(C)LA CASA DE PRODUCCIÓN y TU VAS VOIR-2015
火の山のマリア
監督:ハイロ・ブスタマンテ
出演:マリア・メルセデス・コロイほか
日本公開:2016年
母として、女性として・・・
心のなかのマグマが揺れ動く
舞台は黒く重々しい雰囲気の火山が眼前にそびえる高地。家族と農業を営み先住民の文化を受け継ぎながら暮らす17歳の少女・マリアは、アメリカに憧れている青年・ペペとの間に子どもを授かります。そして、段々と社会の歪みにまきこまれていきます。目の前に大きな火山がある環境で育てば、おそらく誰しもが自然に対して畏怖心を抱くようになるでしょう。中でマグマが揺れ動いていても、外からその様子を察することは容易なことでありません。マリアとその家族はそうした場から生まれた伝説や精霊の存在を信じて生きています。しかし、社会が作り出す貧困と格差は容赦なく彼女たちの生活に覆いかぶさってきます。また、一見黒い火山に映えるように思える民族衣装の色・柄は彼女たちの誇りであると同時に、植民地時代に民族の判別のためにつくられた印であるという歴史的経緯を持っています。
そうした時間・空間の多重構造が押し付けがましくない形で描かれており、火山の音に耳をすましているような静かな雰囲気に浸ることができます。グアテマラの長編映画として日本で初めて公開された本作は、生きる力強さを鑑賞者に国境を超えて与えてくれるでしょう。
火山
写真は、劇中に登場するパカヤ山から程ない距離にそびえるアグア山を望む街・アンティグア。1979年に「アンティグア歴史地区」としてユネスコの世界遺産にも登録。