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ソニータ
監督:ロクサラ・ガエム・マガミ
出演:ソニータ・アリダザー、ロクサラ・ガエム・マガミほか
日本公開:2017年
「ツバメ」という名前を持つアフガン女性の生きる道
イランの首都・テヘランで難民生活を送る16歳のソニータは、タリバン支配下のアフガニスタンから逃れてきた。パスポートも滞在許可証もない状態で、ラッパーになることを夢見ながら、不法移民としてシェルターで心の傷を癒やすためのカウンセリングや将来のアドバイスを受けている。
ある日、アフガニスタンに住む母親が、慣習に倣ってソニータを嫁がせようと話をしにやって来る。息子の持参金9000 ドルを払うための手段として自分を嫁がせようとしている母親の目論みに悲しみつつ、そのことをもラップにしてソニータは現実に抗おうとする。彼女が歌うことで人生を切り拓こうとする様子に、イラン人女性監督ロクサラ・ガエム・マガミ自身も心を動かされ始める・・・
この映画は、私たちが日本人としてどのような「選択の自由」を持っているのかということを想起させてくれます。劇中、シェルターの先生とソニータの母が議論するシーンがあり、イランで結婚を決めるのは女性自身であると、先生はアフガニスタンの慣習を批判します。しかし、以前このコラムでもご紹介したイラン映画「私が女になった日」などで描かれている通り、イランにも婚姻に関して女性が自由な選択権を持つことに抗う慣習があります。
「旅に出る」という選択ができることも大きな自由の一つです。ふつうの日本人であれば、旅先から家に戻ってきた時の安堵感や、旅の余韻にひたる瞬間があるでしょう。しかし、ソニータは不法移民という常に放浪している状態にあり、「旅に出る」という選択すらできなく、どこにいても心安らぐことはありません。
ソニータは(おそらくアフガニスタンの公用語であるパシュトー語で)ツバメという意味だといいます。16歳でもう親鳥として巣にいるヒナたちにエサを与えることができる立場の彼女は、ラップという歌の力で人々に勇気を与えようと夢見ています。しかしその選択もまた、アフガニスタンとイランで女性による歌唱が禁じられているため認められません。
私たち日本人は実に多くの選択権を持っています。「結婚する / しない」「旅に出る / 出ない」「投票する / しない」・・・思い起こすことは様々ですが、人生における選択は与えられるだけでなく自分で作り出すことができるのだと、苦しい中でも笑顔で状況を切り開いていくソニータが私たちに教えてくれます。
『ソニータ』は、10月21日(土)よりアップリンク渋谷にてロードショーほか全国順次公開。10月13日までクラウドファンディングを実施中。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。