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田園に死す

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日本

田園に死す

 

監督:寺山修司
出演: 高野浩幸、八千草薫ほか
公開年:1974年

2020.5.20

現代人の心に”畏怖”の感情はあるか?―青森・恐山の奇怪な景観

青森県の北端、下北半島・恐山のふもとの寒村。父に早く死なれた少年は、母一人子一人で犬を飼って暮している。隣の家に嫁にきた女が少年の憧れの人だ。隣は地主で、姑がすべてを支配しており、女の夫は押花収集狂の非力な中年男。少年の唯一の愉しみは恐山の霊媒に逢いに行き、死んだ父を口寄せしてもらうことだった。ある日、村に謎のサーカス団がやって来て・・・

“見たことがないような光景”というのは、なにも海外だけではなく国内にも数多くあります。コロナ禍による様々な制限で行きたい国に思うように行けない状況が長引くことが予想されます。これは、国内の知られざる魅力に目を向ける機会かもしれません。

いままで完全に国内ロケーションの作品は本コラムで紹介していませんでしたが、これを機に何回かにわけて、別世界・異世界をみせてくれる国内の映画をご紹介できればと思います。

まず第一回目は没後35年以上経ちつつもいまだに存在感を増し続ける歌人・劇作家 寺山修司が、故郷・青森で撮影をした『田園に死す』です。

カラー映画を形容する言葉として「総天然色」という言葉があります(1951年に日本国内初のカラー映画『カルメン故郷に帰る』など)が、『田園に死す』を形容するにはマンダラなどを表すのによくつかわれる「極彩色」という言葉がぴったりです。「総極彩色」な世界観の映画といえると思います。

特に物語のキーロケーションとなる恐山は、もともと天台宗の霊山として知られ、硫黄泉によって焼けた岩肌がつくりだす景観が幻想的ですが、物語が絡むとそれらは異様さに変身していきます。そこへさらに奇妙なサーカス集団が集まってくるということで、日本とは思えない謎めいたシーンが連続します。本作を初めて私が観たのは高校生のときでしたが、正直なところ怖くなってしまい、数夜夢にも謎のサーカス団のような誰かが出てきた記憶があります。

現代社会からは「怖い」という感覚や、足を踏み入れるのが怖いような空間や道というのはどんどん排除されていく流れにないでしょうか。そうなっていくと、長らく日本人の精神や連帯をささえてきた寺社仏閣や聖堂などの「神性さ」というのは、目まぐるしいスピードで従来とは違ったものに変容していくことになるでしょう。

このように『田園に死す』は1970年代に制作されながらも、時代を先取りした感性で現代人の人間の尊厳について考えさせてくれるオススメの1本です。

 

道南と青森の大自然をめぐる旅

千歳から函館の道南エリアの中々訪れることができない山々、支笏湖、洞爺湖、絶景の室蘭の地球岬などを同時にめぐります。樽前山、有珠山、駒ヶ岳、函館山は登頂やハイキングで楽しみますが2時間から4時間前後で比較的歩きやすいルートになります。これから山を楽しみたい方、しっかり歩きたい方にも楽しんでいただけるコースです。