配給:ユナイテッド・ピープル
コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~
監督:マシュー・エディー、マイケル・ドレリング
出演:ホセ・フィゲーレス・フェレール、オスカル・アリアス・サンチェス、ルイス・ギ ジェルモ・ソリス、クリスティアーナ・フィゲーレス他
日本公開:2017年
世界中に平和の架け橋を築く・・・中米・コスタリカから学ぶ幸福の尺度
北アメリカ大陸と南アメリカ大陸を分ける「地峡(パナマ地峡)」と呼ばれる地域の中に、本作の舞台であるコスタリカは位置しています。人口は2015年時点で約480万人(日本で言うと500万人の福岡県とほぼ同等)。1948 年に軍隊廃止を宣言し、「兵士よりも多くの教師を」というスローガンのもと教育や福祉を充実させ、平和への姿勢を積み上げてきました。
冷戦、ニカラグアなど隣国・近隣諸国の政情、貿易協定、新自由主義、貧富の差、アメリカ・ラテンアメリカの麻薬問題・・・数々の問題に直面しつつも平和に対する真摯さを保ち続けてきたコスタリカの姿勢は、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の間に位置する、自然豊かな小国という地理的特性をそのまま体現したかのようです。
劇中では、元大統領などのコメントや記録写真・映像をまじえながら、平和の追求は自明で単純なのに、それがいかに難しいかが語られます。軍隊や武器を持つのではなく、その資金を教育・人に投資すること。原題が”Bold Peace”(勇敢な/大胆な 平和)とある通り、分かってはいるけれども世界中の国々がなかなか実現できなかったことを、コスタリカの人々は激動の時代の中で勇気を持ってなしとげてきました。憲法改正、新法案の成立、ドナルド・トランプ政権に翻弄される現代日本に住む私たちには、その一言一言が響きます。
もちろんいい事尽くしではなく、コスタリカもグローバル化の波や貧富の差といった問題に直面していることが映画の後半で明らかになります。そうした困難な状況でも、おおらかで決して悲観的にならないコスタリカの人々の考え方は、私たちを勇気づけてくれます。
中高生の時に私は地図帳を眺めるのが大好きでしたが、南北アメリカが今も逆方向に少しずつ移動していて、いつかは離れてしまうかもしれないという何億年スパンの話を聞いて、ヒモでつながれているかのような地峡と呼ばれる場所を、不思議な気持ちで眺めていました。
いつか私がコスタリカに行くことができたら、現地の言い伝えやおとぎ話を聞いてみたいと、この映画を見て強く感じました。コスタリカが細いヒモのような地形だとわかったのはさほど昔ではなく数百年前の話かと思いますが、その地形を子どもに説明するような昔話があるのではないかと思います。きっとそれは美しい物語に違いありません。
雄大な自然と共生し、世界の幸せを願うコスタリカの精神を感じ取れる『コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~』。8/12(土)より横浜シネマリン、アップリンク渋谷ほかにてロードショー。その他詳細、自主上映会の問い合わせ方法は公式ホームページをご覧ください。