チョウモス祭 – クタム: 今も息づくカラーシャの儀式

すべての収穫を終え、家畜が山から下りてきた12月上旬のカラーシャの谷。カラーシャの神バリマインを迎えるための儀式が始まりました。通過儀礼、浄めの儀式、神への生け贄が行われ、クライマックスとなる松明と大きな焚火でバリマインを見送ります。現代に生きる深い信仰と儀式に触れた旅のレポートです。

 

チョウモスの神聖な期間はイスラム教徒は谷に入れません。イスラマバードからのスタッフもガイドも谷に入れないため、アユンにカラーシャのスタッフが迎えに来てくれました。

 

カラーシャの村では、神聖な期間に新しい服を着るため、洗濯物がたくさん干されていました。浄めの儀式の前に湯あみをし、新しい服を着る必要があります。

 

家に飾られていたシャラビラ

ちょうどボンボレット谷でシャラビラ作りを見学することができました。シャラはマーコール、ビラは雄ヤギを差します。女性が翌日に配るチーズの入ったクルミのパンを焼いた後に、男性が小麦をこねてマーコールや雄ヤギの形を作ってストーブで焼きます。この儀式はクタムKutramと言います。

 

シャラビラ作りは夜に行われます。ちょうど訪れた時、谷に電気がなくストーブの火の光で美しい光景を見ることができました。女性がクルミのパンを焼いていました。

 

そして浄めをした男性が浄めた小麦粉を練って動物の形を作り始めました。

 

そしてストーブで焼きます。

 

完成したシャラビラ

クタムの儀式は各家庭で行われるほか、ジェスタック女神の神殿でも行われます。各家から集めた小麦でシャーラ(マーコール)を作ります。夜、男性が集まって作り、早朝まで壁に絵をかいたり、飲んだりして過ごします。朝4時頃に、「チッチッチ(ヤギを追う時の掛け声のよう)」と、シャラビラにデジラワトへ行くように促します。カラーシャの人々はシャラビラの魂がアフガン国境に近い場所デジラワトへ行くと信じています。

 

ジェスタックハン神殿の壁に描かれたシャラビラの絵。祭壇のそばに3つのシャラ(マーコール)。

 

神殿の壁の絵は、女性が用意したクルミの木の皮を燃やして作った炭で描きます。

 

2024年のクタムで描かれた絵

ところでみなさんはマーコールをご存じですか?パキスタンの国獣であり、トロフィーハンティングにおいては非常に高価なことで知られている動物です。2024-25冬のハンティングシーズンにおいては3頭のカシミール・マーコールのハンティング許可が出され、それぞれ231,000ドル~27,1000(3500~4200万)ドルで落札されました。このトロフィーハンティングの収入の80%が地元に還元されるとのことで、トロフィーを増やすために保護が行われ、確かにマーコールの数は増えていますが、動物好きの自分は複雑な気持ちです。

 

カシミール・マーコール(トゥーシシャシャ野生動物保護区)

マーコールはカラーシャの人々にとって超神聖な生き物。チトラールゴル国立公園やその付近の保護区で見ることができます。角の大きなオスは普段は山の標高の高い場所におり、冬の繁殖シーズンになると低い場所まで降りてくるので観察することができます。カラーシャの村からも1時間ほど山を登ると観察できる場所があるとのことでした。ちなみに、この地域のものは亜種、カシミール・マーコールです。

 

Text & Photo: Mariko SAWADA

Visit: Dec 2024, Kalash Valley, Toshi Shasha – Khyber Pakhtunkhwa

※情報は現地での聞き取りによるものです。資料により儀式の表記や説明が異なる場合があります、予めご理解ください。

 

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