パキスタン北部のインダス川(ギルギット川・フンザ川)流域、特にシャティアールからフンザにかけての河岸の岩場には多くの岩刻画が見られ、その数は5万点を越えると言います。
古いものは紀元前に遡り、狩猟の様子やアイベックスが描かれ、後にシルクロードを旅した商人や巡礼者、侵略者まで様々な人々によって「岩絵」は刻まれてきました。チラス周辺のインダス河畔はまさに「岩刻画ギャラリー」。一般のツアーでは移動途中に道沿いにある仏教徒が描いたものを見ますが、今回は「岩に描かれたユキヒョウ」を探してみました。
外国人ツーリストが良く使うホテル、チラスシャングリラホテルからほど遠くないカラコルムハイウェイ上から見ることができる「アイベックスを追うユキヒョウ」。
地元の仏教のイメージを嫌う人により岩刻画には、石灰のようなものが塗られていました。岩刻画を傷つけないように洗ってきれいにしました。
耳と体はオオカミっぽいフォルムですが、長くて太い尻尾はしっかりユキヒョウです。
カラコルムハイウェイ沿いの岩刻画は、地元の人たちによりペイントで消されたりしてかなりのダメージがありますが、橋を渡った反対側の河岸はこういった被害が少なく、比較的良い状態で岩刻画を探すことができました。
仏塔を描いた岩刻画。初期の岩刻画は固い石で刻まれましたが、仏教巡礼者の時代のものはノミを使って繊細な表現がなされています。「ガンダーラ」を目指した巡礼者たちはここでインダス川の水位が下がり渡渉できるのを待つ間、仏陀や仏塔のイメージを刻んだのでしょう。
仏教徒だけでなく、いろんな民族・宗教の人がこの地を越えていきました。これはアイベックスを仕留めた人物像、中央アジアから来た人でしょうか?
そしてこれは・・・ある資料には「神話の生き物」と説明がありましたが、角はマーコールですね!
無数の絵が刻まれた岩。
見えにくいですが、獲物を襲うユキヒョウ。
そしてこれは、さらにわかりにくいのですが、崖でアイベックスを襲うユキヒョウを描いたものです。「崖」を岩のキャンバスに描いている珍しいデザインです。そしてこの崖はなんと2匹の蛇なのです。古代のアーティストの観察力・発想に頭が下がります。
右がアイベックス、左がユキヒョウ。
今回は2時間歩いて3つのユキヒョウの岩刻画を見つけることができました。
残念なことに、このチラス周辺の岩刻画は、あと数年で完成するディアメールバシャダムにより水没してしまいます。一部の有名な岩刻画は移設されると聞いていますが、多くはこのまま永久に失われてしまうのです。
古代の人が描いた野生動物の姿とその時代を生きた証。何とか保存できないものでしょうか。
Photo & text : Mariko SAWADA
Visit : April 2021, Chilas, Gilgit-Baltistan, Pakistan
※パキスタンでの旅行現地手配を承っております。お問い合わせ・ご相談は、西遊旅行/ Indus Caravan へ!
*Please follow us on Youtube, Instagram & Facebook