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0ライン―赤道の上で

イラン・シンガポール・日本

0ライン―赤道の上で

 

On the Zero Line

監督:神保慶政、メールダッド・ガファルザデー
出演:ミズモトカナコ、メフディ・アーマディほか
日本公開:2024年

2024.5.29

ケニア・緯度0度の地で共鳴し合う、ふたりの心の空白

イランで検閲官をしながら詩人として生きるアーマド。

子どもを流産で失い、不妊が原因で離婚した日本のカフェ店主・ナナ。

全く異なる人生を送っている2人は、同じような空しさを抱えながら生きている。

アーマドはトルコ・イスタンブールを経て、ナナはシンガポールを経て、それぞれの理由で赤道が走る国・ケニアに向かう。

そして、2人が赤道で偶然出会うとき、魔法のような出来事が起こり始める。

ついにこの時が、やってきました!
といいますのも、本作は僕が監督した作品です(笑)

イランの監督と互いにストーリーを知らせないまま共同制作を進めた実験的手法の作品で、本当に編集開始まで相手の主人公(アーマド)が誰でどんな理由で赤道に気たのかを知りませんでした。イランの監督ともケニア現地で初対面でした。

シュルレアリスムの「優美な死骸」という手法をベースにしていて、イラン映画人からのオファーを僕が受けました。自分の作品ではありますが、2018年に撮影して2021年には完成していたので、だいぶ客観的にレビューできます。

この作品はとてもピュアな作品です。僕たち監督自身がピュアだと言いたいわけではなく(多少のピュアさはあるかと思いますが。。。)、人と人が互いのことを何も知らず初対面で向かい合い、限られたひとつの作品を作り上げようとする場合、真摯に向かい合い協力するか、無関心で自己中心的に互いにやりたいことをやるかのどちからしか選択肢はないからです。

当然我々は前者を選んだので、今作品がこうして存在します。制作前は「On the Zero Line」というタイトルしか手がかりがありませんでした。0は物語の中では赤道を、そしてスタート・再生を意味します。

通常の映画ではあり得ないような切り口で、人間という存在がいつ何時も「終わりと始まり」を繰り返し経験していることを、アーマドとナナの旅を通して感じて頂ける作品になっているかと思います。

本作『0ライン―赤道の上で』は僕の全作品特集上映『生活の中の映画』の一作として、6/28(金)よりシモキタ – エキマエ – シネマ『K2』ほか全国順次上映されます。上映期間中はだいたい下北沢にいますので、気軽にお声がけください。詳しくは公式HPやSNSをご覧ください。

ペルシャ歴史紀行

メソポタミア文明最高のジグラット“チョガザンビル”、ゾロアスター教の聖地ヤズドも訪問。

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テヘラン

イランの北西部に位置する同国の首都。エルブルース山脈の麓に広がるこの街は、全人口の10%に当たる人々が生活する大都市です。近代的な建物やモスク、道路に溢れかえる車の数、バザールなどの人々の活気など満ち溢れたエネルギーを肌で感じることが出来る街です。

GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生

b66e1cdd36b0cd6b(C)Ladybirds Cinema

ケニア

GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生

 

Gogo

監督:パスカル・プリッソン
出演:プリシラ・ステナイほか
日本公開:2020年

2020.11.25

千年杉のように気高く、優しく―94歳のケニア人小学生・ゴゴ

3人の子ども、22人の孫、52人のひ孫に恵まれ、ケニアの小さな村で助産師として暮らしてきたプリシラ・ステナイ。愛称はゴゴ(ケニア西部・カレンジン族の言葉で「おばあちゃん」の意)。

サブ4

幼少期に勉強を許されずに、教育の大切さを痛感していたゴゴは、学齢期を迎えたひ孫たちが学校に通っていないことに気づき、周囲を説得して6人のひ孫たちとともに小学校に入学する。

サブ3

他の小学生たちと同じように寄宿舎で寝起きし、ゴゴは制服を着て授業を受ける。耳はすっかり遠くなり、目の具合も悪い中での勉強一筋縄ではいかないが、助産師として自分が取り上げた教師やクラスメイトたちに応援されながらゴゴは勉強に励んでいく・・・

サブ8

旅先から持ち帰れるものといえば、お土産や思い出のほかに、出会いがあります。出会いというのは、旅をしたその場でのやりとりだけではなく、旅した地から離れたあとに「あのときあの場所で会ったあの人は 今なにをしているのだろうか」と思いを馳せる形で、数ヶ月・数年・数十年後にまで新鮮さが持続するものです。

サブ2

94歳で小学生として学ぶゴゴのような人に旅先で会ったとするならば、間違いなく折に触れてその面影を思い出すことでしょう。この映画を見ることで「今頃ゴゴはなにをしているのだろうか」と思うようになることは間違いありません。

サブ7

小学生に混じって瑞々しい日々を過ごすゴゴの微笑ましいシーンが続く本作には、ケニアにおける貧困・教育に対する問題提起も含まれています。

サブ6

ゴゴは英語や数学などの知識がなく、90代からそれを学び直すのはかなり無理があるという様が映し出されています。一転して、助産師としてのゴゴが映るシーンでは、彼女はエコーも使わずに胎児の性別を特定し、雄弁に妊婦に助言を伝えるという形で自分が会得した知識を惜しみなく共有しています。

サブ5

このコントラストを以って「貧困によって、学びの機会が失われることがあってはならない」と多くの観客は思うことでしょう。グサッと刺すような感じではなく、このようにしなやかなタッチの問題提起は、ゴゴが主役の本作だからこそ可能な表現だと思います。

メイン

『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』、12/25(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー。詳細は公式サイトからご確認ください。