ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ、ライ・クーダー
日本公開:2000年
郷愁ただよう歌声から薫る、
ロード・ムービーのような人生
ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダースはロード・ムービーの名作中の名作『パリ、テキサス』など、名高いフィクション作品もさることながら、数多くの名作ドキュメンタリーを監督してきました。キューバ音楽ドキュメンタリー『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は、その代表作と言われている作品です。
ヴィム・ヴェンダースと親交のある世界的ギタリストのライ・クーダーは1997年にキューバを旅行しに訪れ、現地の老演奏家たちとセッションを行いました。この映画の題名でもある「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、彼らがまだ若かった頃に首都・ハバナにあった人気音楽クラブの名前で、ライ・クーダーとともに全盛期のキューバ音楽を再現すべくリリースしたCDのバンド名でもあります。ライ・クーダーとともにキューバ音楽に魅せられたヴィム・ヴェンダースは、彼らの歌と人生を巡る旅に観客を連れ出します。
映画は、まずフィデル・カストロやチェ・ゲバラという典型的なキューバのイメージから幕をあけ、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの跡地を探しにいくところから始まります。クラシックカーが行き交いコロニアル建築が建ち並ぶハバナの街並み、ニューヨークにある音楽の殿堂・カーネギーホールやアムステルダムでの公演映像も映画の魅力ですが、なんといっても見どころはブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのミュージシャンたちの生き様です。音楽をなぜ続けるのかという自問自答、メンバーたちの心の拠り所がカメラに向って語られ、ひとりひとりの感情からキューバの激動の歴史までもが時に垣間見えます。
楽しい歌も哀しい歌も独特の深みをもって演奏するブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブですが、私たち日本人が歌詞を理解しない状態で聞いてもなぜか懐かしさを覚えるような響きをもっています。この映画を見ることで、彼らの音楽が心に残す響きはさらに増すことでしょう。
ドキュメンタリーというよりもロード・ムービーを見るような気分で、キューバ音楽の世界へ足を踏み入れてみてください。
ハバナ
キューバの首都で、新市街と旧市街(オールド・ハバナ)に分かれます。新市街はヘミングウェイゆかりのポイントも数多く残り、旧市街はコロニアルな建築が立ち並び世界遺産にも登録されています。