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旅するローマ教皇
監督:ジャンフランコ・ロージ
出演:ローマ教皇フランシスコ
日本公開:2023年
世界を駆け巡る、ローマ教皇の旅を追体験
ローマ教皇フランシスコは、9年間で37回旅に出て、53か国を訪問した。
カメラは2013年のイタリア・ランペドゥーサ島から2022年のマルタ共和国まで、ローマ教皇の旅に密着する中で、さまざまな人に語りかけ、対話し、世に山積する問題と向き合う教皇の人間性を映し出していく。
もしも「自分たちの町にローマ教皇がやって来る」と聞いたら、どんな心地がするでしょうか。聞くだけでご利益があるような「ありがたいお言葉」を頂戴しに行くという印象を持たれる方も多いのではと思います。
実際、立ち会うことができませんでしたが、僕の母校・上智大学にローマ教皇が来たというニュースを見たときには、「ありがたい言葉を人々が聞いた」というように映像が仕上げられているように思えました。しかし、本作の切り取り方は、それとは少し違います。
本作ではローマ教皇の姿もさることながら、「まわり」に焦点があたっています。
ブラジル、キューバ、アメリカ、チリ、フィリピン、ケニア、イスラエル、パレスチナ、メキシコ、アルメニア、UAE、マダガスカル、日本、カナダ、イラク、マルタ・・・
教皇が訪問している場所はどういう場所で、どういう問題があるのかということが、簡潔でありつつも観客の心にグサッと刺さるような形で提示されていきます。
各地での人々の様子は、もちろん喜ぶ姿も多いですが、フッテージの多くは決して明るくはない内容です。特に、中央アフリカ共和国で、少年が慣れた様子で発砲する様子は衝撃的でした。
また、「訪問」ではないですが対話先として宇宙ステーションがあったのも、教皇だからこその「旅の形」を表していました。
僕は本作を観ながら、オバマ元大統領が2016年に広島を訪問した時のことを思い出しました。広島の歴史には、映画のテーマにしたほど思い入れがあるのですが、様々な歴史が文脈が渦巻く中で、オバマがどのように振る舞い、何を言うのか。テレビにかじりつくようにして様子を見守った記憶がよみがえりました。
ローマ教皇も、「世界を背負う」という重圧をしばしば感じながら旅しているのでしょう。にこやかに振る舞いつつも、時に重々しい表情をする姿が印象的です。
世界でたった1人だけに許された旅の形に触れられる『旅するローマ教皇』は、2023年10月6日(金)よりBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国順次上映。詳細は公式HPをご確認ください。