タグ別アーカイブ: アイスランド

ゴッドランド GODLAND

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デンマーク・アイスランド

ゴッドランド GODLAND

 

監督:フリーヌル・パルマソン
出演:エリオット・クロセット、イングバール・E・シーグルズほか
日本公開:2024年

2024.3.13

人生・地球全部盛り、静かなカオスーデンマーク牧師のアイスランド旅

デンマークの若き牧師ルーカスは、植民地アイスランドの辺境の村に教会を建てるため布教の旅に出る。

アイスランドの浜辺から馬に乗って遥か遠い目的地を目指すが、その道程は想像を絶する厳しさだった。デンマークを嫌うガイドの老人ラグナルと対立する中、思わぬアクシデントに見舞われたルーカスは狂気の淵へと追い込まれ、瀕死の状態でようやく村にたどり着く。

アイスランドを舞台にした映画というのは(アイスランド映画のすべてを知っているわけではないですがそれなりの数は観てきたうえで)、静かな映画、静かで風変わりな映画が多い印象があります。

本作も例に漏れず静かな映画で、自然、歌、馬・羊・犬などの動物といった牧歌的な要素が物語の主軸になっています。

しかし、本作は「激情」とでもいえるようなカオス、火山が爆発するような爆発性、そこから誘発されるような狂気が織り交ぜられている点です。

静かな荒涼とした大自然の中で、景観と反比例するように主人公・ルーカスの狂気はグツグツと沸き立っていきます。

ただ、本作は主人公が絶望に落ちていくような暗い映画ではなく、人生の悲哀や無常さを見つめているからこそ、慎ましい幸福も映し出している作品です。

ポスターに記載されているタイトルのフォントや赤い霞に着目していただくと、どんな映画か想像が膨らむのではないかと思います。『ゴッドランド GODLAND』は3月30日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次上映。その他詳細は公式HPでご確認ください。

アイスランド大周遊

レイキャヴィークから専用バスでアイスランドを周遊。アイスランド南部では、グトルフォスの滝や間欠泉ゲイシール・ストロックルなどの見どころに加え、氷河から崩れ落ちた氷塊が浮かぶヨークルサルロン氷河湖のクルーズや、氷河が迫りくるフィヤトルスアゥロン氷河湖へご案内します。ツアーでは、アイスランド北部の観光も充実しており、約2300年前の大噴火によってできたミーヴァトン湖周辺を観光。溶岩でできた奇岩が集中するディムボルギル、神々の滝と称されるゴザフォスの滝、デティフォスの滝などのみどころをしっかりと見学します。

LAMB ラム

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アイスランド

LAMB ラム

 

監督:バルディミール・ヨハンソン
出演:ノオミ・ラパス、ヒナミル・スナイル・グブズナソンイほか
日本公開:2022年

2023.1.18

羊人間を育てる羊飼いと人間生活の本質―アイスランド発の哲学的スリラー

アイスランドの山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリアは、羊の出産に立ち会う。すると、羊ではない「何か」が産まれてきた。

子どもを亡くしていた2人は、その「何か」に「アダ」と名付け育てることにする。アダとの幸せな生活の奥底で、2人の運命は大きくうごめいていく。

前回は「遠い」国としてマリの『禁じられた歌声』をご紹介しましたが、アイスランドも色々な意味で遠い国です(ちなみに「日本から遠い国」で検索したところ一番距離的に遠いのはウルグアイとのことでした)。遠いですし、氷河・オーロラ・間欠泉・動物など、様々な環境の違いがあり、常識の尺度も違います。たとえば、本作の大半は真夜中になっても日が沈まない白夜の設定で展開されますが、さほど説明無く物語が進むので白夜だと気付いた瞬間にハッとします。

本作はホラーとしてカテゴライズされることもありますが、僕の解釈では、人間の深淵を描いている(がゆえに若干怖い)作品で、哲学的スリラーと表現することもできるかと思います。なので「ホラーはちょっと・・・」という方も、ぜひ避けずにご覧になってみてください。

「秘境」と呼ばれる中でもその度合が高い場所に行くと、自分がそこにいるという事実自体に、不思議を抱くことがあるのではないかと思います。僕は、添乗中ではあるものの、度々その感覚に浸ったことがあります。

羊を無意識・潜在意識の象徴として小説の初期作に登場させたのは村上春樹ですが、『ノルウェイの森』の終盤で、色々なドラマを経た主人公が「どこにいるの?」と問われて「僕は今どこにいるのだ?」となる感じとでもいいましょうか。

『LAMB ラム』を観ていると「どういうことなんだこれは??」というシーンが続きます。主人公の女性の名前がマリアであったり羊飼いという職業が暗示する通り、キリスト教の比喩も多く含まれています。

夜が長い冬にも、白夜までは日本はもちろんいきませんが日照時間が長い夏にも楽しめる秀作『LAMB ラム』は、鑑賞中から鑑賞後にいたるまで「揺さぶられる感覚」がとても楽しく秘境旅行的でオススメの一作です。

アイスランド大周遊

レイキャヴィークから専用バスでアイスランドを周遊。アイスランド南部では、グトルフォスの滝や間欠泉ゲイシール・ストロックルなどの見どころに加え、氷河から崩れ落ちた氷塊が浮かぶヨークルサルロン氷河湖のクルーズや、氷河が迫りくるフィヤトルスアゥロン氷河湖へご案内します。ツアーでは、アイスランド北部の観光も充実しており、約2300年前の大噴火によってできたミーヴァトン湖周辺を観光。溶岩でできた奇岩が集中するディムボルギル、神々の滝と称されるゴザフォスの滝、デティフォスの滝などのみどころをしっかりと見学します。

ハートストーン

85602b316648ecaa©SF Studios Production & Join Motion Pictures Photo Roxana Reiss

アイスランド

ハートストーン

 

Hjartasteinn

監督:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン
出演:バルドル・エイナルソン、ブラーイル・ヒンリクソンほか
日本公開:2017年

2017.7.19

心のなかに転がる石に気づき始める少年少女たち。アイスランドの熱い青春

アイスランドの漁村に暮らす少年・ソールとクリスティアン。幼なじみの彼らは、何をするにもどこにいくにも一緒の大親友で、ソールは二人の姉にそのことを揶揄されています。

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そんなソールは思春期の真っ最中で、大人びた美少女・ベータに夢中になっています。クリスティアンは、ソールとベータとの仲がうまくいくよう後押しつつも、自分がソールに抱いている特別な好意に気づいていきます。

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『ハートストーン』という不思議な響きの題名から、私は揺れ動く土台の上で石がごろごろと転がっているイメージを思い浮かべました。アイスランド語の原題”Hjartasteinn”を直訳すると”Heart Stone”で、Hjartaには”温かい感情”、steinnには”厳しい環境”という原義から派生した意味があることに着想を得て、監督が生み出した造語だといいます。

題名のイメージを携えて映画を見進める内に、登場する少年少女たちの耳には自分にしか聞こえない、心の中にある石がゴロゴロと転がる音がしているのだろうなと思いました。誰かに押されてバランスを崩したり、自然の中に身をおいて安定させたりして、登場人物たちはそれぞれの石を落とさないように一生懸命バランスを調整しているように思えました。

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あわせて、私は添乗させて頂いたツアーの最中に各地で訪れた学校の光景を思い出しました。インド・ブータン・バングラデシュ・パキスタンなどを旅した時、旅程表には書いていない箇所で、学校に立ち寄って見学させてもらうことが多くありました。秘境と呼ばれる場所では、学校が大きな観光スポットに変わります。多くの場合彼らの方から招き入れてくれて、クラス全員で挨拶をしてくれて、ガイドさんを通じて質問をしあったりしました。

ほんの一瞬訪れた私にとって、彼らの素朴な表情は輝かしい光景として記憶として残っていますが、彼ら一人ひとりの心の中にはそれぞれの全く違った石が転がっていたのだろうと、懐かしい思い出に深みを加えてくれました。

また、私はこの映画のパンフレットでLGBTQという言葉を初めて知りました。LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)は知っていましたが、そこに加わったQとはQuestioning(疑問)かQueer(変わり者)の意味で、Questioningの意味が主流で使われるそうです。性認識を中立的に表そうとする傾向から生まれたQという要素が、『ハートストーン』では青春ドラマの展開にとてもマッチしています。

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『ハートストーン』は、7月15日(土)より恵比寿ガーデンシネマにてロードショーほか全国順次公開。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。

アイスランド大周遊

秋・オーロラの季節限定企画!北部ミーヴァトン湖まで訪れる充実の旅

ひつじ村の兄弟

poster2(C)2015 Netop Films, Hark Kvikmyndagerd, Profile Pictures

アイスランド

ひつじ村の兄弟

 

Hrutar

監督:グリームル・ハゥコーナルソン
出演:シグルヅル・シグルヨンソン、テオドル・ユーリウソンほか
日本公開:2015年

2017.3.15

火と氷の国・アイスランドで、羊たちが紡ぎ出す兄弟の絆

舞台はアイスランドの人里離れた村。隣同士に住んでいるものの、仲がとことん悪い老兄弟グミーとキディーは、先祖代々受け継がれてきた羊の世話に人生をかけてきました。質素ながらも慎ましい生活を送っていたある日、キディーの羊が疫病に侵され、保健所から殺処分を命じられてしまいます。この危機に、兄弟がとった行動とは・・・・・・

アイスランドの財産は火山・温泉・氷河・オーロラなどの大自然です。映像や写真でも意識すれば一目見てアイスランドではないかと察しがつくような、独特のスケール感が景観から感じられます。昨年末話題となった『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の冒頭も、アイスランドではないかと思わせる不思議な場所で、調べたところ正解でした。

主人公の老兄弟は、私たちからするととても孤独と思える場所・環境に住んでいますが、退屈した様子はなく、むしろ土地に対する静かな誇りが言動に表れています。それもこれも受け継いできた羊たちがいるおかげなのでしょう。その羊たちが連れ去られるだけでなく殺されてしまうということは、彼らにとって生きながら地獄に突き落とされるようなものです。

このように、土地の重要な記憶や受け継がれきたものに突然アクセスできなくなってしまうという描写は、映画に普遍性を与えています。私たち日本人にとっては震災や原発問題に置き換えて考えてみることが可能でしょう。

ストーリーで工夫が凝らされていて面白いのは、羊の血統を絶やさないために、絶縁状態ながらも血の繋がりがある兄弟が歩み寄りを迫られるという、「血」や「関わり」という要素が巧みに利用されている点です。兄弟という「関係がある」ことを彼ら自身に呼び覚ますのは、羊の血統が「なくなる」恐れです。「関係ない状態」を「関係ある状態」にすることは可能ですが、存在自体が無くなっては関係を形成する土俵に立つこともできません。

「関係ないこと」と「関係あること」の境界はとても曖昧ですが、『ひつじ村の兄弟』には家族であるだけで関わりを持たなければいけないことの滑稽さが、アイスランドという国の記憶とともに描かれています。

自分のまわりで受け継がれてきたものに思いを馳せたい方、アイスランドの大自然を楽しみたい方におすすめの作品です。

馬々と人間たち

(C) Hrossabrestur2013

アイスランド

馬々と人間たち

 

HOSS I OSS / OF HORSES AND MEN

監督:ベネディクト・エルリングソン
出演:イングバール・E・シーグルズソン
日本公開:2014年

2016.3.9

アイスランド人監督ならではの
馬中心映画

アイスランドと聞くと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。大自然・オーロラ・温泉・間欠泉・音楽などたくさんの魅力があるかと思いますが、今回はアイスランドの馬の映画についてご紹介したいと思います。馬と人の関係は太古にさかのぼります。馬は移動手段であるだけでなく兵器でもありました。皆さんも旅先で馬に関する歴史的なエピソードをよく耳にされるのではないでしょうか。この映画は、人間ではなく馬を中心に物語が展開していく個性的な作品です。アイスランド馬は、9世紀末にノルウェーから渡来して以来、アイスランドでのみ1100年以上も交雑することなく保たれてきた純血種であるそうです。アイスランドの牧畜農家は夏に馬を放牧し、秋の初め頃に村中総出で集めるそうですが、映画の中にはその様子もおさめられており、広大な自然の中で暮らす馬と人々の様子がうかがえます。この映画の特徴的な点は、題名に「馬々」のほうが先にきていることでも表現されている通り、人間も馬同様に動物だという一貫した視点です。観ている途中で馬と人間のどちらが「動物っぽい」のだろうかと思えてきます。アイスランド人の自然・動物に対する独特の距離感が生みだした不思議な雰囲気にどうぞふれてみてください。

初夏のアイスランド ヴァトナヨークトル氷河ハイキングと
インサイド・ボルケーノ

ヨーロッパ最大の氷河ヴァトナヨークトルでの氷河ハイキング。 スリフヌカギーグル火山の中へと降り立つインサイド・ボルケーノ。氷河と火山が造り出す驚異の自然を体感。

>アイスランド大周遊

オーロラ鑑賞に適したホテルに計4泊。迫力の氷河湖クルーズを楽しむ。グトルフォスの滝や間欠泉ゲイシールなど南部の見どころに加えて北部のミーヴァトン湖やアークレイリまで訪れる充実の内容。