの山羊類は保護され増加する一方、保護を受けることなく、知られることもなく消えようとする野生動物たち。法律整備も整わないパキスタンで野生動物のために戦うBalkasar Bear Sanctuaryの方々に、心より敬意を表します。そしてこの施設で生まれた子熊たちが野生に戻り、話題となり、一般のパキスタンの人たちの意識を変えていけることを期待します。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Visit : Oct2019, Balkasar, Punjab, Pakistan

カテゴリ:■パンジャブ州 > 自然・野生動物保護
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ユキヒョウ、山へ帰る

2017年2月下旬、パキスタン北部の村ミズガルで家畜を襲ったユキヒョウが捕らえられました。家畜小屋に入り込みヤギ・ヒツジを殺した上、家畜小屋から出れなくなっていたところを捕獲したとのこと。

 

村人は、ユキヒョウを保護しなくてはならないことは理解するが、行政へ「殺された家畜の補償」をもとめた話し合いがもたれ、捕獲されてから3日目に山へ帰されることになりました。

このユキヒョウはミズガルの村近くで2頭の子どもを連れている姿が目撃されているメスのユキヒョウでした。ユキヒョウは捕獲されたミズガルではなく、クンジュラブ国立公園へ運んできて放すことになりました。

 

ユキヒョウがミズガルで捕獲された話はすぐにニュースになりましたが、ミズガルは中国との国境に近いため、外国人は許可証がないと行けないと言われあきらめていたら、偶然にもクジュラブ国立公園のデーにあるスタッフ小屋にいたところ、このユキヒョウが連れてこられました。

このユキヒョウを放す瞬間を見ようとテレビ局、政府関係者が集まり、車列を組んで移動です。デーから少しいった場所の山の斜面で放すことになりました。

 

檻が開けられても、ユキヒョウはすぐには出てきませんでした。出てこないので、その場にいたパキスタン人が「ローリー、ローリー」と呼びます。「ローリー」は2016年の秋までスストのチェックポストで飼われていたユキヒョウのこと。今はナルタルに行ってしまいましたが、クンジュラブ国立公園の人たちはユキヒョウを見ると「ローリー」と呼ばずにはいられないようです。

ユキヒョウが檻から顔を出して、最初にしたことは、雪を食べたこと。のどが渇ききっていたのでしょう。

 

ひとしきり雪を食べるとようやく前を見ました。

 

そしてあたりを見ます。

 

ゆっくりと檻から出てきました。この瞬間、関係者より拍手が起こりました。

 

自由になったミズガルのユキヒョウ

 

3日間の拘束で毛並みが乱れているし、家畜の血が体についたりして汚れていました。

 

立ち止まっては雪を食べます。

 

ひとしきり雪を食べると茂みの中へ入っていきました。まだこちらのほうを見ています。

 

しばらくすると、ふたたび山を登り始めました。そしてまた座りました。

 

開放されたものですが、野生のユキヒョウが歩いている姿を、私はパキスタンで初めて見ました。

その後、このユキヒョウはじっとしたままでした。私たちも、このユキヒョウが無事にミズガルの2頭の子どものもとに戻れることを願い、その場を後にしました。

翌日、スタッフが最後にユキヒョウがいた付近を見に行きましたがもうその姿はありませんでした。そして開放してから3日後、このユキヒョウが2頭の子どもと一緒にいるのがミズガルで目撃されたと、国立公園のスタッフからメッセージがありました。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation : Feb 2017, Khunjerab National Park, Gilgit -Baltistan

Reference : Mr.Sultan Gohar -KNP(Khunjerab National Park), Mr.Falman Razah -KVO ( Khunjerab Villager Organization), Wildlife Department of Pakistan

※記事は2017年4月にupしたhttp://www.saiyu.co.jp/blog/wildlife/を書き直したものです。

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